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韓国ドラマ『静かなる海』感想(ネタバレ)…いっぱい吐くよ!

静かなる海

そんなに吐くんですか!?…ドラマシリーズ『静かなる海』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:The Silent Sea
製作国:韓国(2021年)
シーズン1:2021年にNetflixで配信
監督:チェ・ハンヨン

静かなる海

しずかなるうみ
静かなる海

『静かなる海』あらすじ

深刻な水不足は社会に不安と格差を生み出し、人々はこの苦境からなんとか脱しようともがき苦しんでいた。そんな中、閉鎖された月の宇宙基地にあるサンプルを回収するように指令を受けた隊員たち。そこになぜか生物学者のソン・ジアン博士も同行するように依頼される。詳細もわからないまま、一同は誰もいない韓国の月面基地であるパレ基地に到着するが、そこに待ち受けていたのは想像を絶する未知の恐怖だった…。

『静かなる海』感想(ネタバレなし)

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韓国は宇宙SFを開拓中!

将来的に水が不足する…と言われると、ちょっとにわかには信じられないかもしれません。なにせ今の日本は豪雨や豪雪を毎年経験していますし、むしろ「もう水はいいよ!」と追い返したくなるくらいでしょう。

でも世界は着実に水不足に突き進んでいます。その主な原因は人口増加。人間の数が増えれば必要となる水も増える。単純な話です。経済協力開発機構(OECD)の試算によると、世界の水需要は2000年から2050年の間に全体で55%の増加が見込まれているそうです。 これは凄まじい増加率です。しかも、ここに気候変動という追い打ちが発生し、水の確保はより不安定になってきます。

水が不足するとどうなるのか。水を獲得するためにコストが上がるのであらゆる価格が上昇しますし、水をめぐって紛争も起きます。水はあらゆる工業や農業に使用されているのでその影響力は甚大です。たとえ日本で水不足が起きなくとも世界の水不足の余波が日本にも直撃してくるのです。

考えてもみてください。水が高級品になってしまう未来を。想像できるでしょうか。想像できない? じゃあ、このドラマシリーズを観ましょう(恒例の誘導)。

それが本作『静かなる海』です。

世界的に絶好調の韓国ドラマですが、この『静かなる海』も韓国ドラマシリーズです。しかし、他とは毛色が違います。本作はSFであり、宇宙を舞台にしたサスペンス・スリラーです。

韓国の映像業界は多彩なクリエイティブで世界をアっと驚かせていますが、宇宙モノのSFはほとんどありませんでした。韓国は宇宙開発の業界では影が薄い国だったせいもあるのか、とにかく宇宙を題材にするものが乏しく、ちょっと寂しい感じ…。

でもそれも過去の話です。2021年には韓国初の本格的宇宙SF大作と掲げられている映画が爆誕。それが『スペース・スウィーパーズ』であり、ハリウッドと同等の品質のCG映像でゴージャスに世界が構築されて、壮大な物語が展開していました。その中にもしっかり韓国らしいエッセンスがあるのが個性だったり…。

そして2021年も終わりそうなこの年末にまたも韓国から宇宙SFが飛び込んできたのです。それが本作『静かなる海』。今作は先ほどの『スペース・スウィーパーズ』と同じ宇宙SFであっても、趣が全く異なっています。すごく静かなタッチでスタートし、じわじわとスリルが増していくような、そういう空気感です。盛大にドーンと花火を打ち上げるタイプではないですね。だからといって難解ということもないので、まだ観やすいほうのSFだと思いますけど。それにやっぱり韓国らしい要素も挿入されてきますし…。

物語の主な舞台は月にある放棄された月面基地。地球は極めて深刻な水不足に陥り、水は配給制になっている中、とある韓国のチームがその月面基地に派遣されます。ミッションの内容はサンプルの回収。ところがそこにはとんでもない隠された事情があって…というストーリー。ミステリー要素も強いのでこれ以上は書かないでおきます。

俳優陣も見ごたえあり。主人公の研究者を演じるのが、『空気人形』のような日本映画から、『ジュピター』のようなハリウッド映画、そしてもちろん『ハナ 〜奇跡の46日間〜』のような韓国映画にも幅広く出演し、最近はドラマ『キングダム』といったジャンル色の強いシリーズものでも存在感を衰えさせていない“ペ・ドゥナ”。『静かなる海』では儚げでありつつ、でもたくましいキャラクターを熱演。

また、もうひとりの主人公枠として、『トガニ 幼き瞳の告発』『新感染 ファイナル・エクスプレス』『SEOBOK/ソボク』など多くの映画で活躍し、2021年の社会現象話題作『イカゲーム』でも特別出演の短いシーンだけでも印象をかっさらっていった、韓国俳優界の中でも優しそうな雰囲気(でもそれがたまに怖くなる)でおなじみの“コン・ユ”。『静かなる海』では味方なのか敵なのか、判断に迷う佇まいで視聴者を動揺させてきます。今作の“コン・ユ”は、良い“コン・ユ”なのか、悪い“コン・ユ”なのか…。

