ミニオンが一緒なら…映画『ミニオンズ&モンスターズ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本公開日:2026年8月7日
監督:ピエール・コフィン
みにおんずあんどもんすたーず

『ミニオンズ&モンスターズ』物語 簡単紹介
『ミニオンズ&モンスターズ』感想(ネタバレなし)
シネフィル向けのミニオン?
ねぇ、ミニオンのみんな。ワルになりたいんだって? 悪いことをしたいなら、日本国旗をビリビリに破るといいよ。そう、その白地に赤い丸のやつね。できるだけ不快な感じで、切り裂いたり、燃やしたりすると、大物のワルになれるからね。
…そう吹き込んだら、きっとあの黄色い奴らなら嬉々としてやってくれるでしょう。そういう生き物ですから、しかたないね。うん。
ということで、バナナと反骨精神の体現者、ミニオンの新作映画が2026年に登場です。
でも、当初は私は「感想は書かなくていいか…」と思っていたのですけど、何やら今作はフランチャイズの中では屈指の高評価のようで、だったら書いておくか…と。
それが本作『ミニオンズ&モンスターズ』。
ミニオンのフランチャイズは大まかに2つに分かれ、「グルー」という怪盗を軸とした「怪盗グルー」シリーズ(2010年の『怪盗グルーの月泥棒』、2013年の『怪盗グルーのミニオン危機一発』、2017年の『怪盗グルーのミニオン大脱走』、2024年の『怪盗グルーのミニオン超変身』)と、ミニオンたちを軸にした「ミニオンズ」シリーズ(2015年の『ミニオンズ』、2022年の『ミニオンズ フィーバー』)があります。
このうち「ミニオンズ」シリーズはスピンオフという位置づけなのですが、ぶっちゃけ観客はミニオンというキャラをメインで見に来ているようなものですし、あまり関係ない感じでした。それに『ミニオンズ フィーバー』のほうにもグルーが登場したりしていましたし…。
今回の新作『ミニオンズ&モンスターズ』は2015年の『ミニオンズ』に立ち返るようなグルー抜きの内容であり、しかも、メインシリーズに出ていたケビン、スチュアート、ボブのようなミニオンすらもでてこない…実はかなり新規性の高い試みになっています。
そのためか、自由度が高く、なんと1920年代のハリウッドにミニオンたちが迷い込むという筋書きです。いわゆるハリウッドの黎明期にミニオンたちが場違いにもお邪魔してハチャメチャをするのですが、しっかり当時の業界を映像化し、あの名作たちもがんがんにオマージュしまくるという、シネフィルが思わずニヤニヤしてしまう中身にもなっています。
さながらミニオン版『バビロン』ですよ。
相変わらず子どもが楽しめるエンタメですが、今回はシネフィルも笑顔にさせてくれるのがポイント高めの理由なのかな。
このフランチャイズ、たまに「マニアックすぎないか?」というネタのチョイスを過去作でもチラホラみせていましたが、今回はそれが大爆発していますね。
『ミニオンズ&モンスターズ』を監督するのは、フランチャイズの生みの親であり、2017年の『怪盗グルーのミニオン大脱走』以来、久々に監督の座に戻ってきた“ピエール・コフィン”。
普段は「ミニオンなんて幼稚な子どもウケありきのキャラでしょ?」という態度の人も、今回はクラシック・ハリウッドのネタ目当てで鑑賞するのもアリでしょう。子どもと一緒に笑いましょう。
『ミニオンズ&モンスターズ』を観る前のQ&A
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Q『ミニオンズ&モンスターズ』を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
とくにありません。シリーズ未見でも問題ありません。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | 低年齢の子どもでも安心して観れます。 |
『ミニオンズ&モンスターズ』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
ハリウッドの映画史を展示する博物館で、ツアーガイドはさまざまな歴史を示す展示物を観光客団体に紹介していきます。本物のジョージ・ルーカスを収容したガラスケースを通り過ぎて、次にみんなにみせたのはジェームズとヘンリーという2人のミニオンです。
