感想は2400作品以上! 詳細な検索方法はコチラ。

映画『8番出口』感想(ネタバレ)…映画に異変があれば視聴をやめないこと

8番出口

異変がなくても視聴をやめないこと…映画『8番出口』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Exit 8
製作国:日本(2025年)
日本公開日:2025年8月29日
監督:川村元気
自然災害描写(津波)
8番出口

はちばんでぐち
『8番出口』のポスター

『8番出口』物語 簡単紹介

とある地下鉄の駅の無機質な白い地下通路を、ひとりの男が先ほどの電話のことで頭がいっぱいになりながら歩いていく。しかし、どこまで歩いても同じような通路が続く。外への出口にたどり着くことができず、何度もすれ違う同じ顔のスーツ姿の男に違和感を覚え、自分がここから出られない状況になっていることに気づく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『8番出口』の感想です。

『8番出口』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

映画8番出口の入り口

「比較的狭い地下鉄駅の通路」は私の嫌いな場所のひとつです。そもそも不特定多数が絶え間なく行き交う人混みの場が苦手なのに、よりにもよってそこに狭さも加わる。しかも、その空間には方向性があるんですよ。

私は最近も実感したのですけど、自分は「自分の意思に反して特定の方向への行動を要求される空間」がとくに嫌なんだな、と。例えば、エレベーターの中だとまだマシなんです。みんな動かないので(それでもストレスではあるけど)。一方で、通路とか、階段となると、みんなどっちかに動くわけじゃないですか。自分もそれに合わせないといけない。遅かったり、立ち止まればその動きを妨げることになる。そういう自分のペースを保持できなくなる状況に強い不安感を感じやすいんでしょうね。

今回紹介する映画は、私の苦手な「狭い地下鉄駅の通路」がほぼ全編にわたって舞台になるので、正直、疑似的な体感としてストレスフルではありましたけど、映画なら耐えられるか…(実際にあんな場に1時間いるのは勘弁…)。

それが本作『8番出口』

本作はゲームを実写化した2025年の日本の映画で、邦画界隈もハリウッドと同じようにゲームの映画化がブームになるのか…とも思いましたけど、今回のものは特例で終わるのか、新たな潮流になるのか、まだわかりません。

原作となっているのは2023年に「Steam」にて配信された日本のゲームソフト『8番出口』。このインディーズゲームは、ゲームに詳しくない人にはその内容が少々特殊でわかりづらいです。

まずいわゆる「ウォーキング・シミュレーター」というゲームのジャンルがあって、それは何かしらの特定の空間をプレイヤーがキャラクターをとおして歩き回る…それだけのコンセプトです。その中で多少のアイテムに触れたりできたりもしますが、基本は「歩く」という最小限のプレイに絞っており、ゆえに低予算で作られます。

ゲーム『8番出口』はそこに「脱出パズル」の要素を加えており、地下鉄の平凡な通路が舞台なのですけど、そこはどんなに先を進んでも同じところをループしてしまいます。そこから脱出するには「あること」をしないといけない…という仕掛けです。

それでもこのゲーム自体はシンプルで、慣れてしまうと10数分とわずかな時間でクリアできてしまうのですが、その癖のあるプレイスタイルが日本を中心に話題を呼びました。おそらくゲーム実況との相性が良く、それも日本のヒットの要因だと思いますが…。

結果、模倣作品も大量に作られ、この一連のプレイスタイルのジャンルを「8番ライク」と呼ぶまでになるほど。

そんなミニマムなゲームが実写映画化されるという発表は驚きましたけど、しかも、「東宝」の看板作品として、今や最も東宝と結びつきの深い“川村元気”が監督し、主演は“二宮和也”を抜擢という…あからさまに「大ヒットさせます」という布陣でくるとは…。

たぶん日本映画界で一番に恵まれた映画化となったゲームなのではないかな。日本ってこれまでも『劇場版 零 ゼロ』などのように、主にホラーゲームが実写映画化されることはたびたびありましたけど、あれはすでにヒットしていたホラー映画のブームに乗っかった感じでしたからね。

今回の映画『8番出口』はその歴史を踏まえても結構、異彩を放っていると思います。アメリカの配給は「NEON」ですしね。

もともとのゲームにもホラー的な演出がありましたが、映画ではそのホラー要素が少し強めになってもいて、「実写化すると、どうアプローチできるか?」を垣間見ることができる実験的な一作とも言えるかも…。

ゲームを知っている人と、知らない人で、感想もガラっと変わってきそうな映画なので、人の感想に触れるのも楽しくなる映画なのではないでしょうか。

スポンサーリンク

『8番出口』を観る前のQ&A

✔『8番出口』の見どころ
★実写化する際の視覚的または物語的なアプローチの創意工夫。
✔『8番出口』の欠点
☆いくつかのオリジナルの要素は上手く嚙み合っていない。

