感想は2100作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

『アトミック・ブロンド』感想(ネタバレ)…もっとぶちのめしてくだい!

アトミック・ブロンド

もっとぶちのめしてくだい!…映画『アトミック・ブロンド』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Atomic Blonde
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年10月20日
監督:デビッド・リーチ
性描写
アトミック・ブロンド

あとみっくぶろんど
アトミック・ブロンド

『アトミック・ブロンド』物語 簡単紹介

冷戦末期、ベルリンの壁崩壊直前の1989年。対立する国家間の緊張感は高まっていた。そして大事件が起きる。西側に極秘情報を流そうとしていたMI6の捜査官が殺され、最高機密の極秘リストが紛失。この状況はかなり危うい。放置できるものではなかった。リストの奪還と、裏切り者の二重スパイを見つけ出すよう命じられたMI6の諜報員ロレーン・ブロートンは、各国のスパイを相手にリストをめぐる殺伐とした争奪戦を繰り広げる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『アトミック・ブロンド』の感想です。

『アトミック・ブロンド』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

シャーリーズ・セロンが暴れる!

昔のスパイ映画に登場する「女性」といえば、男性キャラクターのサポート役か、その男と“寝る”相手役か、色仕掛けをしかけてくる美人局的な敵役、そのどれかです。

そんな中で女性を主役に据えた、いわゆる「女諜報員もの」アクション映画というのも時代が進むにつれ、いちジャンルとしてマニアにウケてきました。その系譜としての近年の最高級の作品が本作『アトミック・ブロンド』でしょう。

誤解を恐れずに言うなら、この映画は快楽です。特定の欲求をこれ以上ないほど満たしてくれる…そのために作られた映画です。性的な意味ではなく。

その特定の欲求とは? それは「ひたすら美しい“シャーリーズ・セロン”を眺めていたい」、この一点に尽きます。

本作は、冷戦によって分断されているドイツを舞台に、イギリス秘密情報部(MI6)を中心に、アメリカ中央情報局(CIA)、ソ連国家保安委員会(KGB)、フランス対外治安総局(DGSE)が集結して、騙し合いを繰り広げる…という内容。その主人公で女スパイを演じるのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で皆を魅了した姐さん“シャーリーズ・セロン”

本作はこの“シャーリーズ・セロン”が最初から最後までたっぷり詰まっているんですよね。MI6所属ということで本作は宣伝や批評では「女性版ボンド」と称されていたりしますが、私の観た感じでは『007』シリーズっぽさはあまりないです。『007』シリーズは英国の愛国心的な信念が筋にあるため、作品性が一貫しています。だからジェームズ・ボンド役の俳優がコロコロ変わっても困りません。でも、本作はもろに“シャーリーズ・セロン”ありきの作品なので、“シャーリーズ・セロン”がすべての中心にあります。MI6なんて飾りです。

そして本作の“シャーリーズ・セロン”の魅力の大半はアクションで見せてくれます。監督は『ジョン・ウィック』シリーズの製作を手がけてきた“デビッド・リーチ”ということで、『ジョン・ウィック』で主流化してきた「生っぽい近接アクション」が本作も満載。つまり、“シャーリーズ・セロン”が間近でいっぱい鑑賞できます。バイオレンスはほどほどなのですが、抜群のプロポーションをもつ“シャーリーズ・セロン”が繰り出す美麗なアクションと、その体がどんどん傷ついていくシーンの連続で、ようはそういうカッコよさを求める人のための映画ですよ。

しかも、アクション以外も魅せてくれて…“シャーリーズ・セロン”と“ソフィア・ブテラ”が絡み合う!と聞けば、きっと無言で立ちあがり、映画館に向かう人が一定数いるに違いない…。

“シャーリーズ・セロン”好きで、アクションが好き。このニッチに該当する人は、今すぐ本作を観て、快楽を味わうとよいと思います。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『アトミック・ブロンド』感想(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半):何が起きたのか語ろう