他には『LUCK-KEY ラッキー』の“イ・ジュン”、ドラマ『愛の不時着』の“キム・ソニョン”、ドラマ『イカゲーム』の“ホ・ソンテ”、ドラマ『ロースクール』の“キル・ヘヨン”、『キングダム:アシンの物語』の“キム・シア”など。

監督は“チェ・ハンヨン”で、短編を元にしてドラマシリーズ化したのがこの『静かなる海』のようです。

『静かなる海』は全8話で1話あたり約40分~50分。ゆっくりじっくり進行していき、3話目あたりで緊迫感が増すようなギョッとする展開が起きていくので、ぜひとりあえず3話目くらいまでは観てほしいですね。

日本語吹き替え あり
諏訪部順一(ハン・ユンジェ)/ 竹内絢子(ソン・ジアン)/ 福西勝也(リュ・テソク)/ 矢尾幸子(ホン・ガヨン)/ 四宮豪(コン・スヒョク)/ 山崎健太郎(コン・スチャン)/ 最上嗣生(キム・ヒソン)/ 梶川翔平(キム・ジンギュ)/ 片山公輔(キム課長) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり4.0:SF好きは要注目
友人3.5:話題にしやすい
恋人3.5:ロマンス要素はほぼ無し
キッズ3.5:ちょっと怖いシーンも
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『静かなる海』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『静かなる海』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):水は危険です

圧力異常を感知したという警告音が鳴り響く狭い空間。「ファン次長、大丈夫ですか?」…そんな切迫した声が飛んでくる中、乗員は必死に現状把握に努めます。エンジンがすべて停止、現在地はパレ基地から北西に7.6キロ、電力システムも今にも停止寸前。「救難信号を出せ」と隊長は指示し、オペレーターは「こちらヌリ11号、探査隊のリュ・テソク大尉だ」と繰り返すも、本部からの応答は無し。ソン・ジアン博士は逆さまの座席から落下し、地面になった天井に全身を打ちつけます。意識が朦朧する中、水に気づき…。

ここは…。月面に不時着した損傷だらけのシャトル。

月日は遡ります。

世界水資源委員会は地球の水が10年で40%減ると発表、汚染水が原因で乳児の死亡率が過去最悪、植物工場の需要が増大…世界は一変しました。韓国では飲用水平等分配法は否決され、水の等級制の廃止の声は高まるものの実現には程遠い状況。国家生存対策委員会による水の管理は市民の格差を激化させていました。

そんな中、生存環境研究所の動物行動学者のソン・ジアン博士のもとにキム課長が来訪してきます。なぜ宇宙航空局関連の人間が自分のところに…ジアンには見当がつきません。「宇宙に興味はありません」と言うと「ある重要な任務に宇宙生物学者として参加してほしいのです。チェ局長もあなたを推薦を。任務を知れはあなたも関心を持つはずです」と相手も折れません。そしてその任務の場所をキム課長が述べた瞬間、ジアンは心が動揺します。「パレ基地です」

そこはジアンの姉であるソン・ウォンギョンがかつて勤めていた場所。謹弔と書かれた遺留品を目にして、ジアンの気持ちはじっとしているわけにはいかず…。

宇宙航空局の追悼碑の前に立つジアン。韓国の月面基地であるパレ基地で5年前に117名の研究員が犠牲になった事故についてのものです。そんなジアンの隣に探査隊長だというハン・ユンジェがやってきて、遅れてリュ・テソク大尉、コン・スチャン、キム・ヒソン、さらに副操縦士のウン・ジヨンも。チームドクターのホン・ガヨンも一緒です。

全員を集めて説明がなされます。放射能漏れで閉鎖中の基地に残されたサンプルを回収して帰還することがミッションらしく、月面着陸から24時間以内に任務を完遂するようにと。回収対象のカプセルは超低温状態で保存されているらしく、中身は言えないと言います。所在地は3か所で、1つでも安全に回収をできればいいと。あまりにも不明点が多すぎて疑念を投げかけるジアンですが、局長ははぐらかします。

さっそく月行きの機体に搭乗する一同。そこへ副操縦士のイ・ギスがやってきます。「なぜ直前で交代が?」と疑問が浮かびますが、説明はありません。ヌリ11号のシャトルは発射しました。唯一の基地経験者の顧問のファン次長も乗せ、やや不信感が漂う機内。

すると突然の揺れ。何かのトラブルなのか。このままでは危険です。「分離しろ」と隊長は指示。ドッキングを解除するもエンジンは点火せずにシャトルは月に落下。スラスターで機体を調整するも派手に墜落しました。

一同はスーツを着て船外へ出ます。全員出たところでシャトルは崖に落ちてしまい、孤立無援に。大きく負傷しているファン次長は苦しそうで、抱えられながら基地まで歩く途中で息絶えてしまいました。亡くなる直前に「水はダメだ」と意味深なことを言いながら…。

