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シネマンドレイクが選ぶ「2024年 映画&ドラマシリーズ ベスト10」…絶望に屈しない

シネマンドレイク2024年映画&ドラマベスト10

「2024年」の感想

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健康を最優先にする趣味人生

2024年も終わり。

今年も映画をいろいろ観ました。作品を鑑賞することがとりあえずの私の生存表明です。

ということで、私、シネマンドレイクが選んだ2024年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2024年に劇場公開された or 配信スルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です(一部で日本では2025年公開の作品も含まれます)。

さらにドラマシリーズのベスト10も発表しています。

ついでに独自の部門別でも選びました。

私が2023年頃から体調不良のために映画鑑賞の本数は抑えぎみで、2024年も健康第一で行動するように心がけていました。なので観ている作品数はこれまでで一番少なめです。

きっと私の脳内ではヨロコビもカナシミも休養中のはず…。

今回はそんな私の2024年のベスト10です。

ちなみに過去の年の「映画ベスト10」は以下のページで確認できます。

また、「2024年のLGBTQ映画&ドラマを振り返る」という記事も作っています。そちらも興味があれば読んでみてください。

映画 ベスト10

映画のベスト10です。10位から1位の順で発表しています。

10位『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

日本では2025年に一般劇場公開ですが、私はもう観たので、この映画を選出しました。もう来年の2025年は今まで以上にまたこの人物の顔を見ることになるので、映画でも観るのは気分が盛り下がるのですが、本作はこの人物ありきの作品ではなく、「成功」というものの有毒さが徹底して批評されているのが良かったです。成功を追い求めるのはよくないな…と自分事として思いました。偉大にならなくていい、成功しなくていい…そんな2025年にしたいです。

9位『ドリーム・シナリオ』

承認欲求の渇望に溺れる中高年男性のマスキュリニティから、バズることが全ての大衆文化の移ろいやすさ、はたまた金儲けのためなら何でもありの商業主義の浅はかさまで、風刺の射程が夢の世界のように無限大に広がっていた『ドリーム・シナリオ』。極右の人たちから「キャンセルカルチャーの可哀想な被害者」として持て囃されるのだけは避けたいところ。それはオッサンの選択ルートとしてはバッド・エンディング。この映画はオッサンを信じる作品です。

8位『HOW TO HAVE SEX』

「あれは性暴力じゃない、同意があった」と主張すればまかりとおってしまう性的加害。2024年も無数の被害が黙殺されました。映画などの表象にも責任があると思います。「暴力的で、屈辱的で、激しい」というステレオタイプな性暴力ばかりが描かれやすいです。この映画『HOW TO HAVE SEX』は、そうした偏見に懸命に抗い、ひたすらに日常のリアルの中で起きうる性的加害を被害者の目線で捉えた実直な作品でした。あのラストを大切にしたいです。

7位『HOW TO BLOW UP』

人は目先のことは気にしますが、大局的な未来のことは目を逸らします。全員の将来に関わることであっても…。『HOW TO BLOW UP』の作中で、党派や信仰、人種、性別などのイデオロギーやアイデンティティを越えて、結果的に行動を共にしているのはまるで理想的な連帯にも思えますが、その心は平穏ではいられない。なぜなら確実に死に向かっているのだから…。ここまで環境正義の重みを描けた映画は他にありませんでした。

6位『ジョイランド わたしの願い』

パキスタン社会のジェンダー構造を細部まで精密に分析して物語として巧みに表現されていたこの『ジョイランド わたしの願い』。映画の舞台はパキスタンだけども「日本と同じところが多すぎる…」と思ってしまったのが、偶然ではないわけで…。保守的な社会に苦しんでいる者同士なのに、手を取り合えないもどかしさ。孤立に追い込まれる無力さ。パキスタンも日本も規範の外に飛び出したい人が自由に生きられる世界に早くなってほしいです。

5位『関心領域』

『関心領域』は2023年の話題作ですが、やっぱり外せなかった…。“関心がない”ことと、“関係がない”ことは、別物であるという事実。それをこんなにも明確に表したこの映画を観ても、まだ私たちは愚かなままです。自分が今どのゾーンにいるのか自覚し、別のゾーンで起きていることを想像できるか。これは最近は本当に日々問われます。問われすぎて疲れてしまうこともあるし、ときには休んでもいいと思いますけど、根本的に常時無関心でいれば、それは加担しているのと同じこと。

