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『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』感想(ネタバレ)…中年女性のハチャメチャ旅行割引

バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く

中年女性限定のハチャメチャ旅行割引はいかが?…映画『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Barb and Star Go to Vista Del Mar
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年に配信スルー
監督:ジョシュ・グリーンバウム
恋愛描写

バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く

ばーぶあんどすたー びすたでるまーるへいく
バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』あらすじ

幼なじみのバーブとスターは中西部の小さな町でずっと一緒に過ごし、すっかり中年になっていた。夫はもうおらず、今や2人で永遠にトークすることが人生の最大の楽しみ。しかし、たまにはもっと思い切ったことをしようと考え、生まれて初めてこの町を飛び出すことに決める。行先はヴィスタ・デル・マールという楽園のようなリゾート地。一生に一度のバカンス。そこには恋と友情とヘンテコな敵の罠が…。

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』感想(ネタバレなし)

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旅行は映画でお気軽に

コロナ禍も収束してきたみたいだし、さあ、旅行にでも行きましょうか。政府はクーポンを配ることしか頭にないし、相手にしていられません。旅行割引なんてあろうがなかろうが、そもそも今の外出を抑制され続けてきた庶民には旅行意欲が溜まりに溜まりまくっているのです。とくに餌を用意していなくても勝手に身体が動き出すことでしょう。え? オミクロン株? というかもう変異株のギリシア文字シリーズも15番目に突入していたの? すでに残りの文字もわずかじゃないですか。足りる? 絶対に2022年で使い切るよね?

とりあえずこんな状況なので「旅行はやっぱりやめようか…」と堅実な忍耐強い判断をされた皆さん。よし、じゃあ映画を観ましょうか(恒例の誘導)。

映画にはいろいろなジャンルがあり、内容がありますけど、今回の紹介する作品は旅行に行った気分になれるハイテンションでノリノリなバカンス・ムービーです。

それが本作『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』

本作はとにかく陽気な映画です。主人公は2人の中年女性。幼馴染で互いのことを誰よりも知っているこの2人は地元の町で退屈ながらもお喋りの止まらない日々を過ごしていました。そしてふと思いつくのです。1回くらいハメを外してみようと。そこで友人に紹介されたリゾート地へ“GO TO トラベル”(日本政府用語)。青い空、青い海。そこで真面目に人間関係に悩むマッチョな男にトキメキつつ、亀だったり、蟹だったり、ワニだったり、エビだったり、なんかあれこれと触れ合って、あ、この貝殻細工もオシャレだな、いつのまにやら『キングスマン』に出てくるようなクセの強すぎる悪人のバイオテロの陰謀を阻止しないといけなくなり、あ、このネックレスもいいんじゃない、で、蚊が地域一帯を滅ぼすかもしれないけど、喧嘩したりもしつつも満喫するのです。

…説明している私がアホみたいですけど、実際に本当にこんな物語ですから。その目で鑑賞した後にこの私の書いたざっくりした物語の内容紹介を読み直してほしいですよ。そのまんまだったなってわかると思うので。

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』が最高なのは中年女性が主役ということです。私は中年女性がイキイキしている作品が好きなのですが、とくに美とかキャリアとかそういう秀でたものがなくても楽しくやっていこう!という勢いありきの作品が好物で…。なかなか映画界でもそんな中年女性を中心に据えるものは少ないです。ということで『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』を応援したくなるのです。こんな中年女性がひたすらにハッピー満開で楽しんでいるだけの映画も早々ないですからね。

その愉快痛快な中年女性主人公2人組を熱演するのが、『ゴーストバスターズ』『ワンダーウーマン 1984』でもおなじみの“クリステン・ウィグ”と、『ジョイ』などの脚本も手がける“アニー・マモロー”。この2人はコメディアン仲間で仲良く、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』でも一緒に脚本をやっていましたが、『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』でも主演に加えて脚本も担当しており、すっかりノリノリです。

共演は、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の“ジェイミー・ドーナン”、『ロング・ウィークエンド』の“デイモン・ウェイアンズ・Jr”、『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』の“ヴァネッサ・ベイヤー”、さらに『ゴッドファーザー PART III』の“アンディ・ガルシア”、歌手の“リーバ・マッキンタイア”もゲストでサプライズ出演するのでお楽しみに。

監督は『Single Parents』の“ジョシュ・グリーンバウム”。制作は“ウィル・フェレル”と“アダム・マッケイ”が女性に焦点をあてた作品を手がけるために設立に関わった「Gloria Sanchez Productions」です。過去には『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』『ハスラーズ』『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』などを生み出しており、なかなかに期待の持てるプロダクションですね。

こんなに楽しい『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』なのに日本では劇場未公開で、宣伝もろくになくビデオスルーになってしまったので、映画ファンの間ですら全然知られていない悲しい状況。これではあんまりだと思うので、ここで強めに推しておこうと思います。

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』はクーポンも旅行割引もいらずに簡単に観れますから!