なんとか基地へ到着したチーム。ところがその基地は聞いていた状況とは違いました。放射能漏れもなく、設備もしっかり稼働するのです。

そして信じられない体験をすることに…。

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静かに緊迫感を煽る序盤

『静かなる海』は出だしは緊迫感MAXですが、全体的な序盤は静かです。

月面基地に派遣されてきたチームが目にしたのは、事前のブリーフィングで聞かされていた情報とは全く異なる基地の中。致命的な基地の機能不全もなく、なぜか大量の研究員の死体だけが転がっている。全員がこの状況に困惑しながら基地を探索することになります(といってもこのチームの何人かはこの基地に起きた過去のことを知っているのですが)。

観客にして見れば「絶対にこの登場人物の中に裏切り者がいるパターンだね」というのはすぐに察しがつくのですが、基本的に本作は“ペ・ドゥナ”演じるジアン以外はみんな怪しく見えてくるので、もう誰が裏の顔を持っていてもおかしくはなく、ゆえに常に緊張感が漂います。

そしてサンプル探しの際中に遭遇する謎の存在。このあたりはダクトを動く生体反応といい、露骨に『エイリアン』っぽい雰囲気を全開にしまくっており、「これはそっち系?エイリアン系の作品なのか!?」と思わず視聴者として前のめりになってしまいます。

この前半の緊張感はとてもよくできており、派手なことをせずに宇宙SFとして盛り上げる基本中の基本がクリアしているので、見ていて目が離せません。

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大放出です!

観客もすっかり世界観としての水不足の件など忘れそうになっていたら、3話目でいきなりのお見舞い。

何か体調が悪そうだったコン・スチャンが唐突に…水を吐く! それもとんでもなく大量に。まるで排水口が壊れて逆流でもしているかのように水が止まらない。マーライオン状態です。

この言葉にすると何の変哲もない「水を吐く」という要素。ただ、この映像のショッキングさだけで持って行くあたりがさすがの韓国作品の真骨頂。嘔吐だったら汚いシーンなのですけど、今回はあくまで水。だから絵面としてはそこまで不快感はないにせよ、でも水があれだけ噴出しまくっていたらもう不気味だし、意味不明だしで…

しかも、あの水は設定上は純度が綺麗…というのがまたなんとも皮肉で…。そんな体内から出まくっている水が綺麗なわけあるかいという感じなのですけど…。

ともかくそれまでの緊迫感が一瞬で吹っ飛ぶ大パニックであり、緩急の付け方としてはお見事。こんなに吐く作品、他にあるだろうか…というくらいに吐きまくるわけで、観客の印象も完全に持っていかれます。

この水の正体は「月の水(ウォルス)」だと判明。一応、水が生命体的な存在となるというのは『惑星ソラリス』などSFではある種の定番なのですけど、まさかこんな水の大放出映像を見せられるとはね…。

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意外なあの正体は…?

水が怖い…と恐怖感を植え付けられまくった後、続いて明らかになるサプライズがあの生体反応の正体。潜入した敵のスパイか…などと予想していた登場人物たちでしたが、その正体は…子ども

そこで暴露されるこの基地の実態。安定した水を供給できる革新的発見のために人体実験の犠牲になった子どもたち。「LUNA073」というこの子だけがなぜか適応して生存し、基地内で生きながらえてきました。

なんか“ペ・ドゥナ”と“コン・ユ”はいっつも子どもを守っている気がする…。それにしても今回の“コン・ユ”は、悪い奴だったけど最終的には良い奴になろうとする善悪折衷型の“コン・ユ”だった…。

後半は宇宙資源開発結社(RX)が送り込んだスパイによるサスペンスアクション化していくのですが、正直このスリルはあんまり勢いは良くない気もしました。あのRXの画策も雑ですし、序盤のポリティカルな世界観設定の割にはかなり平凡に収まってしまった気もするし…。韓国ドラマ『シーシュポス The Myth』みたいに容赦のない敵組織の部隊の乱入とかでもいいのに…。

個人的にはここでリュ・テソク大尉が月の水のパワーで変貌して、ルナと超人バトルを繰り広げるくらいのインパクトがないと、盛り上げには乏しい感じもするかなと思ったり…(あのルナ、あそこまで異常速度で機敏に動ける意味、あったのかな…)。“イ・ジュン”演じるリュ大尉が口から盛大にハイドロポンプを放って攻撃してくる姿を私は観たかったよ…。

でも最終的に月の水で新しい進化を遂げてしまった人類としてのルナの存在は、ちょっと『2001年宇宙の旅』的でもあり、そこはSFらしい着地になっていて良かったです。

今作の良さは、ソン・ジアンとホン・ガヨンの学者ペア(ジアンと姉のペアもある)のささやかなシスターフッドかもしれないですね。

この後は中立地帯となっている国際宇宙研究所のステーションに行くつもりのようですけど、続きの物語も観たいなぁ…。

『静かなる海』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience 64%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『静かなる海』の感想でした。

The Silent Sea (2021) [Japanese Review] 『静かなる海』考察・評価レビュー