ジャングル・ブック
映画『ジャングル・ブック』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Jungle Book
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年8月11日
監督:ジョン・ファブロー

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 

Plot Summary

ジャングル奥地に取り残された人間の赤ん坊モーグリは、クロヒョウのバギーラに助けられ、オオカミのラクシャの世話によりすくすくと育っていった。そんなある日、人間に対して激しい復讐心を抱くトラのシア・カーンがジャングルに戻り、モーグリに牙をむく。

ネタバレなし感想

これ、ほとんどCGなんですよ

2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督の『アバター』。ほとんどがCG(コンピューター・グラフィックス)で創られたその映画をみていると、もう全部CGでいいんじゃないかという気がしなくもない。当時はそれはそれはインパクトがあり、時代の技術の力を思い知らされました。

そして、時代は進み、現在。今の映画界ではCGは当たり前のものになりました。その新しい時代の到来は、「これ、CGなんですよ」よりも「これ、CGじゃないんですよ」のほうが注目されるという、見る側の価値観の変化をもたらしています。今ではCGで驚く人は全然いないです。1993年の『ジュラシック・パーク』から『アバター』を経由して時代を重ねていったことで、私たちの心はすっかりCGという存在に慣れっこになりました。

そんな時代の2016年にあえてCGを全面に押し出した本作『ジャングル・ブック』はどう評価されるのか気になるところでした。

本作はルドヤード・キプリングの同名小説を原作とするディズニーの名作アニメーションの実写映画化。実写といっても、主人公の少年以外は、森も土も岩も空も動物も全てCG。もはや“ほぼ”フルCGアニメーションです。これを実写と呼んでいいのかやや疑問ですけど…。

企画自体はどうしても『アバター』の二番煎じに見えるし、私も鑑賞前は新鮮に楽しめるのだろうかと不安も抱えていたのですが、先に公開されたアメリカでの評価は絶賛。興収的にも大ヒットしています。CGに対してもポジティブな評価がされているあたり、まだまだCGは捨てたものじゃないようです。

なによりも実は本作は『アバター』にはなかった新しい挑戦をしているのが特筆されます。そのポイントは「子どもが主役」ということ。そんなの普通では?と思うかもしれませんが、子どもを主役で派手な大作に起用するのは難易度が高いのです。大人でさえグリーンバックでのスタジオ撮影は演技のモチベーションが上がらず嫌がる人も多い大変な現場ですし、加えて子どもの場合は労働契約上で非常に厳しい制限が課せられます。企画としては「金がかかって面倒くさい」という避けたいものです。正直、子ども自体こそCGにしたいくらいです。でもそこであえて「子どもは実写にした」という点が本作の一番の評価なのでしょう。ここまでリスクのあるプロジェクトを実行できるのも、さすがにディズニーだけですかね。

ストーリーはいたってシンプル。勧善懲悪だし、あっと驚く展開もないですが、だからこそ安心してCGで創られた美麗な世界観を見ていられます。本物の動物よりも本物っぽいCGで描かれる野生動物たちは、一体一体見てるだけでも飽きません。

監督は『アイアンマン』でおなじみのジョン・ファブロー。彼のお得意の軽やかなタッチで「ジャングル・ブック」の世界観を見事に映像化。『アイアンマン』で見せた腕を再び発揮しています。

この夏の子どもも大人も楽しめる実写映画は、間違いなく本作でしょう。

予告動画







↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

CGでも実物でも大事なのは「楽しい」ということ

鑑賞している間、なんの違和感もなく世界観に入り込むことができて、「ここはCGだな…」とか考えることもない、実にノーストレスな映画でした。

CGで描かれる野生動物のリアルさが真っ先に印象に残りますが、よく見ると動物たちは時折本物は絶対にしないような人間味ある表情を見せていました。

このリアル表現とファンタジー表現の差が最もはっきり演出されているのが、クマのバルー。モーグリが出会った当初は、完全に「くまのプーさん」の実写版といってもよいくらいのハチミツ狂っぷりを見せます。そんな彼も終盤になるにつれ戦いとなると今度は『レヴェナント 蘇えりし者』のクマと見間違えるかのような獰猛な姿に早変わり。
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他の動物たちも、家族団らんのときは和やかに、狩りの瞬間は野生さを全開にと、豹変します。これは実際の野生動物も同じなのですが、この映画ではCGをこの変化を表現することに最大限活用しているのが魅力だと思います。映像にもメリハリがでて、いいことづくしでした。

やたらとでかいオランウータン(厳密にはギガントピテクスという絶滅した動物がモチーフらしい)のキング・ルーイと比べて、やたらとでかいヘビのカーの映像的見せ場が非常に短いのが残念でしたが…。

ストーリーはシンプルすぎるという意見もあるかもしれませんが、人間社会の要素を一切排除し、動物世界を描くことに徹した思い切った判断は素晴らしいと思います。なにせ、いつの年代なのかさえもわからないくらいですから。その大胆な取捨選択があるからこそ、余計な整合性とか気にしなくていいのが安心できます。ここは同じジャングルを舞台にした『ターザン:REBORN』とは大違いですね。
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昨今の映画へのハードルの高さや、批評家受けを一切気にせず、作りたいものを純粋に作るというストレートなクリエイティブ魂を感じました。

もちろんそれを実現するのに大きな功績をあげたのは監督のジョン・ファブロー。

本作は非常に監督の作家性が色濃い一作だったのではないでしょうか。ジョン・ファブロー監督らしい要素も随所にあります。悪い奴はとことん悪く描くとか。モーグリが道具を使うことを自他ともに認め、人間として自分らしく生きていく道を選ぶ展開は『アイアンマン3』に似ている感じ。

そして、CGもいいですが、やっぱり主人公のモーグリを演じたニール・セディに一番の拍手を送りたい。スタジオのブルーバックのセットや動物の姿を模したチープな作り物の前で独り演技するのは、大人でも大変なのに、新人の子がよくやり遂げました。メイキングの動画を見る限り楽しそうに演じてますけど


クマのバルーと仲良く川に浮かびながら歌うシーンは、監督のジョン・ファブローがクマになって演技を合わせていたみたいで、ジョン・ファブローの子どもへの面倒見の良さが伝わります。もう映画作りの現場自体が遊びになっているようで楽しげ。なんか同じくジョン・ファブローが監督、主演もした『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を思い出しました(この作品もジョン・ファブローと子役が楽しそうにしてます)。


こういう「子ども愛」があるからこそ実現できた企画でもあり、技術以上に大事なものを提示してくれた一作でもありますね。

壮大な音楽も良かったです。エンドクレジットまで楽しませてくれるのがいいですね。 エンドクレジットのあの飛び出す絵本風の演出で、改めて「この世界は作り物でーす」と観客に示すのはジョン・ファブロー監督の愛嬌でしょうか。


興収的に大ヒットし、批評家からも高い評価を受けている本作は、すでに続編の製作に向けて動いているそうです。

しかも「ジャングル・ブック」の実写映画化は本作だけではないのがややこしいところ。ワーナー・ブラザースも『Jungle Book: Origins』というタイトルで2017年に公開予定です。パフォーマンス・キャプチャーで有名なアンディ・サーキスの初監督作品となるとのことで、映画ファンとしては気になるけれど…。そんな連続して映画化してどうするの…という感じも否めない。

しばらくは毎年ジャングル続きになりそうです。