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シネマンドレイクが選ぶ「2021年 映画&ドラマシリーズ ベスト10」…リニューアルだ!

2021年ベスト10

「2021年」の感想

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コロナからの復活、そしてリニューアル!

2021年も終わり。

今年も映画もあれやこれやとたくさん観ました。もうマスクをつけて映画鑑賞するのもすっかり慣れましたよ。こうなってくるとマスクをつけずに外に出ることに違和感を感じる身体になっている気がする…。

まあ、マスクがあっても映画体験にそこまで支障がないのは幸いでしたね。

ということで、私、シネマンドレイクが選んだ2021年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2021年に劇場公開された or DVDスルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です。

さらにドラマシリーズのベスト10も発表しています。

ついでに独自の部門別でも選びました。

2021年は海外のコロナ禍によるロックダウンが解除されたことで海外映画の公開がついに始まり、やっといつもの劇場の雰囲気が戻ってきました。私が2021年に鑑賞した新作映画の本数は配信も含めると350は超えると思いますが、正確には数えていません。ノー・タイム・トゥ・ダイ。死ぬ時間があるなら映画を観ることに費やすのです。

2021年3月にはこの「シネマンドレイク」のサイトもリニューアルしたことで映画の感想が書きやすくなり、アクセスしてくれた方も読みやすくなったと思います(以前はLivedoorブログの仕様のせいで勝手に広告が表示されたり、余計なパーツが挿入されたりで、サイトが重かったので)。独自の記事を書くことも積極的にできるようになりました。

ちなみに過去の年の「映画ベスト10」は以下のページで確認できます。

映画 ベスト10

映画のベスト10です。10位から1位の順で発表しています。

10位『ロスト・ドーター』

2021年12月31日にNetflixで配信された映画なのですが、今年最後に滑り込みで素晴らしい傑作を用意してくるんだから困ります。上手いのはもちろん知っていたけど、案の定、オリヴィア・コールマンの演技に感嘆…。母親という役割を背負ってしまった全ての女性が声に出せずに飲み込んでしまった苦しみ。その筆舌に尽くしがたい感情がこの1本の映画に凝縮されていて、観ている間、こっちはなんて声をかけたらいいやら(いや、別に映画に声をかける必要はないんだけど)。母親が不必要に責任を負わされてしまう(作り手もそのバイアスに無自覚な)映画を何度も目にすることが今年もあって、腑に落ちない気持ちでいたのですが、その心の淀みを洗い流すような映画でした。『ロスト・ドーター』が監督デビュー作になるマギー・ギレンホールも見事すぎて拍手も忘れます。

9位『アナザーラウンド』

私はマッツ・ミケルセンが好きだけど、自分の好きな俳優の映画をベスト10に加えるのが単純すぎかなと思ってやめようと思ったのに…気づいたら入れていた。抗えない、マッツ・ミケルセンの魅力…。『アナザーラウンド』はホモ・ソーシャルの自滅的な体質を見事に活写しており、そうした男社会のプライドがある種のアカデミックな大義名分で成り立っているあたりも身に覚えのある光景。日本にもいましたよね、研究業界に属しながら女性差別の話題でニヤニヤと絆を深める男たち…。本作はその構造の問題性を突きつけているのですが、観客によっては「ちょっとくらいのアルコールはやはり人生には必要なんだ」という楽観的解釈としても受け止められる。まさしくその楽観主義こそ「酔い」の怖さでもあるのですけど、自分が死ぬ直前にならないと、それはわからないものです…。

