テラフォーマーズ
映画『テラフォーマーズ(実写映画)』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:テラフォーマーズ
製作国:日本
製作年:2016年
日本公開日:2016年4月29日
監督:三池崇史

【個人的評価】
 星 4/10 ★★★★
 

Plot Summary

2599年の日本では新たな居住地開拓のために、コケやゴキブリを火星に放つことで火星を人間が住める環境に変える「火星地球化(テラフォーミング)計画」が始まっていた。そして、満を持して15人の日本人が火星に送り込まれるが、そこで待っていたのは異常進化したゴキブリたちだった…。

ネタバレなし感想

昆虫戦隊テラレンジャー VS ゴキブリ怪人

昨今の邦画界隈では公開前からネット上で駄作だと決めつけられてしまう作品があります。可哀想ですが、今はSNSの時代。ひとたびターゲットにされればもうお終い。根拠がなかろうがあろうが瞬く間に悪評は広まっていきます。

本作『テラフォーマーズ』もそのひとつでした。結局、公開後も散々な評価が目立っていました。

感想は人それぞれなのでいいと思うのですが、一部で見られる“本作をハリウッド大作と比較してダメだ”とか語るのはさすがにお門違いかなとも思います。

それは予算がどうのこうのという話ではなく、そもそもの世界観設定です。

なんてったって、火星で異常進化してムキムキなマッチョマンになったゴキブリと、人体改造で昆虫の力を得た人間が戦うんですよ。どう頑張ったって、本作程度の映画にしかならないんじゃないでしょうか。たぶん、ハリウッドの大手製作会社なら企画段階でボツにします。アメリカだったら「アサイラム」(低予算映画ばかり製作しているスタジオ)あたりが理解を示してくれそうです。要するに世界観設定の時点でどうあがいてもB級映画にしかならない。本作に相応しい比較対象は、サメが空から襲ってくる『シャークネード』とかであるべきです。

本作を比較的高く評価している人もいるのは、そういう前提を理解して楽しんでいるからでしょう。

世の中にはゴキブリに「可愛い」という感情を抱き、ペットにしている人だっているんです。ゴキブリにはゴキブリなりの愛で方というのがあるんです。

私は原作を読んだことがなく、なんの前情報なしで映画を見ましたが、印象としては『エイリアン』や『スターシップ・トゥルーパーズ』のような作品ではなく、戦隊アクションヒーローものだったのが意外でした。まだ見ていない人は、戦隊アクションヒーローだと思って割り切って見ることをおすすめします。

ただ、問題があるとすれば、「明らかに名前は外国人なのに、日本人に演じさせている」問題というのはどうしても漫画の実写映画化には付きまといますね。単純に日本語圏の作品だからという理由だし、しょうがないといえば、しょうがないのですが、どうしたってコスプレ感を増す印象の引き金になってしまうのは大きな弱点。この課題を解決しないことには、この手の漫画の実写映画化はいろいろ厳しいかもしれません。逆に日本の漫画は日本の漫画なのに日本感ゼロで世界観を構築しているのが凄いという話でもありますが(だから世界でMANGAは認められるのでしょうけど)。

このブログでは「★4つ」に評価してますが、事実上、B級的映画特別措置による、5点満点中の4点みたいなものと思ってください。

予告動画







↓ここからネタバレが含まれます↓




ネタバレあり感想

B級映画としての可愛さがもっとほしい

いくら生命力の高さを象徴する生物として持ち上げられているゴキブリ様でも、火星で暮らせと言われたら「ちょっとさすがに無理です…」と尻込みするに違いありませんが、今作はそのあたりのSF考証は度外視です。戦隊アクションヒーローですからね。

思うにゾンビ映画やサメ映画はあまり市民権を得ていない日本でも、ゴキブリならネタになるというのがミソな気がします。やっぱりなんだかんだいって日本人は虫が好きなんですよ。仮面ライダーだって昆虫モチーフだし、日本人の昆虫相性は特別。なんなんだろうか、これ。

