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実写映画『白雪姫』感想(ネタバレ)…鏡よ鏡、この世で一番DEIにうるさいのは誰?

白雪姫

そんな人はいっぱいいます…映画『白雪姫』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Snow White
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年3月20日
監督:マーク・ウェブ
恋愛描写
白雪姫

しらゆきひめ
『白雪姫』のポスター

『白雪姫』物語 簡単紹介

かつて人々が平穏に暮らしていた王国は、以前の女王の亡き後に現れた邪悪な女王によって闇に支配され、活気を失っていた。純粋な心を持つ白雪姫も城の敷地に幽閉され、自由を奪われてしまう。邪悪な女王は白雪姫の美しさを脅威と感じ、ついにはこの世から排除しようと画策。危険な女王に命を狙われた白雪姫は森に迷い込み、そこで小人たちと出会う。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『白雪姫』の感想です。

『白雪姫』感想(ネタバレなし)

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毒リンゴは食べないように

残念なことに有色人種の俳優が人気作品の主要な役に起用されると、もはや条件反射のように「行き過ぎたポリコレだ!」と唾を飛ばして口々に言い放つ人たちが一部で出現するのがお決まりの風景になってしまいました。

ディズニーだと、つい最近も実写版『リトル・マーメイド』がその槍玉にあがって主演俳優へ誹謗中傷が相次いだばかり。

そしてこの2025年に劇場公開された新しいディズニーの実写映画もご多分に漏れず、そのターゲットにされました。

それが本作『白雪姫』です。

ディズニーの記念すべき長編映画第1作で、世界初の長編アニメーション映画である1937年の『白雪姫』を実写映画化した本作。

その主人公のプリンセスの役に、ラテン系の“レイチェル・ゼグラー”が起用されたことで、一部の人が噛みつきました。アニメ映画のほうでは「雪のように白い肌」という設定であり、それにそぐわないからというのが理由ですが、別にどうアレンジしようが創作の自由です。有色人種のキャスティングを毛嫌いするのは心の内にある白人至上主義の毒が染み込んでいるからでしょう。

そもそも元のアニメ映画の『白雪姫』は、“グリム兄弟”『グリム童話』(1812年)に収載された物語を原作としていますが、この『グリム童話』版も原点ではありません。『白雪姫』の物語はそれよりも前から語り継がれており(例えば1782年の『Richilde』)、起源は不明です。つまり昔から変更を加えられ続けている御伽噺なのであり、今だって改変したって全然いいはずです。『白雪姫』は人種が関係ないストーリー構造なので、キャラの人種を変えても問題なく成り立ちます。

今回の実写映画における“レイチェル・ゼグラー”の起用は、リメイク版『ウエスト・サイド・ストーリー』でひと足先に彼女の才能に惚れ込んだ“スティーヴン・スピルバーグ”の熱烈な激推しがあったのも大きいようですが、歌も抜群に上手いし、ヒロインとしての存在感もハンパないので、納得です。

Media Matters」によれば右派メディアはノンポリを気取りながら勢力を増しているそうですが、そんなメディアにヘイトスピーチをぶつけられながらもまだ若い“レイチェル・ゼグラー”は気丈に振る舞っていましたThe Mary Sue。本来はもっと企業や社会が守るべきですよ。

しかし、今回の実写映画『白雪姫』はそのとくに悪いこともしていないのに非難される“レイチェル・ゼグラー”の一方で、こちらは結構深刻な問題言動をとっている俳優もキャスティングされていたため、状況が複雑化しました。

その人とは、邪悪な女王の役に抜擢された“ガル・ガドット”です。『ワンダーウーマン』で一躍スター俳優に駆け上がった“ガル・ガドット”でしたが、イスラエル出身で、つい最近も植民地主義的な侵攻を強めてガザへの非人道的な攻撃を行うイスラエル政府を支持する発言をし、彼女をボイコットする反発を招きましたThe Guardian。まあ、その“ガル・ガドット”が、現代なら病院とかへの空爆を指示しそうな権力を持つヴィランを本作で演じているのが皮肉ではありますけど…。

これに関して“レイチェル・ゼグラー”はパレスチナの自由を支持するコメントをしており、彼女への苛烈なバッシングの背景にはこのイスラエル批判を許さない圧力があるとも思われますVanity Fair。ついこの前は大量虐殺と民族浄化に苦しむパレスチナを支持した“メリッサ・バレラ”が『Scream 7』から降板させられる出来事もあったばかりで(こちらもラテン系の若い女性)、ハリウッドの露骨な言論統制嫌がらせは本当に醜悪です。

“レイチェル・ゼグラー”と“ガル・ガドット”は同質の「お騒がせ俳優」なんかではありません。それなのに政治的追及に怖気づくメディアは“ガル・ガドット”の件には消極的なため、非常に不均衡な報道が慢性化してしまいました(“レイチェル・ゼグラー”だけが問題かのような報道になっている)。

