また来ちゃった…映画『インデペンデンス・デイ2 リサージェンス』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年7月9日
監督:ローランド・エメリッヒ
インデペンデンス・デイ リサージェンス
いんでぺんでんすでい りさーじぇんす
『インデペンデンス・デイ リサージェンス』物語 簡単紹介
『インデペンデンス・デイ リサージェンス』感想(ネタバレなし)
帰ってきたエイリアン
人間は地球を侵略されたい願望でもあるのか…。
「地球侵略モノ」というジャンルでは、硬派なSFファンが気にするポイントがあります。それは地球を侵略する理由。宇宙からやってきた生命体がなぜわざわざ地球を侵略するのか。その動機を科学的なロジックをともなって巧みに説明されているかどうか、それが最高に出来上がっていると思わずテンション上がるというもの。
でも、そんなの一般観客はどうでもいいのです。だって鬱陶しいじゃないですか。そんなSFオタクの戯言は。私のような口うるさい奴は無視ですよ。
そこで一般層が素直にハイテンションで楽しめる単純エンターテインメント大作として生まれたのが、1996年に公開の『インデペンデンス・デイ』です。エイリアンたちはどうやら星を征服するのが趣味らしく、とにかく破壊の限りを尽くせばいいという思考の持ち主。作中では蝗害に例えられていましたけど、完全に虫レベルの知能しかないとしか思えません。でも、なぜか技術レベルは人間を上回る。そんな奴らと人類は必死に戦って、戦意高揚で愛国心に輝く。なんとも平和な映画じゃないですか。あまりにも出来過ぎた試合だから、裏で談合でもしているのではと疑いたくなりますよ。「今回もいい感じで盛り上がったね」「ああ、ナイスファイトだった」「次もよろしく頼むよ」「おう、まかせてくれ」…。
そしたら、本当に来ちゃいました。
まさか『インデペンデンス・デイ』の続編がつくられることになるとは…。本作『インデペンデンス・デイ リサージェンス』。タイトルの「リサージェンス(resurgence)」は「再起・復活」という意味らしいですけど、何か復活を望む声とかあったんでしょうか…。
もう20年も前の映画ですから、若い世代は知らない人も多いでしょう。だからこそ、今もう一度つくられたのかもしれませんが…。
有名な映画ですし、評判も良かったみたいに巷では語られてます。でも、確かにアカデミー賞で視覚効果賞を受賞し、興行的にも大ヒットしましたが、脚本のクオリティは微妙な評価でした。事実、第17回ゴールデンラズベリー賞で最低脚本賞にノミネートされました。
「破壊王」の異名をもつ監督の“ローランド・エメリッヒ”は、のちに世界崩壊モノのディザスター映画を多数製作してきたことからもわかるように破壊描写にこだわりのある人。日本では、ハリウッド版ゴジラの初代作『GODZILLA』(1998年)の監督だといったほうが映画を知らない人にもわかってもらえるかも。こっちは「ゴジラ」の伝統を破壊してましたけれど…。要するに、もともと脚本に期待するような映画を作る人ではないわけです。
そんな“ローランド・エメリッヒ”監督の出世作である前作のお話は、簡単に説明できます。
巨大な宇宙船が攻めてきて滅茶苦茶になった世界で人類が反撃する映画です。「アメリカ万歳」な、「細かいことを考えたら負け」なパニック・エンターテイメントです。
では、続編はどうなのか。さすがに同じことをするわけにもいかないだろう。普通はそう思います。
ところが、何も変わってません。同じです。
そういう意味では、前作を見ておく必要もないでしょう。同じことの繰り返しなのですから。第1次世界大戦のあとに、ちょっと武器がパワーアップして第2次世界大戦をやりました…みたいなノリです。
エメリッヒ監督はストーリーについてインタビューでこんなことを語ってました。
これは普通の続編じゃない。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのように、ストーリーが続いているんだ。
引用:シネマトゥデイ
ストーリーが続いているのを普通は「続編」と呼ぶと思うのですけど…。まあ、監督のなかではストーリーの重要度の認識はその程度ということなんでしょう。
監督の発言だけでもツッコミどころがある本作、映画もツッコミながら楽しんでください。
『インデペンデンス・デイ リサージェンス』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):またまた自由のために戦う
1996年。人類はエイリアンの侵略を経験し、なんとか勝利をおさめました。しかし、それは序章にすぎませんでした。そのことを人類はまだ知りません…。
それから20年。人間社会は国家間の武力闘争もなく、急速に科学力を発展させました。復興するだけでなく、エイリアンの技術を活用して飛躍的な進歩を遂げたのです。
ホワイトハウスにディラン・ヒラー大尉がやってきます。昔のエイリアン侵略の際に大活躍したスティーヴン・ヒラーの息子です。大統領補佐官であるパトリシア・ホイットモア中尉とは交友があります。
ディランは月に行く予定でした。そこには今はジェイク・モリソン中尉がいました。パトリシアの婚約者です。ジェイクは相棒のチャーリー・ミラー中尉と一緒に月面基地の輸送機を操縦していました。今日も任務をこなしていましたが、トラブルが発生。ジェイクは独断で輸送機だけで基地を守ってみせます。
ジャン・ラオ司令官は怒り、謹慎処分を命じます。
一方その頃、ネバダ州のエリア51にある宇宙防衛軍本部にジョシュア・アダムズ将軍が到着。ある問題が起きていました。捕らえていたエイリアンの様子がおかしいのです。デイヴィッド・レヴィンソンに連絡するように指示しますが、連絡がつきません。
