感想は2100作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』感想(ネタバレ)…スカヨハ攻殻機動隊の初陣

ゴースト・イン・ザ・シェル

スカヨハ攻殻機動隊の初陣…映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Ghost in the Shell
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年4月7日
監督:ルパート・サンダース
ゴースト・イン・ザ・シェル

ごーすといんざしぇる
ゴースト・イン・ザ・シェル

『ゴースト・イン・ザ・シェル』物語 簡単紹介

電脳技術が極度に発達した近未来。ここでは現実はテクノロジーと密接に接続し、世界が構築されている。脳とわずかな記憶を残して全身が義体化(=サイボーグ化)された、エリート捜査組織「公安9課」の捜査官「少佐」は、常に最前線でミッションに身を投じていた。ある日、全世界を揺るがすサイバーテロ事件を発端に記憶が呼び覚まされるが、そこには自分でも理解していなかった驚くべき過去が隠されていた。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ゴースト・イン・ザ・シェル』の感想です。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

ハリウッド映画界にも影響を与えた作品がついに…

日本のあの漫画やアニメがハリウッドで実写化される!…と発表されるたびに「また? 大丈夫?」という反応が起こるのは脊髄反射みたいなものなので、基本は気にしていません。原作のある映画なんて山ほどあるし、幾度なく繰り返されてきたことです。

それでも今回の映画ゴースト・イン・ザ・シェルの原作である「攻殻機動隊」は、いつものハリウッド映画化された作品群と並列して語るには、事情が違う気がします。

なぜなら、この士郎正宗の漫画であり、押井守がアニメ化した「攻殻機動隊」というSF作品は、ハリウッド映画界に少なからず影響を与えているのですから(有名なところではマトリックスとか)。好きな日本作品として「攻殻機動隊」を挙げる海外の映画界の人も多いです。

つまり、作品自体は実写化されていないけれど、作品を象徴するいくつかの“要素”は映画化がすでにされているといえます。

そんな重要な作品なんですが…私は観たことがないんですよね。いつか観ないとなと思っていたら、ハリウッドで実写化されてしまった…(なお、本作鑑賞後にアニメのオリジナル映画を観ました)。

ハリウッドといっても(製作に中国資本がガッツリ関わっていますが)キャストはアメリカ人ばかりじゃないのが変わってます。主人公の少佐役、『アベンジャーズ』などマーベル映画でおなじみ“スカーレット・ヨハンソン”はアメリカ人。少佐の同僚であるバトー役はある戦争で繊細な演技を披露したデンマーク人の“ピルウ・アスベック”。他にもフランスから“ジュリエット・ビノシュ”、シンガポールから“チン・ハン”、イギリスから“ダヌシア・サマル”、オーストラリアから“ラザルス・ラトゥーエル”と、やたらと国際色豊かです。そんな中で、我らが日本人から荒巻役で“ビートたけし”が起用されているのが異彩を放ってます。

これらのキャストが合う合わないは人それぞれなので、実際に映画を観て、観たもの同士で感想を語るのも良いと思います。「どうせ日本作品のハリウッド実写化は失敗する」なんて食わず嫌いは損です。オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年)のような批評的にも成功した例もありますし。本作はアニメ版の最大限の映像化を目指した結果、非常に作り込まれた世界観をみせてくれます。少なくとも『DRAGONBALL EVOLUTION』のような大惨事にはなってませんから安心してください。

あと、日本人だけの利点というか楽しみどころとして、吹き替え版は声優陣がアニメと同じというのがファンには嬉しいですね。

とにかく日本人には見逃せない実写化であることは間違いでしょう。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ゴースト・イン・ザ・シェル』感想(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半):お前にはゴーストがある

テクノロジーの進歩によって人間が自らの身体を人工パーツで義体化している世界。ハンカ・ロボティクス社は政府の資金援助を受け、義体化を推進し、軍事工作員を開発。人間の脳を人工のボディに移植し、人間とロボットの長所を兼ね備えさせました。

この電脳技術で脳以外は全て義体化されたミラ・キリアン少佐はエリート捜査組織「公安9課」に所属し、サイバー犯罪やテロ行為を取り締まる危険な任務を遂行していました。1年前、ミラが最初に目覚めたとき、オウレイ博士が事情を説明してくれました。難民ボートがテロリストに沈められて、あなたは脳だけが助かった。でもあなたの“ゴースト”は残っている…。

公安9課は荒巻大輔大佐を中心に、バトー軍曹の実行部隊で動いています。そこに属する少佐は戦闘に馴染んでおり、圧倒的な体技で複数の敵を圧倒します。敵の芸者ロボットは「ハンカ社と関わることの危険性」を口にし、動作を停止しました。

いつものように任務を終了した少佐でしたが、何か違和感を感じ始めます。

公安9課の本部でチームと状況を確認。ハンカ社の転覆を目論むテロ組織が暗躍しているようです。ハンカ社の科学者が次々と殺され、電脳ハックを受けていました。犯人は「クゼ」と名乗り、犯行声明を残していました。

