感想は2600作品以上!(生成AIは使用していません) 各作品の検索方法はコチラ。
スポンサーリンク

映画など映像作品における自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の表象の歴史

自閉スペクトラム
スポンサーリンク

「自閉スペクトラム」(自閉症、ASD)は映画やドラマなどの映像作品ではどう描かれてきたのでしょうか。とても長く複雑な歴史があります。偏見や誤解を助長する描写もあれば、当事者の共感を集めるキャラクターもいました。

その表象の歴史を簡単に整理するのが、今回の記事の目的です。

「自閉症を描いた作品を作りたいな」と思っている非当事者もしくは当事者の人でも、この歴史を知ることは参考になるかもしれません。

一部の作品のネタバレが含まれます。また、公開時点の情報に基づいており、最新の展開を反映していないことがあります。

「自閉スペクトラム」(自閉症、ASD)とは?

スポンサーリンク

歴史と名称

まずそもそも「自閉スペクトラム」(自閉症、ASD)とは何なのでしょうか。

この質問に答えるのはなかなか大変です。というのもそれが何を指すのかということ自体が歴史の中で大幅に変わってきたからですThe Autism Service ; National Autistic Society

「autism」という言葉を最初に考案したのが、スイスの精神科医の“オイゲン・ブロイラー”で1910年代のことでした。優生学の熱心な支持者でもあった“オイゲン・ブロイラー”はそれを小児期統合失調症の症状のひとつとして説明していました。

また、1925年にはロシア帝国の児童精神科医“グルニヤ・スチャレヴァ”が、現在の自閉スペクトラムに該当するような子どもの特徴を整理していましたが、この実績は西洋の医学界では見過ごされ、1996年になってやっと英語で翻訳されたとのことです。

現在の自閉スペクトラムの診断の基礎となる研究を行ったのが、オーストリア・ハンガリー帝国出身の“レオ・カナー”で、1943年に発表されたその研究によって「カナー症候群(Kanner Syndrome)」という診断名を確立しました。統合失調症のひとつとは考えず、子どもの特定の行動や状態として分析しており、不安と強迫観念が原因にあると考えていました。

さらにもうひとつ重要な研究がありました。1944年にオーストリア出身の“ハンス・アスペルガー”が発表したもので、「アスペルガー症候群」と呼ばれることになりました。しかし、現在はこのアスペルガー症候群という診断名は使われず、自閉スペクトラムの中に含まれるようになりました。これに関しては単に科学的知見の積み重ねが理由…というだけでなく、「“ハンス・アスペルガー”がホロコースト中にナチスに協力して子どもを安楽死させていた」という忌まわしい経歴があるためでもありNational Autistic Society、今なおかなり物議を醸す人物です。

1980年代から90年代にかけて、精神疾患の診断マニュアルが体系化され、自閉スペクトラムの診断基準がようやく標準化されました。以前は子どもを中心に診断されていましたが、成人の診断も基準が整理され、診断対象者も大きく増えました。「自閉症(Autism Disorder)」から「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)」に診断名が変わり、幅広く捉える概念になりました。また、医学の見解だけでなく、障害者の権利運動にともない、ニューロダイバーシティなど当事者主体で概念を問い直す動きも活発化しています。

日本語では昔は「自閉症」が使われてきましたが、診断名称の変化に伴い、「自閉スペクトラム症」、もしくは英語の「Autism Spectrum Disorder」の頭文字をとって「ASD」と呼ばれることが今は多いです。

英語圏では「Autism」という短い単語ひとつが、医療的レッテルのないアイデンティティの言葉(ラベル)として当事者コミュニティで用いられていますAutism

日本語では「Autism」に相当する言葉がないのですが、今回の記事では、極力医療的なニュアンスを避けるべく、「自閉スペクトラム」という言葉を使用していくことにします。

スポンサーリンク

定義

2026年現在、自閉スペクトラムは「神経発達障害(neurodevelopment disorder)」の一種とみなされています。

ざっくりした説明をするなら、人間の脳や神経はさまざまな発達をみせるものですが、その中でも定型的ではない発達(非定型発達)とみなされるものがあり、さらにその非定型発達の一部を「自閉スペクトラム」と呼んでいます

残念ながら現在は「自閉スペクトラムは○○が原因だ」といった言説がインターネット上で飛び交っており、その大半は科学的根拠のないデマや陰謀論ですSnopes。あくまで自閉スペクトラムは特定の脳や神経の発達のありかたのひとつにすぎません。

