さようなら…映画『アクアマン2 失われた王国』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2024年1月12日
監督:ジェームズ・ワン
あくあまん うしなわれたおうこく
『アクアマン 失われた王国』物語 簡単紹介
『アクアマン 失われた王国』感想(ネタバレなし)
DCEU、終わっちゃった…
「DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)」の栄枯盛衰の歴史…はもう散々語り尽くしたからいいか…(『ザ・フラッシュ』の感想も参照)。
でもそろそろそんな話ができるのも最後です。なぜならこの『アクアマン 失われた王国』で、本当にDCEUはシリーズを閉幕させるからです。これが泣いても笑っても最後の一作となります。
2013年の『マン・オブ・スティール』に始まり、ちょうど20年後の2023年に16作目の『アクアマン 失われた王国』でフィニッシュか…。
とは言え、シリーズの終結は完全に強制的な大人の事情なので、本作『アクアマン 失われた王国』がDCEUの総決算となる大団円を描くわけでは全くありません。普通に2018年公開の『アクアマン』の2作目となる続編が描かれるだけです。
ゲストキャラクターとかもいないですからね。『ザ・フラッシュ』をDCEUのラストに持ってくるほうが良かったのでは…(今さら)。
しかも…しかもですよ。『アクアマン 失われた王国』をさらに地味に追い込む可哀想な扱いが…。普通であれば、この手の大作映画はレッドカーペット・イベントやアフターパーティーが盛大に開催され、そこで俳優や製作陣を集めて、メディアに取材してもらって大きな宣伝効果を生みます。
ところが『アクアマン 失われた王国』は全然行われませんでした。ファンイベントでちょこっと顔出ししたくらいです。これは異例中の異例です。
確かに2023年は異例が多かったです。『ザ・フラッシュ』は主演俳優の不祥事で多少の取材制限がありましたが、それでも盛んに口コミ宣伝がばらまかれていました。DCの『ブルービートル』やマーベルの『マーベルズ』はストライキ中だったので俳優参加のイベントができず、宣伝の勢いは弱めでした。
その点、『アクアマン 失われた王国』はストライキも終わったし、通常どおりの宣伝かなと思ったのですが、蓋を開けてみれば…この寂しさ。ワーナー・ブラザース側がいかに宣伝費をケチっているか露骨に現れました。これが終焉するDCEUへの企業からの最後の手向けなのかよ…。
うん…そんなことを言ってもしょうがない。終わりだ…終わりなんだ…(言い聞かせる)。
ということでDCEUの話は一旦脇に置きます。『アクアマン 失われた王国』の本題に移りましょう。
1作目の『アクアマン』はひと言で言えば何もかも新鮮でした。「スーパーマン」や「バットマン」とはまるで異なる男性ヒーローが来たな…と。あらためて振り返ると次世代マッチョを確立していたのが成功の秘訣だったのではないかな。主演の“ジェイソン・モモア”が抜群にハマっているんですよね。
単純明快でありながら、「海の『スター・ウォーズ』」みたいな壮大な世界観が目の前にドバっと押し寄せて、私も久々に夢中になれたアメコミ映画のひとつでした。
2作もその作品のノリはもちろん継承しています。ダイナミックな勢いは同じです。
監督も前回に続いて“ジェームズ・ワン”。この『アクアマン』シリーズですっかり大作慣れしましたが、今後も大作を手がけることはあるのかな。
主演の“ジェイソン・モモア”と並んで、“パトリック・ウィルソン”、“アンバー・ハード”、“ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世”、“ニコール・キッドマン”、“ドルフ・ラングレン”なども再登場。DCとマーベルの掛け持ちとなっている“ランドール・パーク”は出番が増えてます。
2作目だけどそれ以上の唯一無二の立場を背負った『アクアマン 失われた王国』。DCEUの去り際をあなただけでも見送ってあげてください。
『アクアマン 失われた王国』を観る前のQ&A
A:海底にあるアトランティス王国を統べるヒーローで、アーサー・カリーという名ですが、アクアマンの通称があります。水中を自在に泳ぎ、海洋生物を従えることもできるパワータイプな戦いが得意です。DCEUでの初登場は『ジャスティス・リーグ』(2017年)でした。
A:1作目を観ないと物語がわからないというほどではないですが、観ておくと世界観の理解がスムーズにいきます。
オススメ度のチェック
ひとり | :シリーズ好きなら |
友人 | :気楽なエンタメ |
