マッチョ食人族に捕まった!…Netflix映画『マッドタウン』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:アナ・リリー・アミールポアー
ゴア描写
まっどたうん
『マッドタウン』物語 簡単紹介
『マッドタウン』感想(ネタバレなし)
荒野の食人族はムッキムキ
全国の「食人族映画」好きの皆さん、そろそろ新しいメニューが欲しくなってきませんか。そんな人たちに朗報。あなたの胃袋を満たす新しい食人族映画の登場です。
それが本作『マッドタウン』。
食人族映画というと最近のイーライ・ロス監督の『グリーン・インフェルノ』のようなジャングルがメインフィールドなことも多いですが、本作の舞台は荒野。しかも、本作に登場する食人族は、なんと常に筋力トレーニングを欠かせないムキムキな奴らなのです。なんだ、人間食えばマッチョになれるのか…。ライザップはもう必要ないですね。
そのマッチョ食人族に若いピチピチの女性が捕らわれてしまい、さあ、どうなる!?というのが本作のスタート。しかし、ここからが変わっていて…。美女VSマッチョ食人族の戦いが勃発…という展開にはなりません。あと、そんなにグロい描写もないです。
そもそも本作のジャンルは「ロマンチック・ブラックコメディ・ホラー・スリラー」となっています。ブラックコメディ、ホラー、スリラーはわかるとして、“ロマンチック”というのはどういうこと?という感じですけど、最後まで見ると「なるほど」となるはず。
本作の監督である“アナ・リリー・アミールポアー”はこれが長編2作目。デビュー作の『ザ・ヴァンパイア 〜残酷な牙を持つ少女〜』がその特異な内容で話題を集め、ジャンル映画ファンの期待の新星として注目されている女性監督です。
とにかく変わった映画であり、賛否両論分かれると思いますが、そういう作品なので、ね。
ちなみに“キアヌ・リーブス”も出演しています。彼がどんな役で登場するのかもお楽しみに。
『マッドタウン』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2017年9月22日から配信中です。
『マッドタウン』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):生きるには…
バッド・バッチ5040番。アーレン・メイ・ジョンソン。
ゲートの外に出されます。そこは何もない荒野。ここはテキサス州に帰属しない、アメリカ合衆国の法律さえも適用されない無法地帯。
アーレンは歩き始めます。「夢(ザ・ドリーム)を見つけろ、安らぎ(コンフォート)を探せ」…そんな紙を見つめながら。
水は手に持っている小さなポリタンクしかありません。このままではいずれ野垂れ死んでしまいますが、できることがあるとすれば前に進むだけ。
放置された車を発見。とりあえず乗り込んで日差しをしのぎます。もちろん動くものではありませんが、バックミラーで自分の顔を確認。
すると後方から何か車が接近。全力で走って逃げるも、取り押さえられ…。
目覚めます。拘束されていました。手足には鎖。謎の注射を腕に打たれ、もがくも抜け出せません。しかも、女はのこぎりを取り出し、おもむろにアーレンの腕を切り出し…。
気絶したアーレン。片手と片足を失っていました。そのコミュニティはカニバリストの暮らす場所。やたらと筋肉ムキムキな男たちが体力トレーニングしています。アーレンはただ座り込んでいることしかできません。なぜ生かされているのかはわかりませんが、間違いなく歓迎しているということはないので、いつかはまた切り刻まれ、今度は死んでしまうかもしれません。
昼も夜も。ときどき叫び声が聞こえるだけ。なんとかしなければ…。
アーレンは糞便に体を突っ込み、わざと汚れます。それを見た女は、アーレンを洗うために拘束を外しました。その隙をついてアーレンはバールで反撃。渾身の力で振り下ろし、相手を倒します。
這いずって逃げ道を探すアーレン。残骸の中にスケートボードを発見。これで移動できます。ゆっくりゆっくり炎天下を滑っていくアーレン。体力の消耗は激しく、このままでは死ぬのも時間の問題。カニバリストに食われなくても、カラスに食われてしまいます。
そこを通りかかったのは謎の人。ショッピングのカートに乗せられ、ある場所に運ばれます。そこはコンフォート。
5か月後。義足を手に入れたアーレンは歩けるようになっていました。しかし、このコミュニティで生きる希望を見つけるのは容易いことではありません。自分をこんな目に遭わせた奴らへの怒りが静まったわけでもありません。
ある日、アーレンは拳銃を手に、コンフォートの外へと踏み出します。果てしない大地を歩いていると自分をさらったカートに似た乗り物を発見。そこには有害廃棄物のゴミ捨て場を漁る母と娘らしき2人がいました。
復讐に燃えているアーレンはゆっくり近づき、「どこから来たの?」と声をかけます。「こっちは大丈夫」と追っ払おうとする相手。
確信したアーレンは「その子も人を食べるの?」と尋ねます。
「生きるのに必死なんだ。あんたと同じ。お互い様」「違う。同じじゃない」
「バッド・バッチ同士だろう」「一緒にするんじゃない」
そして銃を向け…感情に任せて発砲。相手は死亡。やってしまったことに茫然とするアーレン。そこに残されたのは幼い娘。
その頃、胸に「MIAMI MAN」とタトゥーした男は愛する妻と娘の帰りを待っていました。
それはこれで終わりではないことを意味しており…。
美女モデルも切断!
