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『雨を告げる漂流団地』感想(ネタバレ)…漂流アニメでも団地アニメでもなく

雨を告げる漂流団地

漂流アニメでも団地アニメでもなく…映画『雨を告げる漂流団地』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Drifting Home
製作国:日本(2022年)
日本:2022年にNetflixで配信、2022年9月16日に劇場公開
監督:石田祐康
児童虐待描写

雨を告げる漂流団地

あめをつげるひょうりゅうだんち
雨を告げる漂流団地

『雨を告げる漂流団地』あらすじ

姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽は小学6年生になり、近頃は航祐の祖父・安次が亡くなったことをきっかけに関係がギクシャクしていた。夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。その団地はかつて航祐と夏芽が育った、思い出の家だった。航祐はそこで夏芽と遭遇し、「のっぽ」という名の謎の少年の存在について聞かされるが、不思議な現象まで起こってしまい…。

『雨を告げる漂流団地』感想(ネタバレなし)

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台風の日はアニメを見よう

2022年9月16日、台風14号が接近し、日本列島を横断するような進路をとることが発表されました。この台風14号は非常に大型で猛烈であり(上陸直前でも910hPaの予想)、気象庁は記者会見の中で「これまで経験したことのないような暴風、高波、高潮、それに記録的な大雨となるおそれがある」「これまでに類似する台風がないような非常に危険な台風」とかなり強めの言葉を駆使しながら最大級の警戒をするように国民に呼びかけを行いました。

どうせ大丈夫だろうと油断することなく、とにかくこれを読んでいる皆さんはこんなサイトなんか今すぐ閉じて、自分の身の回りの安全の確保に努めてほしいです。

もちろん不要不急の外出は控えましょう。

では準備万端で安全はOKだと確認したら、この家で台風をやり過ごしている間に何をするか。こういう時こそ、動画配信サービスなどで映画三昧ですよ。

偶然なのですが、日本ではどことなく台風の状況とシンクロするようなアニメ映画が公開されましたし、ちょうどいいんじゃないでしょうか。

それが本作『雨を告げる漂流団地』です。

本作は日本のアニメスタジオである「スタジオコロリド」の最新作。2018年に『ペンギン・ハイウェイ』は初の長編作品となり、2020年には『泣きたい私は猫をかぶる』をコロナ禍で劇場公開を断念してNetflix配信に舵を切り替えて提供しました。そして次の最新作『雨を告げる漂流団地』もNetflixとの縁ができたゆえなのか、Netflix配信と劇場公開で同時展開することになりました。

『雨を告げる漂流団地』は、小学6年生の子どもたちが取り壊し間近の団地でいたところ、まさかの一帯が海のような広大な水に取り囲まれ、団地ごと漂流することになってしまうという…そんなファンタジーな物語。いわゆる「都市型漂流モノ」ですね。一般的に漂流・遭難モノと言えば、孤立した自然環境が舞台になりますが、そうではなくて何らかの異常現象によって普段の見慣れた都市環境などの人工空間でサバイバルしないといけないことになるタイプ。ちなみに2022年は宇宙の施設で漂流する『地球外少年少女』もあったので、アニメは定期的に子どもたちを漂流させたがるのかな…。

なんとなく『雨を告げる漂流団地』というタイトルから“楳図かずお”の漫画「漂流教室」を彷彿とさせますが、多少のインスピレーションのもとにはなっているかもしれませんが、内容自体は別物です。

そう言えば取り壊し計画が持ち上がる団地が舞台でちょっと不思議な描写が展開されるフランスの実写映画『GAGARINE ガガーリン』も日本では2022年に公開されたので、なんだか団地が活気づいている…なんだこの共鳴は…。

その『雨を告げる漂流団地』ですが、監督するのは『陽なたのアオシグレ』や『ペンギン・ハイウェイ』の“石田祐康”。“石田祐康”監督は2011年に大学の卒業制作として発表した『rain town』という作品があり、それも雨や都市景観が素材になっているので、この『雨を告げる漂流団地』に通じるものがあります。監督の好きな題材なのかな。監督としてはまだまだ若手の年齢ですが、動画配信サービスなども上手く乗りこなして勢いに乗っているので、海外に注目されるスピードも速いかもしれませんね。

『雨を告げる漂流団地』はダイナミックな映像もあるので劇場のスクリーンで体験してほしいですが、こんな天気だし、そうも言ってられない人もいるはず。そういう時は家で安全に鑑賞するのが無難です。

『雨を告げる漂流団地』の物語は子どもたちがあたり一帯が水になっている団地にポツンと取り残されて漂流し、嵐などが襲ってくるなど、わりとハードな目に遭うのですけど、絵柄はマイルドなのでそこまで生々しさはない…と思います。子どもでも観られるレベルの内容です。台風の音を聞きながらの『雨を告げる漂流団地』の鑑賞は臨場感抜群で、もはや疑似4DXですよ。