4位『人間の境界』

2024年の世界的な特大ヒット作『モアナと伝説の海2』は「他所からの他者は繁栄に欠かせない」という姿勢でその価値を素直に描いていましたが、残念ながら現実は残酷です。最も他者とみなされやすい「移民・難民」は非人間化の対象となり、都合よく政治的扇動の道具にされています。その実情をあまりにも生々しく、そして誠実に描いたこの『人間の境界』を直視して、次にどうするか。魔法も神の力も持たない私たち人間は試されています。

3位『マイ・オールド・アス 2人のワタシ』

タイトルからしてあからさまにバカっぽいのに(実際マヌケですが)、絶望しかけていた私の心をスっとケアしてくれた映画になるとは…。今の自分が立っている先に不吉な世界が待っていたとしても、今の自分をケアし、未来の自分もケアし、無理をしない範囲で活力を溜めていこう。そう思い直すことができました。これからの時代はこういう『マイ・オールド・アス 2人のワタシ』みたいな映画が本当に自分の生命線になる気がする…。

2位『ミツバチと私』

「トランスジェンダーって流行っているだけで、子どもは洗脳されているんでしょ?」なんて陰謀論が蔓延するこの世の中。この映画で描かれる小さな目から見た世界への疑問にもっと向き合ってほしい…。完璧な人物でなくてもいい。ただその名を呼んでくれるだけで、ただ誰も命を奪われないというだけでいい。SNSを我が物顔で支配して憎悪をばらまくような非道な奴にさえならなければ、それでひとまずはじゅうぶん。高すぎる望みではないと思いますが…。

1位『ファンシー・ダンス』

“リリー・グラッドストーン”に賞を100個くらいあげてくれ!と思わずにはいられない名作でした。アメリカ先住民の置かれた厳しい現実からは目を逸らさず、それでいて先住民当事者の確かな絆と文化の価値に主眼を置いて、なおかつクィアの交差点も忘れずに…。日本も先住民虐殺の歴史を”楽しく”軽視してしまうミュージックビデオを作っちゃうくらいの歴史認識の疎さがあるわけですから、こういう映画を観て学んでいきましょう。楽しく踊るのはその後です。

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総評&ベスト10に惜しくもリストできなかった映画

あらためて私の2024年映画BEST10は以下のとおりです。

1位『ファンシー・ダンス』
2位『ミツバチと私』
3位『マイ・オールド・アス 2人のワタシ』
4位『人間の境界』
5位『関心領域』
6位『ジョイランド わたしの願い』
7位『HOW TO BLOW UP』
8位『HOW TO HAVE SEX』
9位『ドリーム・シナリオ』
10位『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

あれこれ考え抜いた結果のベスト10でした。

当然、惜しくも入れられなかった映画も2024年もいっぱいあります。

『チャレンジャーズ』『映画検閲』『アウト・オブ・ダークネス 見えない影』なども良かったな…。

ドラマシリーズ ベスト10

ドラマシリーズのベスト10です。10位から1位の順で発表しています。

10位『THE PENGUIN ザ・ペンギン』

2024年の某ピエロ映画の続編が、大衆の期待を裏切ってやるというポーズだけみせつつ、しっかり同情されたいという欲求に固執していて、うんざりしたというのもあって…。対するこのドラマのヴィランの描き方は清々しくて気持ちよかったです。真に危険な男というのは同情を巧みに利用して支持者を集めるもの。同情したら終わり。味方だと思ったら命はない。「あの人、本当は世間にハメられただけで、実は良い人なんだって」なんて戯言に騙されないで…。

9位『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(S2)』

2024年の「頑張ったシーズン2」はこのドラマ。話題作のスピンオフ作品は往々にしてオリジナルの二番煎じになりかねないという自身の足枷に苦しむことになるのですが、本作はシーズン2でより高みへと上り詰めようという覚悟を感じました。“エマ・ダーシー”と“ソノヤ・ミズノ”の俳優2人にはベスト・キス賞を贈りたい。この世界は女性をリーダーにするくらいなら滅ぶ道を選ぶ…そんな展開も現実と重なりすぎていましたし…。

