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『サンダーボルツ*』感想(ネタバレ)…5月病もコイツらと吹き飛ばそう

サンダーボルツ

なんとかなる…映画『サンダーボルツ*』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Thunderbolts*
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年5月2日
監督:ジェイク・シュライアー
児童虐待描写
サンダーボルツ*

さんだーぼるつ
『サンダーボルツ』のポスター

『サンダーボルツ*』物語 簡単紹介

暗殺者として育てられたエレーナ・ベロワは今もCIA長官のヴァレンティーナのもとで汚れ仕事に手を染め続ける毎日で、嫌悪感を抱きながらも、目標を見いだせないでいた。ある時、同じように使い捨ての駒にされている同類たちと出会う。かつて世界を救ってきたヒーローチーム「アベンジャーズ」がいないこの社会で、自分たちのような嫌われ者が輝けるような日は来るのだろうか…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『サンダーボルツ*』の感想です。

『サンダーボルツ*』感想(ネタバレなし)

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サンダーボルツ?

大変だ、もう1年の3分の1が終わってしまってる…。

2025年の4か月間、とくに何もしてないぞ…。まあ、でもいいか…。映画が観れればそれでいいんです、ええ…。

5月早々は、ディズニー&マーベルが進める「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の2025年の第2弾も登場です(2025年はMCU映画が3作劇場公開され、第1弾は2月の『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』、第3弾は7月の『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』)。ゴールデンウイークは本来は「映画を観よう」期間なので、この映画も鑑賞候補にどうぞ。

それが本作『サンダーボルツ*』

しかし、『エターナルズ』以来、初心者にはパっと見「何それ?」となるタイトルですよね。「サンダーボルツ…? しかも *(アスタリスク)の記号がついているのはなぜ?」となるし…。

本作は正統派なヒーローのチームではなく、これまでのMCU作品でどちらかと言えば悪役のポジションにいた奴らが集まって、ひょんなことからチームを組むことになり、危機に対処することになる…という作品です。なお、事前の公式や宣伝で語られている簡単なあらすじは完全にミスリードになっています。

DCの『スーサイド・スクワッド』のMCU版なのかなと思いやすいですが、あちらの映画のような「極悪」って感じではなく、『サンダーボルツ*』は「いろいろな諸事情があって悪役みたいなことに加担しちゃったんです…」という世知辛さが目立っており、妙に人間臭い顔触れになっています。

メンバーは、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)の初期作からの常連で、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも大活躍し、今やすっかり常に横に立つ男を魅力的に支えることに関して信頼できる男となった、バッキー・バーンズ。昔は「ウィンター・ソルジャー」という殺し屋もしてましたが、左義手のサイバネティック・アームはそのままに、新しい人生を歩みだしてます。演じるのは、『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』でも権力者に忖度はしない姿をみせた“セバスチャン・スタン”

お次は、『ブラック・ウィドウ』(2021年)で初登場ながらもその規範に馴染まない反抗的な魅力さで一気に人気となった、ナターシャ・ロマノフ(ブラック・ウィドウ)の妹分のエレーナ・ベロワ。ドラマ『ホークアイ』でも登場していましたが、今度は主役級で活躍してくれます。演じる“フローレンス・ピュー”は社会正義を堂々掲げる信頼の若手俳優です。

3人目は、そのエレーナ・ベロワの父親的存在だった男、アレクセイ・ショスタコフ「レッド・ガーディアン」という名で、ロシア版「キャプテン・アメリカ」を自称する超人でしたが、現在は面倒な中高年オヤジです。演じるのは“デヴィッド・ハーバー”

4人目は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』にてアメリカ政府に新しいキャプテン・アメリカ「U.S.エージェント」に指名された超人兵士のジョン・ウォーカー。結局、2代目のキャプテン・アメリカはサム・ウィルソンが引き継ぎましたが、ウォーカーは何をしているのか…。演じるのは“ワイアット・ラッセル”

5人目は、『アントマン&ワスプ』(2018年)で登場し、事故で身体が量子的に不安定になってしまったことで「ゴースト」として暗躍したエイヴァ・スター。演じるのは“ハナ・ジョン=カーメン”

6人目は、『ブラック・ウィドウ』で立ちはだかった、ソ連の極秘暗殺者育成機関「レッドルーム」の凄腕暗殺者のアントニア・ドレイコフ(タスクマスター)。演じるのは“オルガ・キュリレンコ”