なお、視聴前に台風の備えをもう1回確認するのも忘れずに。ニュースも常につけておいてください。停電するかもしれないし、避難だってした方がいいかもしれません。『雨を告げる漂流団地』を見ている間に自分がリアルで漂流することになったら身も蓋もないですから。

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『雨を告げる漂流団地』を観る前のQ&A

✔『雨を告げる漂流団地』の見どころ
★王道の青春ファンタジーが楽しめる。
✔『雨を告げる漂流団地』の欠点
☆夢中になりすぎて外の天候を忘れないように。
日本語声優
田村睦心(熊谷航祐)/ 瀬戸麻沙美(兎内夏芽)/ 村瀬歩(のっぽ)/ 水瀬いのり(羽馬令依菜)/ 花澤香菜(安藤珠理)/ 山下大輝(橘譲)/ 小林由美子(小祝太志) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり3.5:暇つぶしにでも
友人3.5:遠隔一斉鑑賞でも
恋人3.5:感想を共有して
キッズ3.5:少しの虐待描写あり
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『雨を告げる漂流団地』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『雨を告げる漂流団地』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):気が付いたら団地で漂流していました

小学6年生の熊谷航祐兎内夏芽と連絡をとるか迷っていました。うっかり通話ボタンを押してしまいますが、ベランダからスマホを落としてガッカリ。

小さい頃、航祐と夏芽はいつも一緒でした。場所は以前に住んでいたあの団地。好き放題に2人で駆け抜けた無邪気だった日々。けれども、航祐の祖父である熊谷安次が亡くなってから2人の間に亀裂が入り、団地が取り壊しになることになって互いに別の建物に引っ越してしまって以来、すっかり2人は疎遠になってしまったのです。

教室でも会話はありません。夏休みに入ったので子どもたちは元気にでていく中、航祐は夏芽を気にしないようにしていましたが、でも気になります。

教室を出ようとした夏芽に羽馬令依菜がぶつかります。夏芽の持っていた図工の工作が壊れますが、令依菜はたいして気にせずにフロリダのパークに行くので航祐を誘います。一方、航祐の友達である小祝太志「おばけ団地に行くよな」とやたら元気に提案。おばけ団地は航祐と夏芽の住んでいた団地です。その場の空気に耐えられず、航祐は一目散に走って出ていくのでした。

夏芽は家に帰ると、在宅で疲れ切っている母がそこにいました。母は「あそこの団地は壊されちゃったのかな、お世話になったもんね」と言いますが、夏芽は団地の話題に乗りません。

航祐は祖父の仏壇に供えモノをして、母に「なっちゃんはどうしているの?」と聞かれますが、無愛想に答えるだけ。

翌日、橘譲と太志に付き合う航祐。太志は虫取り網を持ってお化けを捕まえると張り切っています。団地に忍び込むと、作業員はお化けの噂に怯えているようでした。なんでも子どもの幽霊がいるとか…。

航祐の祖父の家だった部屋に土足であがる3人。太志がハイテンションで探索していると、驚きの声をあげます。何かと思えば、押入れの中に夏芽が目をつむって座り込んでいました。なぜここに?「のっぽくん」と寝ぼけ、起きると航祐たちが目の前にいるので慌てます。

どうやら夏芽は定期的にここにひとりで来ているらしく、屋上へ案内してくれます。のっぽくんというのは、前にこの団地に住んでいた子らしく、家に帰りたくないみたいだとのこと。小さなテントを用意してあげたそうですが、航祐は信じません。

その団地のそばを通りかかった令依菜たちは屋上ではしゃぐ航祐たちに気づき、安藤珠理は令依菜の背を押し、航祐に好意がある令依菜は便乗して現場にやってきます。

航祐と夏芽は口論し、そこに令依菜と珠理も合流し、6人になった屋上は賑やかに。カメラがこぼれて、夏芽は「返して!」と奪い取ります。「これ、じいちゃんのだろ…」と航祐。思わず「人ん家に土足であがりこんで、お前気持ち悪いんだよ!」と怒鳴り、それに対して夏芽は感情を爆発させ、カメラを持って屋上の高いところに登ってしまいます。

足を滑らせて落ちそうになる夏芽。航祐が手を伸ばして助けようとしますが、それでも落下してしまい…。

その瞬間、凄まじい土砂降り。気が付くと団地の周りは深い水に覆われていました。水面だけ。他に何もありません。夏芽は水中からあがってきます。

団地は水に浮いている? 海なのか、そもそも日本なのか。

茫然とする一同。航祐は「俺に任せろ」と威勢よく言い切りますが、すぐに打つ手はないことを思い知らされます。

そこに背の高い誰かが出現。それこそ夏芽の言う「のっぽくん」でした。

一体ここはどこで、どうやったら元に戻れるのか…。

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ブタメンからは想像もつかないド派手な終盤

『雨を告げる漂流団地』はざっとあらすじから連想すると「漂流モノ」です。

確かにそのとおりで、とくに前半は漂流状態に陥ってのサバイバルとなります。これは漂流モノにしてみれば一番の面白いポイントになり得るところ。子どもたちだけでどうやってこのとんでもない環境で生活していくのか…。