8位『Rocks ロックス』

2021年も劇場未公開ながらも傑作な映画がいっぱいありました。『Rocks ロックス』もそのひとつ。絶対に劇場公開していたらロングランでヒットし続けたと思うのだけどなぁ…。ケン・ローチ監督や是枝裕和監督のような社会の下層で生きる人たちの姿をリアルな目線で捉えるドラマながら、そこに『未来を花束にして』のサラ・ガヴロンらしいフェミニズムやシスターフッドを捉える確かな手腕が加わって、まさしくこの時代を最前線で生きる少女たちの物語としての完成度が素晴らしいです。シスターフッドの尊さを単に鑑賞物として設置して消費的に眺めさせるだけでなく、その先の公共の大切さも同時に描いているのも良かったポイントでした。シスターフッドという言葉は日本の映画界でもジャンルを表す用語として定着しつつありますけど、しっかり社会に接続した意味まで考えたいですね。

7位『スラローム 少女の凍てつく心』

性暴力を描いた作品というのあまりにむやみに他人に勧めづらいです。それが直接的な描写を含むならなおさら。もしかしたらその相手はサバイバーかもしれないわけですから。でもこの『スラローム 少女の凍てつく心』はどうしてもベスト10に挙げておきたかったです。とくに2021年は。なぜなら2021年に東京オリンピックが開催されたからです。1年延期しつつもそれでもコロナ禍の中で「スポーツで感動を!」という浮かれた言葉を政府もマスコミも声を揃えて発したこの1年。その男性主体的なスポーツ・イベントが全てを犠牲にしてまで開催強行されたこの1年。無観客の会場で獲ったメダルの数をカウントして速報しているだけのお祭り騒ぎとなったあの夏。私たちはこの映画で描かれる事実をあらためて心に刻まないといけないのだと思います。

6位『17歳の瞳に映る世界』

日本で経口中絶薬がついに承認申請! でも価格は10万円…。これは2021年の出来事です。1980年代くらいの話ではない。そんな現状に頭が真っ暗になるのですが、世間を見渡せばいわゆるプロライフ的な中絶に懐疑的・批判的な声は本当に多くて…。そんなことを実感するとこの『17歳の瞳に映る世界』で描かれている世界は日本よりはまだマシなのかもしれないですけど、当事者の孤独な苦しみは計り知れないもの。本作の原題の「Never Rarely Sometimes Always」が本当に秀逸なタイトルだと思いました。まさに社会と当事者の認識の差異というものを、これほど皮肉にも表すものはないです。「妊娠可能な体を持った人」が晒される恐怖、圧迫、苦悩が少しでも映画という媒体で可視化され、社会の認識の変化を促していくといいのですが、それは「“妊娠させる”ことのできる体を持った人」しだいです。

5位『Swallow スワロウ』

私のこの『Swallow スワロウ』の評価のしかたはちょっと他の人と違うかもしれないです。私の中ではこの映画はトランス・ナラティブな解釈ができる一作として映っているので、『マトリックス』に連なるトランスジェンダー・メタファーな作品です。でもそういう視点でどんどん解釈しちゃっていいのだと最近は思っています。昔は私も映画をクィアな視点で感想を書いていくことに躊躇していたのですが、今はもう自由に飲み込んで吐き出しまくることにしたのです。そう、この映画の主人公みたいに。画鋲を飲み込んで排泄することで充実感を獲得するこの主人公は、世間の押し付けるジェンダーに抗っている。これもその人なりの戦い方なのかもしれないですね。クィアな人生史を持つカーロ・ミラベラ=デイヴィス監督の今後のキャリアも気になってきます。

4位『システム・クラッシャー 家に帰りたい』

私は映画のベスト10には毎回1作は幼い子どもを主題にした作品を選出しているのですが、この『システム・クラッシャー 家に帰りたい』は強烈も強烈。全く手が付けられないひとりの子どもと、その子に翻弄されまくる大人たち。この映画は「子どもvs大人」という構図ながら、システムの敗北というものを徹底的に見せられ続ける映画でもあり、システムが完璧ではないというのは大人ならある程度はわかっていることなのだけど、それがこの子には許せないことだという現実もあって…。とにかく観ていて、自分の無力さ、救いようのなさに心がギュウと締めあげられる気分になってきます。包括的な社会を作りましょうと口で言うのは簡単だけど、その実際の難しさを突きつける貴重な一作でした。