そのデイヴィッド・レヴィンソンは中央アフリカに調査に来ていました。フロイド・ローゼンバーグ会計官も同行。現場にはテレパシーの専門であるキャサリン・マルソーもいて、浅からぬ縁があります。この地には巨大なエイリアンの宇宙船があり、2日前から起動したと言います。ここを管理する部族長のディケンベ・ウンブトゥに案内されて宇宙船の中へ。
どうやらこの船から信号がでているようです。そしてホログラムが表示され、この遭難信号のようなものに応答した存在がいるらしく…。
月の基地にはディランを隊長とするレガシー飛行部隊が着陸。そのパイロットのひとりであるレイン・ラオ大尉はジャンの姪で大人気です。
ジェイクとディランは対面し、睨み合います。2人は過去を引きずっていました。
その頃、土星付近の基地が壊滅したという情報が宇宙防衛軍本部に…。そして敵が再び襲来します。20年前とは比べ物にならない巨大な軍勢を引き連れて…。
破壊はやっぱり楽しい
ローランド・エメリッヒ監督の発言集には、ツッコミどころがたくさんあります。例えば、以下のコメント。
僕の映画は、ヒーローとは程遠い人たちを描いている。ほとんどのマーベル映画は、おかしなスーツを着て走り回る人々が登場するけど、僕はマントを着けた奴らは好きじゃないね。スーパーヒーローのスーツを身に着けて空を飛ぶなんて、全くバカげている。
引用:シネマトゥデイ
とまあ、こんな風にエメリッヒ監督は、自身の作品において、普通の人間たちが協力して危機に立ち向かうプロットに誇りを持っているようです。
でも、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』ではたとえ「アベンジャーズ」の面々が勢ぞろいしたとしても、到底太刀打ちできないような危機が描かれてます。
この事態を普通の人間の活躍で収束させようとすれば、そりゃあ無理やりなお話しになるのは当然。だから、キャラクターとかドラマとかには期待してはいけません。ノリさえ楽しめればOKと思って観ました。
個人的に好きなキャラクターは「白い球体」。侵略エイリアンとの戦いのリーダーを人間に任せると言い出した時は「こいつもアホなのか」となんだか可愛く思えてきました。頭よさそうにみえて実はアホキャラなんですね。いいんです、これがこのシリーズの特徴…全員、頭は良くない。戦争はバカによって引き起こされることを明示している、崇高な作品なんです。
そのバカさが際立っている、エメリッヒ監督お得意の破壊描写(具体的には序盤の月での破壊シーンと宇宙母船の着陸シーン)は今回も楽しかった。宇宙母船が磁場を操ってアジアの街々を吸引して、その残骸を欧州に落として破壊する場面はもっと見たかったくらいです。ちなみにこのシーン、エメリッヒ監督いわく「アジアが欧米に進出していることの皮肉」という意味もあるらしいですが、もう滅茶苦茶すぎて社会風刺にすらなっていません。その製作側の意図が1ミリも届いていない感じが、エメリッヒ監督らしさですけど。
全長4800kmの宇宙母船という設定自体のアホさも嫌いじゃないです。これは個人的興味なんですが、実際このサイズの物体が地球に着陸したら、自転とか大気循環とかに影響を与えかねないように思うのですが、どうなのでしょうか? まあ、科学的考証なんてどうでもいいのが、やっぱりエメリッヒ監督らしさです。いいんです、これがこのシリーズの特徴…全員、頭は良くない(復唱)。アホはみんな、デカいのが好きなんです。
破壊の副作用
エメリッヒ監督の破壊力は満喫できたのですが、大きな不満点もあります。それは戦いの要素。
前作では、未知の兵器(エイリアンの宇宙船)と既知の兵器(人間の現代兵器)の戦いが描かれており、明らかに劣るであろう既知の兵器が勝つからこそ、そこにカタルシスがありました。
しかし、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』の人間側の兵器や乗り物は、エイリアンの技術を流用した架空のモノ。これでは映画を見てる観客側にしてみれば、「未知の兵器 vs 未知の兵器」という構図にしかなりません。しかも、人間側の兵器や乗り物の進化具合が中途半端なのが謎。核ミサイルくらいドローン化できないものか。
そして、もうひとつ。これはエメリッヒ監督の破壊映画の構造的宿命なんですが、人の死や文明、社会といったものがどんどん軽々しくなっていくこと。「壊されてもどうせまた復興するんでしょ?」という気分になります。この点は、もうしょうがないんですが…。
このシリーズは、皆バカだけど技術は異常に発展しているという、ご都合主義の究極のような世界ですから、何が起こってもどうにかなります。頼もしい。
ちなみに彼が次に手掛ける映画は、月が地球に落ちてくるみたいです。さらに、続きそうな終わり方の本作でしたが、『インデペンデンス・デイ3』の構想もあるそうで、宇宙での冒険を描くとか。「スター・ウォーズ」みたいになるんじゃとやや心配ですが、破壊描写だけ頑張ってもらえればそれでいいです。
楽しみだなぁ…。次の被害者は宇宙…、最終的にビックバンでも起こるのかな?
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 29% Audience 30%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
(C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved. インデペンデンスデイ リサージェンス
以上、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』の感想でした。
Independence Day: Resurgence (2016) [Japanese Review] 『インデペンデンス・デイ リサージェンス』考察・評価レビュー