アベンジャーズ エンドゲーム
映画『アベンジャーズ エンドゲーム』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Avengers: Endgame
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年4月26日
監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

アベンジャーズ エンドゲーム

あらすじ

宇宙最強の敵サノスに立ち向かうも、その圧倒的な強さに手も足も出ず、ヒーローたちを含めた全人類の半分を一瞬で消し去られてしまうという敗北を喫したアベンジャーズ。残されたメンバーたちで再結集し、サノスを倒して世界や仲間を救うため、史上最大の戦いに挑む。

ネタバレなし感想

1年ぶりですね、覚えていますか

サノス 様

拝啓 日本では大型連休と新元号の始まりの季節が間近に迫りましたが、お健やかにお過ごしのことと存じます。かなりいろいろな骨の折れる出来事を経験されたようで、お体のほうを心配していました。私共はおかげさまで“指パッチン”による“生命の数が半分になっちゃったよ事件”を生き残ることができまして、変わりなく元気で過ごしておりますので、なにとぞご休心ください。

私のような映画を観る程度のことしかできない凡人が、偉大なサノス様とこうしてお知り合いになれたのも運命的だったのでしょうか。振り返れば「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」は2008年の『アイアンマン』から始まりました。まだこの頃はサノス様の影も形もありませんでした。調子に乗った金持ち男が鉄のスーツを身にまとい、空を飛んでいただけです。しかし、これがなぜか地球人に大ウケ。わからないもんですね。

続いて2008年に『インクレディブル・ハルク』が公開。こちらにいたっては研究者のオッサンが緑の巨人になるという誰得なのかも怪しい内容。正直、この2作品を見る限り、このシリーズが後に映画史に残る記録を打ち立てると予想できた人はいなかったと思います。若干、ハルクのフォルムはサノス様と被っていますし、サノス様より先にでしゃばるなど無礼な奴です、まったく。

2011年には『マイティ・ソー』が登場。世界樹“ユグドラシル”の枝に内包された“九つの世界”の頂点である神の国“アスガルド”を統べる“オーディン”の息子のソーが主役。この中二病だとしても酷すぎる謎用語のオンパレードには面食らいましたが、ここでもまたしてもオッサンです。もしかしてオッサンしか出てこないのかとも思っていました。

そしてついに2011年の『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』でやっと王道な感じもするヒーローが現れました。そのままの流れで2012年に『アベンジャーズ』が満を持して参上。あの個性の強すぎる面々がまとまるのかと不安でしたが、見事にチームを結成。当時の日本宣伝のキャッチコピーは「日本よ、これが映画だ。」であり、なぜ煽ってきているのか最初はわかりませんでしたが、後にとんでもない記録を達成するシリーズになるのですから、その言葉も誇大ではなかったです。

以上でフェイズ1が終わり。間髪入れずに始まったフェイズ2では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)、『アントマン』(2015年)と賑やかな新メンバーも現れて、新しい風が吹きました。一方で、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(2014年)や『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)とシリアス路線なストーリーテリングも見せ、シリーズの深みを増す重要な時期でもありました。ちなみにここでサノス様も顔がお見えになりましたね。正直、第一印象は何だコイツとバカにしていま…あ、いえ、何でもありません。とてもハンサムでした。日本ではあなたのアゴを真似る若者が急増しましたよ、嘘じゃないです。

そして、現フェイズ3が始動。こちらは一言でいうと“多様性”の増した時期になりました。『ドクター・ストレンジ』(2016年)のような魔法を駆使するという戦闘スタイルも多様さがプラスされましたし、『スパイダーマン ホームカミング』(2017年)ではやっと念願の若者が加わり、『ブラックパンサー』(2018年)、『アントマン&ワスプ』(2018年)、『キャプテン・マーベル』(2019年)では人種や性別のダイバーシティもアップ。この布陣。始まりはオッサンだらけだったとは思えないです。

しかし、そんなヒーローたちを木端微塵に打ち砕いたのが、そうです、あなたです。

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年)での傍若無人。お見事でした。地球人もあっけにとられていました。まさか2時間半でインフィニティ・ストーンを全て集め、世界の均衡を保つために全生命を半分にするという目的を達成されるとは。イマドキ、こんな即座に有言実行な人、地球には政治家でもいないです。無事、目的を成就されましたこと、あらためてお祝い申し上げます。

けれどもですね。まことにお言葉を返すのは申し訳ないのですが、均衡というわりには全然地球は平穏ではありません。相変わらず電車は満員ですし、ネタバレをリークする輩もいます。どうなっているのでしょうか。