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:気軽に旅行気分!
友人 4.0:一緒にハメを外す!
恋人 3.5:恋愛よりも友情だ!
キッズ 3.5:大人のバカに付き合って
↓ここからネタバレが含まれます↓

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):現実逃避して何が悪い!

閑静な住宅地。その真っ只中を自転車で新聞を配って進む黄色い帽子の子。ヘッドホンで音楽を聴き、ノリノリで熱唱気分。ある家に最後のひとつを投げ入れ、これで仕事は完了。馬にまで手を振りながら、草原の中にポツンとある木に到着。その木に何気なく設置されているフクロウ型の機会がその子の体をレーザーチェック。すると木の幹からガパっと扉が開き、その子は地下に入っていきます。

秘密の隠れ家に着くと、「おはようございます。ヨーヨー様」と丁重に迎え入れられ、ビシっと決まった黒いスーツに一瞬で着替え。

次に広間へ。両脇に男がそれぞれ立っており、奥から白い服の奇抜な女性、シャロン・フィッシャーマンが悠々と登場。

「飲み物はいかが?」とドリンクを勧めてきて、ドリンクバーが登場。独自のカクテルを作り、ストローで優雅に飲みます。「完璧ね」

スーツの大人の男、エドガーが「完成したか?」と白衣の研究者の男に質問。「蚊の遺伝子組み換えを成功させ、自在に操る方法もできました」と研究者は言い、目の前にいる牛の足元にビーコンを置いてみせ、これで蚊が集まって一瞬で大型動物も殺せると太鼓判。「狂犬病動物の処分が目的なんですよね」と言いますが、その研究者は連行され、用済みなので餌食になりました。同時にヨーヨーが最後に置いた新聞が爆発し、家が吹っ飛びます。

この秘密結社の目的はこのバイオテロでとある地域を滅ぼすことでした。

ネブラスカ州ソフトロック。1800年代が舞台の映画について語る中年女性2人。といってもここは店の展示品のソファ。目の前に客が来て、それを買いたいと言ってきます。スターバーブはお気に入りの場所が買われそうで困惑。売れないと断言。

そうこうしているうちに上司に呼び出され、「店を閉めることになった。閉店だ」と告げられます。親会社の事業が終わったそうで完全に廃業です。スターとバーブにとっては絶望的でした。

悲しすぎる事態に困惑しながら店を出る2人。「40代の求人なんてこの町にいっぱいあるでしょ」と気分をあげます。そこに友人のミッキーが。なんでもフロリダの楽園に引っ越すらしく、そこはゴージャスな男もいっぱいだそうです。2人にパンフレットを渡します。ヴィスタ・デル・マール(ビスタ・デル・マール)…それがその地の名前でした。

夜。同年代女性が集まっての座談クラブ。今日のテーマは「仕事」。でも店が潰れた話なんてできない2人は、テキトーに流しながら「昇進した」と嘘を。けれども本当は失業したと耐え切れず言ってしまい、クラブの3大ルールのひとつを破ったとして除籍をデビーに突きつけられます。

一緒の部屋。並んだベッドで寝る2人。スターは夫に逃げられ、バーブは夫を亡くし、今は2人で寄り添って生きてきました。でも楽しみのあの職場のソファも、クラブも無くなったらどうすればいいのか。

ふとスターは思いつきます。あのパンフレットです。旅行だ…。バーブは危険だと躊躇しますが、「まだ輝けるはずよ」とスター。バーブも「ハメを外しちゃおう」と乗り気になり、さっそく荷物を準備。

