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映画『リレー 声なき仲介者』感想(ネタバレ)…リレーサービスをご利用になられたことは?

リレー 声なき仲介者

お繋ぎします…映画『リレー: 声なき仲介者』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Relay
製作国:アメリカ(2024年)
日本では劇場未公開:2026年に配信スルー
監督:デヴィッド・マッケンジー
リレー 声なき仲介者

りれー こえなきちゅうかいしゃ
『リレー 声なき仲介者』のポスター

『リレー 声なき仲介者』物語 簡単紹介

企業の不正の証拠を持ち出した「内部告発者」とその企業との間で、仲介をして取り引きし、賄賂と引き換えに穏便に事を片付ける。そんな裏の役目を、入念で完璧な計画と厳格なルールのもと、決して素性を明かさず遂行してきたひとりの人物がいた。しかし、ある女性の依頼を引き受けたことで、かつてない難敵が立ちはだかる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『リレー 声なき仲介者』の感想です。

『リレー 声なき仲介者』感想(ネタバレなし)

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電話リレーサービス映画?

日本にはいろいろな法律があり、中には全然知られていないようなものもあります。でもそれも憲法に定められた基本的人権を実現するために欠かせない法律だったりします。

そのひとつとして挙げられるのが「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」

この法律は、聴覚障害者の人々の自立した生活を確保するべく「電話リレーサービス」の提供について扱われています。

でもたいていの非当事者の人はそもそも「電話リレーサービスってなに?」となるはず。一般財団法人「日本財団電話リレーサービス」によれば「聴覚や発話に困難のある人と、聴こえる人との会話を通訳オペレータが“手話”または“文字”と“音声”を通訳することにより、電話で即時双方向につながることができるサービス」と説明されています。

要するに仲介者が「異なるコミュニケーション」を変換してくれるんですね。手話を使う人でも「電話」できるのです。

この「電話リレーサービス」自体は1964年に発明されたらしいですが、これを制度化して運用するのには、当事者のたくさんの苦労と訴えがありました。

今回紹介する映画は、そんな電話リレーサービスが重要な存在としてクローズアップされ、その存在に敬意を示しつつ、緊迫感あるサスペンス・スリラーにもなっている作品です。

それが本作『リレー 声なき仲介者』

本作は、現代のニューヨーク・シティを舞台に、企業不正を世間に訴えようとした告発者と、企業側が告発者を口封じするべく送り込んだスパイ、そしてその告発者と企業を仲介する役目を背負う人物…この3者の間で熾烈に繰り広げられる駆け引きを描いています。実質的には、企業ベースのスパイ・スリラーのようなものです。

主人公は告発者と企業を仲介する役目を背負う人物であり、この主人公が駆使する手段のひとつが電話リレーサービスとなっています

平凡な都市の裏で二転三転する駆け引きが進行する展開は次に何が起こるかわからない緊迫感があり、本編ずっと目を離せません。

この『リレー 声なき仲介者』を監督したのは、2016年の『最後の追跡』で高い評価を受け、『アウトロー・キング スコットランドの英雄』(2018年)などを手がけてきた“デヴィッド・マッケンジー”

俳優陣は、『静かなる侵蝕』『フィンガーネイルズ』“リズ・アーメッド”『スワイプ:マッチングの法則』“リリー・ジェームズ”『アバター』シリーズの“サム・ワーシントン”など。とくに主役の“リズ・アーメッド”の演技はたっぷり楽しめ、彼らしい社会正義に根差した映画です。

かなり隠れた良作としてのポテンシャルを秘めた一作だと思うのですが、残念ながら『リレー 声なき仲介者』は日本では劇場未公開で、2026年2月に配信スルーになってしまいました。

忘れずにチェックしておきたい一作ですね。

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『リレー 声なき仲介者』を観る前のQ&A

✔『リレー 声なき仲介者』の見どころ
★企業不正を軸にした緊迫感溢れるサスペンス・スリラー。
★正義を果たせなかった弱き者の無念に向き合う物語。
✔『リレー 声なき仲介者』の欠点
☆日本ではあまり話題になっていない。

鑑賞の案内チェック

基本 アルコール依存症を描くシーンがあります。
キッズ 3.0
暴力の描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『リレー 声なき仲介者』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

夜のニューヨーク・シティ。人通りの少ないノーフォーク・ストリートの街角を禿げた男がやや警戒するように歩き、レメディー・ダイナーに入っていきます。入り口の見える席にそわそわと独りで座ると、車に送られてひとりのスーツ姿の男が店内に入り、向かい合って座ります。

