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『フェリシーと夢のトウシューズ』感想(ネタバレ)…ニューフェイスが初々しくも華麗に飛躍!

フェリシーと夢のトウシューズ

ニューフェイスが初々しくも華麗に飛躍!…映画『フェリシーと夢のトウシューズ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Ballerina(Leap!)
製作国:フランス・カナダ(2016年)
日本公開日:2017年8月12日
監督:エリック・サマー、エリック・ワリンン
フェリシーと夢のトウシューズ

ふぇりしーとゆめのとうしゅーず
フェリシーと夢のトウシューズ

『フェリシーと夢のトウシューズ』物語 簡単紹介

19世紀末のフランス。親のいない子どもたちを集めた施設に暮らすフェリシーは踊ることが大好きで、バレリーナになることを夢見ていた。その夢を誰も本気には考えていないが、本人は真剣である。ある日、フェリシーは親友のヴィクターに誘われ、施設を抜け出して憧れのパリを目指す。パリに到着し、フェリシーが街で偶然に見つけたのがずっと思い焦がれていたミラノ座。そこで本物のバレエを目にし…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『フェリシーと夢のトウシューズ』の感想です。

『フェリシーと夢のトウシューズ』感想(ネタバレなし)

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夏休みの女の子向け映画はコレ!

海外のCGアニメーション映画スタジオは、ディズニー、ピクサー、ドリームワークス、イルミネーション、ワーナー、ソニー・ピクチャーズなどが有名どころですが、新しいスタジオだって負けてません。
ニューフェイスとなるのが、カナダのモントリオールにある「ラトリエ・アニメーション(L’Atelier Animation)」という2012年に設立したスタジオ。こうやって、どんどん新しい風が吹いていくのはアニメーション映画業界にとっても嬉しい限りではないでしょうか。

その「ラトリエ・アニメーション」が制作した(これが劇場映画初なのかな?)初々しい一作が本作『フェリシーと夢のトウシューズ』です。

舞台は1880年代のパリ。11歳で孤児院で暮らすフェリシーという少女が、バレリーナになるという夢を叶えていくストーリーです。挫折と成長、希望と情熱の物語に、恋あり、ライバルあり、悪役ありと、超王道なテンプレといっていいでしょう。雰囲気的には一昔前のディズニーっぽいですね。

バレエが主題の作品なだけあって、バレエシーンのクオリティは非常に高いです。それもそのはず、本場のパリ・オペラ座が監修してます

マイナーなアニメーション・スタジオの初期作品ということもあり、日本での公開は厳しいのかなとも思いましたが、劇場公開されました。しかも、今や映画に引っ張りだこで何かしらいつも映画館の予告でよく見かける女優の“土屋太鳳”をヒロインの吹き替えに起用する贅沢っぷり。主題歌まで歌っちゃって、作品としてここまで恵まれたスタートはないと思います。ちなみにオリジナルで声優をつとめるのは“エル・ファニング”です。

小学生以上の子どもであれば何も問題なく観せてOKな映画です。今年の夏休みのディズニー/ピクサーのラインナップは、『カーズ クロスロード』はどう考えたって男の子向けですから、ぜひ女の子には本作をオススメします

ただ、観終わった後に「私もバレエがやりたい」と言い出す可能性はゼロではないですが…。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『フェリシーと夢のトウシューズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):私の夢が叶う街へ

とある屋敷。そこは孤児院です。今、屋根を歩く少女・フェリシーがバランスを崩して落ちそうになって同じく孤児のヴィクターに助けられました。

「俺を置いて脱走するのか」と小言を言われ、「あんたと同じ日に来たんだから一緒に逃げるわよ」と気楽に返事。片付けるはずの皿をどんどん投げて調子に乗っていると、院長に叱られます。

「あなたの夢はバレリーナになること、それは知っています。でも夢を見るのは自由ですが、夢と現実は違います。現実はきつくて情け容赦ないものです」

「わかりました…」とその場は納得しますが、フェリシーの夢への情熱は抑えられません。パリのバレエ学校のオペラ座が描かれた絵ハガキを見せてくれるヴィクター。彼は彼で「俺は発明家になる」と豪語。

夜、こっそり部屋を出ていく2人。ついに逃げ出す計画を実行です。しかし、あっけなくばれてしまい、鐘のある塔へ。屋根を歩き、チキン・ウィングという翼を身に着けるヴィクター。「ニワトリは飛べないけど」というツッコミも気にせず、フェリシーを抱えてヴィクターは飛び上がります。

ふらふらと滑空しますが、すぐに落下。ヴィクターはフェリシーの大切なオルゴールをとってくれるものの、坂道で暴走する荷馬車に乗ったフェリシーに追いつけず悪戦苦闘。なんとかジャンプして乗っかるものの、今度は障害物の岩だらけ。機転をきかせて追っ手を出し抜き、列車の貨物に乗り込みます。

冷や汗ものでしたが、ギリギリで大成功。ただしオルゴールは故障。ヴィクターは修理してくれます。安心したフェリシーは眠りこけてしまいました。

朝、列車は停車。外に出るとそこは賑やかな街並み。パリです。テンションあがるヴィクター。でもバレエ学校の場所は知らないようです。不安になってくるフェリシー。子どもだけで大丈夫だろうか。