8位『フォールアウト』

この『フォールアウト』は2024年の私のお気に入りのコメディ枠。やっぱり今はポストアポカリプスのジャンルもこれくらいバカっぽくてもいいですね。でも描いている社会風刺は真面目に怒りに満ちています。「世界の終わりは稼げる!」なんてビジネス至上主義のアホたちは、私たちの現実社会にもアイツとかパっと思い浮かびますけど、本当にそうですよ。世界が滅茶苦茶になればなるほど儲かる奴がこの世にはいるのです。

7位『KAOS/カオス』

有害な職場を作り出して職員を自死に追い込んだり、戒厳令をだしたり、権力の座についた途端に尻込みしたり、復讐を掲げて脅しながら大衆を扇動したり…2024年もろくでもない権力者ばかりでした。大衆に崇められることにしか関心がなく、骨の髄まで家父長制が染み込んでいる。どうしようもなく恥知らずな愚か。そんな相手がたとえ神きどりであろうとも、私たちは戦いを挑んでいい…そうこのドラマは教えてくれました。さあ、準備の時間です。

6位『ザ・ボーイズ(S4)』

そうなってほしくはなかったのですけど、でもそうなってしまったので…。このドラマほどこの2024年のアメリカの政治の終末を先取りして予言してしまった作品はないでしょう。本作は過激な風刺ですが、もうこのドラマの過激さは「あくまでフィクションだから」と楽観的に見れなくなりました。なにせ現実を観れば、このドラマから飛び出してきたのかと思うぐらいの狂ってしまった社会が広がっているのです。現実がフィクションを上回ったとき、それは最後の危険信号です。

5位『踊る!ワック・ガールズ』

2024年の最も楽しかったシスターフッドはこのインドのエネルギッシュな若い女性たちです。ダンス・パフォーマンスも最高にカッコいいし、それが世の中に対する怒りとしてぶちかまされるのもテンションが上がります。また、何かと夢の到達点とされがちなエンターテインメントの巨大産業をしっかり批判するのも大事なところ。家父長的で保守的なのは家庭や学校だけでないのです。私たちの居場所になる文化を育んでいきたいですね。

4位『私のトナカイちゃん』

何かとセンセーショナルさだけで突っ走りがちな実話犯罪モノ。でもこのドラマはエンターテインメントの無意味さを風刺しながらどこか冷静さを保っていたと思います。作品自体は良かったのですが、大衆メディアのリテラシーは残念極まりなく、あれほど作中でゴシップとして盛り上がっても被害者のためにも加害者のためにもならないと釘を刺していたのに、案の定、そこばかり煽るだけの世間…。ほんと、救いようのない社会だ…。

3位『インテリア・チャイナタウン』

2024年の「アジア系を舐めるなよ」と言ってくれた代弁者はこちら。メタなストーリー構造を巧みに展開し、アジア系の人種的アイデンティティの内面化された劣等感と向き合い、不可視化されてきた存在のモデル・マイノリティの神話を見事に看破。話運びが面白いので毎エピソードでワクワクさせてくれました。諸悪の根源は…メディア大企業ですよね?とちゃんと名指ししてくれたのも良かったです。自分のことだってわかってるのかな、あの会社…。

2位『Pachinko パチンコ(S2)』

シーズン1も圧倒的でしたが、シーズン2も圧倒されっぱなしでした。「日本」の歴史とされてきた決定的な出来事の中に確かに存在した在日コリアンの姿。「同化」という現象が当事者の尊厳をどう失わせて成り立っているのか。在日朝鮮人と日本人の融和の希望(もしくはその幻想)のようなものが、あちこちでパチっと芽生え、また離れていく…。エモーショナルな名演の連続を堪能しながら、何かが削られる鑑賞体験となりました。

1位『HEARTSTOPPER ハートストッパー(S3)』

シーズン3を終えた『HEARTSTOPPER ハートストッパー』を鑑賞して確信しました。私の中では青春作品として人生ベスト級ですね。あんまり「人生ベスト」なんて言葉は使わないのだけど、この作品には使うしかない…。本作に10代の頃に出会ってたら人生が変わっていただろうな…と思ってしまう。いや、そんなことを言ったら10代の自分に怒られそうではある…。でもそう思ってしまうのです。真っ暗な長いトンネルの中をひたすら独りで歩いているような人生だった私のあの時期。この光は後ろの人が使ってくれれば…。

