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『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』感想(ネタバレ)…Netflix;不信者にも推理はできる

ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン

正しき者を導くことも…Netflix映画『ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Wake Up Dead Man
製作国:アメリカ(2025年)
日本では劇場未公開:2025年にNetflixで配信
監督:ライアン・ジョンソン
LGBTQ差別描写
ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン

ないぶずあうと うぇいくあっぷでっどまん
『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』のポスター

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』物語 簡単紹介

元ボクサーの若手司祭であるジャドは、不正義に怒り、つい手が出てしまったことで田舎の教会に異動となる。その教会は、下品で粗暴な司祭の男によって我が物顔で成り立っており、一部の熱烈な信者が下支えしていた。あまりの厳かな信仰とはかけ離れた実態に閉口するも、ジャドは地道に頑張ろうとする。そんな中、ひとりの死人がでる。そして、名探偵のブノワ・ブランがやってくる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』の感想です。

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』感想(ネタバレなし)

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3作目も楽しい!

SNSにひたすら流れてくる「レイジベイト」(怒りや不快感を煽ってエンゲージメントを上げるだけの投稿)、動画サイトに膨大に溢れる「AIスロップ」(生成AIによる低品質なコンテンツ)…そんなものを永遠にスクロールしているだけだと、本当に自分自身までが空っぽになってしまうので(というか認知症になりやすくなることは研究で示唆されているけど)、もうやめにしましょう。

2026年はそういうものと極力関わらない1年にしたいですね。

それらと比べたら映画はまだまだ価値があります。どんなに駄作だろうと低俗だろうと、人の手で作っているならね…。こんなことで評価できる時代になるとは…。まあ、その映画も「全部AIで作るぜ!」って息巻いている人たちがいるので、勘弁してほしいですが…。

とりあえず今回紹介する映画を観て、謎解きで頭を活性化しつつ、適度に感情を発散しましょう

それが本作『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』

“ライアン・ジョンソン”監督が生み出したこの「アメリカン・ポアロ」と評されるオリジナルなミステリー映画のシリーズ。1作目の2019年の『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』に始まり、2作目の2022年の『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』で作風を完全に確立。

絶好調の中で3作目が2025年にやってきました。このシリーズの各サブタイトルは、毎回ロックバンドの曲にちなんで名付けられていますが、今回は「U2」なんですかね。

このシリーズ、贅沢な豪華キャストと、軽妙なストーリー展開、皮肉の効いた演出など味はいくらでもあるのですが、楽しく反権力・反差別を掲げているのがいいですよね。「楽しく」ってところが大事。楽しくやらないと続かないからね。

今作である第3作目の舞台は教会。でも教会は教会でも、すっかり差別的排外主義に染まり切った個人主義全開の宗教コミュニティです。露骨に反フェミニズムだし、反LGBTQだし、陰謀論が蔓延しています。

そこへ“ダニエル・クレイグ”演じる、前作でパートナーと同棲中のゲイだと明らかになった我が道を行く私立探偵ブノワ・ブランがズバっと切り込んでくれます。もうこの構図だけで最高に愉快です。

今作の顔ぶれ豊かな俳優陣は、『墓泥棒と失われた女神』“ジョシュ・オコナー”『WEAPONS/ウェポンズ』“ジョシュ・ブローリン”『バック・イン・アクション』“グレン・クローズ”、ドラマ『メイヤー・オブ・キングスタウン』“ジェレミー・レナー”『6888郵便大隊』“ケリー・ワシントン”『異人たち』“アンドリュー・スコット”『エイリアン:ロムルス』“ケイリー・スピーニー”『ツイスターズ』“ダリル・マコーミック”『私は世界一幸運よ』“ミラ・クニス”など。

短い出番ですが、ドラマサムバディ・サムウェアで名演をみせた“ブリジット・エヴァレット”もでているのが、個人的に嬉しいところ。

さあ、低俗な探偵モノの始まり始まり。奇跡の復活という安っぽい芝居にお付き合いください。

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『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』を観る前のQ&A

Q:『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2025年12月12日から配信中です。
Q:『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありません。
✔『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』の見どころ
★豪華な俳優陣のアンサンブル。
★痛烈な社会風刺でストレス発散。
✔『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』の欠点
☆—

鑑賞の案内チェック

基本 差別的な言動が一部にあります。
キッズ 3.0
乱暴な言葉遣いや殺人描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