鑑賞の案内チェック

基本 生々しい水害を描くシーンが一部にあります。
キッズ 3.0
一部に怖い描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『8番出口』感想/考察(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(序盤)

乗客でごった返すいつもの満員の地下鉄。日本の都会では何も珍しくない風景であり、みんな平然としています。ひとりの男はイヤホンをしながら自分の手に持ったスマホでSNSをスクロールしてとくに何をするでもなく眺めていました。

ふとイヤホンを外すと赤ん坊の泣き声が聞こえます。静かな電車内にひときわ響く赤ん坊の声。どうやら椅子に座っている女性が抱きかかえている赤ん坊から発せられているようです。

するとその母親とおぼしき女性の前に立っていたひとりの男が「うるせぇんだよ!」と罵声を浴びせます。女性はなおもどうすることもできずにその男の不満をぶつける大声に耐えるのみです。周囲の誰もがそのやりとりを無視し、イヤホンをまた耳につけ、音をシャットアウトします。

そのとき、自分のスマホに恋人の女性から電話がかかってきますが、それに応答せずに電車を降ります。

改札にむけて階段を歩いていると、またも電話。今度はでます。

「やっとでた。今日はどこ?」「これから今日の派遣先」「病院に来て」「どうした?」「赤ちゃんができたの。別れるって決めたのに、どうする?」

男は動揺し、歯切れの悪い反応だけで返事ができません。そうこうしているうちに改札を通り、通路を歩いていくと音が聞こえづらくなります。そして切れてしまいました。

蛍光灯で照らされた「出口0」と書かれた横の壁の黄色い案内板のあるタイルの通路を左に曲がり、すぐに右に曲がると、また長めの直線。奥からひとりの男が歩いてきて通り過ぎます。天井には「出口8」の案内板。

そのまままた左に曲がって右に。また奥からひとりの男。なんだかさっきも見た気がします。

なおも進み続けて左に曲がって右に。また奥からひとりの男。その男はなぜか自分の後ろに立って不審な笑みでこちらを見つめていました。

不気味に感じて慌てて前に小走りで進みます。左に曲がって右に。また奥からひとりの男。

おかしいと感じて今度は引き返すと左に曲がって右に。また奥からひとりの男。同じ光景です。壁に並ぶ掲示物さえも同じです。

消火栓の警報も鳴らなければ、横のドアを開きません。そのとき、天井から血が滴り落ちてきて、慌てて引き返します。

ところが以前は「出口0」と書かれていた横の壁の黄色い案内板が「出口1」となっていました。

そして「ご案内」と書かれた横の張り紙に気づきます。そこにはこう書かれていました。

  • 異変を見逃さないこと 
  • 異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
  • 異変が見つからなかったら、引き返さないこと 
  • 8番出口から外に出ること

わけもわからず、男は通路を進み続けますが…。

この『8番出口』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/02/18に更新されています。

ここから『8番出口』のネタバレありの感想本文です。

スポンサーリンク

原作ゲームの欠点を克服

まず映画『8番出口』で個人的に最も良かったところから感想を始めたいと思いますが、それは兎にも角にも映像的な見せかたです。このタイプの映画は、映像面さえよくできていれば、一定のクオリティを担保できますし、わざわざ映画化する意味があったと言える最低ラインだと思うのですが、本作はそこをしっかりクリアしてくれました。

冒頭は原作ゲームと同様の1人称視点で始まります。そして例の通路でループを自覚しだしたあたりで「迷う男」の第1章が始まり、主人公を演じる“二宮和也”の顔が映って、ゲームとは異なる「カメラワーク」の概念が生じます。

ここからはよくある長回し風(カットは適度に挟んでいる)なのですが、これ自体はとくに取り立てて優れているわけではないです。もちろん綺麗に撮られていますし、主人公が煉獄に囚われているような感覚を効果的に印象づけます。

“川村元気”監督は、『百花』などでも視覚的なトリックを演出に駆使していたので、このアプローチが好きなんでしょうね。

私がこの映像的な見せかたが加わったことで明確に良いと思ったのは、原作ゲームの欠点を映画が克服してみせたことです。

原作ゲームって、日本語圏のプレイヤーと非日本語圏のプレイヤーでは印象がだいぶかわる作品だと思うのです。たぶん海外の非日本語圏のプレイヤーは、日本語圏のプレイヤーほどこのゲームの面白さがイマイチ伝わりづらいことがあったと推察できます。

なぜならこの原作ゲームの異変探し(要するに間違い探し)は日本語認知を問われるところが多々あるからです。異変の中には、それこそ映画でもみられる「ポスターの視線が追ってくる」「ドアが開く」「水流が迫ってくる」などの非言語的なものもあるのですが、全体の空間にあるオブジェクトの多くは日本語情報が付随しています。