3位『ブロックアイランド海峡』

これも完全に私の趣味枠。私はやっぱり自分が動物学や生態学をかじった人間ということもあって、どことなくエコロジカルな視点を持つ作品が好きになってくるのですけど、2021年は『DUNE デューン 砂の惑星』などエコロジー系の映画も豊作。その中でもこの『ブロックアイランド海峡』は人間という存在を俯瞰的に捉える最後のオチが良くて…。ネタバレはできないですが、このジャンル自体は腐るほどあるのですが、どうしても人間に都合のいいエンタメとしての調整が入ってしまう中、本作は徹底して人間を突き放す。私としては“大いなる存在”は人間の善悪とかコレクトネスといったものが及ばない、別世界・別次元であってほしいという信仰心があるのですが、それに合致するテイストになっているのも良かったです。

2位『ドント・ルック・アップ』

このコロナ禍の中でずっと私も感じていた(その前からずっと感じてはいたのだけど)モヤモヤを全部言い切ってくれたので、『ドント・ルック・アップ』には「ありがとう」と言わないといけない…。アダム・マッケイ監督の「反人類映画」は今の時代にこそ重要。あらためて繰り返しておきますね。お願いだから専門家の言うことを聞いてください。専門家の人は地味でどんくさくて人付き合いも悪い無愛想な奴かもしれませんが、少なくとも専門家の警告は本気にしてください。ネット論者やタレントの言うことばかりを拡散して真に受けないでください。そういう非専門家の人はウケがいいだけで検証もなければ責任もない、中身は全くのデタラメです。私もレオナルド・ディカプリオと一緒にブチ切れて、家に引き篭もりたい…。

1位『ライトハウス』

2021年のベスト1位は2020年に続いてまたもオカルト色の濃いこの映画。ロバート・エガース監督の作風はクセが強すぎるので人を選びますが、『ライトハウス』はさらにそのクセが尖りまくっている。ラヴクラフトのクトゥルフ的エッセンスを混ぜあわせつつ、孤独とパラノイアのゴシックホラーとしてこれ以上のない濃度で圧縮した、闇の魔術みたいな映画です。とくに男らしさのメンタルヘルスをやろうとして最悪の結末になってしまいましたみたいな酷さがもう…。男らしさは動物と触れ合うことで解消しやすいんじゃないかなんて私も以前に言いましたけど、本作は無慈悲なカモメ虐待ですからね…。抑圧された同性愛の葛藤とも解釈できるホモセクシュアルな作品でもあるので、私としてはクィアな一作かなとも。とにかくカモメには私から謝っておこうと思います。

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総評&ベスト10に惜しくもリストできなかった映画

あらためて私の2021年映画BEST10は以下のとおりです。

1位『ライトハウス』
2位『ドント・ルック・アップ』
3位『ブロックアイランド海峡』
4位『システム・クラッシャー 家に帰りたい』
5位『Swallow スワロウ』
6位『17歳の瞳に映る世界』
7位『スラローム 少女の凍てつく心』
8位『Rocks ロックス』
9位『アナザーラウンド』
10位『ロスト・ドーター』

あれこれ考え抜いた結果のベスト10。当然、惜しくも入れられなかった映画も2021年もいっぱいあります。

大作としては『DUNE デューン 砂の惑星』も加えたかったのですが、惜しくも入れる隙間はなく…。劇場未公開作でのイチオシは、『セイント・モード 狂信』、『EMMA エマ』、『オキシジェン』、『雪の峰』、『PASSING 白い黒人』、『ロスト・ドーター』、『ラブ&モンスターズ』あたりですかね。劇場公開作としては『TOVE トーベ』、『ほんとうのピノッキオ』も入れたかったですけど…。