ところがヴィクターは船に落ちてしまい、別れ離れに。明日、そこでまた会おうと陽気に手を振っています。

夜、心細く歩いていると明るい建物が。それは絵葉書で見た建物。建物の中に足を踏み入れると豪華絢爛な装飾品。思わず息をのむフェリシー。音のなる方に行くと、白い衣装を身にまとった少女がバレリーナとしてステージで踊っていました

しかし、守衛の男にすぐに見つかり、盗人扱いに。そこへ杖をついた女性が話しかけてきます。とりあえず出ていくように言われ、その場は済みました。

こっそりその杖の女性の後を追ってバレリーナについて根掘り葉掘り聞いてみることに。私はただの掃除人だと言います。「私は子どもは嫌い」と相手にしてくれません。オデットというらしいその女性は主から掃除を命じられ、重いバケツを持っていきます。手伝わせてとフェリシーはアピール。この長い階段のある家の家政婦だそうで、レジーヌ・ル・オーに使えているようです。ずっと質問攻めするフェリシー。ル・オー夫人は嫌な奴でした。

するとあのオペラ座で聞いた音楽が聞こえます。ドアを覗くと少女がトレーニングしています。オペラ座の入学許可を待っているのだとか。やたらと自信過剰なその少女・カミーユは、フェリシーの大切なオルゴールを2階から放り投げてしまいました。

入学許可の手紙を見つけたフェリシーはそれを自分のものだと偽ってオペラ座に入り込みます。こうしてバレリーナになる一歩を踏み出すことに。

そこは慣れないことばかりの未知の世界…。

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バランスが示すフェリシーの成長

王道として直球ストレートをど真ん中に投げた感じの『フェリシーと夢のトウシューズ』。初期作の物語としてはこれで良いのじゃないでしょうか。全体的にCGアニメーションは美しく、動きもキュートで、見づらさは一点もありません。

個人的な注目点はこれ。トレーニング。どんな映画でも「トレーニングシーンは面白い」と相場が決まっているように、本作もオデットの指導による一風変わったトレーニングは見どころ。水しぶきをたてずに水たまりを着地する訓練、回転させられて両手のコップの水をこぼさず持ってくる訓練…どれもユニークです。

バレエは実際かなり複雑なのでしょうが、本作ではそれをあえて単純化してフェリシーの成長を映像で一発で理解できるようにみせてくれます。具体的にはバランスがとれていれば“成長している”、バランスがとれていなければ“成長が止まっている”という感じ。フェリシーは冒頭で孤児院の屋根から落ちそうになっていましたが、トレーニングによってバランス感覚を向上していく…つまり自分にも自信を持っていきます。でも、大事なテストでは何度やっても“転んで”しまう。その後の孤児院に戻った後は、屋根でステップを踏めるまでに自身を取り戻していく。そして、最後は大きく跳躍! このようにフェリシーがバランスをとれているかどうかに着目しながら本作を観るとより面白くなるでしょう。

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女の子視点のリアルな努力の物語

『フェリシーと夢のトウシューズ』はフェリシーという11歳の女の子の物語であり、ターゲットとする客層も同年代の女の子になってます。

女の子の物語といえば、ディズニーなんかは常に“魔法”が出てくるのがベタ。しかし、本作はそんなものはなく、フェリシーがひたすら“努力”を積み重ねていくリアルな成長ものです。まるで少年漫画みたいであり、割と女の子向け作品の歴史では珍しいタイプな気がします。

イケメンが成長の阻害になるのも、往年の女の子向けディズニーファンタジーには絶対ないある意味リアルな要素でしたね。イケメンにうつつを抜かしてヘマをするという展開は、女の子には身に染みてイタイ話なんじゃないでしょうか。ただ、アイツをかばうわけじゃないですけど、あの金髪イケメン野郎もアイツなりに技術に関しては相当なものを持ってましたから、もっと指導的側面で活躍を見せてほしかったなと。全体的にフェリシーとオデットが凄すぎる印象が強いので、より多くの人から学んでいくとバランスが良いのにね…なんて偉そうに思ったり。

あとは、ル・オー夫人の極端な悪役っぷりには笑っちゃいましたが(でかいハンマー持って追ってくるとか…どんだけですか)、悪役の設定にはもっと工夫が欲しかったですね。

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若きスタジオの跳躍

とまあ、王道なストーリーながら、新鮮さもあるガール・ムービーでしたが、「ラトリエ・アニメーション」のスタジオの個性がまだまだ見えてこない感じも…。

映画のフェリシーと同じように、今やっと晴れ舞台に立ったばかりですから、今後のさらなる跳躍に期待してます。

『フェリシーと夢のトウシューズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience 65%
IMDb
6.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 ©L’Atelier Animation

以上、『フェリシーと夢のトウシューズ』の感想でした。

Ballerina (2016) [Japanese Review] 『フェリシーと夢のトウシューズ』考察・評価レビュー