恋人 | :楽しく気軽に |
キッズ | :子どもでもOK |
『アクアマン 失われた王国』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):海にまたも波乱が…
大型貨物船が嵐の中で、荒くれ者に乗っ取られる中、颯爽と海中から現れたのはアクアマンことアーサー・カリー。凄まじいパワーであっという間に敵をなぎ倒してしまいました。
そんな話を赤ん坊に話聞かせているアーサー。可愛い人形で実演すると、その子もニッコリ。
アーサーは海底のアトランティス王国で王座につき、メラと結婚し、アーサー・ジュニアという愛すべき我が子を授かりました。今では海ではあちこちの海底の諸外国と外交し、海の平和を守る政治を行い、陸では子育てに明け暮れる日々です。
とにかく忙しいのでさすがのアーサーもへとへとですが、アーサーの父親トムが良き相談相手になってくれるので、なんとかやっていました。
我が子は魚との交信能力をすでに持っているようで、将来は有望です。
一方、凍てつく南極の地。ブラックマンタとして強化されたデイビッド・ケインは父親の死に関してアーサーへの復讐を続けており、海洋生物学者のスティーブン・シンと協力してアトランティスの遺物を探していました。
調査中、シンは氷の割れ目に落下し、謎の触手生物に遭遇します。デイビッドが助けに来ると、その怪しい場所を調査隊と探索。水中でまた襲われるも、折れた黒いトライデントのようなものを見つけます。
それを手にしたデイビッドは、自分がアトランティスを破壊するビジョンを体感し、瞳が緑に不気味に輝くのでした。
数か月後、デイビッドは体制を整え、アトランティスに侵入。強力なパワーのあるオリハルコンを盗み出そうとし、それだけでなく、アトランティスの入り口前に堂々と現れ、攻撃を開始します。
アトランティス側も迎撃しますが、デイビッドは科学力でシールドを展開。相手の攻撃を無効化し、王国内に乱入します。
メラと、アーサーの母であるアトランナは応戦します。メラはデイビッドの目前に迫るものの、攻撃を受けて戦闘から離脱。そこにアーサーが駆け付け、対戦を代わりますが、逃げられてしまいます。
アトランティス王国は損害を受け、メラも重傷です。このままではあのデイビッドに海の故郷を奪われ、破壊されてしまいかねません。しかし、デイビッドは以前とは違う強さを持っており、詳細がよくわかりませんでした。
そこでこのアトランティスの歴史にも詳しい、「オーシャンマスター」と名乗っていた以前の王であるアーサーの異父兄弟、オームの手を借りるという奥の手を思いつきます。
現在、オームは以前の蛮行によって投獄の身になっており、会いに行くのも大変ですが、アーサーにとって頼れるのは彼しかいませんでした。
海の安定は再び守れるのか…。
日本のあの作品みたいなノリ
ここから『アクアマン 失われた王国』のネタバレありの感想本文です。
『アクアマン 失われた王国』は1作目で派手に打ち上げたスタイルを受け継ぎ、相変わらずのシンプルでバカみたいな王道ヒーローをやってくれます。
戦闘も縦横無尽でまるで海洋のジェットコースター・アトラクションです。今回の敵はブラックマンタ単独ではなく、その科学技術によっていろいろなメカが登場するので、よくわからない海生モンスターに加えて大型メカバトルも追加され、ハチャメチャ度は満載。この映画の世界の人たち、基本脳筋スタイルだな…。
そしてここが肝心ですが、今作はバディ映画になっています。
アーサーは前回で対峙した異父兄弟のオームと今度は共闘することになり、しばし珍道中を繰り広げます。犯罪王キング・フィッシュの治安悪そうな娯楽場に足を踏み入れ、次は凶暴な食虫植物やドデカ昆虫のパラダイスな島で一緒の大冒険デート。
なんか世界観的にも雰囲気的にも『ONE PIECE』っぽくなったな…。ルフィが混ざっても何も違和感ないですよ。
アーサーとオームだけでなく、今作のヴィランであるデイビッド(ブラックマンタ)とスティーブン・シンもバディ化していて、こっちの組み合わせもなかなかにポテンシャルありそうな組み合わせでした。
ブラックマンタもスティーブン・シン博士もそれぞれのユーモアがあったので、くっつけると楽しいですね。私はアーサーとオームのバディよりもこっちのほうが好きです。
結局、このヴィラン側は仲間割れするかたちになり、より絆が強かったアーサーとオームが勝利を手にするという「バディこそ真理!」みたいな基本軸が通底しています。
シンプルに2人バディ主軸になっている映画ってDCEUでは今作が初かな? だいたい単独かチーム組んでるかのどっちかだったし…。アクアマンみたいな性格だからできるし、愉快になれるんですよね。近年のスーパーマンやバットマンにはできそうにないもん…。
