ミニオンも2年自粛していました!…映画『ミニオンズ フィーバー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年)
日本公開日:2022年7月15日
監督:カイル・バルダ
ミニオンズ フィーバー
みにおんず ふぃーばー
『ミニオンズ フィーバー』あらすじ
『ミニオンズ フィーバー』感想(ネタバレなし)
やっと映画館で会えました
2022年7月、日本ではまたもや新型コロナウイルスの感染者数が急増し、第7波に入ったと見られています。7月14日の1日の日本全国の感染者数は9万7788人。累計で1000万人を超えるという嬉しくない大台の記録を達成しました。このうち8割以上が今年に入ってから報告された感染者となり、数字上は2022年が一番酷い状況になっています。
とはいえ社会を見るとコロナ禍から回復したというムードが漂っており、経済活動も戻っています。とくに一時期は壊滅的だった映画業界もすっかり好調となり、記録的な興行収入をあげる映画も現れるようになりました。
そんな中、この映画が劇場公開を迎えたというのはひとつの感慨深さがあります。
それが本作『ミニオンズ フィーバー』です。
この「イルミネーション」の顔とも言える『怪盗グルー』シリーズ(「ミニオン」シリーズと言うべきかも)の最新作である『ミニオンズ フィーバー』。当初は2020年夏の公開を予定していました。ところが世界的なパンデミックが深刻になり、フランスのパリにある「イルミネーション・マック・ガフ」のスタジオがロックダウンで一時閉鎖となったこともあり、早々に1年延期の2021年夏公開とすることを発表します。しかし、2021年もコロナ禍は収まる気配はなく、やはりイルミネーションの看板作だからなのか、わざわざ他の自社公開予定映画とスケジュールを入れ替えるまでして、さらにもう1年延期。計2年延期となってやっと2022年夏に公開された…というかたちです。
なのでこの『ミニオンズ フィーバー』、相当前から宣伝が行われていました(2019年時点で日本でも劇場で宣伝が流れていましたよね)。そういうこともあって「あれ? まだ公開されていなかったの?」という気分もなくはない…。コロナ禍での公開延期作が続々とスクリーンに帰ってくる中、このミニオンたちは最後の帰還組という感じです。
そんな2年間の自粛を経て映画館にカムバックしたミニオンたち。世界は大きく様変わりしましたが、こいつたは相変わらずの平常運転です。ほんと、何も変わっていない。逆に安心しますね。黄色いちょこまか動くうるさい奴らがバカをしている姿をただただ眺める…そんな日常がありがたい…。
正直、『ミニオンズ フィーバー』をネタバレ無しでどう紹介すればいいのかさっぱりわからないくらいに内容はアホという名の“無”が詰まった作品ですからね。『ソー ラブ&サンダー』より何倍も荒唐無稽で支離滅裂でハチャメチャですよ。
『ミニオンズ フィーバー』の監督は、『ロラックスおじさんの秘密の種』や『ミニオンズ』を手がけた“カイル・バルダ”。ミニオンの扱いには一番慣れているクリエイターでしょう。前作よりもギャグのキレが良くなっている気がする…。
オリジナルの声を担当するのは、グルーの役はおなじみの“スティーヴ・カレル”。今作では11歳の子どもの姿ですけど、“スティーヴ・カレル”はそのまんまなんだな…。
そして今回新しく登場するキャラクターに声をあてるのがなんとも豪華でネタに振り切った布陣です。まず一人目は悪役を演じる“タラジ・P・ヘンソン”。そしてその悪者の仲間たちを演じるのが、“ジャン=クロード・ヴァン・ダム”、“ドルフ・ラングレン”、“ダニー・トレホ”、“ルーシー・ローレス”となっています。まさか“ジャン=クロード・ヴァン・ダム”と“ドルフ・ラングレン”の共演がミニオンズの世界でまたも実現するとは思わないじゃないですか。また、“ミシェル・ヨー”がカンフーの達人の役で声をあて、“アラン・アーキン”も重要な役をこなしています。実写で思い浮かべたら凄い顔ぶれですよね。
映画館で『ミニオンズ フィーバー』を見て、なんかフィーバーしちゃってください。でも「fever(発熱)」はしないでね。
『ミニオンズ フィーバー』を観る前のQ&A
A:とくにありません。本作からシリーズを初めて鑑賞しても大丈夫だと思います。一応、時間軸としては『ミニオンズ』(2015年)の続編であり、『怪盗グルーの月泥棒 3D』(2010年)へと繋がっていく物語になっていますが、細かい整合性は気にする必要がないテキトーなノリの世界観です。
オススメ度のチェック
ひとり | :疲れた時にストレス発散で |
友人 | :ミニオンが好きなら |
恋人 | :シリーズ好き同士で |
キッズ | :子ども爆笑の映像だらけ |
『ミニオンズ フィーバー』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):ミニボスが誘拐された!?