日本語圏のプレイヤーは日本語に慣れているので瞬時に苦労なく文字情報も合わせて記憶作業ができます。しかし、それが見慣れない外国語なら同じことはできません。何度見ても毎回違和感を感じてしまいます。

想像してみてください。もしこの感想記事を読んでいるあなたが唯一日本語慣れの人だとして、アラビア語の掲示物だらけの通路を歩くと仮定したら…。歩いているだけで混乱してくるはずです。異変探しどころではありません。

これは言語認識(識字)の脳科学&心理的な問題なのですが、本作である映画版の『8番出口』には「引き返せ引き返せ引き返せ」など文字情報依存の異変もなおもありますが、カメラワーク(そして海外の人には字幕)がそれを補ってくれます。なので原作ゲームよりも安心して没入できるんですね。

私は本作を観たとき、「これなら海外の人も満足度は高いだろうな」と思いましたし、原作ゲームの弱点を映画が解決してくれるのは気持ちがいいものです。

物語も最小限の構成で、ソリッド・シチュエーションを邪魔するノイズにはなっていませんでしたし…。これが『CUBE 一度入ったら、最後』みたいに複数の登場人物が混じり合ってワイワイやられてしまうと、没入感が減退してしまうんですよね…。

ブックエンドのオチになるのは冒頭から一瞬で予想できましたけど、まあ、これ以上のオチはないでしょう。

スポンサーリンク

異変探しのノイズ

個人的にはじゅうぶん完成度の高い映画化だと納得の映画『8番出口』でしたが、一方で、「ここはちょっとな…」と思った部分もあります。

とくにいくつかのオリジナル要素が微妙に噛み合っていない点です。

本作は普通に映画化したらそれこそ短編映画くらいのボリュームしかないのですけど、作中であのアイコンになる「おじさん」の視点に移ることで、物語が引き延ばされています。

おじさん(歩く男)を演じた“河内大和”も見事にハマってましたね。“河内大和”は舞台ですでにたくさん活躍されている人で、今回の映画で新人賞という「全然新人ではない俳優」の事例ですが…。ちなみに「おじさん」って呼ばれていますけど、“二宮和也”と“河内大和”、そんなに年齢変わらないだろうに…。

このおじさん視点は別にいいのですが、問題は今作で追加された「少年」の存在で、この子は不意に現れても「異変」としてカウントされないんですね。

ここを意外性として物語では駆使しているのですけど、プレイヤーになった気分でスクリーンと真剣に“にらめっこ”して「異変探し」している観客にしてみれば「それは反則じゃないか」という興醒めな気分にもさせられるマイナス面もあります。

ただでさえ、本作はカメラワークなどの演出で「異変探し」が簡単になっており、観客にしてみればサポート・モードをONにしてプレイ映像を眺めているようなものです。操作から切り離された部外者である観客は、この映像に介入できないわけで、あとは批評しかできません。興醒めな追加演出への反発はかなり大きいと思います。

あの子の存在があるせいで、もう異変探しのルール自体がどうでもよくなってきてしまってはもったいないです。

基本的に本作の主人公のキャラクター・アークは、「他者への無関心で生きてきた男が善意と責任の覚悟を持つ」という日常の些細な決心を描いています。この無駄のない最小の設定は良かったので、子ども抜きでも演出できなかったものか…とは思いました。

あと、私としては喘息の設定は余計だったかな、と。心理的不安を表現したいのはわかりますけど、喘息というあからさまな健康問題を描くと、「いかにこの場で対処するか」という方向に逸れるのかと思ってしまいますし…(作中ではわりといつの間にかどうでもよくなっている)。

主人公の心理的不安を表現するなら、この舞台ならそこはやっぱり広場恐怖症とか強迫性障害とか、そういう精神疾患をさりげなく演出するほうが合致するんじゃないかなと思います。そもそもこの原作ゲームの仕組み自体、どことなくそういうメンタルヘルスのネガティブな症状の疑似体験に近いものがありますからね。そこを意識するともっと面白い脚色もできたかもしれません。

いろいろ書きましたが、映画『8番出口』はカルト的な映画としてずっと評価されうるポテンシャルを持っているのではないでしょうか。願わくば模倣作がでないことを祈りましょう。

『8番出口』
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

以上、『8番出口』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)2025 映画「8番出口」製作委員会 イグジット8

Exit 8 (2025) [Japanese Review] 『8番出口』考察・評価レビュー
#日本映画2025年 #川村元気 #河内大和 #花瀬琴音 #小松菜奈 #浅沼成 #ゲーム原作 #ゲーム実写化 #脱出サスペンス