さらに、“ジュリア・ルイス=ドレイファス”演じる謎のCIA長官がでてきたり、“ルイス・プルマン”演じる謎の男がでてきたり、なんだかんだ賑やかです。

『サンダーボルツ*』を監督するのは、『素敵な相棒 〜フランクじいさんとロボットヘルパー〜』『ペーパータウン』を手がけた“ジェイク・シュライアー”です。

これまでのMCU作品とはまたトーンが違いますし、荒らしの前の静けさかもしれませんが、とりあえず『サンダーボルツ*』もなんだかんだでMCUらしいMCU映画です。

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『サンダーボルツ*』を観る前のQ&A

Q:『サンダーボルツ*』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:関連作はやたらと多いですが、どれか1作だけ観るとしたら『ブラック・ウィドウ』がオススメです(関連キャラが多いので)。
✔『サンダーボルツ*』の見どころ
★独りで劣等感や罪悪感を抱えている者たちの不器用な助け合い。
✔『サンダーボルツ*』の欠点
☆キャラクターの背景を知るには、観るべき関連作がやや多い。

鑑賞の案内チェック

基本 児童虐待を示唆する回想があります。
キッズ 4.0
子どもでも観れますが、やや大人向けのドラマがあります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『サンダーボルツ*』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

ソ連の極秘暗殺者育成機関「レッドルーム」で子どもの頃から育て上げられたエレーナ・ベロワは今はアメリカのCIA長官のヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌのもとで、表沙汰にはできないヴァレンティーナの個人的な目的達成のための汚れ仕事を請け負っていました。

今日はマレーシアにあるOXEグループのビルに潜入し、資料を跡形もなく抹消するのが任務です。このOXEグループはヴァレンティーナが以前に関わっていた企業で、CIA長官になった今も取締役会のひとりとして権力を握っていました。

OXEグループは非倫理的な実験をしていた疑いがあり、アメリカの議会ではヴァレンティーナについて弾劾委員会が行われ、その全容を解明しようと一部の議員たちは動いていました。しかし、ヴァレンティーナは余裕の態度で、現在は「アベンジャーズ」のようなヒーローチームがいないので、OXEグループで行っていた超人に関する研究も重要になってくると言い放ちます。

その紛糾する委員会を後ろの席で苦々しく見つめていたのは、最近になって議員になったばかりのバッキー・バーンズです。以前は彼も裏仕事をしていましたが、今は真っ当な政治活動で世界を救おうと考えています。けれども政治の動きはあまりに遅いです。

エレーナは以前に偽装家族を築いていた父親役のアレクセイ・ショスタコフのもとに1年ぶりに訪れます。彼は相変わらずエレーナの前で良い父をきどり、「レッド・ガーディアン」としてヒーローだった栄光にしがみついていました。今は警備の仕事を個人で請け負っているようですが、惨めな生活に本人もうんざりしている様子。

そんなアレクセイを背にして、エレーナはヴァレンティーナからの仕事はこれで最後にしようと決め、その最後のひと仕事の後は、もっと表舞台に立てる仕事を要求します

こうして最後の仕事として派遣された先が、OXEグループの極秘資料が隠れているという施設。ここに侵入するひとりの人物を抹殺するのがミッションです。

警戒しながら資料エリアに足を踏み入れると、いきなり攻撃されます。それも複数の人物がそこに集っていました。

ジョン・ウォーカーエイヴァ・スターアントニア・ドレイコフ…みんなヴァレンティーナの指示で来た者たちです。

そしてその部屋になぜかボブと名乗る正体不明の男もいて…。

この『サンダーボルツ*』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/05/03に更新されています。
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ひとりが無理なら、みんなでやり直そう

ここから『サンダーボルツ*』のネタバレありの感想本文です。

『サンダーボルツ*』に登場する面々は、非倫理的な行いに手を染めた過去があり、犯罪者としての罪は何らかの権力の庇護によって回避したものの、劣等感と罪悪感を抱えたまま、惰性で汚れ仕事をするしかない状況にある…そんな奴らばかりです。

もはやヴィランでもなく、アンチヒーローというにはカッコもついていない、世知辛いだけの人生を送っています。

実質的な本作の主役はエレーナ・ベロワです。こういう落ちぶれた者たちの物語の中で、若い女性が中心に立つというのはあらためていいものですね。模範的なフェミニズムな「強くたくましい女性像」ではなくて、ステレオタイプなか弱さではないけど、荒んだうえの脆さを有している女性というリアルさがあります。

