待望の長編実写映像化…ドラマシリーズ『HALO(ヘイロー)』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2022年~)
シーズン1:2022年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン2:2024年にU-NEXTで配信(日本)
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、カイル・キレン ほか
恋愛描写
へいろー
『HALO』物語 簡単紹介
『HALO』感想(ネタバレなし)
あの大人気ゲーム、やっと本格的な実写化!
日本はテレビゲーム大国かもしれません。でも英語圏ではとても有名なゲームなのに、日本では全然知られていないタイトルもあります。その筆頭に挙げられるのが「Halo」シリーズです。
「Hallo(ハロー)」じゃなくて「Halo(ヘイロー)」。「光輪」とかを意味する「halo」ですね。
このゲームタイトルが日本でイマイチな知名度の理由は、「Xbox」専用ゲームソフトだからです。やっぱり日本はどうしてもXboxのシェアが低いですから。しかし、世界的にはXboxをプラットフォームにするゲームとしてはトップクラスの人気であり、1作目の「Halo: Combat Evolved」が2001年に発売されて以降、シリーズはどんどん制作され、大成功をおさめています。
Xboxを開発するマイクロソフトにとっても看板商品であり、Windows10に搭載されたAIアシスタントの「Cortana(コルタナ)」の名はこの「Halo」シリーズに登場するAIに由来しているほど。
これだけ大人気のゲームですから当然のように映像化の企画もあるだろうと推察できるのですが、実際にそういう映画化企画はありました。なんでも“ピーター・ジャクソン”や“ニール・ブロムカンプ”が監督候補だったそうです。しかし、計画は頓挫。一説にはマイクロソフトがあれこれうるさかったからだという話もありますけど…。
その後も映像化の試みが無かったわけではなく、2012年の『Halo4:フォワード・オントゥ・ドーン』や、他にもアニメーション化も実現しました。しかし、本格的な大作実写化という規模ではなく、あくまでゲームを補足するオマケの印象が強かったです。
そんな中、ゲームの誕生から20年以上経った2022年、ついにファン待望の実写ドラマシリーズの壮大なプロジェクトが実現。それが本作『HALO』です。
今回のドラマ『HALO』は映像クオリティは一級品だと明言できます。なにせ“スティーブン・スピルバーグ”が製作総指揮で関与し、彼のスタジオである「Amblin Television」が制作していますから。座組としてはパラマウントで配給されることもあって、『トランスフォーマー』と重なってきますね。中身もド派手な映像も多く、アクション満載ですし…。
で、この『HALO』がそもそもどういう世界観の物語なのかというと、「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」のようなスペース・オペラなのですが、人類は技術発展で宇宙へ大々的に進出済みで、銀河の広域を活動拠点とする組織を設立し、植民星を広げている段階にあります。宇宙各地にある星の資源をめぐる競争が激化する中、謎の異星人軍団が出現し、大戦へと発展している…というのが基本の設定です。
『HALO』の主人公はその人類組織に属する「スパルタン」という特殊強化兵士のひとりです。襲ってくる敵と戦いながら、自身とこの世界の謎を解き明かしていく、壮大なストーリーが幕を開きます。
本作のドラマシリーズのベースになっているのはゲームの1作目「Halo: Combat Evolved」ですけど、物語は独自の展開を見せるので、新鮮さはじゅうぶんでしょう。もちろんゲームへのリスペクトも随所に散りばめられています。
俳優陣は、ドラマ『ジェイコブを守るため』や『アメリカン・ゴッズ』の“パブロ・シュレイバー”、『ティーンスピリット』の“オリヴィア・グレイ”、『Reef Break』の“イェリン・ハ”、ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』の“チャーリー・マーフィ”、ドラマ『サバイバー:宿命の大統領』の“ナターシャ・マケルホーン”など。
ドラマ『HALO』は本国では「Paramount+」で配信されましたが、日本では「U-NEXT」での独占配信となっています。シーズン1は全9話(1話あたり約40~60分)。なるべく大画面であの世界観に没入するように映像を堪能してください。
『HALO』を観る前のQ&A
A:いくつか専門用語が登場しますので以下に解説しておきます。
【世界観】
26世紀の宇宙が舞台であり、人類は完全に宇宙に進出しています。恒星間を移動できる宇宙船技術もあり、多くの人々が他の星に入植しています。
【国連宇宙軍司令部(UNSC)】