世界に名が轟く悪人のチームである「ヴィシャス・シックス」。そのリーダーは、年季の入った悪党のジジイであるワイルド・ナックルズです。華麗なスタイルで野心に燃えるベル・ボトム、メカニックなロブスターの爪を装着しているゴツいジャン・クロード、ヌンチャクを武器にして神聖な光とともに降臨する修道女のヌン・チャック、攻撃的なスケーティングで相手を圧倒するローラースケートチャンピオンのスべンジャンス、巨大な鉄の拳であらゆるものを粉砕するストロング・ホールド…こんな個性豊かなメンバーで構成されています。この6人にかかれば怖いもの無しです。
今、ヴィシャス・シックスの面々は恐るべきパワーが秘められているというゾディアック・ストーンを探していました。ワイルド・ナックルズはドラゴンの仕掛けで封印された滝の裏へ単独で進んでいきます。そしてついに宝を見つましたが、金ぴかの何かが襲いかかってきて悪戦苦闘。なんとかぶちのめし、宝を手にすると光が…。確かにパワーを感じます。さらに地上で金ぴかの群れに襲われ、飛行車で駆け付けるベル・ボトムたちに助けてもらいます。ところが、ベル・ボトムたちはワイルド・ナックルズを裏切る魂胆でした。宝だけを奪ってワイルド・ナックルズを突き落とし、ベル・ボトムが新リーダーにおさまります。
その頃、とある学校。将来は何になりたいのかを子どもたちが授業で考えている中、グルーという少年はスーパーヴィランになるというキャリア計画を語ります。
学校が終わり、建物を出ると、他の子たちは親が迎えに来ていましたが、グルーにはいません。でも大丈夫。ミニオンたちが今日も元気に待っていてくれました。
グルーは孤独でしたが最近はこのミニオンという仲間ができたのです。なんでもミニオンズは悪いボスに付き従う性質があるらしく、なぜかグルーに惚れ込んでいる様子。ケビン、スチュアート、ボブの3人のミニオンはとくに慕ってくれます。
グルーとミニオンたちはこの日も街に繰り出して、『ジョーズ』を上映している映画館にアイテムを投げ込んで観客を追い出だして自分たちだけで鑑賞を楽しんだり、ピンポンをズルするなどゲームセンターでふざけまくったり、店をチーズだらけにしたり、アイスクリームをひとりじめしたり…。それはもうやりたい放題のイタズラを繰り広げます。
ひとしきり満足して帰宅。郵便受けにはヴィシャス・シックスからのメッセージ映像があり、なんと新メンバーを募集しているらしいです。グルーはチャンスだと浮足立ちます。
クローゼットの奥の秘密基地にはミニオンがいっぱいおり、グルーを「ミニボス」として崇めます。
でもグルーはヴィシャス・シックスに会いに行く際にミニオンを置いていくことにしました。それでもケビン、スチュアート、ボブ、そしてオットーの4人のミニオンはこっそりついていきます。
ネファリオという男に案内され、グルーはヴィシャス・シックスの基地へ。しかし、ベル・ボトムは子どものグルーを小馬鹿にするだけで仲間にいれてくれません。イラついたグルーは隙を突いてストーンを奪い、逃げます。その姿をワイルド・ナックルズが見ていました。
ヴィシャス・シックスに追われるもミニオンたちの支援もあってなんとか逃げ切りました。
家に帰ってきて、まんまと宝を奪ったことで大盛り上がりなグルーとミニオンたち。ところが宝を預けたオットーはその宝を途中で出会った子どもの持っている変な石と交換してしまっていました。
グルーは激怒し、「クビだ!」と言い捨てて去っていきます。
しかし、家を出たグルーは謎のバンにさらわれ、それはワイルド・ナックルズの差し金でした。狙いは当然あのストーンです。でもグルーは持っていないのですが…。
ボスを失ったミニオンたちはどうする…?