“フローレンス・ピュー”が本当にぴったりハマっていて、このキャスティングに感謝です。

今作ではエレーナはいよいよ自分なりの進路を考え、目標を設定しようと一歩進みだします。冒頭のビル飛び降りはどことない希死念慮の暗示のようでもありましたが、それなりに強いのでそう簡単に死にませんし、でも焼却炉のシーンでは最期が来るときは受け入れようとしてしまうような一面も滲ませる。エレーナの精神的な不安定さは随所に描かれていました。義姉ナターシャ・ロマノフの死も辛かったんだろうなぁ…。もっとあの姉妹の一緒の姿が見たかった…。

そのエレーナの周囲にはいろいろな同類の奴ら…とくにダメ男が集まりがちで、今作では以前からのダメ親父のポジションだったアレクセイがまたもユーモアを担当してくれますが、そこにジョン・ウォーカーという別方面のダメ親父も追加されます

ジョンは「殺し屋キャプテン・アメリカ」という烙印を押され、妻子にも見限られ、すっかり捻くれており、今作ではようやく居場所を取り戻せたでしょうか。

そんなどうしようもない奴らを導く大いなる先輩として颯爽と登場するのが、我らがバッキー・バーンズ。やっぱり良い更生コーチの素質がありますよ。議員なんかやめたほういい…。

そして終盤は心の闇に沈んでしまって自分で自分を傷つけるしかできないボブを、みんなで、体技ではなくケアの精神で救い出すという、セラピーが展開されます。

全体的に振り返ると、地球で展開される地球人版『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という感じでしたね。アプローチのしかたはかなり似ており(『サンダーボルツ*』はヒーロー・コンプレックスが強めかな?)、その正攻法をなぞったスタイルに思いました。

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やや急ぎ足なのが気になるが…

そんなダメな奴らの支え合いが軸になる『サンダーボルツ*』ですが、ひと足先に抜け出しているバッキーはさておき、エレーナとジョンはたっぷりと過去作でも描かれていたので、この本作での心理的な決着も納得いきますが、他のキャラはまだ駆け足だったかなとも感じました。

アレクセイは別にいいとして、エイヴァのキャラクター・アークはなおも中途半端です。たぶんエイヴァをしっかり描くには、アントマンとワスプがでてこないとダメでしょうからね。

タスクマスターのアントニア・ドレイコフは早々に死んじゃったからもう何も言えない…。

問題はボブで、セントリーヴォイドという2つのキャラクターを兼ね備える存在としてコミックにも登場している最強クラスの超人なのですが、今作ではヴォイド時の心の中でのシーンといい、双極症のような心理面を抱えています。家庭環境の劣悪さも示唆されますし…。

似たようなキャラとしてMCUでは『ムーンナイト』があったわけですが、それと比べると、どうしたってこの『サンダーボルツ*』のボブの物語はまだ道半ばで、終盤に急展開で解決した感はありました。

ヴァレンティーナが、エレーナたちを「ニュー・アベンジャーズ」として大々的に記者発表し、世間の高揚に繋げて自身の不祥事を無かったことにするという荒業にラストはでるのですが、その倫理的な問題の落とし前をつけるのは次回作以降に持ち越し。

やはりここ最近のMCUはフランチャイズ計画が変更され、作品数を縮小させたことで、急いでチームアップして「次」に繋げようという焦りもでている感じも…。

それにあれだけいろいろな映画やドラマシリーズとかでせっかく舞台をグローバルに広げたのに、またニューヨークに回帰するしかないのも現時点ではもったいないところではあります。MCUのニューヨーク、どんだけ災難を呼び寄せているんだ…それでいてキングピンまでいるんでしょ? キツすぎる…。

ということでMCUの映画シリーズは次の『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』を迎えれば、後は怒涛の『アベンジャーズ』大作がワンツーパンチでやってきます。やや心配な急ぎ足ですが、ヴァレンティーナみたいに使い捨てにする無慈悲さではなく、キャラクターを丁寧に扱う心を忘れないでほしいところです。

『サンダーボルツ*』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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作品ポスター・画像 (C)2024 MARVEL

以上、『サンダーボルツ*』の感想でした。

Thunderbolts* (2025) [Japanese Review] 『サンダーボルツ*』考察・評価レビュー
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