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『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』感想(ネタバレ)…正しい選択をしよう

ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE

正しい選択をしよう…映画『ミッションインポッシブル デッドレコニング PART1』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年7月21日
監督:クリストファー・マッカリー

ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE

みっしょんいんぽっしぶる でっどれこにんぐ ぱーとわん
ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』あらすじ

これまで数々の絶対不可能とされてきた危険なミッションをこなしてきたIMFのエージェント、イーサン・ハント。その彼に休む時間はなく、新たなミッションが課される。それは全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出すというものだった。しかし、そんなイーサンに、IMF所属以前の彼の過去を知るある男が迫り、仲間たちと協力しながら、世界各地で命を懸けた攻防を繰り広げることになる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の感想です。

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』感想(ネタバレなし)

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映画の中でも外でも戦っている

ハリウッドは山場を迎えています。映画のプロットの話ではありません。

2023年7月、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)全米脚本家組合(WGA)が、全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)に待遇改善を要求して63年ぶりの同時ストライキに突入しているのです。先にストライキを始めたのはWGAですが、そこにSAG-AFTRAも参加し、映画史に残るのは確実な業界激震が巻き起こっています。

SAG-AFTRAとWGAが訴えているのは、業界の労働を良くすることです。とくに配信サービス競争時代に突入し、シリーズ・キャンセルや配信自体のキャンセルが相次いでおり、大企業の利益重視の戦略に振り回されて収入減が常態化しています。

そこに追い打ちをかけているのがAIです。2023年に急に存在感を増した生成AIは今や国際問題ですが、ハリウッドでも無視できません。報道によれば、映画大企業は、俳優の同意や補償なくAI技術でその肖像を使用することを画策しており、これに俳優たちは断固反対していますIGN。脚本もAI学習に利用されるだけでなく、そもそも雇用自体がAIに決定される未来さえも時間の問題です。というか、作品の継続が数字で決められている現状がすでにAI管理の土台になってしまっています。

このかつてない大規模ストライキでハリウッドの製作は多くでストップしていますが、これは業界の運命を決める戦いのようなものです。実際、大手企業は映画の悪役みたいな姑息な振る舞いをしていますし…ハフポスト

その激動の時期にこの大作映画が公開されるのは宿命だったのか。

それが本作『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』です。

ご存じ“トム・クルーズ”がやりたい放題することが許されている映画シリーズ。その第7作目。しかも、今回は2部作。「パート1」と銘打っています。

今回の新作がこの「SAG-AFTRA + WGA」ストライキとどう運命的なのかと言うと、作中の物語で世界を脅かすのがAIなのです。それとハリウッド唯一無二のスターである“トム・クルーズ”が戦うのですから、わざと現実とシンクロさせたのか?という一致率。

“トム・クルーズ”は映画の中でも外でもAIと戦っている…大変だな…。

それにしても、『トップガン マーヴェリック』に続いて“トム・クルーズ”主演大作映画は業界の重大局面に公開されている気がする…(『トップガン マーヴェリック』はコロナ禍後で特大ヒット)。

ということで『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』を鑑賞する際は、現実世界でAI依存企業と戦っている俳優や脚本家たちのことも思い浮かべて応援してあげてください。

あ、上映時間はシリーズ最長の163分です。黄色い小型車をひとしきり爆走させて仲間と合流した後ぐらいがちょうどいいトイレ・タイムになるかな?

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『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』を観る前のQ&A

Q:『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありません。ただし、1作目を観ておくと少し良いかもしれません。
✔『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の見どころ
★どこまでやるのか、トム・クルーズのアクション。
✔『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の欠点
☆上映時間が長い。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:主人公についていこう
友人 3.5:時間を調整して
恋人 3.5:一緒に気長に
キッズ 3.0:長すぎるのがやや不向き
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):全ては予測されているのか?