「そうはならんだろ」の連続
『ミニオンズ フィーバー』も前作の『怪盗グルーのミニオン大脱走』に引き続き脈絡もないおふざけ満載の内容でした。でもやっぱりミニオンがメインになっているぶん、本作の方が個人的には面白かったかな。観客はミニオンのバカ描写を期待しますよね。
誘拐されたグルーを助けるべくミニオンたちが出発してからギアが一気にフルスロットルに。サンフランシスコ行きの飛行機でのあまりにアホすぎるフライトといい、オットーの超高速ロードムービーな勢いといい、「そうはならんだろ」というツッコミすらもはや必要としていないギャグの連続は楽しいです。
『ミニオンズ フィーバー』は一応は1976年が舞台設定になっているのですが、その時代感覚はかなりざっくりしているものの、雰囲気だけを楽しむという意味ではこれで正解なんでしょう。
今回のヴィランは『ミニオンズ』に続いてまたも女性悪役なのですが、今度はチームです。もともとこのシリーズの悪党は「007」シリーズにでてくるような荒唐無稽な悪人のフィクション・ラインなのですが(本作でも「007」風のオープニングクレジットがある)、今回はチーム戦になり、ちょっとアメコミ映画っぽい雰囲気にもなっていましたね。
そんなヴィランを倒すべく、ミニオンたちは流れのままに中華街でマスター・チャウからカンフーを学ぶ展開に。絶対に単にミニオンがカンフーしたら面白いなという思いつきのアイディアを実行しているだけですよ。
今作のキーアイテムであるゾディアック・ストーンは、十二生肖、つまり、子・丑・寅・卯・辰…で日本でもおなじみの十二支に因んだものでした。日本人には見慣れた定番ですけど、この文化のない海外の人にはどう映っているのかな…。
とはいえ、まさか最終バトルは敵もミニオンたちもみんな十二支の動物に変身して戦う展開になるとは思わなかった…。内なる獣の解放ってそういう意味なのかよ…。まあ、その、ああなっちゃうともうカンフー関係ないですけどね。
正しい悪(ワル)になれ!
『ミニオンズ フィーバー』はお話の主軸は、グルーとミニオンたちの信頼関係の構築であり、グルーがいかにして悪党へとなっていくのかの誕生譚です。どう考えてもミニオンだけの影響では大悪党になれそうにないですからね。
本作の原題は「Minions: The Rise of Gru」。これはたぶん『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』(Star Wars: The Rise of Skywalker)のタイトルのパロディなんだろうな…。
「スター・ウォーズ」ネタはたいしてないのですが、『ミニオンズ フィーバー』はグルーが悪党への第1歩を昇り詰めていきます。
このグルーは典型的な家族を持ち合わせていません。母親は子育てに興味なしのようで、グルーは放置されています。こういう子どもが悪になりたいと熱望する物語ではたいていは教育者&保護者としての存在が立ちはだかって対立軸が生じるのですが、本作にそれがありません。立ちふさがるのは別の悪です。
つまり、本作は「正しい悪(ワル)を育て、悪い悪(アク)を倒す」という土台があり、そのグルーの道標になってくれる存在としてワイルド・ナックルズが登場します。ミニオンたちにはグルーがいて、グルーにはワイルド・ナックルズがいて…悪が正しく悪になるためのメンターシップを『ミニオンズ』に続いてこの『ミニオンズ フィーバー』は描いており、テーマはなんだかんだでちゃんと継承しているんですね。
そんなテーマ性はさておき、今作も今回も曲のチョイスが良かったです。“シェール”の「Bang Bang」とかをピックアップしてくるとは…。イルミネーションってディズニーみたいにオリジナル曲を作ることにはまるで興味がなく、徹底的に既存楽曲を引っ張ってきてネタにしまくることにするスタンスなのですが、こういう作品の遊び方ができるのはやはり楽曲を使えるクリエイティブな自由さが確保されているからこそだよなと思ったりも…。日本のアニメにはこういうのは予算的にも企業制約的にも厳しいだろうな…。
今後は『怪盗グルー』シリーズではなく『ミニオンズ』シリーズとして作品を連ねていくことになるのかな? なんかここまで自由度の高いキャラクターですし(寿命もないし)、きっと10年、20年先でも『ミニオンズ』シリーズの新作が作られていそうな予感がします。
これからも映画館にやってきてください、ミニオンたち。あ、でも悪ふざけで迷惑はかけないように…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 72% Audience 90%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2021 Universal Pictures and Illumination Entertainment. All Rights Reserved. ミニオンズ2
以上、『ミニオンズ フィーバー』の感想でした。
Minions: The Rise of Gru (2022) [Japanese Review] 『ミニオンズ フィーバー』考察・評価レビュー