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ドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』感想(ネタバレ)…ドラマでもあいつらが見られます

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

あいつらがまた見られます…ドラマシリーズ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:What We Do in the Shadows
製作国:アメリカ(2019年~)
シーズン1:2021年にDisney+で配信(日本)
シーズン2:2021年にDisney+で配信(日本)
シーズン3:2022年にDisney+で配信(日本)
原案:ジェマイン・クレメント
性描写 恋愛描写

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

しぇあはうすうぃずばんぱいあ
シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』あらすじ

ニューヨークのスタテンアイランドにはいろいろな人々が住んでいるが、ヴァンパイアが暮らしていることを知る者はあまりいないかもしれない。取材班は特別なコネを活用してこの地に住む吸血鬼たちの生活に密着してカメラに撮る。そこに映し出されたのは、夜の世界で奇妙キテレツなライフスタイルを送っている吸血鬼の姿。自らの人生を饒舌に語る吸血鬼たちのインタビューとともに貴重な映像をお届けする。

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』感想(ネタバレなし)

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映画じゃなくてドラマシリーズです

突然ですがあなたはこんな体験をしたことがありませんか?

急に見知らぬ人が「あなたはバージンなのか」とやんわりと、もしくは直球で訊ねてくる。いや、見知らぬ人じゃなくてもいいです。友人、同僚、親戚、家族…そんな周囲の人間がやたらと「童貞」や「処女」の存在を確かめようとしてくる。

もしそんなことをしてくる人がいたら間違いありません。

その人、ヴァンパイアです。

今すぐそんな人とは距離をとってください。あなたの血が欲しいだけのやつです。近くにいてもろくなことはありません。

そんなためになる知識を教えてくれる、人生の教養になるドラマシリーズを今回は紹介します。それが本作『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』

嘘です。教養になる…は言いすぎでした。あの…あれです…面白いですよ。

本作は先に映画が作られています。2014年のタイトルは全く同じ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』。この映画が私は大好きなのですが、この映画を監督したのは今やハリウッドを個性全開で爆走している“タイカ・ワイティティ”。『マイティ・ソー バトルロイヤル』や『ジョジョ・ラビット』を監督し、『フリー・ガイ』などでは役者としても大暴れしている“タイカ・ワイティティ”のキャリア初期のブレイク作が映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』でした。

映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』はとにかく個性的というか、クセが強すぎる一作で、“タイカ・ワイティティ”監督の作家性が最も弾けています。

本作はモキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)になっており、ニュージーランドの郊外の街に暮らすヴァンパイアたちに密着取材をするという体裁の作品です。ドキュメンタリーですので、カメラの前でヴァンパイアがいかにもよくある感じで「私の人生ではこんなことがありました」とかペラペラと語っていますし、夜の街を練り歩いては通行人をこっそり吸血したり、人間とトラブったりしている姿をカメラに淡々とおさめています。ほんと、ただそれだけのアホ極まりない作品なのです。

そんなアホすぎる映画がまさかのドラマシリーズ化したのが本作『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』。あの内容でドラマシリーズにできるの?と思ってしまうのですが、ちゃんとシリーズ化しているから怖い…。

中身は映画と一緒でモキュメンタリー形式。今度はアメリカ・スタテンアイランド(スタテン島)に暮らしているヴァンパイアに密着しています。ニューヨークの中でも最も保守的な地域と言われていますが、その地でちゃっかり吸血鬼が住み着いているというのがすでに皮肉なんですけど…。

当然、相変わらずのクセの強さで、オブビートなシュールさで満ちています。私はゲラゲラ笑いながら観ていられるのですけど、人によっては「これのどこが面白いんだ」と1ミリも笑えずに無表情かもしれない…そんな作品。まあ、あれですね、まずは映画を観て、そのノリが自分に合うかチェックしてからがオススメです。