アニメーション映画は『ミッチェル家とマシンの反乱』が一番のお気に入りです。

邦画は1本もベスト10に入れられなかったのですが、当初は『ドライブ・マイ・カー』を入れるつもりだったのですが、あまりにも世界的な評価が2021年ベスト・ムービーと言わんばかりに大絶賛で、もうこれは私が評価しなくてもいいかなという気持ちに…。

ドラマシリーズ ベスト10

ドラマシリーズのベスト10です。10位から1位の順で発表しています。

10位『地下鉄道 自由への旅路』

この『地下鉄道 自由への旅路』はアメリカ国内でもっと評価されていいはずなのに賞レースでの存在感は薄いなぁ…。あのバリー・ジェンキンス監督作なのに…。やっぱりアメリカのドラマシリーズの賞界隈は映画以上に白人社会で偏っていますね。華やかな黒人主体の映画にはわりとフレンドリーですけど、こういう差別のおぞましさを突きつける作品にはすっかり冷たい…。だからといって私が評価しても何も変わらないのですけど、本作は素晴らしい誠実な物語ですし、とくに役者のアンサンブルが見事なので強めに推しときます。

9位『POSE ポーズ』S2

2020年もランクインさせたので『POSE ポーズ』はもういいかなと思ったのですけど、いつの間にかまたランクインさせていた…。やっぱり良いものは良い…。本当に貴重なドラマシリーズですし、同時代にリアルタイムで鑑賞できる喜びがある…。とくにエレクトラのキャラクター性が最高で、画面に登場するたびにテンションあがる。孤独を嗜好する男たちからカネを巻き上げ、望まない孤独に苦しむ子どもたちに還元し、やや倫理スレスレな叱咤激励を飛ばす。あんな存在がそばにいてほしかった…。

8位『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』

私の趣味枠。これはもう冷笑主義者を風刺するドラマなのかなとも思ったり。人間とはなんて愚かなのだろうかと嘲笑っているヴァンパイアたちの、実にマヌケでアホ全開の日常。100人鑑賞すれば90人くらいは1話目で視聴を諦め、2話目で残り5人も視聴をやめるような、そんなシュールでクセありまくりの作品ですが、いいんです、この『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は。逆に私はなんでこのドラマがシーズンが継続しているのか不思議なんですけど…。

7位『THE GREAT エカチェリーナの時々真実の物語』

このエル・ファニングとニコラス・ホルト、ずっと見ていられる(巻き込まれたくはない)。ロマンチックなプリンセスを夢見た少女が、サイコパスでミソジニーでナルシストなクズ野郎の王子に幻滅し、「よし、殺すか」と一念発起する、そんな反逆のプリンセス・ストーリー。こんなのさすがの今のディズニーでさえも作れないでしょう。アンチ結婚、アンチ妊娠、アンチ家族と、保守的価値観にツバを吐き続けるエカチェリーナの姿に惚れ惚れします。

6位『イカゲーム』

2021年の世界ダントツの話題作だったので私から言うことはないかな…。でも本作のアメリカでの扱われ方を見ると、まだまだアジアの作品への対応が表向きはフレンドリーでも蔑視がこぼれでる瞬間があるなと痛感もする…。直接関係ないけど『さらば! 2021年』の中で、アンチポリコレな歴史家を熱演するヒュー・グラントが、『イカゲーム』を「また多様性溢れるキャストだ。全員アジア系だと? 説得力が無いだろう!」と豪語するのがほんとに笑えました。

5位『Y:ザ・ラストマン』

性別をキーワードにするSFはたくさん観てきましたけど、どうしてもその際にトランスジェンダーやインターセックスは無視されがち。しかし、この『Y:ザ・ラストマン』はその“無かったことにされる”存在を包括し、それだけでなく徹底してテーマとして向き合う。この作り手側の姿勢に感心しました。2021年らしいフェミニズムSFドラマとして、論争に騒ぐ世間をバッサリと切っていく。これぞSFらしい荒業。こういう攻めまくっている作品こそ応援していきたいです。