自閉スペクトラムは特定の発達特性を指すわけですが、ここで少々厄介なのは、発達自体を直接的に測定できないので、観察できる行動や状態で間接的に評価するしかないということです。脳をスキャンして自閉スペクトラムを診断できないかという研究の試みはありますが、個人の臨床診療に応用できるほどの医学的コンセンサスには至っていませんSystematic Review

現在は自閉スペクトラムについて診断基準や診断ツールが存在しますがNational Autistic Society「この行動や状態があれば確実に自閉スペクトラムである」といったものはありません。また、自閉スペクトラムの当事者は「マスキング」と呼ばれる「自身の“自閉スペクトラムと認識されるような”行動や状態を人前で隠す」ことをする人も少なくなく、とくに大人は社会に馴染むためにそうした適応を常習的に行っていることがあります。

さらに、自閉スペクトラムの医学的対象範囲が幅広く捉える概念と化したことで、本当に多様な当事者が存在します。そのうえ、自閉スペクトラムはADHDなど他の神経発達障害や精神疾患と区別されるも、重複する当事者もいます(ADHDでもある人は「AuDHD」と名乗っていることがあります。※これは診断名ではない)。

こうした複雑な背景があるので、非当事者はおろか、当事者でも、自身の主観や古い知識に基づいて自閉スペクトラムに関する認識が偏ってしまうこともあります。ことさら診断基準に影響され、自閉スペクトラムの特性をネガティブなものと受け取る傾向は強いです。

いずれにせよ、自閉スペクトラムは医学の診断上のカテゴライズなので、今後、さらに変化することもありえます。一部の研究者は自閉スペクトラムを細分化する提案をしていますがUCL News、医学的コンセンサスは得られていません。

このように「科学的な定義の劇的な変移」、そして「今なお行動や状態が重視される(他者に認識されるには特定の行動や状態が欠かせない)」という自閉スペクトラムをめぐる実態は、以下に解説する表象にも深く関係しています。

自閉スペクトラムを題材にした映画やドラマ

自閉スペクトラムを題材にした、もしくは自閉スペクトラムの登場人物がでてくる映画やドラマなどの映像作品を簡単にまとめていきましょう。

20世紀前半から後半初期までは自閉スペクトラムは認知度の低い稀有な病気とみなされていたこともあり、稀にドキュメンタリーの題材になる程度でした。その中でも1971年のフランスのドキュメンタリー『Le Moindre Geste』は、自閉スペクトラムに対して当時の精神医療に基づく抑圧的治療とは異なるアプローチを映し出し、後の障害者の権利運動の先駆けとなる視点を提示する作品だったと言えます。

自閉スペクトラムを初めて扱ったアメリカの劇映画としては1969年の『Change of Habit』が挙げられ、修道女が対応する問題を抱えた子どものひとりがそれでした。

初めて自閉スペクトラムを真正面から描いた劇映画として1988年に大々的に話題となったのが“バリー・レヴィンソン”監督の『レインマン』で、第61回アカデミー賞で作品賞を受賞し、“ダスティン・ホフマン”も主演男優賞に輝きました。しかし、この映画は厳密には自閉スペクトラムを扱っておらず、自閉スペクトラム・コミュニティの間で非常に物議を醸し、今では問題作として語られています(その理由は後述)。

2009年のオーストラリアのクレイ・アニメーション映画『メアリー & マックス』は自閉スペクトラムを「治療する必要がない満ち足りた存在」として映し、非常に重要な視点を提供した一作になりました。

2010年の映画『テンプル・グランディン 自閉症とともに』は、当時、自閉スペクトラム当事者として公表して活動していた先駆者であった動物学者「テンプル・グランディン」を題材にした伝記映画です。

2000年代になると、『モーツァルトとクジラ』(2005年)、『スノーケーキを君に』(2006年)、『ハンドルネームはベンX』(2007年)、『The Black Balloon』(2008年)、『恋する宇宙』(2009年)、『マイネーム・イズ・ハーン』(2010年)、『The Story of Luke』(2012年)、『僕と世界の方程式』(2014年)、『ザ・コンサルタント』(2016年)、『500ページの夢の束』(2017年)と、自閉スペクトラムの主人公を描く映画が続々と現れます。

フランスのドラマ『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』(2019年~)や、韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)は、日本でも人気となりました。ドラマ『ザ・ピット ピッツバーグ救急医療室』(2025年~)は高い評価を受けました。