日本でも安易にアンチ・ポリコレのノリに乗っかってしまう人も多々見受けられますが、それは陰謀論への簡単な入口です。毒リンゴを食べるくらいにあっけなく身を危険に晒すことになるので、気をつけましょうね。

とまあ、政治的論争の説明はそれくらいにして、実写映画『白雪姫』は他の点でどうアニメ映画と変わったのか(もしくは変わっていないのか)、そんな豊かな視点で観ていくと楽しいと思います。

ネタバレ無しで言える範囲だと、アニメ映画よりもはるかに明確にミュージカルになっていますので、それだけでも印象はかなり変わってきています。

ネット上の毒リンゴをゴミ箱に放り捨てつつ、実写映画『白雪姫』を眺めてみてください(“ガル・ガドット”のボイコットをする人は映画を観ずにこのままこちらの感想でも読み進めてもらえれば…)。

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『白雪姫』を観る前のQ&A

✔『白雪姫』の見どころ
★レイチェル・ゼグラーの存在感とミュージカル。
★キャラクターの役割の変化などアニメ映画との違い。
✔『白雪姫』の欠点
☆大筋は劇的には変化していないので、新鮮味は薄い。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 4.0
子どもでも楽しめます。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『白雪姫』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

昔々あるところに、仲睦まじい王と女王がいました。雪深い吹雪の日、2人の間に子どもが生まれ、その女の子は白雪姫(スノーホワイト)と名づけられます。無邪気な白雪姫は両親の愛に包まれてスクスクと成長し、町の人々にも親しまれていました。白雪姫は誰にも分け隔てなく接する優しい子でした。

しかし、悲しい出来事が起きます。母が亡くなってしまったのです。

喪失感も消えぬ間に、父である王は次の妻を迎えました。そこでやってきたのが怪しげな女性で、魔法の力を使うことができました。王は王国の南の国境に迫る脅威と戦うために兵隊を引き連れて出発してしまいます。その間、新しい女王はこれを待ちわびたかのように王位を奪い、国を我が物顔で統治しだします。

邪悪な女王は魔法の鏡を持っており、いつも「この世で一番美しいの誰?」と鏡に質問しては、自分自身が一番に美しいという返答に満足していました。しかし、成長する白雪姫の美しさがいつか自分の美しさを凌駕するのではと恐れていました。

女王のせいで庶民は貧しくなり、王室の衛兵として徴兵されることを余儀なくされる者もいました。

今や白雪姫も自由を奪われ、城に閉じ込められて召使いのように働くしかできなくなります。会話相手は庭先にいる小動物くらいです。

ある日、白雪姫は、食料庫を漁っている盗賊団のリーダーであるジョナサンに偶然ばったり出会います。ジョナサンは捕まってしまいますが、可哀想に思って、白雪姫は彼を解放し、パンを一切れ与えて逃げる姿を見送ります。

そうこうしているうちに魔法の鏡は白雪姫が最も美しいと宣言してしまい、女王の心をかき乱します。激怒した女王は、手下の猟師に白雪姫を殺して彼女の心臓を持ち帰るように命じます

それでもその猟師は良心があり、その命令を遂行する気になれず、白雪姫に警告することにしました。そしてわけもわからない白雪姫をその場の森の奥深くに逃げるように追い立てます。死んだということにしてしまえば、きっと助かると考えて…。

白雪姫は混乱の中で森を彷徨い、やがてある家に辿り着きますが…。

この『白雪姫』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/03/29に更新されています。
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白雪姫のリーダーシップ

ここから『白雪姫』のネタバレありの感想本文です。

実写版『白雪姫』の脚本を手がけたのは、『ガール・オン・ザ・トレイン』“エリン・クレシダ・ウィルソン”。元のアニメ映画を手堅く現代的な感性で要所要所リニューアルしていたと思います。

一番はやはり主人公の白雪姫のキャラクター性。最近のディズニーのプリンセス・ストーリーの実写映画化では定番になっていますが、主体性を底上げし、なおかつ恋愛に依存しない女性像にするというのがまずは基本です。

もともとのアニメ映画では白雪姫はディズニー・プリンセスの中でも初期ということもあってか、最も主体性が薄かったです。愛らしいヒロインとしてふわふわ漂っているだけというか…。自我があまり見えてこないキャラでした。

小人や動物たちをさりげなく操作して家事とかさせるのは上手かったですけど…。

今作の実写版では、幼少期から町の人に認知される存在感があり、それはにこやかに手を振る象徴的な佇まいではなく、積極的に町に尽くす良識的な統治者のお手本です。森に迷い込んでからもその才能が小人相手に発揮されるので、白雪姫の公正な善人性と能力が証明されます。

毒リンゴを食べさせられるくだりも、アニメ映画だとどう考えても怪しそうな相手から不審なものを受け取ってしまっていたのでちょっとマヌケな感じになってしまっていましたが、実写版は愛する人を持ち出されるという心理操作を受けていて、白雪姫が迂闊にはみえないようになっていました。

