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ドラマ『イエローストーン』感想(ネタバレ)…国立公園近辺にはウェスタン・マフィアがいる

イエローストーン

アメリカの国立公園近辺にはウェスタン・マフィアがいる…ドラマシリーズ『イエローストーン』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Yellowstone
製作国:アメリカ(2018年~)
シーズン1:U-NEXTで配信(日本)
シーズン2:U-NEXTで配信(日本)
シーズン3:U-NEXTで配信(日本)
原案:テイラー・シェリダン、ジョン・リンソン
性暴力描写 動物虐待描写(家畜屠殺) 自死・自傷描写 DV-家庭内暴力-描写 児童虐待描写 人種差別描写 性描写 恋愛描写

イエローストーン

いえろーすとーん
イエローストーン

『イエローストーン』あらすじ

モンタナ州で最大の土地を仕切り、この一帯で絶大な権力を手にしてきた歴史あるイエローストーン牧場。そのイエローストーンを代々管理してきたのがダットン家であった。現在の家長であるジョン・ダットンは息子や娘、そして忠実な手下、さらには政治的なコネを利用して、思うがままにこの地を支配する。しかし、インディアン居留地や開発業者の参入によって均衡が乱れていき、家族さえもぐらついていく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『イエローストーン』の感想です。

『イエローストーン』感想(ネタバレなし)

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イエローストーン・ウェスタン&マフィア

「イエローストーン国立公園」はアメリカで最も有名な国立公園でしょうし、そもそも世界初の国立公園でもあります。火山地帯でもあり、熱水があちこちで噴き上げていて、その熱で黄色く変色した鉄分を含む石に因んで「イエローストーン」と名付けられています。

その面積は約89万8000ヘクタール以上。北海道の約9分の1くらいの大きさなのですが、これはあくまで国立公園に指定された面積であって、その周辺にも同様に雄大な自然が広がっています。

イエローストーン国立公園の大部分はワイオミング州北西部に属していますが、部分的にアイダホ州モンタナ州にもまたがっています。国立公園の周辺はほぼ国有林です。一部に居留地もあり、これは先住民のネイティブアメリカンの人たちの自治区となっているエリアです。

国立公園は連邦内務省の国立公園局が管理の責任を負います。野生動物の管理は魚類野生生物局の担当です。州がまたがるので複数の州の管轄も発生しますし、保安官が治安を維持しますが、居留地はネイティブアメリカンの独自の管理下にあります。そしてもちろんその土地の所有者も個別にいたりします。

ということで実際はイエローストーン国立公園とその周辺は非常に複雑な“力場”が存在し、誰が何に影響力を及ぼすのか、いろいろ事情が込み入ってくるわけです。

日本の国立公園も似たようなものですが、アメリカの場合は居留地が加わるので余計に厄介そうですね。

そんな複雑な舞台をそのままに現代西部劇を展開する大人気ドラマシリーズが2018年からアメリカで始まっていました。

それが本作『イエローストーン』です。

タイトルからしてイエローストーン国立公園を舞台にしてそうな雰囲気がムンムンしていますが、実際のメインの舞台はモンタナ州で、「イエローストーン牧場」という架空の土地所有者の家族を中心としたファミリーもの。それでいて現代西部劇(ネオウェスタン)となっており、この家族が地域一体で強大な権力を持っていて、まるでマフィアです。実際に「モンタナの“ゴッドファーザー”」という触れ込みだったらしいですがThe Hollywood Reporter、なのでほぼマフィアものと言っても過言ではありません。

主役のダットン家を軸に、土地をめぐるさまざまな人間模様を描くことになり、早い話が土地含めた資産の奪い合いを描いています。当然、血生臭いことにもなっていき、法律スレスレの倫理違反や暴力も連発するのが特徴。

白人特権を持つ家族を中心に据える(そしてそれが崩壊寸前の家族である)という点では、『メディア王 華麗なる一族』に通じますが、『イエローストーン』は人情が一応はちゃんとあるところでファミリーっぽさをかろうじて保っています。