ロシアの次世代潜水艦「セヴァストポリ」が、実験用AIによる独自の推測航法(デッドレコニング)を海で試験していました。このAIは2つの特殊な鍵で厳重に潜水艦内にロックされています。

潜水艦はアメリカと思われる潜水艦を発見。攻撃を感知したので魚雷をこちらも発射します。しかし、敵の攻撃は突然消失し、相手の潜水艦まで消えてしまいました。さらにこちらの魚雷がなぜか自分たちのほうにめがけて戻ってきて、潜水艦は大破。沈没します。首にあの鍵をかけた船員の死体は海面に浮上して…。

ところかわって、アムステルダムのとある場所。ベテランのIMFエージェントのイーサン・ハントのもとに新たなミッションが下ります。

特殊な2つの鍵を見つけるというもので、それは2つ合わせないと意味がないらしく、現在その1つはイーサンとも深い関係がある元MI6エージェントのイルサ・ファウストが持っているようです。彼女はあらゆる存在に命を狙われており、早く見つけなければ危険です。

イーサンはさっそくアラビアの砂漠へ向かい、すでに強襲を受けていたイルサを援護します。とりあえずイルサは死亡したように偽装し、その場から逃がし、1つの鍵はイーサンが保有します。

一方、アメリカ政府は謎のAI「エンティティ」が次々と政府機関や銀行、大企業などに不正アクセスしている事件を把握していました。とくに損害は起きていませんが、そのAIはまるでこちらを試すような不気味な挙動をとっています。

CIAを含むアメリカの諜報機関のトップ代表者たちが極秘に対策を練る会議を行います。AIをコントロールするには2つの鍵が必要で、今、多くの国々がその鍵を手に入れようと必死でした。

元IMFで現CIAのユージーン・キトリッジ長官は、イーサンというエージェントを鍵の入手のために送り込んだと話しますが、そのイーサンとは連絡が途絶えてしまったとも説明します。

そのとき、キトリッジの副官がキトリッジにガスマスクを渡し、部屋中に催眠ガスを散布。その副官はイーサンの変装でした。イーサンはキトリッジにイルサを危険に晒した件で釘を刺します。

続いてイーサンはベンジールーサーのいつもの信頼できる仲間を集めて、このAIと鍵について対策を考えます。世界にとって脅威であるのは間違いなく、悪しき者の手に渡る前に奪取したいですが、同時にこの鍵をどう使うものなのかもよくわかってないので、それも把握しないといけません。

そこで鍵の買い手が現れるとされるアブダビ国際空港へ向かいます。しかし、そこで鍵をくすねるスリをしでかした女性グレースと遭遇し、半ば強引に協力させて、計画に修正が必要になります。

さらにイーサンはなぜかその空港内で、かつて自分がIMFに所属する前に因縁があったガブリエルという男を見たような気がします。

アメリカの諜報員ジャスパー・ブリッグスと部下のディガスも追跡する中、この鍵をめぐる陰謀は複雑に交錯し…。

この『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/07に更新されています。
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最大で6者以上の思惑が交錯する

ここから『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』のネタバレありの感想本文です。

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』は、二部作ということになっているせいか、これまで以上に風呂敷を広げまくっており、人間関係が意外に複雑です。これを整理できていないと、なんだかわからないままに派手なアクションが展開し出して「あれ、何でこうなっているんだっけ?」となってしまいます。

まずイーサンのチーム。これはいつもどおり。今回は”レベッカ・ファーガソン”演じるイルサも最初から信頼関係抜群で、ほぼチームメンバーです。しかし、イルサは退場となります。前作であんなに良いヒロイン交代劇をしたのに、ちょっともったいないけど…。

続いて“ヘイリー・アトウェル”演じるグレース。今作の重要キャラクターであり、ある意味では新米のポジションとなります。ちょっと1作目の頃のイーサンを思わせる感じです。本作はグレースのキャラクターにとってのエピソード1ですね。

そして本作の悪役である“イーサイ・モラレス”演じるガブリエル。AIに忠実なようですが、その素性は不明のまま。“ポム・クレメンティエフ”演じるパリスのような仲間の暗殺者さえも後半は切り捨て、随分と独断行動が多いです。パリスは最後は生きているようなので、次回作もでてくるのかな。“ポム・クレメンティエフ”の佇まいも良かったのでまた見たいです。

続いてホワイト・ウィドウの異名で知られる闇市場の武器仲買人アラナ・ミソポリス。前作から“ヴァネッサ・カービー”の演技で再登場ですが、このアラナも虎視眈々と自分の利益を狙います。

さらに1作目からカムバックしたキトリッジ。アメリカ政府側も相当にあくどい様相です。今回のアメリカはいよいよ悪の国家ですし、作品自体が国なんてろくなものでないとバッサリ見限ってます。