人類の主要な政府機関である地球統一政府(UEG)に属する軍組織です。全ての人類が地球統一政府に友好的というわけではなく、植民星の中には反発して抵抗戦を挑む者もいます。
【スパルタン】
UNSCに属する、特殊なアーマーと身体強化によって驚異的な能力を発揮する特殊部隊。
【コヴナント異星人同盟】
さまざまな種族の異星人から構成される軍事的・宗教的連合。UNSCとはしばらく前から戦争状態にあります。
オススメ度のチェック
ひとり | :エンタメアクションが好みなら |
友人 | :ゲーム好き同士で |
恋人 | :趣味が合う相手なら |
キッズ | :やや暴力的だけど |
『HALO』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):物語の第1章が始動
地球統一政府(UEG)外縁植民星の惑星マドリガルは重水素を産出するため、資源価値がありました。しかし、現地の一部の人々はUEGの支配に抵抗し、応戦。状況は泥沼化していました。
2552年、その抵抗勢力の基地でメンバーがカードゲームで暇を潰しています。テレビにはこの星を新たに統治することになったヴィンシャー総督が映っており、交渉で戦争を終わらせると熱弁。抵抗勢力のひとりは「偽りの希望を与える馬鹿だ」と罵り、「スパルタンは殺し続ける無慈悲な奴らだ」とUEGの国連宇宙軍司令部(UNSC)に属する特殊部隊の恐ろしさを何も知らない若者に語ります。
一方、その抵抗勢力の基地近くで、クワン・ハはドラッグ採取をして、みんなで楽しもうとしていました。そのとき、クワンは木々の奥に何かに気づきます。船です。もしかしてUNSCなのか。でもちょっと違います。とにかく急いで帰ろうとすると、攻撃を受け、仲間はどんどん爆死。信号弾を撃ち、基地に危険を知らせます。クワンの父であるハ将軍は戦闘態勢を指示。慌ただしくなる基地に戻ったクワンは「敵はUNSCじゃない」と状況を報告します。
基地の防壁は強襲者に一瞬で破られ、乱入してきたのは異星人でした。蹂躙されていく抵抗勢力。大勢に無勢。相手の技術の方がはるかに上です。
そんな絶体絶命の最中、UNSCの船が上空に出現。着地してきたのは…スパルタンです。ハ将軍はスパルタンに銃を向けますが、スパルタンは異星人と交戦。その加勢で勢いづく現地の人々。今は長年の対立は後回しです。
しかし、ハ将軍は敵の生き残りに串刺しにされてしまいました。それを残骸の下で隠れて見ていたクワンは絶望。4人のスパルタンは敵捜索のために行ってしまい、クワンは茫然としたまま残されます。
スパルタンのシルバーチームのリーダーであるマスターチーフ(John117)は、仲間のヴァナク、リズ、カイに指示を出し、発掘作業の洞窟に到着。先ほどの敵襲…コヴナントは何かを掘り出していたようです。その遺物にチーフが触れると光りだし、謎の記憶がチーフの頭にだけ蘇ります。チーフはあの物体の回収にこだわり、ひとりで回収すると命令。気絶したクワンも連れて、単独で基地に戻ろうと船をだします。
その頃、惑星リーチの艦隊司令部UNSC本部ではキャサリン・ハルゼイ博士がチーフの映像を興味深そうに確認。パランゴスキー提督が入ってきて、その回収した物体から敵のエイリアンの情報を得られるのならいいと言いますが、博士には秘密の思惑がありました。
そして、チーフの中には漠然とした動揺が残り続け、前代未聞の行動を後押しすることになり…。
シーズン1:チーフの最強っぷりを眺める
テレビゲームの映像化作品の感想を書くときはいつも言及していますが、操作して楽しむゲーム特有のインタラクティブな面白さを映画やドラマには移植できないという問題は常に付き物です。
このドラマ『HALO』もそうなのですが、ただ今回のドラマシリーズならではのエンターテインメント性もどデカく投入されるので、そのジレンマは誤魔化せている部分はあります。
何しろ本格的な独立の映像化は初で、これだけ壮大な世界観がハイクオリティで見られる…これだけでもかなりワクワクしてきます。
そして本作の売りであるアクション面も痛快です。ゲームには欠点もあって、そのひとつがプレイヤーのスキルに左右されるということ。どんなに設定上では最強となっていてもプレイヤーが下手糞だと、ゲーム内キャラもダサくみえてしまいます。ゲームは良くも悪くもプレイヤーとキャラクターがシンクロしすぎるのです。
それに対してこのドラマ版では「スパルタン、強ぇ! チーフ、最強!」という向かうところ敵なしのパワープレイっぷりが第1話から思う存分に味わえます。
最初のスパルタン登場シーンからやたらとカッコよく、そこからの敵殲滅は爽快。さらにチーフがクワンを守るために命令に背いたとき、UNSCの大規模部隊がチーフの確保に駆り出されるオオゴトになっているあたりで、このチーフがいかに最強と認知されているかがわかり、ここも無性にテンションがあがってきます。
そんなヤベぇ奴ですから、チーフをコントロールする制御機能としてコルタナが導入されるのもわからなくもない。でも本作でもコルタナのどことないストーカー的なウザさは健在だったな…。
第5話の発掘現場での大乱戦の映像迫力も凄かったです。やっぱりここでも「チーフ、最強!」でしたけど。
