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『ビューティー・インサイド』感想(ネタバレ)…恋愛は外見か中身か、真摯に向き合った名作

ビューティー・インサイド

恋愛は外見か中身か、真摯に向き合った意欲作…映画『ビューティー・インサイド』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Beauty Inside
製作国:韓国(2015年)
日本公開日:2016年1月22日
監督:ペク
恋愛描写

ビューティー・インサイド

びゅーてぃーいんさいど
ビューティー・インサイド

『ビューティー・インサイド』あらすじ

家具デザイナーとして働くウジンは眠りから覚めるたびに外見が変わってしまう。その姿は男性、女性、老人、子ども、外国人など実に様々だった。ある日、家具屋に務めるイスという女性に恋をしたウジンは、同じ顔を保つために3日連続で寝ずにイスとデートを続ける。しかし、眠気に勝てずに眠ってしまい…。

『ビューティー・インサイド』感想(ネタバレなし)

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個人的2016年ベスト恋愛映画

ある日、ひょんなことから別人に姿が変わってしまうというSFドラマは古今東西たくさんあります。今年だけでも『あやしい彼女』、『セルフレス 覚醒した記憶』、そして何といっても『君の名は。』など、邦画・洋画・アニメとよりどりみどりです。

まあ、楽しいですからね、別人に変わったら。それだけでドラマが生まれます。もしあの人だったらこんなことができる。こういう人間になったらあれもできる。こんな妄想が捗るのは、自分自身に対して退屈さをどこかで感じている証拠。ゲームだったら簡単に操作キャラクターをもう一度クリエイトできるかもしれませんが、現実はそうはいかない。一度スタートしたら引き返せない1回限りのライフだからこそ、“もしかしたら”の想像を楽しむのは普通なことだと思います。

そんななか、本作『ビューティー・インサイド』ほど難解な設定はなかなかないのではないでしょうか。本作の主人公は見た目が変わるのですが、それがなんと眠るたびに常に別人に変わる。しかも、その姿は老若男女、人種さえも何でもあり。そのため、123人1役という、もはや何が何だかわからない役者陣となっています

「123」って…。いくらなんでも多すぎです。そうなってくると自分が誰なのかすら怪しくなってくるし、そもそもそれで物語が成立するのかという話です。

ちなみに劇中で主人公のある日の姿の一人を演じる役者のなかには、日本の俳優から上野樹里が出演しています。ちょい役ではなく、印象的なシーンで登場するので要注目です。

なぜこんな難解な設定なのかというと、本作の元ネタは小説でもなければ漫画でもない、実はインテルと東芝の合同による広告企画でした。それがソーシャル・フィルム「The Beauty Inside」と呼ばれるもので、「誰でも主人公の男を演じることができる映画」というコンセプトでユーザーから送られてきた映像で物語を構成していく変わった制作スタイルの映像作品。いわばソーシャルメディアを使った参加型企画だったわけです。

正直、映画向きではなく、どちらかといえばプロモーション用の企画であり、普通だったら映画にしようとはなりません。

まず、よくこんな企画を映画として成立させたなと…。だって、本来は一発ネタの企画なのですから。1本のドラマにするとなると全く別次元の難しさでしょう。

ただ、本作の凄いところはこれだけにとどまりません。

本作は、別人になるというSF的現象をめぐる人間の心理にこそ焦点をあてて真剣に描いているのです。よくある類似の作品だと、この現象をドタバタコメディで済ましがちですが、本作は向き合い方が違う…そう感じました。そこはさすが韓国映画というか、ドラマのクオリティが段違いです。いや、もちろん韓国映画にも平凡なドタバタ劇にとどまる作品はいっぱいあるのですが。

「恋愛は外見で決まる」「恋愛は中身が大事だ」これらの意見の人どちらにも、観てほしい一作。きっと色々な恋愛観を揺さぶるかもしれないなとも思います。人は一体何に恋をしているのか。自分を定義するものは何なのか。語りがいのある作品ではないでしょうか。

個人的には2016年のベスト恋愛映画です。

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『ビューティー・インサイド』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ビューティー・インサイド』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):これが自分の日常

朝。ベッドからおもむろに起き上がるひとりの人間。自分の身体を触りながら、なぜか初めて触れるかのようにじっくり観察。少し腹回りの目立つ体型で、そばにあったズボンは足を通せるものの、チャックをあげられません。しょうがないので紐でなんとかします。

そして同じベッドの隣で寝ている女性を起こさないようにゆっくりと部屋を出るのでした。

キム・ウジンは入りきっていない靴のまま、バスに乗ります。昨日は手のひらくらいに顔が小さかった…でも今は全然違う…。でもまた寝ればどうせ明日は違う姿になる…。

実はウジンは寝るたびに姿がまるで変わってしまうという不思議な現象に見舞われていました。男、女、老人、子ども、外国人…。身長も、体重も、視力も、声も変わる。毎朝、新しい自分に合わせるのがいつもの日課。

普段はウジンは家具職人で、1人でデザインし、1人で作るので、仕事上は困っていません。インターネットの時代です。顔を出さずに生きる方が気楽なこともあります。

唯一の友達は、ハン・サンベクです。今日も工房にやってきて、ウジンの顔をまじまじ見つめ、「今日のビジュアルはイケてる。女にモテそうだ…」と品評。

サンベクに誘われてバーに遊びに出かけることもあります。ウジンは毎回プロフィールをでっちあげますが、サンベクは酔って女性相手に本当のことをベラベラと喋ります。でもあまりにも荒唐無稽なので信じてくれません。