冷戦最中の1989年11月のベルリン。ジェームズ・ガスコインというMI6のエージェントの男が追い詰められ、車で押しつぶされます。

「サッチェルが裏切ったんだな…。最強の敵に殺されるならいいが、お前とはな、バクティン…お前はKGBでも最低のクズだ」…そう言い残して撃ち殺されました。

その10日後のロンドン。ロレーン・ブロートンは家で1枚の写真に火をつけます。自分が男と映ったその写真が燃えつけるのを見つめ、傷だらけの肉体が鏡に映ります。

銃を鞄にしまい、着替え、職場へ。そこは情報局(MI6)です。上司の主任であるエリック・グレイとCIAのエメット・カーツフェルドがロレーンの前に座ります。なぜアメリカのCIAが同席しているのかとロレーンは怪しみますが、全権を委ねられているエメットはこの場を動きそうにありません。

しょうがないのでロレーンは何があったのかを話しだします。

始まりはある任務。MI6の責任者である「C」からエージェントのジェームズ・ガスコインが死んだと聞かされます。ベルリンで殺されたらしく、彼は昨日は東ドイツ保安省(シュタージ)のスパイグラスと会ったはずでした。目的はマイクロフィルムに収めたリストを受け取ることで、それには現在活動中のスパイが記録されているそうです。超重要な情報を奪われたことになります。

その情報を奪ったのはKGBの殺し屋として悪名高いユーリ・バクティン。今もベルリンにいるらしく、多くがその情報を追っています。まずはベルリンに潜伏するデヴィッド・パーシヴァルという一匹狼の荒っぽいスパイと接触するように指示を受けます。

エリザベス・ロイドという弁護士の偽名で任務にあたることになります。誰も信用はできません。

西ベルリンに到着したローレン。空港には迎えの車が来ていました。

しかし、走行中の車内ですぐに怪しいと気づき、隣の男と運転手を倒し、車をクラッシュさせます、後ろにはデヴィッドがおり、駆け付けます。もうソ連側に動きが読まれているようです。デヴィッドは自由気ままです。別に観光に来たわけでもないのにあれこれと名所を教えてくれて余計なお世話です。

一方の東ベルリン。若者たちが捕えられ、アレクサンドル・ブレモヴィッチに痛めつけられていました。

ローレンは独自に動き出しますが、そんな彼女をカメラで監視するひとりの謎の女性が…。

スポンサーリンク

もっと、もっとぶちのめしてくだい!

冒頭、ロンドンの暗がりの部屋で氷風呂の中から裸体をザバンとさらけ出す“シャーリーズ・セロン”演じるロレーン・ブロートン。このブロートンのあざだらけの体、そして背中に浮かび上がる屈強な筋肉を映すカット。これだけで特定の一部の人は震えるじゃないですか。というか、このシーンで何も感じられない人は本作は不向きなんだと思いますが…。

そしてMI6とCIAの上官たちに問いただされていくかたちで、なぜこんな傷だらけなのかも含めてミッションの顛末を語りだすブロートン。話を聞いているMI6とCIAのキャリア陣はどうかはしりませんが、ここから何度も言うように一部のフェチ保有者大歓喜の映像が展開されていきます。いや、フェチ、フェチってそんなわけあるかと思うかもですけど、実際そんな内容でした。

殺されたMI6諜報員の持っていたリストの奪還と、裏切り者の二重スパイを探し出すために、西ベルリンに到着したブロートンは、さっそく迎えに来たらしい男たちの車に乗車。ここでバトル勃発。ブロートンは狭い車内で容赦なく、ハイヒール! ハイヒール! ひじ! ひじ!の連続コンボを決めていきます。「shoot」じゃなくて「shoe」で攻撃するというシャレているのかどうかはわからないアクションですが、“シャーリーズ・セロン”に蹴られたい願望のある人のためなんじゃないかと、私はこの時点で邪推し始めました。

ここから次のバトル場面で、“フェチ需要のために本作が作られた説”は確信に変わります。なんていったってブロートン、ロープをムチのようにして戦いますから。アパートの部屋で乱入してきた男どもをビシンバシンと叩く縛る倒す…。露骨すぎるよ…。