最初に店に入った男はホフマンという名で、ある書類を取り出します。しかし「代理人がコピーを保管している」とも口にし、目の前の相手に忠告。実はホフマンはオプティモ社の元従業員で、同社を告発する重大な資料を保持していたのです。今、対峙しているのはそのオプティモ社のCEOであるマクヴィーでした。

マクヴィーはホフマンとは真逆で落ち着いており、告発を防げて満足したように去っていきます。

ホフマンも店を出ていった後、店内にいた作業着姿の別の男もその後ろから密かに尾行します。ホフマンはなおもキョロキョロしつつ、電車へ。その姿を見届け、その第3の男は帰ります。

この男はアッシュという名で、内部告発者と告発する企業の間を仲介する仕事をしていました。何事もなく取引が成立するまでを見守るのも役目です。普段は告発者とも接触せず、素性を隠しています。あくまで告発者が保護され、告発資料とその見返りの賄賂となるおカネが交換されるサポートをしています。

ホフマンはニューヨークを無事に出たことを確認し、ホフマンの持っていた告発書類はアッシュしか知らない秘密の倉庫に厳重に保管します。これはいざというときの保険です。アッシュはこうした緊張が続く毎日を送っていました。誰にもその仕事を話さずに…。

ところかわって、サラ・グラントは弁護士と面会していました。勤めていたサイボ・セメンティス研究所が遺伝子組み換え小麦の深刻な副作用を隠蔽していることに気づき、指摘したものの、以降、別の部署に飛ばされるなど嫌がらせが続いているとのこと。改竄前の食品安全性評価の資料を持ち出してきたものの、その後にどう対応するべきか困っていました。

今やサラはこの資料を大々的に公表するつもりはなく、もう脅迫に怯えるのは嫌なので、資料を返して綺麗さっぱり終わらせたいと考えていました。そこで弁護士は匿名のある手段を教えてくれます。それこそアッシュのことでした。

アッシュとの連絡は、電話リレーサービスを介して行われます。サラは初めての電話リレーサービスに慣れないながらも、アッシュと遠隔でやりとりします。

一方、企業側も黙っておらず、買収までに何としてもその持ち出された資料を回収し、証拠隠滅しようと目論んでいました。そこでドーソン率いるプロのチームを派遣し、サラを監視させていましたが、経験豊富なアッシュはそれもお見通しです。

まずはサラの持つ資料をアッシュのもとに移さなくてはいけません…。

この『リレー 声なき仲介者』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/02/11に更新されています。

ここから『リレー 声なき仲介者』のネタバレありの感想本文です。

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無力で孤独な正義感の不器用な連帯

『リレー 声なき仲介者』は何よりも主人公の存在感が作品の肝でした。“リズ・アーメッド”演じるアッシュというキャラクターはどういう立場の人間なのか…最初はよくわかりません。

その気になれば、告発者も企業も出し抜き、自分だけ一番美味しい儲けを手にすることだってできてしまえます。しかし、このアッシュはそういうことはしません。それどころか、中立でもなく、実際は告発者に味方してくれています

アッシュがなぜこの仲介者の役割を率先するようになったのか、その心情は作中で覗くことができます。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件のとき、イスラム教徒(ムスリム)への差別が社会に蔓延し、アッシュも追い詰められ、アルコール依存症に陥った過去。そして、自身の不正を目にして告発をしようと一歩を踏み出すも、結局はできずに、企業に丸め込まれて屈辱と罪悪感を引きずり続けた経緯

だからこそアッシュは報酬も度外視でかつての自分のような告発者を助けます。正義を果たしきるには弱小ゆえに無力さを痛感した個人…その行動を「匿名の第3者」である自分が引き継ぐ…。まさに「リレー」です。

でもジャーナリストみたいに代わりに告発を達成してあげるわけではないのが、あのアッシュのいまだに抱える躊躇を滲ませますね。あくまであのアッシュは「告発できなかった奴」で終わりたくないという敗北主義へのリベンジをしているだけで、正義の完遂までやりきるほどの自信はないのです。

この生々しいくらいにリアルな弱さを抱え込む正義感が本作の主人公に親近感を与えていたと思います。誰しも多少の正義は芽生えても、それをやりきる勇気はなかなかないものです。個人は弱い存在ですから。そして敵はたいてい強大で恐ろしいですし。

