「ミニオンズ」のスピンオフです(嘘)…映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年7月21日
監督:カイル・バルダ、ピエール・コフィン
かいとうぐるーのみにおんだいだっそう
『怪盗グルーのミニオン大脱走』物語 簡単紹介
『怪盗グルーのミニオン大脱走』感想(ネタバレなし)
黄色の躍進劇
日本の映画界で最も客寄せパワーを持つ“黄色い”キャラクターは、昔は「ピカチュウ」でしたが、今や「ミニオン」になりました。世代交代ですね(『カーズ クロスロード』で見た光景)。
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で専用テーマ・パークさえ作られるぐらい、天下をとったミニオンたち。もう完全にイルミネーション・エンターテインメントの看板を背負うマスコットキャラクターですよ。
元はといえば「怪盗グルー」シリーズのサブキャラクターでした。第1作にして初登場の『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)では主人公グルーの周りにいる変な奴らという感じでしたが、2作目『怪盗グルーのミニオン危機一発』(2013年)では物語に大きく関わる存在に格上げ。そして、『ミニオンズ』(2015年)ではスピンオフとして完全に主人公の座に上りつめる存在に。おそらく当初は製作者側もここまで人気になるとは想定していなかったのだと思いますが、偶然の産物はいえ、凄い躍進です。
ミニオン語という独自の言葉をしゃべり、スラップスティックなドタバタコメディによる珍行動で笑わしてくるこの愛すべきバカたちは、万国共通で好かれそうな普遍的な愛嬌が確かにあります。でも、実は設定やデザインは初期から少しづつ変化しています。当初はグルーの仲間のネファリオ博士がバナナから作ったという設定(オリジナル版ではシリアルになっています)だったのですが、『ミニオンズ』では古来から存在していて悪役を本能的に求める生き物という扱いに変わってます。最新作でもこの新設定は引き継いでいるので、どうやらこっちの方向で行くらしいです。
その最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』は、『ミニオンズ』よりはミニオンの出番は少なめですが、じゅうぶんハチャメチャしてます。主人公はグルーですけど、日本人はミニオン目当てで観るのはわかりきっているので、ポスターも予告動画もミニオン押し。正直ですよね…。残酷だけど、これがマーケティングなんです…。
本国アメリカでは興収は前作より落ち込んでいるようですが、きっと日本ではまだまだ大健闘するんじゃないでしょうか。
ミニオンLoverな日本人の皆さん、ぜひ劇場へ。
『怪盗グルーのミニオン大脱走』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):双子でした
バルタザール・ブラッドは1980年代の最高の子役として悪ガキの象徴でした。世界中の子どもの心をつかんでおり、玩具は大ヒット。しかし、番組はシーズン3で打ち切り。それにともない、人気は低迷。いつしか彼は役ではなく本当に悪党になっていき…。
現在。バルタザールはいまだに80年代ファッションに身を包み、タンカーを襲うべく、侵入。それを世界の悪人に目を光らせる反悪党同盟が察知。捜査官を急行させます。それは晴れて結婚したグルーとルーシーです。あとミニオンも。
バルタザールの狙いはピンクのダイヤモンド。巨大な風船ガムで船を浮かせ、船ごと強奪。船に乗り込んだグルーはバルタザールと対峙。軽快なダンスで攻撃を回避する敵をノックアウトし、ダイヤを取り返すグルー。けれども余裕な顔でバルタザールは飛んで逃げました。
愚痴を言いながらグルーは反悪党同盟の総会に参加。新しいリーダーであるミス・ヴァレリーはグルーを使えない捜査官呼ばわりし、クビ宣告。ルーシーまでです。
帰宅した2人。マーゴ、イディス、アグネスの3人娘が新婚旅行代わりとして特別なディナーでお迎えしてくれます。クビになったと聞いて子どもたちが心配そうにしますが、あえて元気に振舞うグルー。
ミニオンたちはグルーが悪党に戻るのかと盛り上がっていました。「悪党には戻らない!」と言い放つと、失望したのかミニオンたちは出ていきます。
一方、フランスのパリ。専門の鑑定でダイヤモンドは偽物の疑いが生じ、しかもその専門家はバルタザールの変装で、ダイヤをまんまと盗まれます。
グルーは方向性に悩んでいました。アグネスは大切なユニコーンの人形を売っており、「お前が心配することじゃない」と言葉をかけます。
そこに見知らぬ老人・フリッツが。なんと双子の兄弟、ドルーの依頼で来たというのです。フリードニアまで会いに来てほしい、と。
「俺に兄弟はいない」と否定しますが、写真を見せられ、母親に兄弟を聞くと「生まれて間もなく離婚して、それぞれが子どもを抱え、二度と会わないと約束した」と打ち明けます。
とにかく飛行機で向かうことにしたグルー家族。ルーシーは子どもたちと仲良くなろうと必死です。そこは巨大な屋敷があり、ブタ牧場が家業らしいです。
屋敷内は絢爛豪華。そこに出現した真っ白な衣装を身にまとうドルー。そっくりです。ふさふさの髪以外は。
子どもたちともすぐに打ち解け、庭には車やヘリがズラリ。嫉妬するグルー。惨めな気分が増します。
ルーシーは子どもたちと、ママと娘の絆作りとして、チーズ祭りの真っ最中の街を観光。
残った兄弟は、ドルーの案内で地下へ。そこで本当の家業は違うと説明し、「ただの悪党じゃない、人類史上の大悪党」「父は偉大な悪党だと褒めていた」とドルーは語ります。でもドルーは才能がないと思われていたそうで、「悪党の手ほどきをしてくれ」と懇願。「悪いけどそういう生き方はやめたんだ」とグルーは言いますが、やたらピカピカな悪党モービルを見て気持ちが揺らぎます。
その頃、バルタザールは自分を打ち切りにしたハリウッドへの復讐を進めており…。
家族は増えるよ!(年はとらないよ!)
