でもナマズに食われるかもしれない…「Disney+」ドラマシリーズ『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
シーズン1:2025年にDisney+で配信
原案:グレン・パウエル、マイケル・ウォルドロン
性描写 恋愛描写
ちゃどぱわーず じんせいこんばーとだいさくせん

『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』物語 簡単紹介
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』感想(ネタバレなし)
グレン・パウエルの男らしさ論
「弱さこそが、男らしさの最大の源泉だと感じている」「オープンで弱みをみせることは、クールでもあり、同時にタフでもあると思う」
そう自身の考えをメディアのインタビューで語るのは、今、最もホットな30代白人男性俳優のハリウッドスターのひとりである“グレン・パウエル”です(The Mary Sue)。
2022年に『トップガン マーヴェリック』で一気に大衆に認知され、話題の俳優になった彼は、以降も『恋するプリテンダー』や『ツイスターズ』などで魅力を全開。
控えめに言っても素でマッチョなイケメンを体現している“グレン・パウエル”ですが、前述したインタビューでも垣間見えるとおり、謙虚な人柄で、男らしさを保守的に捉えていません。確かに“グレン・パウエル”が演じるキャラクターの多くは、どことなく弱さを滲ませ、それを男性の魅力に変換させています。
そんな“グレン・パウエル”が原案・脚本・主演とどっぷり関わって製作したドラマシリーズが登場しました。
それが『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』です。
本作はアメリカンフットボールを主題にしたスポーツ・コメディなのですが、元アメフト選手だった“イーライ・マニング”が「Omaha Productions」というアメフト専門メディアで行った寸劇が原作になっています。当事者がいじり倒しているだけあって、業界事情を弄ぶシニカルさがたっぷりです。
物語は、クオーターバックのスター選手だったのにある理由で大学フットボールにて輝かしいキャリアを台無しにしてしまった男が、8年後に身分を偽ってまたその世界に挑戦する…という内容です。「一度人生で大失敗した人間がセカンドチャンスを手にしようと奮闘する」というよくあるタイプですね。
雰囲気的には最近だとドラマ『テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく』を彷彿とさせるかもしれませんが、『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』は主人公ひとりに主眼が置かれており、何よりももっと不真面目です。不謹慎ギャグも多めなので人を選ぶかもしれません。
それもそのはず、この本作『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』を“グレン・パウエル”と共同制作しているのが、“マイケル・ウォルドロン”ですから。『リック・アンド・モーティ』のクリエイターのひとりとして一躍有名になり、ドラマ『ロキ』や映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』などMCUに起用されてキャリアも拡大した“マイケル・ウォルドロン”の作家性は一目瞭然。カオスなドタバタ劇の中で人間性を抉っていく遠慮なさです。『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』でもその才能が発揮されています。
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』で、“グレン・パウエル”と共演するのは、ドラマ『イン・ザ・ダーク』の“ペリー・マットフェルド”、ドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』の“フランキー・ロドリゲス”、ドラマ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』の“スティーヴ・ザーン”、ドラマ『ドゥーム・パトロール』の“ウィン・エヴェレット”など。
ちなみに“ペリー・マットフェルド”は夫が元NFLのクオーターバックだったので業界に詳しいそうです。
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』は全6話で、1話あたり短いと約30分程度なので観やすいです。日本では「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中です。
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 若干の障害者差別の描写があります。 |
| キッズ | 性行為の描写があります。 |
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
カレッジフットボールの祭典「ローズボウル」の決勝戦が行われ、同点でゲーム最大の運命が決まる瞬間が訪れます。オレゴンのスター選手であるクオーターバックのラッセル(ラス)・ホリデーは圧倒的な才能と肉体で絶賛されている若者でした。今もフィールドで圧倒的な存在感を放ち、チームの中心にいます。応援するファンの誰もがラスならば勝利に導いてくれると確信していました。
ボールを手にしたラスは雄たけびをあげ、タッチダウンを目指して突進。敵なしです。しかし、ボールを落とす位置を間違えるというあまりに初歩的なミスをしでかし、相手がボールを奪い、相手チームが優勝します。
茫然自失のラスに、フィールドのすぐそばで応援していた癌を患う車椅子の子どもが「今でも応援してるよ」と健気に励ましますが、怒り心頭のラスの耳には届かず、その子の父親に態度を叱られ、カっとなって殴り倒し、子どもまで転倒させてしまいます。その様子はばっちり中継カメラにとらえられていました…。
8年後、評判が失墜し、アメフトから手を引いており、自堕落な生活を送っていたラス。それでも今なお自分は善人だと言い張っていますが、そんな戯言を聞くような人は悪友だけ。ラスはアメフトに未練があり、カムバックしたいと考えています。
威勢よく振る舞っていたものの、8年前のあの子が16歳で亡くなったとニュースがあり、せっかくのXFLとの契約の話が頓挫。ラスの評判の悪さは健在でした。誰も関わりたくないのです。ついには友人にすら捨てられました。
失意のどん底で家に帰り、幼い頃の情熱を思い出します。やはり諦めたくない…。父親に「前に進め」と怒られるも、父の仕事を継ぐ気はないです。父はメイクアップアーティストで、映画スタジオで仕事をしていました。
仕方なく手伝いに行ったとき、スマホで南ジョージア大学の「キャットフィッシュ」というアメフトのチームがクオーターバックを求めているという話を耳にします。
このチームは存亡の危機でした。QBコーチの助手のリッキーは評価されずにくすぶっていました。そのリッキーの父である監督のジェイク・ハドソンはトリシアからリバティボウルで成果をさないとクビになると言われています。
ラスはこれはチャンスだと直感し、面白いアイディアを思いつきます。そして勢いでジョージア州に車を飛ばし、例の大学に向かいます。到着するや、メイクと長髪カツラで変装。別人としてエントリーする作戦です。
しかし、キャンパスでキャットフィッシュのマスコット着ぐるみをしているダニーに見つかり、銃撃犯だと勘違いされ、あっさり正体がバレます。そのダニーに変装をより上手く直してもらい、再度受付に向かいます。
土壇場の思いつきで「チャド・パワーズ」と名乗ることにし、コロナの後遺症で年齢をよく覚えてなくて、学生証は親が持たせない主義で…と苦し紛れで誤魔化します。
なんとか通され、久しぶりにフィールドに立つラス。ボールを投げようとすると恐怖がよぎり、体力測定で恐ろしくなって一旦引き返します。
それでもダニーに「今の男になりきれ」と気合を入れられ、気を引き締め、素晴らしいテクニックをみせました。監督に気に入られます。
面談で「なぜアメフトを?」とジェイクに聞かれ、「僕の人生です」と答えるラス。
「他に秘密はないな?」と念押しされ、チャドになったラスは作り笑いを浮かべますが…。

ここから『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』のネタバレありの感想本文です。
その男らしさ、捨ててみる!