でもふざけまくっているし、暴力的だし、何よりも下ネタが酷いくらいに満載なのだけど、人種・性別・性的指向などをステレオタイプにからかうギャグは全然ないあたりがちゃんとしてますよね。例えば、作中ではバージンの人が吸血鬼に好まれるという設定なのですけど、でもバージンの人を笑いものにはしていない…それよりもバージンにこだわる奴らを笑いものにしている…そんなバランスです。

製作陣は映画と同じ。俳優陣は、イラン系イギリス人の“ケイバン・ノバク”、『永遠に12才!』の“マット・ベリー”、『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』のキプロス系イギリス人の“ナターシャ・ドミトリュー”、ドラマ『マジシャンズ』のメキシコ系アメリカ人の“ハーベイ・ギーエン”、ドラマ『ベター・コール・ソウル』の“マーク・プロクシュ”など。役者のアンサンブルが最高です。加えて「そんなのあり!?」というようなサプライズ・ゲストも続々現れます。

ドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は「FX」(有料テレビ局。今はディズニー傘下)で放映されていたのですが、日本では2021年10月27日の「Disney+」のリニューアルにともない、「スター」の中でシーズン1とシーズン2が一挙に配信開始となりました。

1話あたり約20~30分なので観やすいです(中身はあれだけど)。

オススメ度のチェック

ひとり 4.5:好きな人はハマる
友人 3.5:シュールな笑いが好みなら
恋人 3.5:ロマンス気分はゼロだけど
キッズ 2.5:下ネタ大量です
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『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):吸血鬼とシェア生活

スタテンアイランドのとある場所。そこに立つ古そうな屋敷にカメラは入ります。そこで“使い”として働く純真そうな目をしているギレルモという男はこう話します。

「ヴァンパイアの使いは楽じゃない」

ギレルモは吸血鬼の使いという勤めを果たしてかれこれもう10年目。仕えているのはナンドールというヴァンパイアで、彼は元オスマン帝国の兵士で殺戮や略奪が日常であり、「無慈悲のナンドール」と呼ばれていた…と本人はカメラの前で意気揚々と語ります。

手紙が来たのでみんなの前で読み上げます。他にはナジャラズロというヴァンパイアが共同生活をしており、このナジャとラズロは一応は夫婦。

例の手紙ですが、それはアファナス男爵からのものでした。ここに来るらしいです。世界征服を願う吸血鬼で、思わぬ大物の来訪にざわつく吸血鬼たち。おもてなしとしてバージンの血を用意しないとと話しているとコリン・ロビンソンが入ってきます。このやけに軽い男は吸気鬼(エナジーヴァンパイア)であり、職場でみんなをイライラさせるのが得意で昼間も歩けて、他のヴァンパイアであろうともエネルギーを吸えるので厄介な存在です。

ナンドールはギレルモと一緒に夜のショッピング。装飾に使えそうな品を買い漁ります。一方でナジャはかつて情事に燃えたグレゴールの転生した男に夢中でした。ギレルモはバージン(餌)としてライブRPG同好会の男女を招きます。

いよいよアファナス男爵の棺を開けて、ご対面。仰々しく登場する男爵。見た目はすっかり人間離れしています。伝えたいことがあると重々しく語りだすも、取材班の存在に気づき、ややキョトン。

「ドキュメンタリーの撮影です、無視してください」 

気を取り直して「新世界を征服しろ、まずはこのスタテンアイランドを支配してやろう」と告げ、棺に戻ります。

新世界…それはアメリカのこと? カナダも入っている? とりあえずこのスタテンアイランドからでいいのか? 今後を話し合うヴァンパイアたち。

そんな中、ギレルモはご主人が自分をヴァンパイアにしてくれる日を夢見ていました。でもナンドールは「記念すべき日に長年の奉公をねぎらってやろう」と言ってプレゼントしてくれたのは、グリッターで作った肖像画だけ。

