誰か譲ってください…Netflix映画『オールド・ガード2』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本では劇場未公開:2025年にNetflixで配信
監督:ビクトリア・マホーニー
おーるどがーど2
『オールド・ガード2』物語 簡単紹介
『オールド・ガード2』感想(ネタバレなし)
2作目も斧は欠かせない
“シャーリーズ・セロン”姐さん、助けて…もう最近の世界、どこもかしこも滅茶苦茶なんです…。
ということで豪快に斧で一刀両断にしてもらいましょう。
『オールド・ガード2』の感想にさっそく突入です。
本作は2020年に「Netflix」で独占配信された映画『オールド・ガード』の2作目となる続編。“グレッグ・ ルッカ”というライターが生み出したグラフィックノベルが原作で、現代社会が舞台ながら、主人公たちは不死身の体で大昔から存在してきた特殊な部隊で、大きな陰謀に巻き込まれていくというファンタジー・SF・サスペンス・アクションの大盛りのジャンルとなっています。
前作から5年も経ってしまいましたが、ようやく2作目のお披露目です。これも前作で熱狂的なファンが生まれたからこそですかね。
『オールド・ガード2』の監督は、前作の“ジーナ・プリンス=バイスウッド”から代わって、“ビクトリア・マホーニー”にバトンタッチしました。“ビクトリア・マホーニー”は俳優としても活動してきましたが、2011年に『Yelling to the Sky』で長編映画監督デビューし、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で第2ユニット監督も務めた人物。
脚本は以前と同じく原作者の“グレッグ・ ルッカ”が関与しています。
もちろん俳優陣はほぼ引き続いています。
主役の“シャーリーズ・セロン”は絶対にいなくてはいけない大黒柱。今回もモンスターボールみたいなデザインの斧を豪快に振り回します。一応、スキタイ人という設定らしいので、あの斧も当時に使っていたお気に入りの武器なのかな。
他には、『ビール・ストリートの恋人たち』の“キキ・レイン”、実写版『アラジン』でジャファーを演じた“マーワン・ケンザリ”、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の“ルカ・マリネッリ”、『ムスタング』の“マティアス・スーナールツ”、『ポッド・ジェネレーション』の“キウェテル・イジョフォー”…。さらに、今作では『ハイ・フォン:ママは元ギャング』の“ヴェロニカ・ンゴー”(ベロニカ・グゥ)も出番が増量して、重要な役柄に…。
そして、新たに『赤と白とロイヤルブルー』の“ユア・サーマン”、『アナザー・シンプル・フェイバー』の“ヘンリー・ゴールディング”も加わっています。
前作のように“シャーリーズ・セロン”やその他の俳優陣がガンガン活躍しまくるアクションを観れればそれでいいという人は『オールド・ガード2』も期待に応えてくれるでしょう。一方で1作目と比べて物足りない部分もあったりするので、そのあたりは後半の感想で触れておきます。
『オールド・ガード2』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2025年7月2日から配信中です。
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | やや暴力的な描写があります。 |
『オールド・ガード2』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
荒れ狂う海。1隻の船が荒波の中から重々しい鉄の拷問具(鉄の処女)を引き上げ、中を開けます。するとひとりの女性が息を大きく吸って吐き、顔をだします。普通なら生きているはずはありません。しかし普通ではありませんでした。なぜならこの人物は不死身だからです。もう途方もない年月をここに閉じ込められていました。その彼女を助け出したのは船でその光景を見守っていたひとりの女性で…。
ところかわってクロアチア。アンディと仲間のナイル、ジョー、ニッキー、コプリーはここで仕事にあたっていました。新人のナイルは船からの監視。