そして終盤が一番大きな変化です。白雪姫は町に現れて、町の人々の信頼を武器に行進し、兵隊も味方にし、女王に立ち向かいます。これは完全にプロテストによる権力転覆ですね。『ウィッシュ』でも似たような構図でしたけど、今作の実写版も白雪姫をアクティビストのリーダーシップで最後に花を持たせたかたちに。魔法の鏡にまでその才覚を認めさせて抜かりはありません。

“レイチェル・ゼグラー”は『ハンガー・ゲーム0』でも同じようなポジションでしたからね。これで白雪姫にも弓矢を持たせたら瓜二つになりますよ。

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王子よりもまともなジョナサン

ただ、実写版『白雪姫』で白雪姫以上に主体性が増したのは、王子でしょう。

いや、今作では王子はでてきません。代わりにジョナサンという若い男性のキャラクターが登場し、アニメ映画の王子の役割を担います。

アニメ映画の王子は本当に存在感が薄く、急にフラっと現れて永遠の眠り(死の暗示)につく白雪姫にキスするだけです。実質は「突然現れた何の接点もない男が女の死体にキスする」という結構ヤバい図になっているせいで、ストーカーというか、常軌を逸したおかしな奴に見えなくもないキャラでした。現実でこんなことしたら通報されますよ。

実写版のジョナサンはとても充実した出番が与えられています。

肝心のキスも、それ以前に小人たちの家の前でのパーティーで白雪姫とデュエットがあり、良いムードでキスしかけるところまで描いており、要するに「同意はちゃんとあります!」というこれ以上ないわかりやすい前置きです。そして眠りから覚めるキスの後に、2人でもう一度キスしあって、念入りに「同意あったでしょ?」と再確認。まあ、こういう描写になるよね…。

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改善しようとしているのは伝わる小人たち表象

実写版『白雪姫』のキャラクターで最大の懸念事項は小人たちでした。

この7人の小人たちは、現実に存在するLP(いわゆる小人症の人のこと)へのステレオタイプを助長する描写になっているのは確かに動かぬ事実で、かといってちょっと変更すれば良くなるものでもなく、厄介な難所。

結局、この実写版は7人の小人たちをCGIで表現し、無難に映像化しています。「おこりんぼ」の声は“マーティン・クレバ”という実際のLPの俳優が演じています。

これだけだと正直、う~んって感じなのですが、今作は新規追加されたジョナサンの属する盗賊団に“ジョージ・アップルビー”演じるLPのキャラクターがおり、本来のLPの人間のちゃんとした役柄が配置されています(セリフ量も多いのは意図しているのでしょう)。

無難ですが、改善しようとしているのは伝わる…。伝わるは伝わるけども…。

問題は既存のキャラクターと比べると、魅力的と言えるほどにキャラクター性が豊かになりきれていないところですかね。どうしても批判を払拭するために用意したキャラにみえてきてしまいます。トークン・マイノリティっぽいんですよね。

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次は邪悪な女王の番です

そして最後に欠かせないキャラクターは邪悪な女王です。個人的にはこの実写版『白雪姫』で最も物足りないキャラだと思いました。

もともとのアニメ映画は白雪姫の存在感が薄かったこともあり、自分で能動的に美しさというアイデンティティと権力を求めるあの邪悪な女王のほうが相対的に強烈に目立っていました。そういう事情もあり、当時はあの女王をフェミニズム的に評価する人もいたくらいです。

しかし、実写版では前述したとおり、白雪姫に大きな主体性が追加され、より現代の正当なフェミニストを体現するようになりました。そうするとやはり相対的に今度は女王のほうが影が薄くなった気がします

今作の女王も完全なる悪であり、強欲な圧政と支配者の具現化です。しかし、白雪姫たちはその女王ひとりさえ打倒してしまえばあっけなくあの王国を平和にしてしまっており、そこに政治的複雑さは皆無です。結果、女王の存在の薄っぺらさが余計に増した感じでもありました。これはあの終盤の改変が仇になっている部分でもあるのですが、白雪姫というキャラクターを深みあるものにするならば、女王はもっと何かできないかとも思うわけです。

例えば、女王側にも何か新規のキャラクターがいたっていいでしょう。女王を陶酔する支持者だっているのも普通じゃないでしょうか。女王の戦略もより策略的になってもいいはずです。白雪姫は小人たちに毒を盛られて殺されたと公然と吹聴するとか…。商品券を配る程度の策もとらなかった今回の女王はちょっと無能にみえる…。

ただでさえ『ウィキッド ふたりの魔女』が公開された後のファンタジー映画ですからね。この実写版『白雪姫』の対立図の平凡さは気にはなります。

これまでのディズニーの実写映画化の試みはプリンセス・ストーリーだと『シンデレラ』『美女と野獣』など続いてきて、確実に改変の思い切りの良さは増えつつあって、そこは素直に褒めたいところですが、どうにもこうにも跳躍が大きく決まらないもどかしさはなおも残るなというのが現状への印象です。

『白雪姫』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

以上、『白雪姫』の感想でした。

Snow White (2025) [Japanese Review] 『白雪姫』考察・評価レビュー
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