個人的にはここまでわざとらしくしなくてよかったのではと思うのですけど…。

スポンサーリンク

女性二人のいろいろな連携プレイ

しかし、『アトミック・ブロンド』のアクションはフェチばかりじゃない。

アクションの白眉はやはりデモ行進スナイピングから室内へ逃げてエレベーターから開始される、約10分に及ぶ超ロング戦闘シーン。ここはフェチ関係なく魅入りましたね。この戦闘は『ジョン・ウィック』シリーズを手がけた“デビッド・リーチ”監督らしさ全開であり、製作陣の持てる全てをぶっこみました!感が満載。全編ワンカットに見えますが、実際はかなり細かく区切られたシークエンスを絶妙にCGIでつなぎ合わせたものらしく、とにかく凄いです。影の功労者を記憶してほしいので言及しておきますが、このシーンはスタントの方も活躍しています。でも、じゃあ、“シャーリーズ・セロン”は全然体を張ってないのかというとそれは全く違って、長期間トレーニングを重ね、歯を2本も折ったそうですから、あっぱれですね。表の役者“シャーリーズ・セロン”と影の役者スタントの人の女性二人の見事な連携プレイでした。

ちなみにこの戦闘、ブロートンはテキパキとクールに敵を倒していくわけでなく、互いが死に物狂いで血まみれになりながら戦います。やっぱりそういうのが好きな人向けなのかな…(フェチばかりじゃない発言はどうした)。

女性二人の見事な連携プレイといえば、こっちも忘れてはいけないですね。

それはもちろん“ソフィア・ブテラ”演じるデルフィーヌ・ラサールとの絡みです。デルフィーヌとの濃厚なキスからの壁ドンですよ(違う)。ベッドインしてからは、もう絡む絡む。なんだろう、隣にいるのが“シャーリーズ・セロン”のせいか、今回の“ソフィア・ブテラ”、一番可愛く見える気がする…(いろいろ失礼な文章)。

女性二人のいろいろな連携プレイを楽しめるという意味でも、たいへんお腹一杯になれる映画でした。

スポンサーリンク

映画でも女を舐めると痛い目に遭うぞ!

とまあ、好き勝手書いてしまいましたが、ここから少し真面目な話を。

『アトミック・ブロンド』の特筆すべきは“シャーリーズ・セロン”が主演だけでなく、製作にも関わっていることです(ちなみに2015年の主演作『ダーク・プレイス』にも製作として参加しています)。

「アメリカの映画界は男性社会」というのはこのブログでもあちこちで書いてきたと思いますけど、つい最近もこんなニュースがありました。多くの女優が、大手映画制作会社「ミラマックス」の創業者であり大物プロデューサーでもある男からセクハラ被害を受けたと告発、ハリウッドの映画芸術科学アカデミーが会員資格を剥奪するに至った事件です。

本当に深刻な闇を映画界は抱えていることを痛感するわけですが、そんななかでも最近の映画製作では少しづつ女性の活躍が目立ち始めています。女性監督で史上最大のヒットを記録した『ワンダーウーマン』、ついに監督として花ひらいたアンジェリーナ・ジョリー監督の『最初に父が殺された』…。男性社会の映画界に一発一発パンチを浴びせていきます。

そして本作がぶちこんだパンチの相手はジャンル映画です。『アトミック・ブロンド』のような「スパイもの」や「殺し屋もの」はマニアにウケる映画界に欠かせない分野なわけですが、そういう映画の製作にだって女性は参加できるんだ!ということを証明したのは意義の大きいことだと思います。

内容も既存の「女諜報員もの」と違って、男を色仕掛けで誘うみたいなシーンがないなど、ステレオタイプからの脱却も感じられましたし。

本作のように、愚かな男どもをギッタンギッタンにぶちのめしていく女性をこれからも応援したいですね。もちろん良い男性も世の中にはいっぱいいますし、そういう人は安心して大丈夫ですけど。あぁ、あえてぶちのめされたい男の方は…“シャーリーズ・セロン”の前に並ぶといいんじゃないかな。

『アトミック・ブロンド』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 78% Audience 64%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

(C)2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED. アトミックブロンド

以上、『アトミック・ブロンド』の感想でした。

Atomic Blonde (2017) [Japanese Review] 『アトミック・ブロンド』考察・評価レビュー