そして第8話ではそんな強すぎるスパルタン同士での大戦というサービスシーン。今回はチーフ以外に感情に目覚めるカイもカッコよかったですね。逃げる博士の船に単身で飛び乗って大破生存するし…。こいつら、もう尋常じゃないよ…。
最終話ではシルバーチームの連携がまた見られ、アクションの見せ場としては極上のコース料理だったのではないでしょうか。
シーズン1:顔見せ問題よりも残念だった部分
映像とアクション面は娯楽作として最高のドラマ『HALO』だったのですが、ファンからは批判もかなり見られました。
そのひとつがマスターチーフが早々にヘルメットを脱いで顔を見せてしまう点です。
原作のゲームではチーフはヘルメットを基本はずっとつけたままで、この顔の見えなさはプレイヤーが自分と置き換えるための、いわば配慮でもありました。
しかし、ドラマ版では第1話の終盤で警戒するクワン・ハを信頼させるためにいきなりヘルメットを脱いで顔を見せてしまいます。それからもとくに気にする様子もなく、顔丸出しの状況が続きます。往年のファンにしてみれば「こんなのチーフじゃない!」となるのも無理はありません。
ドラマ『マンダロリアン』では主人公が最後を除いて一切顔を見せないスタンスで物語を描き切ってみせたわけで、『HALO』でもそれくらいできたのでは?と思わずにはいられません。
もちろんこの『HALO』のチーフ顔見せも製作者は意図があったのでしょう。シーズン1の最終話のオチを見るとその狙いがハッキリします。最後はコルタナに身を委ねて自我を喪失したのか曖昧なまま無言のヘルメット姿のチーフが映る。このラストのためにそれまでの人間的なチーフを見せるパートが必要だったというのもわかるにはわかるのですが…。
ただ、ここだけは擁護しづらい私の残念ポイントは、チーフとマキーの関係性ですね。感情を抑制している腰に埋めたホルモンペレットを外したら、マキーとあんなにあっさり肉体関係まで持つというのは、さすがに雑すぎ恋愛描写かなと…。「感情を抑制している=恋愛しない」というアロセクシュアルな前提も納得いきませんし…。
あと、惑星マドリガルのクワン・ハのエピソードがチーフ側の物語軸とこのシーズン1では全然絡んでこないのも退屈ではありました。ただでさえ、今作ではこの植民星のクワンたちが韓国語がなぜかデフォルトのアジア系民族として描いており、ちょっと白人中心的なオリエンタリズム消費になっているわけです。あまり褒められる活用ではないですよね。
シーズン1最終話で、2つの遺物を奪取するも、コルタナと同化したチーフ。やむを得ずマキーを撃ったカイ。重傷を負ったリズ。クローンを身代わりにまんまと逃走したハルゼイ博士。価値のないものを浄化するというHALOの正体…。
次のシーズン2はストーリー面の強化も期待したいところです。
シーズン2:スパルタン、辛い…
ドラマ『HALO』のシーズン2は、惑星リーチがコヴナントに強襲され、シルバーチームはヴァナクの死でバラバラになり、踏んだり蹴ったりが続きます。
今回も大まかにはゲームをしっかりなぞっており、アッカーソン大佐と海軍情報局(ONI)によって設立された次世代の超兵士「スパルタンIII」がついに登場し、カイがそれを率いることに。ペレスの視点でその部隊の過酷さが浮き上がり、今作は「スパルタン、強ぇ!」なんて言ってられません。
シーズン2の最終話ではやっとHALOの目的が判明。フラッドという寄生型エイリアンが宇宙に解き放たれて拡散するのを防ぐため、邪魔なものを排除するという宇宙規模殺虫剤でした(この説明は雑すぎないか)。
全体を振り返ると、シーズン2は予算縮小のせいか、シーズン1より映像スケールは抑えめだったかな、と。相変わらずチーフ(ジョン)はアーマーをほとんど身に着けず、やっとアクションもアーマー無しでバリバリ全開でしたが…。明るい中でのコヴナントとの一騎打ちが最後に用意はされていましたので、ここでスカっとしてねってことでしょうかね。
ソレンやクワン・ハたちの旅路もようやくこのHALOの真実と共にメイン・ストーリーとの繋がりが増したのですが、本作の売りとする爽快豪快なスパルタン・アクションとあまり親和性がないので、ミスマッチさは依然として残っているのかも。
ドラマ『HALO』はまだ続くかはわかりませんが、肝心のゲーム・スタジオ側が体制縮小傾向にあり、これだけ本格的に映像化できる最後のチャンスですし、あともう少しは続行してほしいものです。
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 70% Audience 52%
S2: Tomatometer 89% Audience 70%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
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以上、『HALO』の感想でした。
Halo (2022) [Japanese Review] 『HALO』考察・評価レビュー