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総評&ベスト10に惜しくもリストできなかったドラマシリーズ

あらためて私の2024年ドラマシリーズBEST10は以下のとおりです。

1位『HEARTSTOPPER ハートストッパー(S3)』
2位『Pachinko パチンコ(S2)』
3位『インテリア・チャイナタウン』
4位『私のトナカイちゃん』
5位『踊る!ワック・ガールズ』
6位『ザ・ボーイズ(S4)』
7位『KAOS/カオス』
8位『フォールアウト』
9位『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(S2)』
10位『THE PENGUIN ザ・ペンギン』

こちらもあれこれ考え抜いた結果のベスト10でした。

『ドクター・フー(15代目ドクター)』など、惜しくも入れられなかった作品もあります。『SHOGUN 将軍』は誰がどう見ても2024年の最大の話題作でチヤホヤされているので、私のランキングには入れませんでした(良かったですけどね)。

アニメシリーズ ベスト1

アニメーション・シリーズはまだまだ多くを観ていないのでベスト1だけを選出します。日本・海外どちらも含む作品が対象です。あくまでシリーズものだけを対象とし、単発の映画は対象にしていません。

1位『響け!ユーフォニアム』

表向きのジャンルは「音楽×部活」の吹奏楽部モノというミニマムな作品ですが、あらゆる青春学園モノの中でも群を抜いて傑出した完成度の一作でした。「勝つか負けるか」ではない、「いかにケアし、”納得”するか」というかたちで実力主義を丁寧に解きほぐしていたのも印象的。これほどのクオリティでシリーズをやりきった京都アニメーションに拍手です。今後同様のジャンルを観る際も常にマイルストーンになる作品になったでしょうね。

次点は『アーケイン』(シーズン2)かな。『アーケイン』も最高オブ最高でしたけど、2021年の「アニメシリーズ ベスト1」に選出しているので今回は席を譲りました。

独自部門の個別賞

ベストランキングの次は、俳優や監督のベスト…と言いたいところですが、そんなものはやり尽くされていて面白くない。そこで以下の独自な部門を勝手に設置して、自己満足で作品を選びました。作品の対象は映画・ドラマシリーズ・アニメなど全てを範囲として含みます。

ベスト・ドキュメンタリー賞
…通常の作品とは評価基準が異なってくるドキュメンタリー作品から年間ベストをひとつ(もしくは複数)。
ベスト・エンターテインメント賞
…自分の中でその年を象徴するエンタメ満載な作品をひとつ。
ベスト・ミュージック賞
…音楽や楽曲が優れていて作品自体にマッチしていた作品をひとつ。
ベスト・アニマル賞
…個人的に「動物」が好きなので、作品に登場した動物の中からピックアップ。
メモリアル賞
…ベストに入れられなかったけど、ベスト以上に心に強く残った作品に贈ります。
忘れてない?賞
…日本でビデオスルーもしくは公開規模わずかになってしまった良作映画に贈る、個人的イチオシ。
ベスト・Ace/Aro賞
…私がアセクシュアル&アロマンティックということで、その好みに合う作品orキャラに。
ベスト・ノンバイナリー賞
…私がノンバイナリーということで、その好みに合う作品orキャラに。
ベスト・アライ賞
…いろいろなマイノリティを支えてくれる献身的な作品orキャラに。

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ベスト・ドキュメンタリー賞

『ウィル&ハーパー』

マジョリティ側にいた自分の加害的な特権を自覚することは確かにツラいです。一部の人の中には「多様性の押し付け」だとか「過剰に責められている」だとか「生きづらくしている」と受け取る人もいます。でも今作のウィル・フェレルはそう考えていませんでした。これは新しい自分の出発点。世界が広がるということ。そしてどこかで傷ついている友人に救いの手を差し伸べることができる。ベスト・アライ賞でも良いくらいに、アライの中高年男性のロールモデルがそこにありました。

次点は、日本でもひっそり配信されたインターセックスのドキュメンタリー映画『エブリボディ』かな。

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ベスト・エンターテインメント賞

『アメリカン・フィクション』

なんかこの映画を一部の右派の人は「アンチwoke(ポリコレ)の作品だ」と褒めたたえているらしいですけど、しっかり原作者の人が「は? 何言ってるんだ、お前?」と釘を刺していましたね。でもこういう皮肉すらも意図を理解できなくなるというのは怖いものです。あまりにも世間はご都合的なレトリックに流されすぎです。本作をベスト・エンターテイメント賞に私が選んだのも皮肉に答えるためだというのは、説明しなくてもわかってくれますよね?