マッチョな白人男性は害悪でしかないのか…なんて語り口はさすがに大袈裟かもしれませんが、この『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』が理想とされる白人男性マッチョイズムに対して痛烈にタックルをキメているのは紛れもない事実でしょう。しかも、わりと反則ギリギリのコテンパンに…。
それはもう露骨です。なにせタイトルにもあるとおり、主人公のラス・ホリデーが名乗る偽名が「チャド・パワーズ」なんですよ。日本語圏の人にはあまりピンとこないですが、この「チャド(Chad)」という単語は、「異性愛者で、通常は金髪で、運動系で成功し、性的に活発で(モテる)、恵まれた体格の持ち主の白人男性」を指すスラングです。マノスフィアの界隈では「アルファ男性」を意味し、ある種の男性の理想形であり、ときに「モテない恵まれない立場」を自称する男たちからは嫌悪されます。
で、その「チャド」の「パワーズ(powers)」ですからね。ベタすぎる男らしさの力がみなぎっている名前です。日本語に置き換えるなら「ムキヤマ 力男(りきお)」って感じだろうか…。作中でその場で思いついて名乗るわけですけども、それを聞いたリッキーたちが「は?」みたいな反応するのも当然です。
そしてこのチャドが「キャットフィッシュ」(この名前もわざとらしいですね。「catfish」は「ナマズ」のことですが、「なりすまし」を意味もします)というチームでアメフトに再挑戦して再起を図るのですけども、ここで本作最大のジョーク的な仕掛けが、ラスはチャドとして大学時代の「理想的白人男性」のペルソナを捨てるんですね。
そこで新しいペルソナとなるチャドの佇まいが…何というか見るからに変人で…。ひとえにラスの演技の下手さが理由にあるのですが…(“グレン・パウエル”は『ヒットマン』のときも思ったけど、極端な演技をするのが好きなんだろうな…)。
とにかく理想的な白人男性とは真逆です。作中では映画『僕はラジオ』の話題があるように、知的障害だと周囲に思われており(もしくは慢性外傷性脳症-CTEだと勘違いされている)、微妙な空気で気遣われてます。スポーツで成果をだすと途端に仲間意識で受け入れてくれるあたり、世の中のうわべだけの障害者受容を皮肉ってますが…。
そのうえ、ダニーにだけは当初から正体を明かしているので協力関係にありますが、ダニーがオープンリーなゲイゆえに、チャドもゲイなのかな?と誤認されているという…。
ラスはそこまで計算していないのがまたシュールです。バカですよ、基本はこの男…。
とは言え、こうして真逆の仮アイデンティティから自分を見つめ直し、マッチョイズムの脆弱さと世間の風見鶏な振る舞いを浮き彫りにさせているので、器用ながらも急所を突いたプロットだと思います。
失態を更新する大失態
『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』はその土壇場の勢いで始まった偽装人生から、自分と男らしさの付き合い方を見直すことになります。
ラスは別にあのマッチョな男らしさありきの人間ではないのです。チャドとしても全然活躍できる。それはラスにとっては新世界です。
一方で、チャドには本物の過去はありません。そして過去の自分を切り捨てる必要はないんじゃないかと悩み抜きます。本作は、過ちを犯した人間であっても「自分を咎めて、ひたすら自分を嫌いになる」という底なし沼に飛び込まなくてもいいのでは?と手を差し伸べてくれます。
しかし、『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』はいかにもスッキリさせてくれる理想的なエンディングに安易に着地しません。ハリウッド映画的なプロットなら、セカンドチャンスに成功して、リッキーとも幸せなカップルになっているでしょう。
でも本作は男に厳しいです…。結局、ラスが「チャドになる」という行為はどう取り繕っても不正であり、いろいろな人を裏切り続けているので(監督の妻と浮気するダメ押し!)、冒頭の車椅子少年転倒事件よりも大問題です。そう、ラスはまたやってしまいました。
サイバートラックを乗り回すこの男は、父親とは和解できましたけど、前進はそこまで。リッキーさえも半ば脅迫じみた言葉で共犯にしてしまい、あのスポーツの歓声の承認欲求に身を浸します。
シーズン1のラストだけで終わるともうほぼバッドエンドですが、この男の物語の続きに平穏な幸せはあるのでしょうか…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
関連作品紹介
グレン・パウエル主演の映画の感想記事の一覧です。
・『ツイスターズ』
・『恋するプリテンダー』
以上、『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)20th Television チャドパワーズ
Chad Powers (2025) [Japanese Review] 『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』考察・評価レビュー
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