このドラマ『イエローストーン』を原案で生み出したのが“テイラー・シェリダン”。テキサス州出身の俳優でしたが、『ボーダーライン』(2015年)と『最後の追跡』(2016年)の脚本で高く評価され、『ウインド・リバー』(2017年)や『モンタナの目撃者』(2021年)など監督業でも活躍。古きアメリカの残滓が転がるような現代ウェスタン風のサスペンスを手がける名手となっています。

その“テイラー・シェリダン”がドラマシリーズでも脚光を浴びた『イエローストーン』。本国アメリカでは大人気で、パラマウント制作なのですが、『イエローストーン』は2018年からシーズン1が始まり、2023年にはシーズン5まで発展。さらに『1883』 『1923』といった別の年代を描くスピンオフも始動し、加えて『Lawmen: Bass Reeves』『6666』『1944』といった現状“第5弾”スピンオフまでも企画中で、凄まじい勢いでその世界観が拡大しています。『イエローストーン』ユニバース状態です。パラマウントとしては自社の動画配信サービス「Paramount+」のメインコンテンツとして成長させたいのでしょうけど…。

ちなみに『イエローストーン』の主演は“ケヴィン・コスナー”なのですが、『1883』は“サム・エリオット”で、『1923』は“ハリソン・フォード”となっており、やたらスゴイ顔触れの一家になっています。

そのドラマ『イエローストーン』群ですが、日本では全然お披露目されておらず、最近になってようやく「WOWOW」、続いて「U-NEXT」でやっと扱われるようになりました。正直、今から追いかけるのは話数が多すぎて大変なんですけども、地道についていくしかないですね。

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『イエローストーン』を観る前のQ&A

✔『イエローストーン』の見どころ
★広大な自然で繰り広げられる殺伐とした人間模様。
✔『イエローストーン』の欠点
☆残酷な描写が多め。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:趣味に合うなら
友人 3.5:気長な友と
恋人 3.5:長いのでやや根気いる
キッズ 2.5:暴力描写多め
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『イエローストーン』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『イエローストーン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):観光地? いいえ、抗争地です

とある交通事故の現場。半死半生の馬を銃で楽にさせるひとりの男。その男は頭から血を流しつつ、現場をうろつき、事故車両にあったパラダイス・バレー開発の封書を手にします。サイレンの音が近づいてくる中、傍の牛に「お前たちを食わすのは命懸けだ」と呟きます。駆け付けた保安官はそこにいたのがジョン・ダットンであることをすぐに把握し、「大丈夫ですか」と心配してきます。

モンタナ州の上院は揉めていました。先祖代々のイエローストーン大牧場を営むダットン家が発展を妨げていると抗議があり、ジョン・ダットンの次男で弁護士のジェイミー・ダットンは毅然とした態度で開発に反対。知事のライネル・ペリーも反論はしません。

ジョン・ダットンの唯一の娘のべサニー(ベス)・ダットンはシュワルツ&マイヤー社のパートナーで男相手にも動じないやり手の金融専門家です。今日も口汚く年上の男であろうが、オフィスで罵倒します。ベスはパラダイス・バレーの住宅開発計画の情報をジョンに持ってきます。ダン・ジェンキンスというカリフォルニア州の大富豪が裏にいるようです。

ジョン・ダットンの末息子であるケイシー・ダットンは暴れ馬に縄をかけ、ブロークンロック居留地へ連れてきます。そこはネイティブアメリカンの妻のモニカと息子のテイトと暮らす地です。

ジョンは自分のおでこの傷を自分で縫い、ジェイミーも傍にいました。内心では土地を売ってカネを手に入れるべきではと考えていたジェイミーでしたが、ジョンは頑なに拒否。「人が欲しがるものをもっていればそれは影響力を生む」と言い残します。

ジョンは将来的にここを継ぐことになる長男リーに管理と経営の違いを教え込ませます。

ジョンの右腕となっているリップ・ウィーラージミーという刑務所帰りの若い男の面倒を見ることになり、焼き印をつけ、イエローストーン牧場に迎え入れます。こうやって多くのワケありの人間を忠誠心で仲間にして、この牧場は成り立っていました。