『マッドタウン』で主人公として主演し、コケティッシュなスタイルを劇中でもいかんなく発揮している女優は“スキ・ウォーターハウス”。彼女について全然知らないので調べたら、多くの女性誌で活躍するロンドン出身のモデルだそうで、ファッション業界寄りの人の方が認知度は高そうですね。
ただ、本作はそんな彼女に憧れるファッション好きな若い女性とかが観るタイプの映画じゃないのですけど…。なんてったって、序盤いきなり“スキ・ウォーターハウス”演じるアーレンは捕まって、片腕と片足をギコギコされますからね。モデルにも情け容赦ありません。ちなみに片腕と片足を失っても綺麗にさまになっているのは、さすがプロポーション整ったモデルならではでした。
この序盤の情け容赦なさは本作の良いところで、「ブリッジ」と呼ばれるマッチョ食人族のコミュニティの異様さも相まって掴みは抜群。なんなんだここは…という異次元空間です。貧相な大地にふさわしくない、肉体美の男たちが揃っているのですから。たぶん人肉をメインで食べているのはこの男たちなんだろうか。
隙を見て金棒アタックを決めた後、今度はたどり着いたのは安息を意味する「コンフォート」と呼ばれるコミュニティ。ところがここもヘンテコな場所で、皆クスリ漬けの日々を過ごしているのでした。その中心にいたのは、これまた胡散臭い「ザ・ドリーム」と呼ばれる“キアヌ・リーブス”演じるグラサン男。「我々に夢を!」と叫びながら熱狂的支持を集め、ライフルを持った武装妊婦集団を引き連れているコイツもヤバい。
そんなどっちのコミュニティも関わりたくないよ!状態に置かれたアーレンは、娘探しにブリッジからやってきたマッチョポニテ男「マイアミ・マン」と、なんやかんやあって心通わせ合い、最後はキャンプファイヤーを囲みながらウサギを食べあって終わってました。
だいぶ端折りましたが、ストーリーはそんな感じ。個人的には、濃い世界観の割にはドラマは薄味でのんびりしており、やや物足りないところもありましたが、ユニークさは充分楽しめる一作だと思います。
舞台となったスラブシティ
『マッドタウン』のユニークさを引き立てるのが舞台です。
“世紀末”感の漂う荒野ということで『マッドマックス』シリーズを連想しますが、本作の舞台はもっと現実的で、モデルになった場所があります。それがカルフォルニア州南部のメキシコとの国境付近にある「スラブシティ」です。
スラブシティは、もともとは海軍のキャンプ地で、現在は世俗と距離を置くヒッピー的な人々が自由気ままに生活するエリアとなっており、アーティスティックなモノがあちこちに点在しているそうで…。
本作はこのスラブシティがあるカルフォルニア州ニランドで撮影され、スラブシティに暮らす「Slabbers」がエキストラで多数出演しています。となると、もうこの映画の舞台はスラブシティそのままですね。
もちろんスラブシティ感をたっぷり漂わせるメインキャストも素晴らしく、“キアヌ・リーブス”はこの地域出身なんじゃないかと思うくらい馴染んでいるし、絵を描いてほしいボロボロ老人を演じた“ジム・キャリー”も役に入りすぎてもうわけわかんないです。その中でも一番良かったのはマイアミ・マンの“ジェイソン・モモア”。あのビジュアルでギャップがあるのが可愛く…。ちょっと今後公開される彼が主演する『アクアマン』への期待が高まったのでした。
それと…見ても可愛く、食べても美味しいウサギはやっぱり万能ですね…。ウサギを食用に育てて食べるように国民に促すベネズエラ政府は間違ってなかったんだなぁ…(えっ)。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 47% Audience 30%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★
作品ポスター・画像 (C)Netflix ザ・バッド・バッチ
以上、『マッドタウン』の感想でした。
The Bad Batch (2016) [Japanese Review] 『マッドタウン』考察・評価レビュー