「ハンカ社と組んだら破滅だ」

少佐はバトーと行動を共にします。バトーは犬を愛していました。一方で少佐は過去を語りません。断片的な記憶しかなく、霧がかかったように思い出せません。

ハンカ・タワーに到着し、少佐の義体を修理。バグが起きていることも一応は報告します。オウレイ博士にもよくわからないそうですが、「あなたは人間よ」と親身に接してくれます。博士は「人を決めるのは記憶だと思う? 違う。何をするかでその人が決まる」と言葉をかけます。

それが終わり、今度はバトーとダーリン博士のもとへ。コンパニオン・ロボットを解析しており、ボディは滅茶苦茶ですが、少佐はダイブすればいいと進言します。記憶に入ってクゼを見つけられるかもしれないですが、危険です。

さっそく開始。電脳接続。ダウンロードを同意。少佐は記憶に潜り込みます。

しかし、逆にハックされるような状況になり、強制的に戻します。少佐はクゼの手がかりを見つけました。

ダイブで目撃した「サウンド・ビジネス」という建物へ。別行動をとる少佐とバトー。怪しい男に電脳通信を切断され、少佐はピンチに陥ります。そしてまたも戦闘が勃発。

ここで真相に辿り着けるのか…。

スポンサーリンク

スカーレット・ヨハンソンという名の義体

先にも書きましたが、私は「攻殻機動隊」を見たことがない(少なくとも今作の公開時は未鑑賞)ので、オリジナルと比較してどうこうは言えません。でも、結果的にそのほうが良かったかもしれませんね。もし、自分が「攻殻機動隊」の熱烈なファンだったら気が気でなくなって大変だったでしょうし…。

やはり一番の懸案事項は主役を演じるスカーレット・ヨハンソンが作品にハマるかどうかだと思います。

キャスティングの発表時は草薙素子の役を白人が演じることについてホワイト・ウォッシュだとして海外では批判があったみたいですが、まあ、今回に限っては義体という仮の身体である設定上、どうにでも解釈できる気もします。それでも、他もろもろ思い入れのあるファンであれば色々言いたいこともあるでしょう。

人種はさておき、映像面では今回のスカーレット・ヨハンソンは、概ね良いのではと思ってとりあえず観ました。スカーレット・ヨハンソン主演のSF映画というと、最近ではアンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年)やLUCY ルーシー(2014年)と、いずれも彼女は“人ならざる者”を演じてきました。その流れでの本作における起用なんでしょう。また、her/世界でひとつの彼女(2013年)やジャングル・ブック(2016年)でも披露していたように、声だけでもミステリアスさを引き出せる力を持ってます。彼女はグラマラスな美女として映画“外”では注目されたりしてますが、少なくとも昨今の映画“内”ではそういう露骨な売り方はしてないです。むしろ内面から発せられる魅力で勝負している印象が個人的にあります。言い換えれば、スカーレット・ヨハンソン自身が“スカーレット・ヨハンソン”という義体を装備しているような雰囲気さえある。というか、まさにその発想を映像化したのが『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』だったわけで。そう考えると、今回の配役はピッタリかもしれません。

また、資金集めの広告塔となり、かつ大予算のアメリカ・SFアクション映画でしっかり主役を張れる女優として、スカーレット・ヨハンソン以外に存在するかという問題もありますが…。

それよりも、気になったのは“ビートたけし”。すごく…“ビートたけし”でした…。彼は別に“ビートたけし”の義体を羽織った誰かではないし…。吹き替え版は声優陣がアニメと同じで嬉しいという話をしましたが、それもあってこの“ビートたけし”が余計に際立ってましたね。

スポンサーリンク

入門編になれた?

世界観の映像再現については手が込んでおり、さすが1億ドル以上の予算をかけているだけのことはあります。ビジュアルはやはり「攻殻機動隊」本来の持ち味があるがゆえに映像化しがいがあって、制作者も楽しかっただろうな…。ところどころオカシな日本語表記がチラついてましたが…。

しかし、世界観の映像再現だけで全力を出し切ってしまったのだろうか…それ以外の要素は特筆するような魅力には発展していないのが残念。

アクションはこれこそ見せ場!みたいなものが乏しく、印象に残りにくいです。光学迷彩を駆使して水場で戦闘するシーンとか、良さそうな素材はたくさんあるのに活かされずに終わった感じ。後半は画面が暗く、せっかくの映像化された魅力的な舞台が台無しなのも、ちょっと。

ドラマについては、本作を手がけたルパート・サンダース監督が「本作は攻殻機動隊を知る入口になれば」と言っているように、意図的にシンプル化されたもので、これはこれで良い気もします。確かに知ってもらう機会は作れたでしょう。でも、「知ってもらう」と「魅了する」は違うように、本作で「攻殻機動隊」の新規ファンが増えるかというと…どうでしょうね。

アメリカでの興収はイマイチみたいで、『ゴースト・イン・ザ・シェル』の成功は日本と中国に懸かっている状況。日本と中国で成功すれば『バイオハザード』シリーズのようになれる可能性もありますが…。

なんだか煮え切らない感想になってしまいましたが、まだまだ引き出せる魅力が無数にある作品であり、これで終わるのは勿体ないです。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 43% Audience 51%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved. ゴーストインザシェル

以上、『ゴースト・イン・ザ・シェル』の感想でした。

Ghost in the Shell (2017) [Japanese Review] 『ゴースト・イン・ザ・シェル』考察・評価レビュー