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『ターザン:REBORN』感想(ネタバレ)…アメコミ映画に完敗

ターザン:REBORN

アメコミ映画に完敗…映画『ターザン:REBORN』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Legend of Tarzan
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年7月30日
監督:デビッド・イェーツ
恋愛描写

ターザン:REBORN

たーざんりぼーん
ターザン:REBORN

『ターザン:REBORN』物語 簡単紹介

妻のジェーンとイギリスで暮らす貴族で実業家のジョン。彼は実は生後間もなくアフリカのコンゴの密林で動物に育てられた「ターザン」であった。その自然界での生活は弱肉強食の厳しいものであったが、自分に屈強な肉体と精神を与えてくれた。ある理由で嫌々ながらも故郷のジャングルに舞い戻ることになったジョンは、そこでかつてを懐かしみつつ、コンゴに侵略の危機が迫っていることを知る。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ターザン:REBORN』の感想です。

『ターザン:REBORN』感想(ネタバレなし)

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ターザンはアメコミヒーローの原点?

「ターザン」といえば聞いたことのない人はいないでしょう。ジャングルでツタにぶら下がって「ア、アアーー」と叫びながら移動するあの人です。

この「ターザン」は実は100年以上歴史ある作品で、エドガー・ライス・バローズによって1912年に書かれた小説に始まり、以降数多くのシリーズ小説が執筆され、映像化もされ続けてきました。1999年に公開されたディズニーのアニメ映画が一番有名だと思いますが、そのターザンのイメージはあくまで一つの側面(というか解釈)に過ぎないのです。もはや伝説や神話みたいになっています。

そんな「ターザン」が最新の映像技術で蘇った本作『ターザン:REBORN』。物語としては皆さんが真っ先に連想するであろう「ジャングルで暮らしていたターザンが人間の女性と出会い、人間社会に戻った」お話しの後を描いています。つまり、続編的な位置づけともいえます。でも、先ほど書いたとおり、ターザンは数多くのシリーズを重ねているので、具体的にこの一作品の映画化というわけではなく、そういう意味ではリブートに近いのかもしれません。だから邦題の「REBORN」は言い得ているといえなくもないです。

ということで今回の「ターザン」の背景や歴史はこうですよというのを観客に示すために、本作では過去の回想が頻繁にはさまれます。なので「ターザン」を知らない人が見ても、一応わかるような作りになっています。

監督は「ハリーポッター」シリーズの映画を多数手がけ、今年の冬には『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』も控えるデビッド・イェーツ。

主演のターザンを演じるのはアレクサンダー・スカルスガルドというスウェーデン人俳優。写真をみればわかるとおり超イケメンで、映画ではこのために鍛え上げた肉体美をこれでもかと魅せつけてくれます。ターザンの実在感としては完璧です。でも、当の本人は、MTVムービー・アワードの映画賞授与式で上半身正装、下半身パンツ一丁で登場するなどターザン芸人と化しているところもあり、なんか残念イケメンみたいです。本人が楽しんでいるならいいんですけど…。彼は「ターザンといえば腰巻だ」と映画でも腰巻を身につけたかったみたいですが、監督に拒否されたとか。

ヒロインを演じるマーゴット・ロビーは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)で知っている人も多いのでは? セクシー女優というイメージですが、2016年9月公開の『スーサイド・スクワッド』でハーレイ・クインを演じて新境地を開拓、公開前ながら既に大人気です。『ターザン:REBORN』では活躍が少なめなのがちょっと残念ですが、今後注目が高まるのは間違いないでしょう。

サミュエル・L・ジャクソンとクリストフ・ワルツの名優が脇を固めるのも注目です。

シンプルな冒険活劇で、ノリとしてはアメコミ映画に近い感じです。気軽に見に行ってください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ターザン:REBORN』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ジャングルの王の帰還

1884年、ベルリン会議で欧米の列強諸国はアフリカのコンゴの植民地支配について合意しました。ベルギー国王レオポルド2世は象牙と資源が豊富なコンゴ盆地の領有権を得ます。それから5年、この植民地の開拓で国王は巨額の負債を抱え込むことになりました。軍隊への給料も払えないほどになり、追い詰められた国王は腹心であるレオン・ロムをコンゴへ派遣しました。秘境オパールのダイヤを見つけ出すために…。

レオン・ロムは実在した軍人です。コンゴ自由国の統治で有名になった植民地政府の役人でしたが、コンゴ人を虐殺し、その残虐性が注目を集めました。

ロムは霧深い岩地でついに目的の場所を発見。そこで遭遇したのはとある部族。戦術的な強襲を受け、軍隊は大きな損害を出します。ロムは族長ムボンガと話します。「俺が欲しいのはあの男だ。奴を連れてこい。そうすればダイヤを渡す」「その名前は?」

その頃、イギリスのロンドン。ジョン・クレイトンはかつては「ターザン」という名でジャングルで野生のままに暮らしていた過去がありましたが、今は父の名を継ぎグレイストーク卿として文明社会で身を置いていました。ある日、コンゴ視察を依頼されます。イギリスが進出する好機でコンゴの雇用創出にもなると言われますが、ジョンは興味なく、自分の人気を利用したいと語るジョージ・ワシントン・ウィリアムズ議員の言葉にも冷ややかな態度。