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ベスト・ミュージック賞

『ロボット・ドリームズ』

2024年もいろんな映画で音楽に合わせて踊る奴らがいました。赤と黄色の凸凹コンビとか、道化の男女とか…。私にとっては日本では2024年に劇場公開されたこの映画の2人が一番好きです。「September」はすでに過去にも多くの映画で使われてきましたが、他者と交流するのが苦手な人や上手くいかない人を応援してくれるこの作品であえて流れるのがまた良かったです。ひとりで踊っていても、どこかで別の誰かも踊っているかもしれないですしね。

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ベスト・アニマル賞

『動物界』

生物多様性をニューロダイバーシティなど人間社会のさまざまな多様性に重ねながら、異質な他者を恐れ、非人間化する構造を描く。動物映画としてはそれほど珍しくないアプローチですが、本作は文句なしに全体の見せ方が巧みでした。多様性を行き過ぎたイデオロギーだなんだと見下さず、あるがままに見つめ直すことができれば、きっとその先には自分の予想していなかった居場所があるかもしれない。そう願ってもいいじゃないですか。

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メモリアル賞

『野生の島のロズ』

日本では2025年に公開ですが、私はひと足先に観る機会があったので…。この映画は私の大好物が詰まっており、これを好きにならないはずはないというドンピシャの作品でした。ロボットでも動物でも自己のアイデンティティを認識し、他者のアイデンティティを理解することで、初めて何かの成長が得られ、あり得なかったことが実現できる。アイデンティティを冷笑する空気が蔓延る今の世の中だからこそ、この物語を大切にしたいです。

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忘れてない?賞

『陪審員2番』

2024年はそんなに配信スルーになった映画を観れていないのですが、自分の中で忘れたなくない地味な1作はこれかな。“クリント・イーストウッド”監督作さえも劇場公開されない時代だというのも世も末ですが、でもこの年にふさわしい映画を届けてくれました。社会のシステムが機能しないこと…それはどうしても起きる。けれどもだからといって「正しさ」そのものの価値が失われたわけではない。「正しさから逃げるなよ」という巨匠からの忠告でした。

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ベスト・Ace/Aro賞

『HEARTSTOPPER ハートストッパー(S3)』

2024年のアセクシュアル・アロマンティック表象のベストはやはりこのドラマ。というか、これまでの映像作品におけるAセクAロマ表象の中でもダントツの1位です。過度にトラウマを強調することもなく、疎外感を深めることもなく、当たり前に肯定される。それがティーン青春学園ドラマという王道のジャンルの中で普通に描かれる時代。そんなマイルストーンになった作品だと思います。ここが出発点。私たちはもっと「私たち」を描いてほしい!

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ベスト・ノンバイナリー賞

『モンキーマン』

ノンバイナリーというと英語圏っぽい響きの言葉になってしまいますが、この概念自体はむしろ非欧米的で伝統文化に紐づいています。この映画は思い出させてくれました。大勢のマイノリティ同士が力を合わせることで実現できる現実の勝利の方程式。世界各地のこうした固有の歴史的文化を持って存在している性別二元論に当てはまらないジェンダー・ダイバースな人々が結集して大暴れして戦いまくる映画がいつか観たいなぁ…。

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ベスト・アライ賞

『JOY 奇跡が生まれたとき』

2025年以降は「生殖に関する健康と権利」がますます脅かされることが決定しているようなものですが、というわけで、生殖医療というものが“出産に関わる身体を持つ”全ての当事者に寄り添うものであるという「生殖の正義」の出発点を振り返るこの映画『JOY 奇跡が生まれたとき』をピックアップすることにしました。世間がどうああだこうだと騒ぎ立てようとも静かに寄り添うべき相手に寄り添い続ける(アライである)。それが医療のあるべき姿です。


以上です。

映画などの作品を観ることは私にとっては趣味であり、健康であり、政治的抵抗です。それだけでもいいんです。2025年も私は無理をしない範囲で、自分なりにできることを細々と頑張っていこうと思います。

2025年もたくさんの心震わす映画&ドラマに出会えますように。