一方、シャロンは憎きあの抹殺する地にエドガーを送り込みます。エドガーはシャロンに気があり、「これが終わったら一緒になれるんだよね」と語るもシャロンの返事は曖昧。

そのシャロンが滅ぼそうとしている地、それはヴィスタ・デル・マール。

今、このどうしようもない者たちの運命がどうしようもない雑なかたちで交差する…。

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隣にいてくれるこの人となら…

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』、頭を空っぽにして、いや、もはや頭はどこかに置いてきてもいいかもしれない、自由気ままに楽しめる映画でした。

前述したとおり、中年女性主役の作品としてこれ以上ないほどにエンジョイしまくっています。どうしてもこの年代・性別を主役に据えると、まずはそういう立場の人間が受けるだろう境遇みたいなのが描かれ、「そんな年で…」だとか「女なのに…」とかあれこれと嫌味を言われる姿が映し出されたりするのがよくある定番なのですが、この『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』はそれが皆無。

人生、楽しんだもの勝ち!という姿勢が全開です。

スターとバーブの性格があっけらかんとしているのがいいですね。夫に逃げられたり、失ったりしているわりには、それを引きずるような可哀想なキャラクターというわけでもない。かといって過剰にフィクショナルな幼稚な女として戯画化されているわけでもない。ただあの2人は今のこの人生をできるだけ楽しめればそれでいいと思っている。そんな素の生き方に共感してしまいます。

2人にとっての最高の楽しみは相手がいること。スターにはバーブが、バーブにはスターが。このペアリングで人生をどこまで輝かせられるか。

確かに作中ではマッチョなイケメンにちょっと心がなびきますし、なんだったら友人を出し抜いて自分だけ美味しい体験を…と欲を先走りすることもある。でも最後はなんだかんだで仲良しが一番という着地。

容姿ではない。能力でもない。境遇でもない。今、隣にいてくれるこの人となら毎日が最高の輝きを放つ。スターとバーブに学ぶ人生の教訓です。

その教訓を実にアホ満載で伝えてくれる“クリステン・ウィグ”と“アニー・マモロー”の息のあったドタバタギャグ。このあたりは2人は慣れたもので楽勝ですかね。

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キュロットは万能です

そんなスターとバーブに最終的に感化されていくことになる『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』のヴィラン(?)であるシャロン。まあ、演じているのはこっちも“クリステン・ウィグ”なんですが…。この奇抜な役も難なくこなせるのはさすが“クリステン・ウィグ”。過去には『ビッグマウス』では女の子の性器の声を演じたりしましたからね、できない仕事はもはやないですよ。

色素変性異常白色皮膚症ゆえに太陽の光を浴びてはならず、真っ白な肌を周りにバカにされ、せっかくの友人もワニに食われ、このヴィスタ・デル・マールではエビ女王として笑いものに。そんな恨みを蚊でぶつけるシャロンの暴走。それを止めたのはスターとバーブの包容力でした。話し相手ならいくらでもなってあげる精神の偉大さ。

また、本作は男性の描き方も、いわゆる悩めるマッチョに寄り添った感じで良かったです。どんなに筋肉があろうとも悩む時は悩む(HPVだってわからない)。最後は女性との付き合いだけではない自分の肯定を得られてめでたしめでたし…かな。やっぱり昨今のハリウッドにおけるマッチョの扱いのスタンダードはこれですね。“ジェイミー・ドーナン”もこの枠に入ってきたか…。ミュージカル・シーンも楽しそうだったし、俳優としては『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の20倍は輝いていたと思う…。

個人的にはヨーヨーを演じたあの子、“レイン・ドイ”が抜群にハマっていたのですけど、あの子を主役にスピンオフを作ってくれないものだろうか…。潜水艦で世界を冒険する話でもいいので…。

それにしても『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』では大活躍で高所からの落下にさえも頼もしいキュロット。冒頭で「ふくらはぎ丈でスカート状の女性用ズボン。一般的に中年女性が着用する」と単語説明があるのですけど、やっぱり少なくともアメリカではキュロットはおばさんが身に着けるイメージなのかな。日本でキュロットと呼ばれているファッションは別に小さい子から若者まで広く受け入れられているけど…。

キュロットみたいに着やすい人生を送りたいものです。

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 80% Audience 60%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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・『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』

・『40歳の解釈 ラダの場合』

作品ポスター・画像 (C)Lionsgate バーブ&スター ヴィスタデルマールへ行く

以上、『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』の感想でした。

Barb and Star Go to Vista Del Mar (2021) [Japanese Review] 『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』考察・評価レビュー