アッシュ自身は、無力で孤独な正義が憔悴して脱落していく現実を身をもって知っています。だから別のアプローチで支える。これも連帯のいち形態なのかもしれません。

ただ、作中で登場するアルコール依存症のグループセッションのような面と向かった連帯と比べると、アッシュのやっていることはやっぱり不器用でなおも未熟です。

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善意のシステムと正しさのリレー

そんな『リレー 声なき仲介者』の主人公のアッシュが、作中で連絡交流手段として主に駆使するのが電話リレーサービス。

正直、ああやって本来の意図とは違う使い方をしているのをみると、「実際の想定される利用者である障害者に申し訳ないのでは…」という後ろめたい気持ちも生じるのですけど、ただ、あの電話リレーサービス、現実ではアメリカでは結構、犯罪目的で使われるケースもあるらしく、それが問題になっていたりもするそうです。

なので『リレー 声なき仲介者』はその電話リレーサービスをあえて「正しいこと」を果たすために使ってみせることで、ある種のカウンターにもなっているんですね。

その際に非常に重要になってくるのが、電話リレーサービスのやりとりは完全に匿名で非公表として処理されるという点。作中でもドーソンたちがリレーサービスの地点を特定して建物まで来るも、受付で「法律で守られているので」と門前払いにされます。

これは本当にそのとおりで、電話リレーサービスのプライバシーは「障害を持つアメリカ人法(ADA)」で保護されています。ここが本当に大事だなと思って、「法律が人権を保護する」ということが、この映画ではまさしく危ない人たちから弱い立場の者をギリギリで守っているのだと物語的に映像化してくれています。

法律の重要性をこうやってジャンルの中で自然に盛り込んで伝えるストーリーテリングはなかなかに見事でした。

アッシュも、偽造IDを作ってくれる聴覚障害者の仲間と気楽な手話で会話するシーンがあったりして、ああいう付き合いの中で、この電話リレーサービスを用いる手を思いついたのだろうなと推察できますし、何よりもアッシュの人権第一の人柄がみえてきますよね(最後はリレーサービスに寄付もしているし)。

また、作中で駆使されるのは電話リレーサービスだけでなく、忘れ物を預かって持ち主に渡す空港のサービスだったり、郵便物の新居転送サービスもでてきます。いずれも「困っている人」を助ける慈善の精神に支えられるシステムです。

私たちの社会はこういう身近な善意のシステムに支えられ、それが正しさのリレーになっていることを体現してくれるような物語だったのではないでしょうか。

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企業は怖い…でも弱気にはならない

『リレー 声なき仲介者』の肝心のサスペンスもスリルたっぷりで大満足できました。

「企業って怖え…」となるプロフェッショナルなチームの執念深さもいいですね。それにちゃんとアッシュが互角の良い勝負をしているあたりも手に汗握ります。

告発者(のふりをしているだけで実際は企業派遣のスパイチームのボス)であるサラの活躍も捻りが効いていて良かったです。女性のキャラクターとしていかにもステレオタイプな方向に流れそうで、それをひっくり返す仕掛け。同時に企業の犬となるサラが、アッシュと対比されることによって、終盤の対峙で否が応でも浮かび上がる現実の厳しさ。

企業の怖さをわかっているアッシュはたぶんその企業に従属するサラのような身の心境も理解できなくはないはず。人は誰だって企業の駒になりかねないものです。一歩間違えれば非倫理的なことにも手を染める…。

この個人の世知辛さが染み出るサスペンス演出の上手さは、“デヴィッド・マッケンジー”監督の得意分野なので安定感がありました。

例えば、前半ではドーソン・チームのバンがアッシュにあっけなく特定されるのに対し、後半ではそのバンの中で真実が明かされるという展開になっていて、優位性の転換を巧みに表現していました。しかも、中の見えないバンというのが、表面では親しさを装い、内部では不正を隠すという、企業の本質とも重なるし…。

個人的には冒頭で登場するだけのあのCEOがここまでやろうとするぐらいに、ひとりの告発者に執着する…そのさもしさみたいなものが、企業の本質を突いていたなと思いました。どこでも卑怯で、どこまでも不誠実で、どこまでも強欲…。

そのサスペンスを観ていると「やっぱりこんな企業に勝てるわけない」と弱気になってしまう…でも映画は正義を信じさせてくれます。弱気にならなくていいんですよね。

『リレー 声なき仲介者』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

以上、『リレー 声なき仲介者』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)2025 BBP Relay, LLC. All Rights Reserved.

Relay (2024) [Japanese Review] 『リレー 声なき仲介者』考察・評価レビュー
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