さらにさらにあまり何も知らされておらず、ひたすらにイーサンを追いかける諜報員のジャスパー・ブリッグスディガス。ラストではイーサンの正義に気づけたのか…。

こういう顔触れの構図で、3つ巴や4つ巴どころではない、最大で6者以上の思惑がハイテンポで混じり合うのです。スパイ映画だからこれくらいは普通かもですけど、やっぱり脳内処理がキツイな…。

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AIにできなくてイーサンにできること

そんなシリアス・パートではややこしい一方で、アクションは『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』でも超単純です。大作コメディ映画と言っていいほどにバカバカしさに溢れていて楽しいです。

前半の見せ場は、ローマ市街のカーチェイス。イーサンとグレースが手錠ゆえに上手くハンドル操作できず、そのドタバタ劇がしつこいほどに重なっていてアホ度100%。フィアット500を運転しながらの“トム・クルーズ”流の自動車学校喜劇みたいなノリでした。ただ、舞台といい、完全に『ワイルド・スピード ファイヤーブースト』と被っちゃったな…。

後半のピークの列車段階落ちも、これまたしつこさ満載で、大掛かりすぎるギャグとして完璧でした。

ボーっと見ていると「ただただハチャメチャなアクションだな…」という感想になるのですけど、この“クリストファー・マッカリー”監督なりのロジックはたぶんあって、そこを察することは一応はできます。

このシリーズは相手をギャフンと言わせる過程にこそエンターテインメント性がありますが、まず今作のイーサンは以前のボスであるキトリッジにあの諜報組織会合で一泡ふかせます。あそこはイーサンが完全に突出して1枚上手ですよと示すシーンですね。

並大抵の諜報組織では勝てないことを示してみせたイーサン。そこに立ちはだかるのは、諜報組織でも国でもなくAIです。以降はAIの手のひらの上で踊らされるイーサンと仲間たちを見ることになります。

これまでのデジタル全開のスパイグッズも使えない。しかし、イーサンたちには武器があります。アドリブです。アドリブ?って感じですけど、でもそれはAIにはできないこと。出たとこ勝負で飛び込んでいく。崖からだってバイクでスカイダイビングする。その無謀な突破力だけがAIを出し抜く鍵になる。

そして本作で何度も終盤に提示されるのが「選択」の重要性。グレースは一瞬は自分だけが助かる取り決めをキトリッジと交わそうとするけどそれを最後の最後でやめる。イーサンも列車の屋根でガブリエルを殺しそうになるけどそれを寸前でやめる。

AIは「選択」を効率的に行って最善のルートを予知して実行できます。イーサンたちはそれができません。悩むし、間違える。それでもその泥臭い過程で辿り着いた「選択」こそが大事なのであり、そこに「これは正しい選択だった」と自分を鼓舞させる肯定を得られます。これもAIには理解できない領域です。

新米グレースがキトリッジをギャフンと言わせることはできましたが、肝心の首謀者であるAIをギャフンと言わせるカタルシスは今作にはありません。そこが『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の二部作ゆえの少しばかりのモヤモヤです。

というか、このシリーズはああいう自我を持ったAIに対してどう決着をつける気でいるのか。今作ではあの「エンティティ」はさっぱり詳細不明でしたけど、あのまま「よくわからないAIだった…」みたいなフワっとした雰囲気で次回作は終わるのかな。どうしよう…「単にトム・クルーズのアクション・スタントが見たかっただけなんです」とAIさんが自白しだしたら…。

そしてイーサンの引退みたいな展開になるのかも気になります。もはやチーム・ファミリーを大事にする信念だけで動いているイーサンですが、“トム・クルーズ”はもちろんのこと、“サイモン・ペッグ”も“ヴィング・レイムス”も実はわりと高齢に近づいており、チーム自体の平均年齢上昇が著しいです。あまり若いメンバーを育てるということをしてこなかったこのチームはどういう行く末を辿るのか…。

シリーズの未来の観点でも『PART TWO』は目が離せません。

幸運を祈る…!

でも、その前に…ハリウッド大企業はAIと癒着するのをやめてください。自滅しますよ。

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 96% Audience 94%
IMDb
8.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2023 PARAMOUNT PICTURES. ミッションインポッシブル7

以上、『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の感想でした。

Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One (2023) [Japanese Review] 『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』考察・評価レビュー