このままでいいのか。ギレルモは悩みます…。

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シーズン1:「我が軍門に下れ!」

ドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』、やっていることは本当にくだらないことの連続です。

人狼たちと決闘したり(これは映画でもあった)、マンハッタンを支配している吸血鬼「外道のサイモン」と魔女の帽子をめぐって喧嘩したり、アファナス男爵(演じているのは“ダグ・ジョーンズ”)と夜の街でハジケまくったり、乱交会の準備にいそしんだり…。

個人的にはコウモリ化したラズロが動物管理局に捕獲されるエピソードのバカバカしさが好き。ケージの中で出られないときに、隣の猫に催眠術をかけようとするとか。

あとヴァンパイアたちは伝承どおり招かれないと他人の建物内に入れないので、毎回毎回苦労しているのですが、ナジャがグレゴールの生まれ変わりだというジェフに会いに行くとき、彼の職場(駐車場スタッフ)の駐車場の敷地さえも招かれる必要があったり、もうお家芸みたいになってる…。

また、今回は吸気鬼(エナジーヴァンパイア)のコリンというよくわからない不気味な存在が混ざっていてあの吸血鬼たちのテンションを壊すのもシュールで…。さらにコリンは吸感鬼(エモーショナル・ヴァンパイア)という存在に張り合ったりするし…。

基本はバカしかしてないのですが、それなりの政治社会風刺もあります。区議会に突入してその無価値な議論に加わってみたり、市民権が欲しいナンドールが移民局に行くも、政府職員には人間性がないので催眠術が効かないとか(「市民権は買えますよ」という元も子もない不法移民オチ)。

最高のおふざけが頂点に達するのは吸血鬼評議会に出席する第7話でしょうか。ここではゲスト俳優が大暴れ。“ティルダ・スウィントン”(吸血鬼映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』にでてた)、“エヴァン・レイチェル・ウッド”(吸血鬼映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で惜しくも起用されなかった過去がある)、さらには吸血鬼映画『ブレイド』の“ウェズリー・スナイプス”がなぜかビデオ出演。映画の3人組もちゃっかり登場してます。あと、“ダニー・トレホ”“デイブ・バウティスタ”もいるし…。

そんな中でギレルモの健気さと惨めさが際立つことに。なんで自分は吸血鬼にしてくれないのか。ナジャはジェナ(演じているのは“ビーニー・フェルドスタイン”)を吸血鬼にしてるのに…。もしかして期待するだけマヌケなのか…。

そう思っていたらDNA検査でまさかの事実。ギレルモにはかの有名な吸血鬼ハンターのヴァン・ヘルシングの血が流れていた…! 確かに吸血鬼を何度か偶発的に殺してきたけど、あれは才能だったのか…。

こういうサスペンス構造だったのかと驚きのまま、シーズン1は閉幕です。

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シーズン2:「名字はデラクルスだ」

シーズン2に突入してもドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は平常運転。

降霊術をやってみたり、お隣の家でスーパーボウル・パーティに参加したり、電子メールを確認していたら呪いにかけられたとパニックになったり、家賃を踏み倒したことを怒られて逃げたり、コリンは職場で何もしていないはずなのに昇進したり、精液目当てで魔女に拉致されたり…。

シーズン2でもゲスト俳優が元気いっぱいです。胡散臭いネクロマンサーを演じるのは、“ベネディクト・ウォン”。ゾンビ化してしまうトファーを演じるのは、“ハーレイ・ジョエル・オスメント”。そして家賃取り立てでラズロに迫ってくるのは、“マーク・ハミル”。相変わらずクレイジーなキャラが似合うなぁ…。

そんな中、やっぱり気になるのはギレルモの今後。まだヴァンパイアになれるのかと期待半分不安半分で過ごすうちに、いよいよ吸血鬼殺しも板についてきてしまい、吸血鬼ハンターのクラブにも潜入したり、ナンドールへの忠誠心も揺らぎ始めます。バージン探しだってもううんざりです(インセルはバージンだけどひねくれているし…とか、バージン専門家みたいになっているのが笑える)。