12年前のあの日からずっとこの生活…。

2004年。18歳の誕生日でした。ウジンは自室で目を覚まし、自分の変化に驚愕します。なんでこんなことになっているのか…。自分がおじさんのような見た目に…。母親に泣きつき、母親は自分を受け止めてくれました。

大学には行けません。この人生に慣れるしかありません。そうして少しずつ慣れてきた2007年。幼馴染のサンベクが来訪してきます。会えないと言っているのですが、何度もしつこいのです。今日はウジンはおばさんの姿。そこで真実を告白することにします。当然困惑です。

「一番好きな日本の女優は?」「蒼井そら」

記憶は間違いなくウジンのもので納得するしかないサンベク。そしてあっさり理解して笑い飛ばしてくれました

こうして人生の苦しみを打ち明けられる友ができますが…。

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恋愛に悩む全ての人へ

恋愛相手を決める判断材料は、所詮「外見」なのか…。今年公開されたヘンテコ恋愛映画『ロブスター』でもみられた恋愛へのシニカルな視点が垣間見える本作『ビューティー・インサイド』。

残酷だけど、それもひとつの事実。もちろん中身の大事さも否定はできないし、そういう部分の重要性をないがしろにするつもりはないですが、でもどうしたって外見を気にしないわけにもいかないはず。少なくとも視力のある人は。なんといっても真っ先に入ってくる相手の情報です。その影響力は無視できません。

この「人は外見だ」論に文句を言いたくなるのは、どうしてもそれが不純で偏見に満ちたものになりかねない怖さを持っているからでしょうし、それもよくわかります。ましてや恋愛ならば、自分の世間的な評価も気になるので“私は外見ばかりしか見ていない嫌な人間ではない”とアピールしたくもなります。

『ビューティー・インサイド』では外見で徹底的に物事が決まる残酷さも描いています。それこそその特異な設定だからできる極端なシチュエーションでもって、視覚的に一番最悪な状況を見せるなど、ちょっとズルいくらいです。さすがに見た目が次の日に薄汚いオッサンに変わってしまったら、何事もなく接してくださいという方が無理です。これが子どもの姿になってしまったら、それはそれで無理だし…。

ただ、『ビューティー・インサイド』はその外見問題について、そこまで大きな主題にはしていません。逆に変に気張ることなく素直に描いているのが好感を持てます。そこは本作では唯一コメディでなごましていた点だった気がします。とくにウジンの正体を知るあの友人キャラ。「ヤラせてくれないか」って…まあ、正直ないい奴ですよ。

私が『ビューティー・インサイド』を評価するのはその先の展開。

本作のシニカルさの向かう先は、外見重視の恋愛価値観だけではないのが面白い。つまりそれは「恋愛は、外見じゃない。内面だ」といういかにも綺麗な正論に対する「本当にそう簡単に言える?」という視点です。

最初に外見で全てが決まる残酷さを冷酷無慈悲に描いておいて、最終的に「恋愛は、外見じゃない。内面だ」という一種の綺麗事な着地をするなら普通じゃないですか。でも本作はそういう安易な結末にはならない。

外見が毎日変わっても中身は一緒なんだからと、付き合うことになったウジンとイス。外見変化を笑いのネタに楽しみ、順風満帆に見えましたが…。「イスは世界一愛される女性になれる」なんていうウジンの考えは甘いものでした。

想像以上にイスの精神は外見が変化し続けるウジンに滅入り、薬漬けに陥ってしまいました。まさに愛ゆえに壊れる。人の内面だけを愛することの難しさをここまで丁寧に表現する本作は凄いと思います。

それでも本作は恋愛の美しさを最後には描きます。しかも、そこがまたいい。

ここでウジンのオーダーメイド家具職人という設定がメタ的に効いてきます。イスにぴったりの椅子を送るシーン…外見は合わせられないけど、家具は合わせられる。外見や中身が完璧でなくても、方法や手段は違えど、傷付くことは覚悟の上でも、相手に寄り添う努力はできる。それができるかどうかだと。本作の恋愛観はとにかく正直です。

ラストのいろいろな姿のウジンがイスにキスするシーンで、ハッと気づかされました。本作の描く内面の恋愛とは、全世界あらゆる人に通用する普遍性があるんだなと。外見、性別、国籍、人種を超えて恋愛は成立する。予想をはるかに上回るテーマの広がりに虚をつかれたというか。そこまで深いテーマをさらっと描き出すとは…。

結局、恋愛は突き詰めると、人間関係、つまりどうやって多様性を受け止めるかという論点につながっていきます。そこには性欲とか繁殖とか社会的な家庭観とか、その手のものを超越した、“どうやって他者を受け止めるのか”という投げかけです。

監督はこれがデビュー作なんですよね。凄いな…。

恋愛映画というよりは恋愛批評映画として心に刻み込まれる作品でした。

『ビューティー・インサイド』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 70% Audience 84%
IMDb
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 9/10 ★★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD. All Rights Reserved.  ビューティーインサイド

以上、『ビューティー・インサイド』の感想でした。

The Beauty Inside (2015) [Japanese Review] 『ビューティー・インサイド』考察・評価レビュー