作中ではそのサバイバル描写はかなりの割合で早送り的なカットシーンでサクサクと描写されてしまうので、このサバイバル描写を入念に楽しみたかった人には物足りないかもしれません。ほぼブタメンだけで食事を乗り切っていくのは辛そうだな…(これ、海外の人にはブタメンが何なのか、そもそもわからないだろうな…)。まあ、団地なので水道や電気は無いにせよ、一応の住まいのかたちは保っているぶんマシでしょうけどね。

本作はサバイバルとは言え、多少の怪我人はでますが、そんなあまりに凄惨な事態には陥りません。どこぞの作品みたいに、人肉を食べないといけなくなったり、カルト教団化していったりすることもないですし、その点は一定の安心感を持って見守っていられます。子どもも観れる作品ですから。

団地だけを舞台にしていると飽きてしまいそうですが、そのへんはしっかり考えられていて、プールの建物が流れてきたり、デパートが漂流したあげくに追突してきたり、徐々にスペクタクル性を増しながら展開が進んでいくので、どっちかと言うとこの漂流よりもこの異常な空間で次は何を見せてくれるのか?を楽しんだ方がいいかもしれないですね。

そしてラストは観覧車を用いたとてもド派手な展開に突入。あんな観覧車で引っ張るなんてもちろんあり得ないのですけど、アニメーションらしい大胆なフィクションで突っ走っており、ここはハラハラして興奮もピークです。“石田祐康”監督は『ペンギン・ハイウェイ』の時もそうでしたが、超常現象的なものが洪水のように溢れていく山場に到達すると、作品が一気に輝き出す気がする…。

ただ、『雨を告げる漂流団地』はサバイバル描写の半ばお約束的な悲壮感漂うシーンと、唐突に起きる終盤の覚醒する「のっぽくん」描写で、観客がやや置いてけぼりを食らうのは否めないかな…。

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アニミズムと教育的なメッセージの配合

『雨を告げる漂流団地』は表面上は「漂流モノ」みたいな皮を被っていますが、中身は案外とわかりにくい要素があったりします。

まず「のっぽくん」の正体ですが、取り壊し中の団地にいつもいて、まるでここで暮らしていた人の幽霊みたいですが、その実体は団地そのもの…つまり団地が具現化した姿でした。一種のアニミズム(どんなものにも魂が宿っている)が下地になっている作品だったんですね。

だから3年も前に壊されたはずのプールが流れ着いたりもする。あの世界はもう用済みになってしまった建物たちが行き着く世界であり、建物のあの世みたいなところなのでしょう。いきなり観覧車と共に登場する緑の女性(に見える人)もそんな建築物の具現化したキャラクターなのであり、ここをまず理解していないとこの物語についていけません。あのラストののっぽくんが降り立った地は何だったんだということになりますし…。

建物の供養をファンタジックに描きつつ、子どもたちの物語自体は「人を傷つけるようなことは絶対に言ってはいけない」という、わりと普遍的でストレートに響く教育のメッセージで、このへんは子ども向けとしても変に背伸びしていないスタイルで良かったですね。

父からの虐待によって家庭が一時崩壊し、その父の代わりに航祐の祖父を慕うようになった夏芽に対して、祖父の健康悪化で不安になっていた航祐がつい言い放ってしまった酷い言葉。または、状況に押しつぶされるあまりに令依菜が夏芽に対して言い放ってしまった酷い言葉。他人には言ってはいけない言葉がある…これは昨今もリアルやSNSで飛び交う心無い言葉の問題と重なるような話であり、大人だって襟を正さないといけないことです。

アニミズムと教育的なメッセージの思い切った配合になっているからこそ、見かけに反してかなり内部は変わったアニメ作品になったのかもしれません。

あえて苦言を言えば、この物語の正しい姿勢は良かったのですが、夏芽がさすがに可哀想な子というポジションに収まりすぎかなとも思いますし、終盤の各子どもたちの目の前に自分の家族の光が見えてくるというシーンはちょっと家族規範が濃すぎるなとも思いましたが…。別に「子どもには家族がいるべき!」と一辺倒にはなっていないにせよ、描かれる家族もそんなに多様というわけでもないですからね。

こういう子どもの家族観に肯定を与える作品はなおさらセンシティブに考えないといけなくて、この作品を見た子どもの中に「私と同様の家族の姿は無かったな…」と寂しい思いをさせたらおしまいですし…。

まだまだ成長の可能性を感じさせる「スタジオコロリド」。次回作も楽しみです。

『雨を告げる漂流団地』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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『ペンギン・ハイウェイ』
同じく石田祐康監督作。
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作品ポスター・画像 (C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ

以上、『雨を告げる漂流団地』の感想でした。

Drifting Home (2022) [Japanese Review] 『雨を告げる漂流団地』考察・評価レビュー