そう易々とはくたばらない…映画『SISU/シス 復讐の血闘』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:フィンランド・アメリカ(2025年)
日本では劇場未公開:2026年に配信スルー
監督:ヤルマリ・ヘランダー
ゴア描写
しす ふくしゅうのけっとう

『SISU シス 復讐の血闘』物語 簡単紹介
『SISU シス 復讐の血闘』感想(ネタバレなし)
孤独な高齢生活でも元気でいたい
厚生労働省の2025年の国民生活基礎調査によれば、日本での65歳以上の高齢者世帯の割合は31.9%で、前年より0.5増え、過去最高の高齢率となったそうで、そのうえ、高齢者世帯のうち独り暮らしの割合は53.2%となっているとのこと。
もう高齢になれば独りになるのは宿命づけられているようなものなのでしょうか。だったら高齢になる前から孤独な高齢生活に備えて鍛えておかないと…。
何からすればいいかって? そうですね…。じゃあ、この映画から観ることにしましょうか。
ということで、本作『SISU シス 復讐の血闘』です。
本作は2022年に公開されたフィンランド映画『SISU シス 不死身の男』の続編であり、2作目となります。

戦争映画ではありますが、だいぶジャンルとしてはケレン味のあるアクション寄りで、1作目は第二次世界大戦にてフィンランドが戦地となった「ラップランド戦争」を舞台に、ひとりの高齢男性が可愛い犬を連れながら、武装したナチスの戦車隊を壊滅させてしまうお話でした。超強い“おじいちゃん”です。
ストイックに容赦なく殺していくその手際は老兵の神業であり、そのスタイルが好評を博しました。
今作は『SISU シス 復讐の血闘』はその2年後を描き、やっぱりあの超強い“おじいちゃん”が敵を淡々と葬っていきます。
今回の敵はナチスからソ連兵に変わり、過去の因縁と向き合うかたちに…。まあ、殺していくんですけどね…。
『SISU シス 復讐の血闘』を監督するのは、前作から引き続き、『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』(2010年)や、『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』(2015年)といった、ブラックユーモアたっぷりな作品に定評のあるフィンランド人の“ヤルマリ・ヘランダー”。完全に持ちネタのシリーズになりましたね。
“ヤルマリ・ヘランダー”監督はハリウッドに才能が認められ、2027年はあの『ランボー』の前日譚映画の監督に抜擢され、公開を控えています。
『SISU シス 復讐の血闘』の主演は、引き続いて“ヨルマ・トンミラ”。さらに今回の強敵として立ちはだかる存在を演じるのは、『アバター』シリーズでも大暴れしている“スティーヴン・ラング”。そして、『ユマカウンティの行き止まり』の“リチャード・ブレイク”も参戦しています。
基本的にはこの3人で物語は展開します(他の大多数はやられ役の雑魚)。“ヨルマ・トンミラ”は67歳、“スティーヴン・ラング”は74歳、“リチャード・ブレイク”は61歳なので、平均年齢がすごく高いですね。“リチャード・ブレイク”だって「あなたが主要登場人物の中では一番若いです」って言われる経験、なかなかないでしょうから。
『SISU シス 復讐の血闘』は残念ながら日本では劇場未公開で、配信スルーになってしまったのですけど、孤独な高齢者の底力を目にして活力をもらってください。
ちなみに、今回の嬉しいネタバレ。
また犬がでてきますが…やっぱり犬は死にません。やったね。
『SISU シス 復讐の血闘』を観る前のQ&A
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Q『SISU シス 復讐の血闘』を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
前作の1作目『SISU シス 不死身の男』の続きの物語ですが、観ていなくても問題ありません。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 拷問のシーンがあります。 |
| キッズ | 残酷な殺人の描写が多いです。 |
『SISU シス 復讐の血闘』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
第二次世界大戦が終結し、フィンランドはモスクワ平和条約が調印されたことで、カレリア地方をソ連に割譲することになり、新しい国境ができあがりました。
1946年。真っ暗な夜、降りしきる雨の中、国境検問所にフィンランド側から1台のトラックがやってきます。ソ連兵が入念に検査する中、運転席にいたのはアアタミ・コルピという老人です。助手席には小さな犬も1頭座っています。
大人しく検問を無事に越えると、そこはカレリア地方でした。アアタミがこの地にやってきたのは理由がありました。ここは故郷なのです。そして家族と縁の深い我が家がありました。その家を解体し、その資材を運び、フィンランド側で再建しようと考えていました。
家に到着します。室内は昔のまま。アアタミはゆっくり歩き回り、思い出に触れます。ここには確かに自分の家族がいました。しかし、その家族はソ連に奪われました。怒りがこみ上げてきますが、どうすることもできません。戦争はもう終わったことであり、恨みや憎しみを今さら抱えても意味はないのだから…。
ひび割れた昔の家族写真を見つけ、今の孤独な自分を実感します。
その頃、シベリアのとある刑務所にて、厳重に拘束されていた高齢の男がひとりいました。その名はイェゴール・ドラグノフ。もう老いた身ですが、かつては残虐さで知られる兵でした。それこそ子どもだって殺すほどです。
そのドラグノフを引っ張り出してきたのは、ソ連の当局です。ソ連当局はアアタミがソ連側に入国したのを把握していました。アアタミはソ連にとっては赤軍を大量に殺した相手であり、恨みがありました。
実はドラグノフはアアタミの家族を残酷に殺害した張本人でもありました。ソ連当局はそんなドラグノフに「アアタミを殺せば釈放する」と誘います。
アアタミは黙々と解体作業を終え、木材を満載にしたトラックで帰路を進みます。運転席には家族の写真が貼りついています。
ところが草原のど真ん中の道の途中でソ連兵の車が道を塞いでいます。後ろからも車が来て、退路を塞がれました。明らかに不自然で意図的な感じがします。
その後ろの車に乗っていたのが、ドラグノフでした。一触即発の状況を察したアアタミはその瞬間を待ちます。そして戦いの火蓋が切られることに…。