4位『インベスティゲーション』

北欧のクライムサスペンスは好きなので、『インベスティゲーション』も気に入るとは思っていましたが、鑑賞してみれば心に残る余韻が想像以上でした。フェミサイドを題材にしており、立証責任の重みを描くことで、社会が果たす責任を示す。エンターテインメントではあるのだけど、だからといって何をしていいわけでもない。護るべき大切なものを忘れない。これほどまでに品行方正な刑事犯罪モノのドラマがあっただろうかと、私も襟を正したくなりました。

3位『真夜中のミサ』

マイク・フラナガン監督史上最高の一作であり、私も大好きなドラマに。コロナ禍に直面した私たちに重なるものが多いことにも気づかされます。得体のしれない恐怖の広がりに困惑し、パニックを起こしていく。そしてデマや陰謀論に狂信していき、周りを巻きこんだり、人間関係を壊していく者もいる。あなたのまわりにどんな人がいるのか、その人に何をしてあげられるのか。それによってコミュニティは良いものにも悪いものにも姿を変化する。まさにそんな時代にタイムリーなドラマでした。

2位『メイドの手帖』

見返す気にもなれなくてどうしようかと思ったけど、いざ見返してみたらやっぱり良かった…。家庭内暴力を主題にした本作はとてもアンチドラマで「ここで劇的な出会いがある」とか「こうやって人生は前向きになる」みたいな、つい私たちが期待してしまうドラマチックな飛躍を全て残酷な現実で否定する。でもその先に確かに地に足のついた“生き方”が見えてくる。この真摯なストーリーテリングの味わいをぜひともまだ未見の人は体感してほしいものです。生きようと思えてくるので。

1位『フォー・オール・マンカインド』

これは映画ベスト10に入れた『ドント・ルック・アップ』と対極にあるような作品。科学はこうでなくちゃという理想を見せてくれますし、そこには確かに女性やクィアを内包する多様性というものが起爆剤のようにこの前人未踏の偉業を後押しする。でも同時に政治利用されてしまう。このジレンマを巧みに描きつつ、これほど緊迫感のあるポリティカル・サスペンスとSFミッションドラマを両立させる。本当に贅沢なドラマであり、科学の誇りを取り戻したいときに観ると効果絶大ですね。

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総評&ベスト10に惜しくもリストできなかったドラマシリーズ

あらためて私の2021年ドラマシリーズBEST10は以下のとおりです。

1位『フォー・オール・マンカインド』
2位『メイドの手帖』
3位『真夜中のミサ』
4位『インベスティゲーション』
5位『Y:ザ・ラストマン』
6位『イカゲーム』
7位『THE GREAT エカチェリーナの時々真実の物語』
8位『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』
9位『POSE ポーズ』S2
10位『地下鉄道 自由への旅路』

以前はドラマシリーズはベスト5までしか選出していなかったのですが、2021年からはベスト10まで選ぶようになりました。映画以上に面白いドラマが本当に多くて困る…。

アニメシリーズ ベスト1

アニメーション・シリーズはあまり多くを観ていないのでベスト1だけを選出します。日本・海外どちらも含む作品が対象です。あくまでシリーズものだけを対象とし、単発の映画は対象にしていません。

1位『アーケイン』

海外アニメーションのある種の到達点というか、現在の方向性としての極みを堪能できる一作。海外はポリコレで衰退したとかほざいてしまっている人はこの『アーケイン』をどう説明するのか(というか観てないのだろうけど)。映画的な技法をアニメに導入して映像を格段にドラマチックなものに変え、それでいてクィアなカルチャーも遠慮なしでガンガンに取り入れていく。このハングリー精神が今の欧米アニメーション界隈の最先端の筆頭だと思っているのですけど…それを本作は教えてくれます。