一方、ブロークンロック居留地の新しい首長となったトーマス・レインウォーター。彼にはこの地を強情なダットン家から奪い返す思惑がありました。

ある日、ジョンの牛の群れが先住民の敷地に入ってしまい、一触即発になります。現場にジョンも駆け付け、とりあえず一旦仲間を引き上げさせます。

このまま先住民側に牛を奪われたままにさせられません。また、土地開発も黙認できません。

そこでジョンは実力行使にでることにします。自分たちに逆らったらどうなるか、見せつけなければ…。

この『イエローストーン』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/07に更新されています。
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シーズン1:イエローストーン軍団の強さと弱さ

ここから『イエローストーン』のネタバレありの感想本文です。

ドラマ『イエローストーン』、第1話からまざまざと見せつけられるのはイエローストーン牧場のダットン家が持つ強大な権力です。

ダットン家の六代目の当主のジョン・ダットンは家畜協会の理事であり、一帯の畜産業界を牛耳っています。それだけでなく保安官など治安勢力とも太い連携があり、その気になれば独自に警察部隊(家畜エージェント)を動かせます。さらに現知事のライネルをこの職につかせる支援をしたのもジョンであり、おまけにライネルとは体の関係まであります。

葬りたい存在の死体処分は「ゾーン・オブ・デス」を利用するなど、手数は揃ってます。焼き印での忠誠の連帯はもはやカルトですが…。

しかし、完全支配とはいきません。あのジョンでさえ手を出せない場所。それが保留地です。新しい首長のレインウォーターは対立姿勢を鮮明に打ち出しています。加えてよそ者の開発業者を率いる成金までやってくる始末。クマに近づく中国観光客なら銃で脅して威嚇すればいいですが、そうはいかない敵もいる…。

そこでジョンが実行する手段。あのヘリを先頭に物々しい車列。同時並行で進む山の爆破による河川強行変更。軍隊レベルの組織力に「な、なにが起きるの?」とハラハラさせられる。これぞ“テイラー・シェリダン”節でしたね。

ただ、このダットン家の最大の弱点は「家族」そのものです。実のところ、この家族はもう崩壊寸前。どうやら1997年にジョンの妻が落馬で亡くなってからその崩壊は始まっていたようです。

ジェイミーは誰よりも父のいいなりで、キャリアに反して自信喪失状態です。州司法長官になりたいと選挙に臨みますが、それも父に認められたいからこそ…。

ベスは母へのトラウマを引きずり、とくにジェイミーを敵視しています。リップへの一途な愛も家族愛への渇望ゆえなのか…。

ケイシーは先住民女性と結婚したせいで事実上家族から破門されたようなもので、元ネイビーシールズとしてPTSDも引きずっています。

唯一の希望は長男リーだったのでしょうが、優しそうな人柄でしたが、第1話の銃撃戦でモニカの兄のロバートに撃たれて死亡。この死が決定的にダットン家を壊滅ルートへと押し出します。

追い打ちでジョンの健康問題も浮上し(まあ、こういうのはたいてい死なないのだけど)、ジョンは後継者選定に焦っていき…。

追い詰められて死に際の野生動物ほど獰猛に抵抗するものです。本作のダットン家はイエローストーン牧場を住処にする猛獣でしたね。

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シーズン2:ロデオで後継者、決めませんか?

ドラマ『イエローストーン』のシーズン2はシーズン1でのキャラクター紹介のプロローグが終わり、二転三転の展開で楽しませるサスペンスが増しました。

今回はベック兄弟(マルコム&ティール)という共通の極悪の敵が出現し、これまでバラバラだった者たちが一時的にまとまるというのが見どころです。ジョンも容赦ない人間ですが、ベック兄弟は目的のためなら子どもの誘拐も躊躇せず、「俺たちの戦いのルールを破ったな」と言わんばかりに、イエローストーン連合体(仮)にボコボコにされることになります。

あれだけギスギスしていたダットン・ファミリーも、ジェイミーが州司法長官選挙出馬を取りやめて、ケイシーが農場の後継者として座につくことで、形だけは足並みが揃います(実際は全くボロボロだけど)。レインウォーターも仲間になると心強いです。ダン・ジェンキンスは死亡フラグを綺麗に積み重ねて殺されてしまいましたが…。