「断る。アフリカはもう見た。それに暑い」

ターザンはもう捨てたのです。それでもアメリカ特使のウィリアムズは引き下がりません。外まで追いかけてきたウィリアムズはコンゴで奴隷労働が行われていることを実は危惧していました。ウィリアムズ自身も同行すると言います。

ジョンは悩みます。あの地に戻るのは簡単ではありません。弱肉強食の世界です。難破して辿り着いた両親が死んだ後、赤ん坊だったジョンはジャングルに残され、ゴリラたちに育てられました。必死に生きる術を身に着けたのです。

屋敷では妻のジェーンが子どもたちに動物の話をしていました。ジェーンに話すと彼女は乗り気です。最初は連れて行けないとジョンは言いますが、ジェーンは気にしません。ジェーンもジャングルは熟知しています。ジョンをターザンの世界から解放したのは彼女なのです。

なんとか決心したジョンは愛するジェーンと一緒に再びジャングルへ向かうことに。ウィリアムズももちろん同行しています。

到着して早々、草原で幼馴染のライオンと挨拶を交わすジョン。

一方、ロムは船の台帳からジョンたちがこの地に来たことを把握します。銀行家のフラムと交渉し、傭兵の用意を確認。富はすぐそこなのです。

ジョンたちはそれを知らず、集落へ足を運びますが…。

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アメコミ映画に追いつけず…

本来「ターザン」はアメコミヒーローの原点のような作品でした。しかし、今や非常に出来の良いアメコミ映画がたくさん製作されています。つまり、否応なく「ターザン」がアメコミ映画を追いかける逆転現象が起きてしまっています。

ところが、『ターザン:REBORN』は既存のアメコミ映画と比べて明らかに劣っていました。

まずヒーローたるターザンですが、本作ではとにかく無敵の存在です。もはや「キャプテン・アメリカ」と互角に戦えるレベルといっても過言ではないくらい。中盤で本作上で最強と思われるゴリラとガチで戦い、ゴリラに全力で体を叩きつぶされるも、脱臼で済むという強靭さを見せます。しかも、下ネタを笑う余裕さえあるという…。現実ではゴリラどころかチンパンジーでさえ人間の大人は敵わないほどの腕力があるのですが、さすがにターザンも内臓破裂はまあ防げてもせめて骨折くらいするのかと思ったらピンピンしてました。

ただ、このターザンの尋常ではない現実離れした強さは原作どおりなのでいいんです。原作ではターザンは不老不死みたいに描かれたり、魔術的な力が登場したりと結構SF寄りで、そこは許容範囲です。

問題なのはこの超人ターザンの作品中の立ち位置がぐらぐらし過ぎということでしょう。これだけパワーがあれば、クリストフ・ワルツ演じる今作の悪役や敵対する族長ムボンガくらいであれば楽々勝てそうなのですが、なぜか決着がなかなかつきません。また、村を襲われた際にターザンが体をロープで縛られますが、それくらい力技で解けそうなのに何もできず…。作品の都合で一本の映画のなかで弱くなったり、強くなったりするというのが気になりました。そのため、サミュエル・L・ジャクソン演じる相棒も必要なのか、不要なのかイマイチわかりません。

ほかにも、ヒロインであるジェーンのキャラにも問題を感じました。最近の流行りである「自立した女性」を提示したいのか、冒頭から強気な発言が目立ちます。ただその中身は、「ターザンがあなたを殺すわよ」「貴族の私に手を出せるとでも?」みたいなセリフを平気で言うわけです。夫に汚れ仕事をさせるのを推奨するような、また貴族階級に甘えきったような人間を「自立した女性」とは呼びたくないですね。

キャラの作り方の雑さは物語の雑さにもつながっています。本作では階級や人種による差別を基本軸にした物語構成であり、貴族でありながらジャングルで育ったターザンはその重いテーマを語るうえでピッタリな逸材のはず。ところが、族長ムボンガやゴリラとの対立は「戦ってる場合じゃない」みたいな言葉であっさり解消していました。この対立の雑な解決さは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』よりもひどいと思います。

そして映像もやっぱり雑。一番の見せ場であるはずの終盤の乱戦も、仲間になったはずの部族やゴリラがほとんど活躍することなく、ほぼヌーが持っていきますし…。ターザンがターザンらしく活躍しつつもこれまでにない映像を見せてくれることを期待するとがっかりです。このへん、各キャラの見せ場をつくり、集団戦をきっちり描いた『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』とは雲泥の差です。

これもどれも、ターザンやジェーンに社会問題に対する明白な信念がないがゆえでしょう。それに一本の映画に詰め込み過ぎたのも原因のような気もします。回想シーンを挟む都合上、どうしても時間が足りません。にもかかわらず割とどうでも良いギャグシーンは挿入するのがまた余計です。別に続編にせず、ターザンの最初の話を丁寧に描けば良かったのに…。

原点である先人の「ターザン」が後輩であるアメコミ映画に負ける…そういう時代なんですかね。

『ターザン REBORN』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 36% Audience 58%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0

作品ポスター・画像 (C)2016 EDGAR RICE BURROUGHS, INC., WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ターザン リボーン

以上、『ターザン:REBORN』の感想でした。

The Legend of Tarzan (2016) [Japanese Review] 『ターザン:REBORN』考察・評価レビュー