今一度そちらでもご確認いただけると幸いです。

出会いと別れの多い季節です。ご自愛専一にお過ごしくださいますようお祈り申し上げます。


追伸

そちらにアベンジャーズが再集結して向かっているようです。『アベンジャーズ エンドゲーム』…今度ばかりは3時間を超えるとか。私もしっかり準備を整えて応援に行きたいと思います。

え、どっちの応援かって? それはもちろん…。


『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想(ネタバレ)…私は指パッチンができません
おすすめ PiCKUP!
↑『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』…これを観ずに『エンドゲーム』を観るのは論外だと思います。
オススメ度のチェック
ひとり◎(観たいなら観るよね)
友人◎(みんなを連れて観るよね)
恋人◎(恋愛とか関係なしに観るよね)
キッズ◎(子どもでも3時間とか平気だよね)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

あなたに捧げる

本当にネタバレしてはいけない映画に直面したとき、ネタバレなしで感想を書くなどサノスに素手で挑むくらい不可能なんだなと今、この瞬間にもひしひしと痛感している…そんな状況。

でもここからはネタバレを遠慮なくぶっこんで書きます。

一般論として、シリーズものの映画を評価するときの最大の欠点として挙げられがちなのが「全ての作品群を観ていないと話がわからずにハードルが高くなる」ということです。どうしても新規参入が難しくなると考えるのが普通。だから映画製作会社もどこかで一区切りをつけようとしますし、事前に「この映画は過去作を観ていなくても大丈夫なつくりです」と前置きして安心させることもあります。私も映画を紹介するときにそんなような言葉で鑑賞の敷居が低いことをアピールしたりもしました。まるでそういう新規への配慮を効かせることが“正しいこと”であるかのように

そういう意味ではこの「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」は映画史上トップレベルで難易度が高い作品群です。11年で物語のつながる21作品を積み上げてきたのですから。正直、一作も見ていない人に「内容を説明して」とか言われてもお手上げです。

ところがです。このMCUは作品を積み重ねるたびに右肩下がりになるどころか、世界興行収入的にも異常な記録をどんどん更新するように打ち立て続け、ついにはアカデミー賞作品賞にノミネートされるくらいの映画を作ってしまったんですよ。完全にセオリーが通じません。“もともと人気のあるブランドだからでしょ?”と言われそうですが、アメコミなんて本来は一部のオタク層が細々と見るものでしたし、マーベルも経営不振でヤバかったくらいです。それがなぜここまでの偉業を達成できたのか?

それはきっとひとえに「面白い映画を作る」ということに徹したからなのかなと思います。そして常に先頭に立って新しい挑戦を継続してきました。MCUというのは単に壮大なクロスオーバーというだけでなく、そういうひとつの映画創作における姿勢なんだなと感じます。

そしてそのMCUの集大成になると言われる『アベンジャーズ エンドゲーム』。

MCUのその姿勢を100%フルに発揮して生み出された“結晶”でした。

何が凄いってMCU全作品を鑑賞しないと全貌を理解できないつくりになっていること。全然遠慮とかしていません。毎回MCU映画の新作が公開されるたびに「少なくともこれとこれは観ておくといいです」なんて語ることもしばしばですが、この『アベンジャーズ エンドゲーム』に関しては、“全部観ておけ”と。“とにかく一作品でも多く観てください”と。そう言うしかないです。

要するに、この“初心者向けの考慮は一切されていない”というハードルの高さを本作は欠点には捉えておらず、それをむしろ観客の楽しみを最大限に引き出すキーアイテムに使っているんですね。MCU作品を観ていれば観ているほど楽しさは乗数方式で倍増していき、ワンシーン・ワンセリフごとに感動が響てくる。

「全ての作品群を観ないとダメだからハードルが高い」なんて言う人のために映画を作る気はなく、全ては愛してくれた観客のために捧げてくれる。だから別にMCUに思い入れのない人とか、ましてや批判のために見に行く人とか、そんな人たちの相手をする気はゼロ。純粋なるファンのための愛に満ちた映画です。それこそ作中でも言っているように「3000回愛している」と言ってくれるような。

この献身が何よりもここまでMCUを伝説にした理由でしょうし、『アベンジャーズ エンドゲーム』はその究極の到達点です。

まあ、あれです、簡単に言うと、スタンプラリーを達成したご褒美みたいなものです(なんだそのしょぼい例え)。

これが本当の完全敗北

冒頭、ホークアイことクリント・バートンの家族の消失を描き、しっかり『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』での観客のトラウマを丁寧に呼び起こしてくれる導入。