端的に言ってしまえば「いつもどおり」なミニオンズ、いや怪盗グルーでした。
この世界では時間の流れが止まっている「サザエさん方式」なんですかね。グルーの3人の愛らしい娘たちである、相変わらず思春期中のマーゴ、間に挟まれヤレヤレな感じのイディス、ユニコーン狂のアグネスも、見た目は全く成長していません。年はとらないファミリー・ストーリーです。
変わらない安心感はありますが、こうなってくると必然的にメンバーを増やすくらいしかできることがなくなってきます。
そこでの双子の兄弟の登場です。まあ、といっても深刻な問題は起きず、ちょっと険悪になってもすぐ仲直りなんですが。見た目を入れ替えて遊ぶグルーとドルーのシーンなど、基本はギャグです。退屈かもしれませんが、子ども向けとして親心的には安心して観せられますね。
ミニオンの歌のセンス
一方のミニオンたちですが、驚いたのはメインストーリーに全然絡んできません。完全に独立していて、ラストの対決でさえミニオンがいてもいなくても影響ないような立ち位置です。お話しとしては『ミニオンズ』と同じ“ボスとなる悪を探す旅”の延長でした。
今作ではイルミネーション・エンターテインメントの前作『SING シング』を思わせるかのように、ミニオンたちが熱唱するシーンがありました。ミニオンにも歌わせてあげようというファンサービスなのでしょうか。ピザに釣られたミニオンたちは流れで歌番組のステージに立ってしまいます。ただ、ここで歌うのが、なんとアーサー・サリヴァンのコミックオペラ「ペンザンスの海賊」の「I Am the Very Model of a Modern Major General」(ミニオン語)。どういうチョイスなんだ。
歌の元ネタを見てもらうとわかるように、ちゃんとそっくりに歌い上げてます。ミニオンたちは毎回時代の古い歌を歌うのが定番になってましたが、変化球がすぎるよ、イルミネさん…。
最後こそがミニオン大脱走
子ども向けだからと下駄を履かせればこんなもんだろうと納得はできますが、ストーリーがマンネリ化していることも否めません。
終盤のバトルはずいぶん急ぎ足で畳んだかのようなアッサリ感。ミニオンが作った空飛ぶ船をもっと最後の戦いに活かしてほしかったし、ダンスファイトももっと派手にできたのではとも…。
ラストはドルーとミニオンたちが悪事稼業に飛び立つとこで終わりでしたが、これが本当の“大脱走”だったのかもしれない。
続きそうな終わり方でしたが、“スティーヴ・カレル”はグルーから引退との噂もありますので、もしかしたら『4』はないかもしれません。でも、『ミニオンズ2』の制作は決まっているので、今度はそっちをメインにシリーズ化していくのかな? 将来的に「怪盗グルー」シリーズは「ミニオンズ」シリーズのスピンオフとして乗っ取りに遭うのではないかという気さえしてくる…。
とりあえずミニオンだけは躍進し続けてます。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 59% Audience 54%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★
関連作品紹介
シリーズの映画の感想記事です。
・『ミニオンズ フィーバー』
作品ポスター・画像 (C)Universal Studios
以上、『怪盗グルーのミニオン大脱走』の感想でした。
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