で、本作の話ですが、隊員それぞれが独自の昆虫の能力を駆使して活躍する世界観は素直に楽しかったです。これこそ戦隊アクションヒーロー的で、もっと年齢層を下げれば普通に流行るような気も…。エメラルドゴキブリバチやネムリユスリカといった戦闘以外の能力が登場するのもいいですね。いわゆる「びっくり仰天、生き物の不思議」みたいな番組や本であるやつをノリでアイディアとして消化していくスタイル。嫌いじゃありません。アクションシーンや映像は映画(あくまでB級映画)としての一定のスケールが確保されていたと思います。私が子供のときにこの映画を見ていたら夢中になっていたかもしれない…。

序盤からバンバン仲間が虫のように殺されていく展開も潔くて気持ちがいい。どうせなら私たちが普段ゴキブリにしているような殺し方で殺されていく展開があると悪趣味で良かったんですが。あくが強い作風でおなじみの三池崇史監督ならもっとできたんじゃないかとも思いますが、映倫区分を「全年齢(G)」にする制約のなか、最大限の工夫がされていました。血じゃなくて虫の体液だからセーフみたいなノリもいいものです。今度から邦画は全部敵は実は虫でしたということにしておきましょうか。そうしたら思う存分スプラッタなことできますしね。

役者陣はこの作品の立ち位置を理解したうえでしっかり演じられていたと感じました。本作に繊細な演技は場違いですからね。『ルパン三世』、『キャラクシー街道』、『信長協奏曲(コンツェルト)』と続いてクセのあるキャラを演じる小栗旬は、いろいろ世間の厳しい目もあるとは思いますが、なんかこう「頑張ってる」感じが嫌いになれない…。

主人公の小町小吉が主人公のわりには他のキャラがたちすぎているせいか、あまり中心にいる感じがしないのが残念でしたが。“伊藤英明”ならば、もっと無理難題なアクションもこなせるくらいのパワーはあると思うのですが、あまり本領発揮の出番はなかったかな…。

テラフォーマーズ

そんな感じでゴキブリをもてなせるだけの広い心を持っていれば割とOKな本作でしたが、B級映画として見たとしても、これはちょっと…という部分ももちろんありました。

まずストーリーはもっと絞ったほうがよかったのではとも思います。冒頭の地球のシーンや蛭間一郎の回想はいらなかったかな…。大作邦画にありがちな、とりあえず風呂敷は全部広げてみる系の失敗でした。いっそのこと、シチュエーションスリラー風に情報量を絞って展開していけば良かったのかもと思ったり。

ゴキブリと戦う動機も不明確で、卵が欲しいならもっとやりようがあっただろうに(もっといえばバクズ手術の技術があればじゅうぶん日本は世界の優位に立てるじゃないかというツッコミもなくはない)。ゴキブリと戦ううえで重火器を使わない理由の説明も欲しかったですね。

また、とくに奈々緒がらみの場面に雑さを感じます。序盤に何も説明せず火星を歩かせて奈々緒が襲われますが、なんでそんなことしたのか? ゴキブリの危険性を把握しているなら、バクズ手術について説明してから探索させればいいのに。

奈々緒がカイコガの能力を覚醒する展開も強引というか、そもそもカイコって飛べないんじゃなかったっけ…。毒針を折られて絶対絶命の小町の目の前に、白い蛾人間が現れたとき、「奈々緒…!」と叫ぶ小町に、「えっ、よく見た目でわかったね」と思ったりしたのはどうでもいい感想です。

奈々緒関連エピソードがいらないといったら、原作ファンに怒られそうですが、少なくとも映画中ではあまり効果的に使われてない気もします。たぶんいろいろなエピソードを取捨選択したのかもですけど、まあ、この手の原作の料理の仕方は難しいですね。

個人的総論としては、もっと極端に突き抜けていれば、カルト的に人気を集めるだけの“可愛さ”が発揮されていたかもしれない…と思う映画でした。

日本はゴキブリ映画という新しいジャンルを開拓していくのはどうだろうか…。そんなアホなことを考えている毎日です。

 (C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会