でも誰も知りません。「ジェームズとヘンリーを知らないなんて!」…そう言ってツアーガイドはこの2人が映画史にどれほど革命的な貢献をしたのかを語りだします。
ミニオンたちは魅力的なボスに仕えるという居場所を求めて世界を彷徨っていましたが、ジェームズは芸術家肌で絵を描くのが好きでした。そしてそのクリエイティブな知識を活かしていろいろなものを作っていましたが、それが理解されることはありませんでした。
ひとつ目の巨人にみんなで仕えていたときも、ジェームズの創作物がきっかけで巨人は大怪我を負ってしまいます。他のミニオンたちはジェームズにうんざりで、仲間外れにします。
しかし、愉快なヘンリーだけは仲良くしてくれます。
ミニオンたちは今度は強大な力を持つ魔術師に仕えます。ところがジェームズとヘンリーがうっかり魔術本で恐ろしいウサギの怪物を召喚してしまい、魔術師は一瞬で消し炭になります。
なんとか事態を収拾したものの、また居場所は無くなります。そこではジェームズとヘンリーは、喋らないミニオンのエドと仲良くなります。
ミイラ、海賊、王様…いろいろな存在に仕えますが、長続きしません。
ジェームズはこれまでの経験を絵に描き溜めており、ヘンリーに見せては楽しんでいました。
砂漠で野宿をしていると、馬で駆け抜ける強盗を発見。あれぞ理想のビッグボスだ…。みんなで追いかけ、列車までついていくと、さらに警察までやってきます。軽飛行機で逃げようとする強盗についていこうとみんなでぶら下がりますが、あっけなく地面に墜落。
いつの間にか街に到着していました。列車が広い街を大暴走する中、ミニオンたちはもう無我夢中であの強盗を追跡。
間一髪で大激突と思った矢先…カット!
カット…?

ここから『ミニオンズ&モンスターズ』のネタバレありの感想本文です。
ミニオンは映画史の先生
『ミニオンズ&モンスターズ』を観ていて、私の素直な感想は「1920年代のハリウッドにミニオンがいてくれるとこんなに楽しいのか!」であり、ちゃんと「1920年代のハリウッドっぽさ」をミニオンの世界観で表現してくれているのが良かったですね。
個人的には“デイミアン・チャゼル”監督よりも、ミニオンのほうがあの時代の狂乱を体現する表現者にうってつけな気がしましたよ。
2017年の『怪盗グルーのミニオン大脱走』の終盤でも、現代のハリウッドが舞台になってはいたのですけど、今回の『ミニオンズ&モンスターズ』は歴史に紐づいた濃密なハリウッド文化がたっぷりです。
なお、メインの舞台となる時代は1920年代ですが、細かい時代設定の整合性はなく、かなりごちゃごちゃしています。ただ、それも最後の最後で「実は全部劇中劇でした!」というひっくり返しがあっけらかんと提示されるので、脚色という体裁で押し通せていますが…(脚本家いわく自伝らしいので、ジェームズやヘンリーがハリウッドのあの時代に実在して影響を与えたのはこの作品世界では事実みたいです)。
冒頭から“エドワード・マイブリッジ”の『動く馬』に始まり、『大列車強盗』(1903年)をバカみたいにスケールアップしたような展開に怒涛の如く突入し、力業であの「映画の誕生の時代」を駆け抜けてみせ、一気にハリウッドの街がスクリーンに現れます。
この演出に私は不覚にも妙に感動してしまったのですが、ミニオンにこんな心を動かされるとは…。
ちなみにその街中大暴走の途中には、 “ハロルド・ロイド”の『要心無用』(1923年)の時計ぶら下がりから、“バスター・キートン”の『キートンの大列車追跡』(1926年)の列車わちゃわちゃ、『キートンの蒸気船』(1928年)の家屋壁倒壊、“チャールズ・チャップリン”の『モダン・タイムス』(1936年)の歯車まで、名作の名シーンをドタバタ劇で連発してひと繋ぎにしてくれます。この一連のシークエンスだけでも見ごたえはじゅうぶんです。
ミニオンが本格的に映画スターになっていくあたりも(現実におけるミニオンが人気キャラクターになっていった姿と重なり)、とても痛快なのですが、ミニオンがサイレントからトーキーの移行の過程で、台本どおりのセリフを喋れないので干される…というアイディアがまたおかしくて…。まあ、現実でもトーキーに対応できずにお役御免となった俳優はいたでしょうし、1930年代あたりの時期は「性的マイノリティだから」とか「共産主義者だから」とか「反体制派だから」とか、そういう理由で干される俳優が少なくなかったわけですけども、ミニオンもこんな理由でクビになるのか…。