ニューヨーク州北部でカトリックの司祭に転身した元ボクサーのジャド・デュプレンティシー神父は、無礼なクラーク助祭に思わずその場で一発パンチをかましました。さすがにそんな暴力を見過ごすわけにもいかず、上層部はジャドを異動処分とします。彼は淡々と反省しており、もう1度チャンスが欲しいと言うだけでした。

次の場所は、司祭がひとりしかいないチムニー・ロックの教区。ジャドに同情してくれるラングストローム司祭いわく、運営しているのは、ジェファーソン・ウィックスという男でクソッタレだとのこと。

さっそくその田舎に足を運びますが、教会は荘厳で美しいです。しかし、ジェファーソンは会って早々にかなり失礼な言葉を投げかけてきます。

とりあえず2人は外で告解をします。ジェファーソンは「日本の猫カフェからの連想で淫らな妄想をしてしまってマスターベーションを何度もやってしまいました」とやたら嘘っぽい戯言を赤裸々に口にします。ジャドは黙って相手をしながら、ここでの助手は大変そうだと実感します。

関係者も整理します。まず森に囲まれたこの教会の庭師兼管理人はサムソン(サム)・ホルト。そして敬虔な女性で常に教会を支えているのがマーサ・ドラクロワ。運営からオルガン演奏、遺体管理まで何でもしています。サムはこのマーサに熱を上げているようです。

敷地には霊廟があります。なんでもプレンティスというジェファーソンの祖父が眠っているとのこと。外側からは専用の重機がないと開きませんが、内側からは簡単に開けられる構造だそうです。

ジェファーソンはグレイスという名の母を嫌っており、アバズレ娼婦だとマーサも言い放ちます。露出度の高い格好で、場違いだったそうですが、プレンティスの死後にすぐさま遺産相続を要求。ところがあるはずの資産が無かったそうで、怒り狂ったグレイスは教会を荒らし、イエスの十字架まで壊す冒涜をしたのでした。まだ幼いマーサさえも殴りつけるほどでしたが、霊廟を前に亡くなったらしいです。いまだにこの教会では壁の十字架は無く、その跡だけが残っています。

熱心な数少ない信徒もいます。ひとりめは、父がウィックス家の弁護士だったというヴェラ・ドレイヴン。家にいるのは養子のサイで、共和党から政治家を目指したらしいですが、人種、ジェンダー、トランスジェンダー、国境問題、ホームレス、中絶、気候変動、ワクチン、イスラエル、DEI、5G…あらゆる論点を駆使したものの選挙は失敗。本人は納得いっていません。

医師のナット・シャープは妻のダーラを何よりも大事にしていましたが、駆け落ちで逃げられました。SF作家のリー・ロスは、名作を生んでいましたが、本人いわくニューヨークからここに移り住みリベラルな精神を排除したことで売り上げは低下。しかし、ウィックスの教えを取り込んだ書籍で再起を狙っています。

世界的に知られるチェリストのシモーヌ・ヴィヴァーヌは、神経性の痛みで車椅子生活になり、引退。この教会で奇跡を信じられるようになったとのことで、完治を願って多額の寄付をしています。

ジェファーソンの説教は、マルクス主義のフェミニズムによって男らしさが攻撃されている云々から始まり、新参者をいきなり責め立てるのが恒例。どおりで新しい信徒が増えないわけです。熱心な信者はその排除に痛快さを密かに感じ、信仰はより強固になっています。

ジャドはそんなこの世界でも地道に自分なりに信仰を説こうとしますが…。

この『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/12/17に更新されています。

ここから『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』のネタバレありの感想本文です。

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差別主義者が殺されて“嬉しい”と思ってしまった

『ナイブズ・アウト』シリーズは、“ダニエル・クレイグ”演じる私立探偵ブノワ・ブランがタイトルを背負う主人公なのは一貫しているのですが、彼は典型的な主人公として常に物語の前に立つわけではなく、ある表の主人公がいて、その人を推理で支えるようなかたちで脇から物語に干渉します。この構図は、“ライアン・ジョンソン”監督がこちらも生み出したミステリードラマ『ポーカー・フェイス』と同じです。

『ナイブズ・アウト』シリーズの1作目と2作目では、その「表の主人公」が権力に搾取される弱者側にいる存在でした。1作目は移民、2作目は人種的にもジェンダー的にもマイノリティ。いずれも白人コミュニティがその搾取の根源でもありました。

つまり、ブノワ・ブランは半分趣味で自由気ままに推理をしながら、同時に不平等な迷宮に陥った弱者を出口まで導くという芸当をやってのけていました。その手際の良さを眺めるのがこのシリーズの醍醐味だと思います。

