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ドラマ『ワンダヴィジョン』感想(ネタバレ)…この動画はMCUの提供でお送りします

ワンダヴィジョン

MCUドラマシリーズの第1弾はファンを考察と熱狂に翻弄させる…「Disney+」ドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:WandaVision
製作国:アメリカ(2021年)
シーズン1:2021年にDisney+で配信
原案:ジャック・シェイファー
恋愛描写

ワンダヴィジョン

わんだびじょん
ワンダヴィジョン

『ワンダヴィジョン』あらすじ

新婚ホヤホヤのワンダ・マキシモフとヴィジョンは新居で夫婦生活を幸せいっぱいに始める。場所は郊外の町・ウェストビュー。個性豊かなお隣さん、職場の同僚たち、家でもトラブルが続出。実はこの2人はちょっと普通の人とは違う一面を持っていた。しかし、それはまだまだ表面的な話。その裏には2人すらも把握できていない秘密がある。ここで番組を中断します。ではCMをどうぞ。

『ワンダヴィジョン』感想(ネタバレなし)

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MCUはついにドラマを侵略

「マーベル・シネマティック・ユニバース」、通称「MCU」『アベンジャーズ エンドゲーム』で世界興行収入ナンバーワンの頂点に到達し、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』によってそのフェーズ3をひとまず終幕させました。

あれほどの世界的な大熱狂を提供してくれるファン・ムービーはそうそうありませんでした。まさにお祭り。凄かった。あの瞬間をリアルタイムで体験できたのは自慢になりますね。

そのMCUはこれで終わりではありません。フェーズ4へと移行し、さらにどんどん作品を送り込んでくる予定でした。ちょっとだけ時間をあけて…。

ところが新型コロナウイルスのパンデミックという、サノスよりもヤバい世界的危機が襲来してしまいます。フィクションではヒーローが事態を収拾してくれますが、現実ではそうはいかない。私たちはひたすらに耐え抜く地道な戦いを余儀なくされました。

そのコロナ禍の影響で2020年に公開を予定していたMCU映画である『ブラック・ウィドウ』『Eternals』は相次いで延期。MCU作品のリリース・スケジュールは大幅に後退することになってしまいます。

しかし、フェーズ4のMCUはもうひとつのフィールドがありました。ネット配信のドラマシリーズです。このフェーズ4からマーベルは「Disney+」でドラマシリーズを多数展開。そのラインナップの発表にはファンも度肝を抜きました。もう一体どれだけ作るんだ…と。

とにかくこれからのMCUは映画とドラマシリーズが複雑に絡み合った世界観を構築していくことになります。前人未到の挑戦です。

そのMCUのドラマシリーズ第1弾である『ワンダヴィジョン』が2021年1月からついに配信開始。まさしくファン待望。1年以上もMCU不足でしたから。あのMCUのロゴが流れるだけで不思議な感無量に満たされる…。

『ワンダヴィジョン』はその名のとおり、これまでの作品でアベンジャーズのメンバーとして登場したワンダヴィジョンという2人のキャラクターにスポットを当てた作品です。ドラマシリーズだからサブエピソード的なものなのかなと思うかもしれませんが、がっつりメインストーリーを構成していきます。映画級のスケールのド派手シーンも満載です。

本作を観ればワンダとヴィジョンという2人をますます好きになるでしょう。『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』で初登場したときは、私も「なんか変な魔法キャラと変な見た目のやつ」程度にしか思っていなかったのに…。今はもうすっかり愛おしいキャラクターですよ。