独自部門の個別賞

ベストランキングの次は、俳優や監督のベスト…と言いたいところですが、そんなものはやり尽くされていて面白くない。そこで以下の独自な部門を勝手に設置して、自己満足で作品を選びました。作品の対象は映画・ドラマシリーズ・アニメなど全てを範囲として含みます。

ベスト・ドキュメンタリー賞
…通常の作品とは評価基準が異なってくるドキュメンタリー作品から年間ベストをひとつ。
ベスト・エンターテインメント賞
…自分の中でその年を象徴するエンタメ満載な作品をひとつ。
ベスト・ミュージック賞
…音楽や楽曲が優れていて作品自体にマッチしていた作品をひとつ。
ベスト・アニマル賞
…個人的に「動物」が好きなので、作品に登場した動物の中からピックアップ。
メモリアル賞
…ベストに入れられなかったけど、ベスト以上に心に強く残った作品に贈ります。
忘れてない?賞
…日本でビデオスルーもしくは公開規模わずかになってしまった良作映画に贈る、個人的イチオシ。
ベスト・Ace/Aro賞
…私がアセクシュアル&アロマンティックということで、その好みに合う作品orキャラに。
ベスト・ノンバイナリー賞
…私がノンバイナリーということで、その好みに合う作品orキャラに。
ベスト・アライ賞
…いろいろなマイノリティを支えてくれる献身的な作品orキャラに。

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ベスト・ドキュメンタリー賞

『フィールズ・グッド・マン』

2021年も元気でした。誰が? 表現の自由は自分たちの私物だと思っているような人たちが…。それは日本だけでなく、世界各地に存在していて、残念ながら大きな火種になっています。創作物を我が物顔で私的に利用して、憎悪を煽りながら自分の世界に引き篭もる。 『フィールズ・グッド・マン』で描かれるあの風景は、「フェミニストがオタクを攻撃している!アニメや漫画を規制して滅ぼそうとしている!」などという陰謀論に熱狂する日本の光景と地続きだと思うからこそ、本作は無視できません。

次点は『バーシティ・ブルース作戦 裏口入学スキャンダル』『祈りのもとで:脱同性愛運動がもたらしたもの』かな。

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ベスト・エンターテインメント賞

『エターナルズ』

私は本作は初期「スタートレック」である『宇宙大作戦』に近いポジションの作品だと思います。多様なキャストで、SF要素を大衆に広げ、先進的な問題提起を投げかける。『宇宙大作戦』も当初は評価が伸び悩まず、打ち切られましたが、後に歴史的な一作として再評価されました。『エターナルズ』もすでに界隈ではカルト作となっていますし、この作品があったから今の私がいる!と言い放つようなクリエイターも後に登場するだろうな、と。エンタメの在り方を揺さぶる起点になる映画かなというのが私の総評です。

他には『ミッチェル家とマシンの反乱』『ベイビーわるきゅーれ』なども良かったです。

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ベスト・ミュージック賞

『アメリカン・ユートピア』

かっこよかった(感想、終わり)。多様性って最高に楽しいじゃないか! 正しさを声高に訴えるのって大切じゃないか!…そうこれほどまでにハッキリ表現しながら、パーフェクトなパフォーマンスで見せつけてくる。デイヴィッド・バーン、クリエイターの鑑です。ユートピアを作れるかどうかはひとりひとりの行動にかかっていると教えてくれる。私は全然クリエイターにはなれていないけど、自分も何かをしたいと思わせるエネルギーを与えてくれました。