ではこの3作目の『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』も同一なのかと言うと、ちょっと趣向を変えてきています。

本作の「表の主人公」はジャドという若い神父で、白人男性です。あからさまなマイノリティではありません。

でもこのジャドは、無力な凡人ですがその心の内に社会正義を根差しており、しかし、その正義をどうやって信仰の中で実現するか、その道を見失っています。彼自身ボクサー時代に怒りの感情とともに相手を殴り殺してしまった過去があり、それを悔やみ、贖罪のために信仰の道に足を踏み入れましたが、進路がわからない状態です。

そのジャドが本作で直面するのが、聖職者(モンシニョール)にしてはあまりに下品で粗暴で、もはや宗教の体裁を装うことすら半分放棄している…多様性などあらゆる進歩的なものを嫌悪し、「気に入らない者は排除しよう」という考えだけで支持者を集める世界。しかも、作中でその狭いコミュニティにすらも飽きて、悪知恵と再生数だけを気にするヘイト・コンテンツ・クリエイターにそそのかされ、政界進出まで目指し始める一歩手前にいます。

要するに今作はいわゆる「宗教右派」を露骨に風刺していました。まあ、日本にもこんなやり口で支持を集めまくっている政党がありますしね…。既視感しかありません…。

そんな独自の排外主義で小さな小さな超保守コミュニティを築いた司祭を対戦相手に、そこに小さな小さな正義をもってファイティングポーズを続けられるか…ジャドは試されます。

こういう「力みすぎじゃないか」とか「意識高すぎじゃね」とか小言や冷笑をぶつけられながらも「正義を諦めたらダメなんだ」と決意をあらたにする若い白人男性。2025年は『スーパーマン』でも観たばかりですが、人物像としては似ているでしょう。

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』では、あろうことか最悪のヴィランであるジェファーソン・ウィックス司祭が真っ先に死んでしまい、そこでジャドが「差別主義者が殺されて“嬉しい”と思ってしまった自分」を悔いるという展開。この葛藤はまさに現代の社会正義が肌で感じている感情じゃないでしょうか。

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事件の謎が解けない?

では『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』での私立探偵ブノワ・ブランの活躍はと言えば、今回も自由奔放。

察しのとおり、彼はとくに信仰心はないようで、初登場時からあの教会のホモフォビアな空気に顔をしかめ、他人事のように振舞っています。とにかく告解の名の下に「打ち明ける」ことを良しとするこの世界で、全然自分を明かさないブノワのような存在はそれだけで痛快です。

今作でもミステリーマニアっぷりが全開でオタク語りが止まりません。“ジョン・ディクスン・カー”『三つの棺』を楽しげに持ち出したり、今回の密室ミステリーを不謹慎なほどに満喫しまくっています。こんなにも楽しそうに探偵をしている人を見ていると、差別主義者が殺されて“嬉しい”と思ってしまった自分を悔いているジャドがなんだか馬鹿らしくなってきますよね。それも計算のうちかな…。

そう、今回もブノワはひとりで勝手に相当手前から真相に行きついています。しかも、今回の事件がまさしく大芝居だとわかったうえで、自分もその大芝居にわざと参加するというノリノリ。あまりにも見え透いた信仰心の覚醒みたいな演出を入れ込んだり、ほんと、映画自体が遊びまくっていました。

でも誠実です。信仰心は無くとも、他人の信仰心に寄り添い、ちゃんと「赦す」までの道のりを整えてくれる。ブノワ、あなたこそゲイの神様なのか…。

自分の正義を諦めなかったジャドも、60年間耐えたマーサも、田舎にレッテルを貼られて孤立したグレイスも、みんな許してあげて(あ、いや、一切許す余地のない奴らもいましたね)、平穏さを取り戻すあの世界。こういう宗教が本来のかたちに舞い戻ることがいかに今の時代に貴重になってしまったか…。

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』は、正しき者には正義を、悪しき者には復讐を、不信者にはそれ以外のあれこれを…真面目で不真面目、今回も楽しい反権力エンターテインメント・ミステリーショーを届けてくれました。

シリーズがさらに続いてくれると、この時代の生きる糧になるのでありがたいです。

『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)

以上、『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)Netflix ナイブズアウト ウェイクアップデッドマン ナイフズアウト

Wake Up Dead Man (2025) [Japanese Review] 『ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン』考察・評価レビュー
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