『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』ドナテロや、『ゴースト&モリー』ジューン・チェンなど、子ども向けのアニメシリーズでも、自閉スペクトラムのキャラクターが現れました。『セサミストリート』にもジュリアが登場しました。

また、インディペンデント映画を中心に、当事者が自閉スペクトラムの役を演じる作品もいくつかでてきました。映画『ザ・ライダー』(2017年)や映画『Ezra』(2023年)などのように演技経験のない当事者をオーディションで選んだものもあれば、ドラマ『Everything’s Gonna Be Okay』(2022年~)、ドラマ『ハートブレイク・ハイ』(2022年~)などのようにオープンリーな当事者俳優を起用したものもあります。2025年の『ブゴニア』はハリウッド大作では珍しく演技未経験の当事者を起用していました(描かれかた自体はステレオタイプの域を出ないけど)。

ドラマ『思うままの世界』(2022年)は、当事者俳優を複数主演で起用した自閉スペクトラムが主題の非常に意欲作なシットコムの群像劇でしたが、ワンシーズンで打ち切りに。

当事者をメインにした恋愛リアリティーショー『ラブ・オン・スペクトラム ~自閉症だけど恋したい!』はいろいろな批判からフィードバックを得て、シーズンを重ねるごとに内容は充実していきました。『リハーサル ネイサンのやりすぎ予行演習』は職業と診断の論点をユニークに取り上げています。

自閉スペクトラムの有害なステレオタイプ

映像作品で描かれる自閉スペクトラムは必ずしも当事者に歓迎されているとは言えません。誤解を招き、偏見や差別を助長する作品も残念ながら多々あります。そんな自閉スペクトラムの表象における有害なステレオタイプについて整理しましょう。

当事者を綿密に取材し、専門家の助言もコンサルタントとして取り入れ、映画を作れば、きっと優れた映画になるに違いない…。残念ながらそうはならないことを証明したのが1988年の『レインマン』です。この世間的には高評価となった映画は、一般大衆の間で自閉スペクトラムに対する認識を高めたと言われています。しかし、後に引きずり続ける極めて根深いステレオタイプを築き上げる、かなり不名誉な汚点を残しました

『レインマン』の脚本を手がけた“バリー・モロー”は当時の自閉症については何も知らなかったそうで、「アメリカ自閉症協会」の創設者にして初代会長の“ルース・C・サリバン”からアドバイスをもらい、自閉スペクトラムを題材にした『Infantile Autism: The Invisible Wall』(1968年)と『Portrait of an Autistic Young Man』(1986年)の2つのドキュメンタリー映画を参考資料にし、さらに“キム・ピーク”“ビル・サックター”という2人の「当事者」を基にしていました。

そして出来上がった映画『レインマン』の主人公は「自閉症かつサヴァン症候群」という設定になりました。「サヴァン症候群」というのは、音楽、芸術、数学、記憶力といった分野で並外れた才能を発揮する一方で、日常生活の他の面では困難を抱えるという稀な状態を指します(診断名ではないので診断基準もなく、あくまで医学界の間で使われる総称です)。

ここで問題が生じます。主人公の着想元となった“キム・ピーク”は、確かにサヴァン症候群ではあったのですが、自閉スペクトラムではなく、後に「FG症候群」という遺伝性疾患だと分析されました。また、“ビル・サックター”はもっとややこしく、「知的障害」としか診断されていなかったのですが、後に知的障害ではないと再診断で明らかになり、とくに自閉スペクトラムの診断はされませんでした。つまり、両名ともに自閉スペクトラムの当事者ではなかったわけです(もちろん未診断なだけの可能性もありますが)。

いずれの「当事者」とされる人たちも、まだ若かった当時は自閉スペクトラムの診断基準が整理されていませんでした。誤診や混乱があるのは無理ありません。彼らを責めることはできません。

しかし、結果的に『レインマン』は自閉スペクトラムに対する決定的な誤解を大々的にぶちまけてしまいました。自閉スペクトラムの当事者にはサヴァン症候群の人もいますが、「自閉スペクトラム=サヴァン症候群」ではないです。自閉スペクトラムの当事者には知的障害の人もいるでしょうが、「自閉スペクトラム=知的障害」ではないです。『レインマン』は、自閉スペクトラムを「サヴァン症候群っぽいもの」「知的障害っぽいもの」という印象を植え付けることになりました。ただでさえ、サヴァン症候群や知的障害はより視覚的にわかりやすいこともあり、そちらのイメージで上書きされやすいのでした。