この地ならではの妨害工作や排除方法が毎回飛び出すのが面白いですね。

例えば、第4話ではベック兄弟の飛行機で投下された牧草のせいで牛が何百頭も死んでしまうのですが、あれは説明がほとんどないので知識のない視聴者はポカンとするだけです。牛にガスが溜まっている描写がありましたが、牛は植物を食べてお腹の中でじっくり消化するので発酵します。なのでガスが溜まることになり、定期的に“げっぷ”をしてガスをだします。これが何らかの異常や餌の過剰配給でガスが溜まりすぎると「急性鼓脹症」になります。実際は本作にあるように一度に大量の牛を一瞬で殺したりはできないと思いますが…。

そしてすっかり殺伐とした本作のユーモア担当になっているジミー。シーズン2ではロデオという才能に目覚めました。楽しそうで何よりだけど、ロデオは不幸と紙一重だからな…。

ケイシーの息子テイトというダットン家の唯一の未来を誘拐から取り返すべく、軍団として結集するダットン家。無事取り戻せてひと安心ですが、不穏は消えていません。

とくに不都合な真実を教えてしまった記者のサラを事故死に見せかけたジェイミーですが、一時的に付き合っていたクリスティーナから妊娠を告げられ、波乱の「第2の孫」の存在にダットン家はまた揺れそうです。

良心として本作に立ち、先住民差別にも耐えるモニカはケイシーと関係を続けられるのか。誘拐虐待で心にトラウマを負ったであろうとテイトの育児はもっと混迷しそうですし…。

リップは晴れて家族として受け入れられましたが、そうなってくるとダットン家の勢力図も変わってきます。

よし、わかった、じゃあ、こうなったら誰が後継者になるか、ロデオで決めましょう。別にジミーを贔屓にしてはいませんよ…。

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シーズン3:家畜どころじゃない!

ドラマ『イエローストーン』のシーズン3はこれまでと比べると穏やかな空気が流れます。バッファローに乗ってみるカウボーイ&カウガールとかね…。ジョンも事実上は引退同然で、トラウマを負った孫を自然でケアしているおじいちゃんになっているし…。

それでもこの地に安寧はありません。新たな家畜協会理事となったケイシーは戦地と変わらない殺しの仕事に従事。モニカも先住民女性への暴力という問題に直面し、トーマスの後押しでその解決の先頭に立つリーダーになっていく雰囲気です。

一方で激震が走ったのがジェイミー。今回は州司法長官になんだかんだでおさまったのですが、ベスとの確執の決定的原因が明らかになりました。子ども時代にベスが妊娠した際に、相談されたジェイミーは中絶のために子宮摘出手術をしてしまう場所に連れていってしまい、ベスは不妊の体に…。これは当時のアメリカで起きていた強制不妊手術の歴史です(主に有色人種や性的少数者などのマイノリティを対象に強制不妊処置が横行していた)。

さらに追い打ちでジェイミーはジョン・ダットンの実の子ではなく、父は母を殺した罪で服役していたギャレット・ランドルで、養子だったと判明(本名はジェームズ・ランドル)。

裏切らないと確約していたジェイミーですが、またも父に反旗を翻します。

そこでこのシーズン3で敵となるのが、リゾート企業「プロビデンス・ホスピタリティ」と組んでこのイエローストーン牧場を空港と観光地に変えようと企む投資会社の「マーケット・エクイティーズ(ME)」。首謀者ロアーク・モリスがなかなかの策略家で、単にカネありきかと思ったら、最終話でまさかの大事件が勃発。

ベスのいるオフィスは爆破され、ケイシーのいる家畜協会は襲撃され、ジョンは道端で銃撃され…。大丈夫か、モンタナの治安!

一気にとてつもなく絶体絶命に陥りましたけど、これはどうやって反撃するのか。シーズン4はイエローストーン牧場の決死のリベンジになりそうです。

それよりも個人的にはジミーが心配。ミアなんて恋人に現を抜かすから…。お前の恋人は馬だよ…。

『イエローストーン』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 56% Audience 83%
S2: Tomatometer 89% Audience 91%
S3: Tomatometer 100% Audience 87%
IMDb
8.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Paramount

以上、『イエローストーン』の感想でした。

Yellowstone (2018) [Japanese Review] 『イエローストーン』考察・評価レビュー