ここから『SISU シス 復讐の血闘』のネタバレありの感想本文です。
シャベルにはミサイルを!
『SISU シス 復讐の血闘』は、現時点でフィンランドで製作された映画の中でも最も高額な作品のひとつとなったらしいですけど、でもハリウッドと比べるとはるかに低予算で製作されています。
それでも凡庸なハリウッドのアクション映画よりははるかに面白いです。
それはなぜかと考えれば、やっぱり有名俳優のキャスティングやド派手なVFXありきではない、何にこだわって面白くするかを作り手が専念して考えているからだと思います。
そもそも前作からそうなのですが、この『SISU』シリーズは、ハリウッドの男臭いアクション映画のジャンルを若干パロディにしているところがあります。すでにその点でジャンル自己批判的な視点を持ち合わせているんですね。
例えば、普通だったら有名男優のマッチョな主人公が大暴れする男らしく荒々しいスタイルになりそうなところを、「誰、このおじいちゃん?」っていう大半の観客には全くピンとこない主人公を配置するだけでも、既存の男らしさを皮肉ることになります。
今作『SISU シス 復讐の血闘』にいたっては、前半はもう露骨に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』です。1台のトラックでただ積荷を運びたいだけのアアタミに、執拗に追っ手が迫り、ひたすら走りながらその敵を撃退していくことになります。
ここのノンストップさがとても気持ちよく、ヘルメットアーマーのバイク隊をひとりひとり殺していくステージから、今度は空からの攻撃機の猛襲をかいくぐって見事に撃墜してみせる…。おじいちゃんが戦闘機を倒せるはずない…なんて考えはこの映画では通用しません。対空戦闘対応型のおじいちゃんなのです。
さらに捨てられた戦車を活用すれば、検問所のバリケードもジャンプで飛び越えるという、『ガールズ&パンツァー』並みの戦車アクロバットを披露してくれます。おじいちゃんひとりでいいんです。チームなんていらなかった…。
一旦生け捕りにされてからは、列車攻略のステージに移動。ここからもおじいちゃん単身の異常な強さが際立っており、もはやギャグの領域(最初からそうだったけど)。
あの就寝車両を静かに突破していく地味な感じが個人的には好きです。絶対に走り抜けたほうが確実だろ…とか、ガラスの破片くらいゆっくり隅に払えばいいのに…とか、そんなこと言ってはいけない…。おじいちゃんは頑張っているんだ…。
そして極めつけは…。2丁乱射なんて序の口。映像に登場した瞬間にまさかと思ったら、そのまさか。ミサイルをブースターにして、切り離された先頭車両に文字どおり突っ込むという人間弾丸の必殺技を繰り出します。
この『SISU』シリーズ、ちゃんとリアルなコンバットだけでやろうというほどの真面目さがないのも良いですね。たまにはこういう底抜けにバカなアクションも堪能しておかないと。
フィンランドの犬と木材は凄い
『SISU シス 復讐の血闘』は、既存の男らしさを皮肉っているのは書きましたけど、確かに荒唐無稽なバカさで理想化するのとは程遠い存在にはなっているのですが、一応、その土台はフィンランドのナショナリズムには立脚しています。そこは無視はできません。
今作の敵もソ連なわけですし…。イェゴール・ドラグノフはいかにもステレオタイプな凶悪で冷酷なソ連悪役です。
ただ、ドラグノフは小物ではなく、「老人vs老人」を展開するにあたって、互角の好敵手として描写されているのはまだ良かったところですが…。列車内での肉弾戦も手に汗握ります。それまでのソ連兵があまりに雑魚だったので、ドラグノフの存在感が印象に残るというのもあるのですけども。
最終的には、孤独な高齢者に寄り添うオチが待っています。他者の差し伸べる手を素直に受け取り、助けを借りられる人間になる…というあたりは、最近も別の映画で見た光景ですけど、若者にも高齢者にも大切なことですね。
それにしてもこの主人公のアアタミ、今作は本当に一言も発しないままだったな…。ここまでストイックに貫いていると、映画としてはあっぱれです。
そして忘れそうになるけど、犬。今作においてはあの犬が同行する意味はまるっきりないのですけど(犬を預けられる知り合いもいないんだろうなということがわかる)、あれだけとんでもない目に遭っておきながら、あの小さな犬は無事という奇跡(案の定、今回も犬は別に戦わない)。水中にダイブしても、戦車が飛び上がっても、怪我ひとつ負わないあの犬の強靭さ。
この犬がただいるだけでギャグになっていくのは、ズルい仕掛けではありました。
まあ、犬以上にあの建材が最初から最後まで無事なのもツッコミどころではあるのですけどね。フィンランドの木材はきっと凄いんだよ…たぶん…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『SISU シス 復讐の血闘』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)2025 Cosmic Snowball Oy and Korpi GC Ltd. All Rights Reserved. SI2U シス2
Sisu: Road to Revenge (2025) [Japanese Review] 『SISU シス 復讐の血闘』考察・評価レビュー
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