それにしてもそのセリフNG集における『マルタの鷹』(1931年)はともあれ、『市民ケーン』(1941年)の凝ったシーンはさすがに笑いがこぼれますね。
そもそもミニオンたちは魅力的なボスに仕える本能に突き動かされている生き物ですが、そんな彼らがハリウッドの世界に惹かれるというのも一種の皮肉ではありますが…。
そう言えば、今回新登場したミニオンのエドはもともとミニオンっぽい言語も喋れないようで手話みたいな動作でコミュニケーションしていました。ミニオン初の障害者キャラクターとなり、表象がまた包括性を増しました。さりげなくテーマに合致しており、ミニオンたちは発話できないゆえに映画業界から追い出されたのですが、このエドがいるおかげで「障害を理由に職場から排除されることを絶対に肯定はしない」という作品の姿勢も感じますし…。
ハリウッドをおちょくってくれたミニオンたち。しかし、低年齢の子どもたちにこうやって昔の映画の歴史を知ってもらえるなら、映画好きとしてはこれ以上嬉しいことはないです。最高の入門作になったでしょう。
映画を愛するシネフィルなら、今作のおかげでミニオンには一生頭が上がらないですよ。
ミニオンもフェミニストになれるのだから…
『ミニオンズ&モンスターズ』にてミニオン以外のキャラクターも実に愉快で、私が一番好きになったのはやっぱりドートです。
元ネタは『地球の静止する日』(1951年)のゴートですが、あんなコミカルなロボットになったら、好きにならないわけないじゃないですか。
そのゴートが恋する女性であるデビーは、なんと当時の女性参政権を求めて社会運動をしていたフェミニスト(サフラジェット)です。
平凡な作品なら、ハリウッドを舞台にしていたら恋愛相手のヒロインに女優を選びそうなところを(それこそ『雨に唄えば』みたいに)、この本作はフェミニストを選ぶってあたりが尖ってますよ。
デビーは当時のアメリカのサフラジェットにはおなじみの白い服に「紫・白・橙色」のカラーリングのマークで行進しています。史実では、アメリカにおいては、女性参政権は1920年にアメリカ合衆国憲法修正第19条が批准されたことで全国的に認められたので、1920年代後半にまだこうした運動をしているのは時間軸の矛盾があるのですが…(でも1920年に女性参政権が法的に認められても現実的にすべての女性が投票できたわけではなかったのも事実です)。
ともかくドートがそのデビーにすっかり惚れて、一緒にフェミニズム運動の行進に参加し、つられてミニオンたちまで参加するくだりは微笑ましいかぎり。
しかも、ラストではドートとデビーの間に機械の赤ん坊みたいなものがいるのが確認できます。たぶん一般的な妊娠によるものではないでしょうから、女性の出産という性別役割をこんなSFな方法で乗り越えてみせるとは…。
そのドートが終盤に宇宙船で駆けつけて豪快に倒すのが、アイリーンという目玉いっぱいのスライム・モンスターなのですが、あれは1958年の『マックイーンの絶対の危機』(「The Blob」)の引用かな。
今作のグーミーといい、ハワードとフィリップスという怪物といい、“ハワード・フィリップス・ラヴクラフト”の「クトゥルフ神話」からの借用ですが、もともとミニオン自体がクトゥルフのパロディみたいなものですからね。クトゥルフのパロディがさらにクトゥルフのパロディを量産する…終わりのない連鎖でした。「ミニオンはモンスターじゃないの?」ってツッコミがない世界だからね…。
『フェイブルマンズ』でも学んだように映画はラストが大事。撮りたいものを撮ることができたミニオンたちにスタンディングオベーションです。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
関連作品紹介
イルミネーション制作のアニメーション映画の感想記事です。
・『FLY! フライ!』
・『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
以上、『ミニオンズ&モンスターズ』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Universal Studios. All Rights Reserved.
Minions & Monsters (2026) [Japanese Review] 『ミニオンズ&モンスターズ』考察・評価レビュー
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