この海岸に面したリゾート地にはコンラッドの邸宅があり、武装した守衛が取り囲んでいます。安易に立ち入れば瞬く間に殺されます。しかし、ジョーとニッキーは平然と庭園で交戦し、車で脱して敵を惹きつけます。2人は不死身なので被弾しようと切りつけられようと安心です。
その間にアンディとコプリーは邸宅に侵入。こちらの2人は不死身ではないので緊張しながら室内で戦闘に突入します。ナイルは船で派手に乱入し、さらに相手を攪乱。ナイルも不死身です。
一方でジョーとニッキーの運転する車は正面衝突し、海に沈んでしまいます。それでもやはり平気です。
ナイルはアンディとコプリーと合流し、上階にいるコンラッドを突き落として仕留めます。やることを終え、3人はジョーとニッキーと合流し、後はCIAに任せます。
アンディたちは不死身の戦士として十数世紀も前からこの人類社会に紛れて生きていました。古株はアンディですが、今のアンディは不死ではなくなっています。それでも新人のナイルと、元CIAのコプリーを加えて、人類を脅かす存在を密かに排除して活動し続けていました。
夜、みんなで酒を飲んでリラックスしていると、コプリーは武器の真の買い手はコンラッドではないと報告を伝えてきます。買い手の画像を見たナイルは覚えがあると言います。女です。何か図書館のような場所で資料を手にする姿で夢にでてきたような…。
不死者が夢でみるのは同じ不死者です。ということはこの女も不死者の可能性があります。警戒をしなくてはいけません。
一方、フランスのパリ。かつてはアンディたちの仲間で今は追放された身のブッカーのもとにある人物が現れます。それははるか昔に海に沈められてしまったはずのクインでした。
クインは第一声でこう言います。
「アンドロマケはどこ?」
それはアンディの本名です。クインはアンディに見捨てられたと考え、怒りを沸き上がらせていました。その背後にいるのは他でもないあの謎の女、ディスコードで…。
3部作構成の弊害

ここから『オールド・ガード2』のネタバレありの感想本文です。
『オールド・ガード2』、今作ではいよいよ本格的に不死者同士の対立が描かれていきます。
ここでややこしいのは本作における不死の設定で、前作から少し描かれたように不死性は失うことがあります。今作ではその不死性の消失はナイルに傷を負わされることで生じるという特殊な現象だということは明示され、ナイルの存在価値が急上昇。
また、ブッカーの件でわかるように、不死性は譲渡の意思があれば他の人に授けることもでき、不死性を失った元不死者も能力を復活できることも判明します。
混乱しそうな設定ですけど、全部を“ヘンリー・ゴールディング”演じるトゥアが説明してくれるので、それほど難解でもないでしょう。
ジャンルとしては不死性を失ったり、取り戻したりと、駆け引きが生まれたので、より緊張感が増したと思います。
さらに今作の敵である“ユア・サーマン”演じるディスコードも、不死性に熟知し、失った不死を取り戻したい執念と、不死者への対抗策を理解しているという点で、アンディたちにとっては立ちはだかる最強の存在として堂々と貫禄があります。
『オールド・ガード』シリーズは世界観の設定は「太古の昔から人類史を見守ってきた超人たちがいる」ということで『エターナルズ』に近いものがあるのですけど、それと比べると、『オールド・ガード』シリーズの不死者はもっと人間臭いというのが魅力です。
なにせ元は地球人ですし、普通に暮らしていて不死者として才能を開花させているだけなので、人生経験としていろいろなものを抱えています。だからこそ敵に利用されたり、感情の脆弱さが仇になることもあるのですけど、そこもキャラクターとして共感性をもたらします。
それに戦闘スタイルも不死といってもそれ以外は普通のようなので、体術や武器で戦うというリアルな戦法です。そこに不死という設定が大胆さをもたらし、ときに派手なゴリ押しで相手を圧倒するメリハリもあって、目を楽しませてくれます。
とくに今作では冒頭のコンラッド別荘のチーム投入シーンは、非常に「これぞ、オールド・ガード!」という勢いがあって見ごたえがありましたね。
その一方で今作は設定説明パートがやや何度か挟まれてしまうせいもあって、ストーリーのテンポ感が寸断され、ちょっとゆったりしぎているところは残念だったかなと思います。