こうして「自閉スペクトラムの人は、場違いな極端な言動をとり、知性の低さが滲むもある一点で突出した才能の持ち主である」という誤った型が定着しました。

このステレオタイプが極端に全開で悪名高いのがドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』(2017年~;※このドラマは2013年の韓国ドラマのアメリカ・リメイクで、2018年には日本でもリメイクされた)です。逆にこのステレオタイプを軽やかに振り切っているのが、同じ医療従事者の当事者(未診断と思われる)を描くドラマ『ザ・ピット ピッツバーグ救急医療室』であり、参考にするならぜひ『ザ・ピット』のほうを観てほしいところです。

『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』も、この「天才」系のステレオタイプに足を突っ込んでいるタイプと言えます。

こうした「天才」系のステレオタイプは、一周回ると「狂気」のステレオタイプに反転しやすく、『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年)のように社会に害のある危険性として描写されることもあります。

さらに『レインマン』の話に戻りますが、この昔の映画の罪はこれだけにとどまらず、『レインマン』が賞に輝いたことで、以降、「障害者ではない俳優が障害者を演じる」ということが定番化し、これは障害者コミュニティ全体から激しい批判を浴びる業界の慣習の始まりとなってしまいました(知的障害を描く2001年の『アイ・アム・サム』で悪い意味で極まるところまで到達したと言えるでしょう)。

自閉スペクトラムのもうひとつのよくあるステレオタイプは、1998年の『マーキュリー・ライジング』で観察できます。この映画では、自閉スペクトラムの子どもが登場し、作中では類まれな才能で誰も解けないはずの難解な暗号を解読してしまうという出番です。この自閉スペクトラムの子どものキャラクターは「物語を進行させるための便利な仕掛けや演出」として機能しているだけです。

自閉スペクトラムの子どもが仕掛け(小道具)や演出(感動要素)としての便利キャラという扱いでしかない作品は、『ザ・プレデター』(2018年)、『ライフ・ウィズ・ミュージック』(2021年)、『不屈の少年/アンブレイカブルボーイ』(2025年)など、たびたびみられます。

このようにステレオタイプな作品では、自閉スペクトラム自体が利己的であったり、感情がない人物の背景、もしくは幼稚化されたり、哀れみの対象として扱われやすいです。つまり、非人間的なキャラクターです。

これらは自閉スペクトラムを「欠点」として映しており、それは「治療」という別の深刻な偏見に繋がることになります。

「自閉スペクトラムの治療」は当事者コミュニティでも極めて論争になるトピックです。「自閉スペクトラムを根本的に治療(完治)する」という触れ込みは、「矯正」を連想し、優生思想の考えかたであるとして批判されやすいです。なので現在の医学界では「自閉スペクトラム当事者の生活の困難を低減するための医療ケア」という立場がとられることが多いです。しかし、当事者団体の中には治療を支持するところもあり、これは当事者間で激しい対立を生じさせやすいです(例:Autism Speaks)。

なので作品内で自閉スペクトラムの治療を示唆するような描写は、当事者コミュニティからかなり厳しい非難の対象になることがあります。1969年の『Change of Habit』はまさにそのパターンで、今では疑似科学とされる方法で自閉スペクトラムの子どもを治療しようとする展開があります。

自閉スペクトラムに限らず、「障害を克服する」というナラティブは世間一般が好みやすい物語の型であり、障害者表象全般の問題点です。

自閉スペクトラムと解釈されるキャラクターたち

上記では「自閉スペクトラムを描くと明示した作品」の表象が問題視されてきたことを紹介してきました。一方で、当事者は「自閉スペクトラムを描くと明示していない作品」から「このキャラクターは自閉スペクトラムみたいだな」と解釈して読み取ることを楽しむことがあり、こちらのほうがむしろ好意的に受け止められていることも多々あります。

このように「自閉スペクトラムと作品の公式設定上は明示されていないが、自閉スペクトラムと解釈されるキャラクター」「Autism-coded characters」(自閉スペクトラム・コーデッド・キャラクター)と呼びます。

その事例をほんの一部ですが挙げていきましょう。

どのキャラクターを「Autism-coded characters」とみなすかは当事者の間でも個人で異なります。ある当事者はこのキャラクターに共感しても、別の当事者は共感しないこともあります。正解も不正解もありません。ここで紹介するキャラクターはあくまで一部の当事者の意見をピックアップしているだけです。