あっさり使いから吸血鬼へとなれたという若い女性ヴァンパイアのセレステのもとに移り住み(そのコミュニティがいかにも起業したてのスタートアップ若者集団みたいなのが面白い)、でもそれは嘘だったと知って確信。これ、使いは吸血鬼になれないやつだ…と。

そしていざ決別。でもヌーボー・テアトル・デ・ヴァンパイアに招待されたナンドールたちが評議会の罠にハマっていると知り、思い切って駆けつけて大量ヴァンパイア虐殺を目の前でやってのけてしまい…。

これはもうヴァンパイア版『ハミルトン』じゃないか(ギレルモはラテン系なので)。ということでまたも良いところで閉幕。

このギレルモを演じる“ハーベイ・ギーエン”、ほんと、ハマり役をゲットしたな…。頑張れ、ギレルモ。このドキュメンタリーはお前の伝説になるぞ。

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シーズン3:まさかの出世、そして離散

※シーズン3に関する以下の感想は2022年2月3日に追記されたものです。

シーズン3へと怒涛の如く突き進む『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』。前シーズンの大量殺戮をどう処理するんだと思ったら、ヴァンパイア最高評議会から通達で新大陸東海岸のヴァンパイア評議会を任せられ、4人は有頂天。ギレルモをとりあえずヴァンパイアの護衛に任命し、催眠術で危害を加えないようにしておく(効いていない)ことでOKになりました。本人たちがそれでいいなら、まあ、いいのか…。

そして今回もまたもいつもどおり。会費集めや評議会のウェブ更新などで忙しく、裁判までやらないといけなくなり、むしろこき使われているだけでは…。

でも息抜きもじゅうぶんすぎるくらいにしています。アトランティック・シティへ旅行したり、「父祖」逃走事件があったり、男爵が生きていたり、人形の家出で悪趣味なゴーストバスターズみたいになったり…。

今作のスペシャルゲスト枠のチョイスもあえての「そこ!?」っていう微妙さを突いてきており、『ブレイド』から“ドナル・ローグ”を引っ張ってくるとか、わからないよ…。

そんな中でもナンドールの人生が進展。恋愛に心ときめくも轟沈し(ジムの受付のメグはレズビアンだった)、次はゲイルに夢中になるもウェアウルフだったり、ついにはヴァンパイアから人間に戻る方法があると知ってすっかり感化されたり、あげくに超休眠状態に入り始めたり…。

しかし、やっぱり一番頑張っているのはギレルモ。こいつ、ずっと見てきて思うけど、したたかですね。この社畜だけどそれで終わらないぞ!という精神、私も学びたい。

最終話ではまさかのコリンの死。そしてシェアハウス解散の危機に、ギレルモも焦りまくり。ナジャはイギリスで最高評議会入りに心ワクワク。ギレルモはなんとかナンドールの旅に同行する許可を力技で獲得し、ナンドールの故郷でヴァンパイアにさせてくれるという約束もとりつけます。

ところがここでまさかのコリンの死体から謎の小さい存在が這い出てきて…その面倒をみるべくラズロは家に残り、ギレルモはナジャと棺の中に…ひとり旅立つナンドール。ギレルモは絶対にヴァンパイアになれない運命なのか…。

バラバラになっちゃったけど、どうやってドキュメンタリーを撮るんだろう…。

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(ドラマシリーズ)
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 94% Audience 96%
S2: Tomatometer 98% Audience 93%
S3: Tomatometer 100% Audience 89%
IMDb
8.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)20th Television, Disney シェアハウスウィズヴァンパイア

以上、ドラマシリーズ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』の感想でした。

What We Do in the Shadows (2019) [Japanese Review] 『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』考察・評価レビュー