ここからは完全なるお通夜モードなのですが、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースの登場により、アイアンマンことトニー・スタークも割とあっさり戻ってきて、さっそく“逆襲”だとサノスのいる星へ乗り込む一同。 そして、なんとあっさりサノスの首をスッパンして、ラスボス討伐。

完…とはいかないなんとも気まずい雰囲気。

この展開が何よりも示すのは、あの正義を掲げるヒーローたちが憎しみにとらわれて激情のままに“復讐”してしまったということ。サノスにやり返すこと…もしかしたら大方の観客がなんとなく期待していたことなのかもしれません。でも現実はこういうことですよと突きつける本作。これがあなたの望んだ“エンド”ですかと。

ヒーローたちが憎しみの勢いで“逆襲”した結果、何も満たされないというばかりか、それと同時にクリントは闇落ち、トニーは戦意喪失する中で、まだ戦いに希望を見いだしていた生き残ったヒーローたちまでも“ヒーローでなくなってしまった”ことにもなります。

つまり、この序盤のサノスへの“逆襲”シーンでもって、アベンジャーズの“完全敗北”となる。

『インフィニティ・ウォー』のラスト以上に、ものすご~く観客を嫌な気持ちにさせる、悪趣味な始まりを用意してきたものです。

アベンジャーズ エンドゲーム

ヒーローたちのリハビリ

そして「5年後」という衝撃の時間経過。“倒したけど負けた”ヒーローだった者たちの末路が描かれるなか、アントマンことスコット・ラングが量子世界から時間を飛び越えて帰還したことで、一筋の光が。

ここで「アベンジャーズ」のテーマ曲が徐々に高鳴り始めるのが良い演出。こんな状況でもギャグが挟まれていきますが、これさえも少しずつリハビリのように“あの時”のヒーローたちの姿に戻ろうとしているかのようで切なくもなってきます。

ついにタイムトラベルの登場。 過去の時間に戻ってインフィニティ・ストーンを集め、再度“指パッチン”でサノスのやったことをなかったことにする作戦をうちたて、役割を分担して、いざ過去へ。

このパートでは、戦闘もあるにはありますが、どちらかといえば、ヒーローでなくなった者(とくにキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース、トニー・スターク、ハルクことブルース・バナー、ソー、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ、クリント・バートン)である初期アベンジャーズ6名が復活するための、自分のアイデンティティと向き合う旅となっています。 ウォーマシンことジェームズ・“ローディ”・ローズやスコット・ラング、ロケットはヒーローとしての心を失っておらず、この6人の導き手になっているあたりも、上手いキャラクター構成です。

スティーブ・ロジャースは過去の信念に燃える自分と愛する女性、トニー・スタークは父ハワード・スターク、ブルース・バナーは科学と対極にある魔術の天才エンシェント・ワン、ソーは自分を支えてくれる母、クリント・バートンは取り戻したい家族…それぞれの自分だけの相手と巡り合います。

一方で、ナターシャはそうした出会いがありません。現時点で過去に謎の多い彼女ですが、きっとあのアベンジャーズがナターシャにとっての家族だったのか。ゆえに彼女がソウルストーンのために犠牲になるという展開も筋が通っています。

この過去パートは、一見するとファンサービスのためだけの目配せにも思えますが、実はしっかりキャラクター整理がなされており、最終決戦に向けてのヒーローたちの再構築も手際よく行われ、あらためて“ルッソ兄弟”監督の“多数キャラを扱う能力”の高さに感心します。

団結は最大の武器

インフィニティ・ストーンをなんとか集め、ハルクの指パッチンでとりあえず“生命半分”を元通りにでき、めでたしめでたし…とはならず、タイムトラベルを逆に利用され、過去からサノス軍団が襲来。

最悪のピンチに駆け付けたのは、消えたヒーローたち。一大決戦の火蓋が降ろされ、大バトルが展開。

ここはもう“こういうのが見たかったんでしょう!”という観客の需要に答えるための出血大サービスです。

これまでのマーベル映画が積み上げてきた集大成を容赦なく全否定してきた『インフィニティ・ウォー』とはこれまた真逆で、これまでのマーベル映画が積み上げてきた集大成を全力で見せつける大激戦。