大雑把に語るなら、特定の強い趣味や関心を持つ(過集中;hyperfixation)」「過剰刺激(overstimulation)への反応から社交性に欠けて対人関係に苦労している or 反復的行動(stimming)をとるといった特徴が、自閉スペクトラムのコードとみなされやすく、いずれも劣った存在として描かれていないことが前提です。また、「当事者の人が他の当事者の人に会うことによって、これまでにない関係性の可能性に気づける」というリレーションシップも注目されやすいです。

『ゾディアック』(2007年)のロバート・グレイスミスは、暗号好きでそれが物語の推進力になりますが、決してそれありきでは終わらず、さまざまな面が描かれます。実写映画だと、『ファンタスティック・ビースト』シリーズ(2016年~)のニュート・スキャマンダー『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』(2025年)のリード・リチャーズMovieWeb; ※コミックでは自閉スペクトラムだと明示されて描写されたこともある)、『スパイダーマン ブランド・ニュー・デイ』(2026年)のピーター・パーカーAutism Spectrum News; ※演じる“トム・ホランド”はADHDであると公表している)などがあります。

アニメーション映画では、『リトル・マーメイド』(1989年)のアリエルは、興味関心への過集中がポジティブに描かれる好例です。同じディズニー&ピクサーだと、『美女と野獣』(1991年)のベル『アトランティス 失われた帝国』(2001年)のマイロ『リロ・アンド・スティッチ』(2002年)のリロ『トイ・ストーリー』シリーズのボニーThe Conversationなどが支持されています。

海外のアニメシリーズでは、『アバター伝説の少年アン』ズーコ『スティーブン・ユニバース』ペリドット『アウルハウス』ルース(ADHDの公式設定)などがあります。『ふしぎの国 アンフィビア』マーシーは、当初は解釈されるだけでしたが、後に公式設定になりました。

日本のアニメも豊富です。

『薬屋のひとりごと』(2023年~)の猫猫は、『リトル・マーメイド』のアリエルと同じで興味関心への過集中がポジティブに描かれます。『SPY×FAMILY』ヨルは、空気を読めない対人関係の異質さがありながらそれを欠点にしない描きかたが好感を持たれています。『コードギアス 反逆のルルーシュ』C.C.は、ピザが大好物でこれは実際はスポンサーという商業的理由だからなのですが、それを「safe foods」(味、食感、ブランド、調理法が常に同じなので、予測可能で安心感があり、自閉スペクトラム当事者にとって脅威を感じず食べやすい食べ物)と解釈している人もおり、興味深いです。ゲームを基にしたアニメ『STEINS;GATE』(2011年)の岡部倫太郎は前述した『グッド・ドクター』のステレオタイプを回避していると分析されることもあります。

他にも、『涼宮ハルヒの憂鬱』涼宮ハルヒ『AIR』神尾観鈴『モブサイコ100』影山茂夫『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとり『古見さんは、コミュ症です。』古見硝子など、いくらでもまだまだあります。

アニメだと「コミュ障」や「変人」、「天然」、「可愛げのある性質」の要素だと一般的に思われるようなキャラクターの側面も、自閉スペクトラムのレンズを通すと違ったものに映ります。非当事者には新鮮な視点ではないでしょうか。

「いや、このキャラは自閉スペクトラムじゃない。だってこのキャラのこの言動や特性にはこういう真相があると後に明かされるし…」と反論してくる人もいますが、そんなことは「autism coding」を楽しんでいる当事者はじゅうぶん承知しています。それを踏まえ、あえて楽しんでいます。何よりもその自分で「見つける・出会える」という楽しさが多くの当事者を夢中にさせるのだと思います。「これが自閉スペクトラムのキャラクターだ」と製作者に押し付けられるより(そして頻繁に偏見の混じった描写だったりもする)、自分が共感できるキャラを能動的に見つけることのほうが、よっほど当事者には楽しいプロセスなのでしょう。これは私も日々実感するところです。

そして非当事者にとっても、当事者がどんなふうに「autism coding」を楽しんでいるかを知ることで、自閉スペクトラムの理解を深めることもできるはずです。古い医学的知見が掲載されている可能性もある小難しい専門書を読んだり、当事者を取材して質問攻めにするよりも、それは奥深い気づきをもたらすかもしれません。


表象に関する特集記事の一覧です。

・日本の漫画・アニメのLGBTQキャラクターのリスト

・日本のゲームのLGBTQキャラクターのリスト

 

雑談
気に入ったらぜひシェアをお願いします
スポンサーリンク
シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

シネマンドレイクをフォローする