DCEUのラストシーンはまさかの…
そんな『アクアマン 失われた王国』ですが、2作目というよりは1作目の「ver1.5」みたいな感じもあって、大きな転換やボリュームのさらなる拡張を期待すると少しガッカリだったかもしれません。登場人物も1作目とほぼ同じメンツですからね。「変わった!」という感覚はないです。
そのため、前作にあった初見だからこその「うわ!こんな世界もあるのか!ああ、こういう世界もいいな!」という毎回フレッシュな驚きが無くなってしまうのは物足りなさに感じるところ。
私の望みとしては、2作目だからこそ「え!そんな一面も!」という世界の裏側を見せてほしかったな…。せっかく“ジェームズ・ワン”監督なんだし、思いっきりホラーで攻めるとかね。今作もちょっとだけホラー風味はあったし、あのブラック・トライデントも言ってしまえば呪いのアイテムなのですが、ホラーで心底怖がらせるってほどでもないし…。
それに関してブラックマンタももっとダークな領域に踏み込んで、キャラクターの深みをだしてくれればな…と。原作では子殺しにまで手を染め、完全に引けない倫理の一線を越えるんですよね。
今回のブラックマンタは前回と同じ復讐を動機にしているので、キャラクター・ストーリーが使い回しっぽいです。もっと闇に堕ちてよかったけども。
基本的にこの『アクアマン 失われた王国』は前回よりもファミリー映画の佇まいが増しましたよね。“ジェイソン・モモア”もストーリー原案に関わったからかな。
家族映画として構成が王道すぎて平凡なのも新鮮味を下げています。家庭を持って、その家族を守る話ですから。
それに付随して、今作のメラの活躍はイマイチだったと思います。作中ではアトランナと共に激しく戦うシーンもあるにはあるのですが、多くのシーンでこのメラの役割は「妻」であり「母」であり「王の隣にいる女性」でしかないという意味で、女性表象としては旧時代的です。
メラもアトランナとタッグを組んできっちりストーリーを用意するべきでしたよ。個人的にはせっかく“インディア・ムーア”がカーションの役でちょっことでてくるなら、そのキャラを交えて大きめのパートを作れただろうと思うんだけど。
なお、メラを演じた“アンバー・ハード”は元夫”ジョデー・デップ”との裁判の件以来、デマをともなう激しいバッシングに遭い、大部分がミソジニーに基づくものです(The Mary Sue)。こうしたアメコミ映画のようなファンダム・コミュニティにおいてもしばしば起きうる有害なノリには、私も一切同調はしないので、一応、書き残しておきます。
話を戻して、『アクアマン 失われた王国』は世界観の拡張にはあまり成功しなかったのかなと思いますが、エンディングではアトランティスを人間世界に公にし(まだ知られてなかったのか…)、陸の人間社会との外交も本格化させます。
アーサーのやけに清々しい「私はアクアマンだ!」宣言で終わるという、DCEUの顛末とは真逆のフィナーレなのが、こっちとしては反応に困る…。実際のDCEUは海に沈んだようなものだしね…。
それにしたって、まさかDCEUのラストカットがゴキブリバーガーで終わるとは誰も予想できないでしょう。ますますどんな気持ちになれって言うんだ、DCEU…。
DCEUからバトンを受け継ぐ新生ユニバース「DCU」の映画第1弾は2025年の『Superman: Legacy』までしばらく待機となります。アクアマンの再登場はあるのかな…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 36% Audience 79%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
DC映画の感想記事です。
・『シャザム!〜神々の怒り〜』
・『ブラックアダム』
・『ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結』
作品ポスター・画像 (C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & (C)DC アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム
以上、『アクアマン 失われた王国』の感想でした。
Aquaman and the Lost Kingdom (2023) [Japanese Review] 『アクアマン 失われた王国』考察・評価レビュー
#アメコミ #DC #DCEU #ジェームズワン #ジェイソンモモア