もちろん他にも過去作に登場したあのキャラ、またはあのキャラの成長した姿、さらには超意外なサプライズ・ゲストなど、ファンだからこその衝撃が満載。

何よりもストーリーも謎だらけで、配信開始時からファンの間では考察が大盛り上がり。これもまたリアルタイムならではの現象ですね。

ともあれネタバレ厳禁な作品なので、これ以上の内容の言及はしないでおきましょう。

なお、一部の人が気にするのは「過去作を観ないとダメ?」という質問だと思います。確かにMCUは蓄積が重要な世界観なので観れば観るほど面白くなるタイプです。『アベンジャーズ エンドゲーム』なんてまさにその究極でした。『ワンダヴィジョン』も過去作の要素がてんこ盛りです。ただ、個人的な意見を言わせてもらうなら、本作は完全にMCUを一作も観たことがない人でも手を出せると思います。そもそも謎だらけの作品だからです。謎を一緒に楽しみつつ、もっと知りたいと思えば過去作を観ればいい。そういうスタンスもOKでしょう。たぶんドラマシリーズはそういうMCU新規勢を取り込む入り口としても機能させるつもりなんだと思います。

「Disney+」は1か月の無料のお試し期間もありますし、初めての利用もしやすい動画配信サービスですから(ちょっと動画再生がときどき不安定になるけど)。

さあ、あなたもMCUのドラマシリーズを視聴開始です。

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『ワンダヴィジョン』を観る前のQ&A

Q:「ワンダ」ってどんなキャラクター?
A:物体を動かしたりと超能力的なパワーが使える女性です。『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』で最初に本格的に登場し、そのときは敵として立ちふさがりました。強いです。
Q:「ヴィジョン」ってどんなキャラクター?
A:トニー・スターク(アイアンマン)によって作られた人工知能「J.A.R.V.I.S.」がマインド・ストーンの力でシンセゾイド(人造人間)として生まれ変わった存在。強いです。
Q:「アベンジャーズ」との関係は?
A:ワンダは敵、ヴィジョンは超越的な存在でしたが、アベンジャーズの一員になります。そして『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』ではキャプテン・アメリカなどと共に強大な敵と戦うことに。その結果は…。
Q:『ワンダヴィジョン』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:MCU作品全部…と言いたいところですが、最低限として2人の初登場作品である『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』は必見でしょうか。できれば『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ エンドゲーム』も観てほしいですが…。でもいきなり『ワンダヴィジョン』から観るというのもナシではないと思います。

オススメ度のチェック

ひとり ◎(シットコムのファンも満足)
友人 ◎(考察の議論が止まらない)
恋人 ◎(話題性は抜群)
キッズ ◎(MCUファンになろう)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ワンダヴィジョン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):公開収録でお送りします

「ウェストビュー」というのどかな町。ここに引っ越してきたのは新婚のワンダヴィジョンの夫婦です。

ごく平凡な夫婦に見えますが、2人には他には言えない秘密があります。

ワンダは魔法が使えるのです。皿を浮かせたり、家事も全部魔法でパパっと解決。ときにはドジをしてしまいますが、それもご愛敬。一方、ヴィジョンは人ですらありません。食事もいらない秀才な人造生命体。普段は人間の姿ですが、ワンダと2人っきりのときはいつもの赤い奇妙な風貌に。こっちもたまに失敗する愛嬌がありますが。

カレンダーの23日にハートマークがあり、「今日は何の日か説明できる?」とワンダに聞かれ、ヴィジョンはとぼけながら仕事に行くも内心では何の日かわかりません。そもそも記憶があやふやです。どうやってこの町に来たんだっけ…。

家にいたワンダのもとにお隣さんのアグネスが訪ねてきます。今日は特別な夜なのでディナーを夫とすると楽しみな気持ちを語るワンダ。「結婚して何年?」と聞かれますが、こっちも長年連れ添っているような気がするけど具体的には思い出せません。

ヴィジョンの職場の上司が妻とディナーに来たので、アグネスを呼んでディナー作りを手伝ってもらうワンダ。結局は魔法で料理しちゃいましたがやっぱり失敗。

「どこから来たの? どうしてここに? 子どもは何でいないの?」と矢継ぎ早に質問を受けて答えに詰まる2人。するとその上司は喉を苦しそうにおさえて倒れこんでしまいました。都合よく。