『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』は次点。

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ベスト・アニマル賞

『ジャッリカットゥ 牛の怒り』

2021年も動物が出てくる映画はいっぱいありました。『ラブ&モンスターズ』の化け物アニマルも良かったし、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のサメもアホでキュートだったし、『ほんとうのピノッキオ』のカタツムリも遊びがいがあるし、『GUNDA グンダ』のブタも主演女優賞ものだったし…。なんだったら別に『マイリトルポニー 新しい世界』をひたすらに激推ししているだけでも個人的には全然そうしたいのですけど…。でも『ジャッリカットゥ 牛の怒り』の勢いは誰にも敵わなかった。『PUI PUI モルカー』でさえもあの牛たちを止めることはできない。まだ観ていない人はあの驚愕の牛追いの末路を目にしてください。夢に出ますよ。

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メモリアル賞

『フィンチ』

「周りがどう思おうと自分だけが愛せていればそれでいい」という映画に出会える瞬間。2021年はこの映画でした。作中で登場するのは、犬とロボット、そしてトム・ハンクス演じる主人公。この3体だけ。私は犬も好きだし、ロボットも大好きだし、トム・ハンクスも大好物なので、その好き3点セットをプレゼントされたら、そりゃあもう尻尾をぶんぶんふって喜ぶに決まっています。悲しみや絶望に沈んでいるとき、心を病んでしまったとき、その再生の一歩を踏み出す手伝いをしてくれる作品です。

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忘れてない?賞

『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』

2020年の映画を対象としたアカデミー賞…もう忘れているのではないでしょうか。あの主演男優賞が放送事故みたいになったやつです。そのアカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされるという絶賛っぷりだったにもかかわらず、日本では劇場公開されもしなかった可哀想な映画。ビデオスルーにはなりましたけど、完全に話題性という点では蚊帳の外になってしまった『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』。観忘れていたという人、ほんと、観てあげて…。

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ベスト・Ace/Aro賞

『モダン・ラブ』S2E5「Am I…? Maybe This Quiz Game Will Tell Me」

『ベビー・シッターズ・クラブ』S2E5「Mary Anne and the Great Romance」

結構悩んだのです。アセクシュアル表象としては明確に登場した『それでも僕らは走り続ける』もあったし、『シャン・チー テン・リングスの伝説』みたいに恋愛関係に発展しない主人公&ヒロインのペアも良かったし…。でもこの『モダン・ラブ』シーズン2の第5話「Am I…? Maybe This Quiz Game Will Tell Me」と『ベビー・シッターズ・クラブ』シーズン2の第5話「Mary Anne and the Great Romance」の2つのエピソードにしました。性的指向に悩んでいるあの子。診断テストもよくわからない。アセクシュアル? レズビアン? でもあの人が好きなのだけど…。そんな曖昧さを肯定したいです。そして恋愛だけが関係性の到達点ではないことに気づいたあのカップルにも…。

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ベスト・ノンバイナリー賞

『セックス・エデュケーション』S3

LGBTQの表象として学園青春ドラマの中でも頭ひとつ飛びぬけている『セックス・エデュケーション』。そのシーズン3はノンバイナリーにスポットライトをあてます。トランスジェンダー方面ではなく、しっかりノンバイナリーにフィックスしているのは本当に珍しいですし、画期的な一歩でした。ジェンダー二元論の本拠地のような学校空間で戦うノンバイナリー・ティーンを応援する、素晴らしい物語。それぞれのペースで頑張って生きていきましょう。

次点は『私の名はパウリ・マレー』です。こちらも素晴らしいです。

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ベスト・アライ賞

『片袖の魚』

日本映画界の誤ったトランスジェンダー表象の氾濫に果敢に抵抗するような一作を生み出す試みはかなり色々な意味で障壁も多く、リスクもあると思うのですが、それでも向き合ってくれた『片袖の魚』。東海林毅監督や主演のイシヅカユウを始めとする製作陣のその勇気に敬意を表します。やっぱりこういう世の中である以上、映画はアライ(Ally;マイノリティに寄り添って助けてくれる人のこと)にならないといけない。そういう意識を再確認できました。

次点は『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』です。


 

以上です。

2022年もたくさんの心震わす映画&ドラマに出会えますように。