それに悲壮感が後半にいくにつれて増していくのもあって、物語の重さが作品のジャンルとミスマッチになる部分も否めないかな、と。
たぶん今作は冒頭のアクションがピークで、先に進むにつれて、あれ以上の見ごたえを提供してくれるテンションの持続に乏しいのが欠点でした。
そして本作は3部作構成を前提にしていることは以前から製作陣は語っていたのですけど、やはり今回で3部作構成の問題点がでてしまっており、最も観たい部分を先送りにして「次回のお楽しみに!」とやりすぎかなとも…。
クィア表象の弱さ
そんな不満点を書き連ねましたが、個人的に私が一番に『オールド・ガード2』でガッカリだったのは、(おそらく多くのLGBTQコミュニティのファン層が同じことを思うでしょうが)クィア表象の勢いの弱さです。
前作はクィア表象の思い切りの良さで、LGBTQコミュニティを沸かせてくれました。
ジョーとニッキーはゲイ・カップルであり、1作目の中で満を持して映し出された男同士の愛の告白と情熱的なキス(それをする場所もいい)は、アクション重視のスーパーヒーロー映画におけるクィア表現が弱々しい中でその壁を打ち破るものを渇望していたクィアの観客にとって、まさに贈り物。「こういうのを観たかったんだよ!」という最高の一撃でした。
『オールド・ガード2』ではどうかと言うと、ジョーとニッキーは今作では少し距離ができていて、ジョーはブッカーに差し入れして定期的に会っていたことがわかったりと、男同士の愛にモヤモヤする試練が静かに巻き起こります。ここまでは別にいいんですよ。ここから愛が再燃して以前よりも燃え上がってくれるんだろうな…と、誰もがそう期待したくなる…。
ところが目に映ったシーンは…額を合わせるジョーとニッキー。あれ、どうした? 唇に炎症でもできてキスできない状態になってたのか? 最近のゲイ・カップルの間ではおでこをくっつけるのがブームなの? いや、別に額をくっつける仕草が嫌というわけではないけど、ここではそれはおかしいだろう…。だって前はあんなにキスしてたじゃないか、この男たち…。今回だったら流れ的には体を交えるのだって全然おかしくないよね?
ということで急にクィア表現に憶病になってしまった『オールド・ガード2』。大丈夫? 何か怖くなったの? クィアは不死身だよ?
でも、問題はジョーとニッキーの関係性にとどまりません。
今作で大きくクローズアップされるアンディとクインの2人。5世紀もの間、蘇りまた溺れ続けてきたクインは人類への憎しみと、最期まで傍らにいると約束してくれたアンディへの裏切りの怒りを募らせ、敵対します。
「Gaydar(ゲイダー)」(作品やキャラクターの性的マイノリティっぽさにいち早く気づくセンス)を常に設営起動している人であれば、原作を知らずとも、「アンディとクイン…この女たち、クィアだ!」とビビっと感じ取るのは容易いです。
実際、原作では2人は恋人同士。裏切りへの怒りは裏返せばそれは愛の重さ。魔女狩りのように処刑されるのだって、不死者だからというだけでなく、クィアに対する迫害も重ねています。太古の昔からクィアネスは存在したという事実こそ、強力なエンパワーメントです。
しかし、『オールド・ガード2』のアンディとクインの描写は明確なクィア表象を遠ざけ、回りくどく回避し続けます。
もしこれで回想シーンでの昔の2人のサフィックな恋愛模様が描かれ、最後のクリフハンガーで女2人のアツいキスが映し出されて閉幕していれば、この『オールド・ガード2』も2025年のベストクィア映画としてコミュニティの中で神輿で祭り上げられただろうに…。
なんか偶然かもしれないですけど、2025年は『フィアー・ストリート プロムクイーン』もそうでしたが、Netflixはシリーズもののクィア表象を引っ込める傾向にあるような…。
3作目で名誉挽回してほしいですけど、できますかね?
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
?(匂わせ)
作品ポスター・画像 (C)Netflix オールドガード2
以上、『オールド・ガード2』の感想でした。
The Old Guard 2 (2025) [Japanese Review] 『オールド・ガード2』考察・評価レビュー
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