アイアンマン&キャプテン・アメリカ&ソーの見事な連携プレイもグッときますし、個人的にインフィニティ・ストーンをはめたガントレットのリレーシーンですね。初期アベンジャーズのホークアイから、ブラックパンサー、スパイダーマン、そして女性ヒーロー集結による突破シーンまで、これからのMCUを担う次世代へのバトンタッチになっているのがもう感無量。私たち誰もが持っている、いや、持つことのできる、信頼・信念・愛・多様性すべてが団結して最強の敵に挑む。ヒーローって、人間って、団結すればこんなにも強いんだということを示す。この単純明快なバトルもMCUの積み重ねてきた重みがあるからこそ“ここまできたか”という感動もある。これ以上のラストバトルはないんじゃないでしょうかね。

最後はトニーが自己犠牲で“指パッチン”をすることでこの戦いは集結するのですが、面白いなと思うのは、結局、どんなに大勢のキャラが登場してド派手になっても、“指パッチン”するかしないかが物語のキーワードになっている点。このインフィニティ・ストーンはどういう力なのか、ついには詳細もわからず話が突き進むのですが、典型的なマクガフィン的な扱いです。でも、それが映画を純粋に進めるための適度な導線になるので、結果、良かったし、上手いなと。こんな大作でも古典的な映画手法に沿っているのが素晴らしいじゃないですか。

サノスとヒーローの違い

私が『アベンジャーズ エンドゲーム』の素晴らしさだと思う点が2つあります。

ひとつは、サノスの扱い。前作では実質サノスが主人公みたいなもので、サノスなりの信念が真っ当に描かれていました。一種のポリコレの真逆みたいな思考で、自己中心的な個人正義。それを遂行していく過程と結末。反ポリコレが跋扈する現代社会におけるそういう一部の人の理想の体現者。

では、『アベンジャーズ エンドゲーム』はこのサノスを倒して“ハッピーエンド”なのか。忘れてならないのは前作のサノスはやり遂げたうえで最期をちゃんと迎えたこと。今作で倒したのは過去からやってきたサノスです。なのであの前作のサノスの達成感的な感情は一切侵害していないんですね。ちゃんとサノスへの最低限のリスペクトは維持しているバランスが上手いです。

もうひとつは、決着のつけ方というオチ。事前の一部ファンの予想では本作がシリーズの一区切りになるという話から“世界丸ごとリセットしてリスタートする”のではないかとの推察もありました。ところが作中、その予想をなんとサノス本人から口にしてしまいます。「宇宙全てを原子レベルで再構成してやり直す」と。

で、アベンジャーズであり、最後の選択を任されたトニーはどうしたかといえば、サノス集団だけを消したのでした。世界はリセットしません。これには結構びっくりして、5年後設定のまま、犠牲もある程度出ているのに、この決断。

でもこれもまたMCUという積み上げることを大事にしてきたこのシリーズらしい英断ですし、それにちゃんとサノスと対比になります。前作のサノスと今作のトニーの“指パッチン”は同じことをしているように見えて、やっぱり芯にあるものは違う。サノスは個人正義、トニーは大衆正義。よく「正義の反対は正義」という言い回しもありますが、本作はそんなありきたりに終始せず、しっかり違いを見せました。その相違がハッキリ出るのは、二人の最期のその後。序盤のサノスの死は、誰も看取る人も、涙する人もいません。でもトニーの死は大勢の人に見守られ、この世を去りました。何のために行動するか、その行動を評価してくれるのはいつも周囲ですよね。自分でいくら“正しい”と豪語しても意味はないです。

また、もう一度タイムトラベルした際に人生を全うすることにしたスティーブの生き方も、サノスと対極的。愛のある人生はそれだけで素晴らしい。そんな普遍的な終わりで映画を締めるのも本作の良さ。

いつものクレジット後のシーンもなく、ただ“カンカン”と最初のヒーローを作り出した音が響くのも良かったです。

さあ、MCUのフェイズ3。これで終わりでなく、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』が待っています。さらに今後は映画に加えて、複数のドラマシリーズが展開。これもMCUと絡んでくるそうで、ますます複雑化します。

“ルッソ兄弟”監督はこれでしばらくMCUから離れるみたいですが、本人いわく「シークレット・ウォーズをやるなら戻る」と言っているそうです(「シークレット・ウォーズ」はアベンジャーズやファンタスティック・フォー、X-MENが共演する一大クロスオーバー作品)。

ということは「『アベンジャーズ エンドゲーム』なんてまだ大したことなかったね」と言えるくらいの、さらなるカオスでハチャメチャな映画がこの先の未来に待っている…かもしれないということ。

これはあと10年、死ねないなぁ…。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 97% Audience 95%
IMDb
9.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 MARVEL