ある日、近所の主婦の集まりにお呼ばれするワンダ。ドッティは仕切る中、ジェラルディンと仲良くなります。しかし、近くのラジオから「ワンダ? 誰の指示でやっているんだ?」という謎の声が聞こえ、不審に思います。

また、タレント・ショーの一発芸(マジック)を披露した後、夫婦で観客を沸かせて大満足して帰ると、ワンダのお腹が膨らんでいるのに気づきます。あれ、いつのまに妊娠していたのだっけ。「これって現実なの?」

しかし、夜。外で物音がして様子を見に行ってみると、マンホールから怪しげな人が出てくるのを目撃。「ダメ」…ワンダの一言で世界は巻き戻り…。

「ワンダヴィジョン」はこうしてシリーズが始まりました。エンディングはまだ誰も知らない…。

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奥様はスカーレット・ウィッチ

『ワンダヴィジョン』は第1話から見ておわかりのとおり、シットコムを思いっきりパロディにしています。シットコムというのはシチュエーション・コメディのひとつで、とくに主に家のセットで展開され、スタジオで観客の前で演技した映像が流されるものが有名です。だから観客の笑い声がそのまま入ってきます。日本でもシットコム風の喜劇はテレビで今もやってますね。

当然、あのウェストビューの世界はリアルではなく何かしらの摩訶不思議な現象によって創造されたものだとは私たち観客もすぐに察しがつきます。

作り物の世界で本物だと思って登場人物が暮らしているストーリーと言えば『トゥルーマン・ショー』(1998年)を真っ先に思い浮かべますし、モノクロからカラーに変わっていく演出は『カラー・オブ・ハート』(1998年)を思わせます。

個人的にはデヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』をものすごく想起させるものでしたが…。ついにMCUもデヴィッド・リンチの領域に突入し始めたのか…。

ただこの世界観は下手をするとすぐにボロがでるものだとも思うのです。作るうえでも難易度は高いです。フィクションの上にさらにフィクションを構築するのですから。しかし、この『ワンダヴィジョン』はこれまでにないクオリティで見事にこの設定をモノにしていました。

まず1話ごとにシットコムでも年代が変わるんですね。例えば、1話目は『The Dick Van Dyke Show』(1961年)など1950年代風をベースにし、2話目は『奥さまは魔女』(1964年)など1960年代風となり、3話目は『ゆかいなブレディー家』(1969年)などの1970年風へと変貌し、5話目は『ファミリータイズ』(1982年)などの1980年代風、6話目は『マルコム in the Middle』(2000年)などの1990年代風で、そして7話目は『モダン・ファミリー』(2009年)などの2000年代風へ。オープニングまでしっかり作りこんでいるし、ディズニーの作品なのにここまで多様な放送局の作品をパロディにしていくなんてそうそうありません。とにかくシットコムの愛好家ほどこの『ワンダヴィジョン』を隅々まで満喫できます。

この世界はおかしいぞと気づいていく仕掛けも上手いものです。異物(ヘリとか)の侵入はわかりやすいのですが、とくに上手いなと思ったのはジェラルディンという名でこのワンダが創造した「ヘックス」内部に巻き込まれてしまったモニカ・ランボーの存在。“テヨナ・パリス”が演じているのですが、初登場時の序盤から実は違和感があります。なぜなら1950年代・60年代のシットコムに黒人が召使などではなく対等な隣人として描かれることはほとんどないからです。だからあのジェラルディンも異物なんだと察しがいい人はわかります。カラーブラインドキャスティングと思わせておいて…という巧みなトリックですよね。

まあ、ワンダがシットコムの世界を創造した動機が、幼い頃に故郷のソコヴィアでシットコムを楽しんでいたからというのはやや強引すぎると思うのですけど…。あれかな、もしワンダが小さいときに『おジャ魔女どれみ』を観ていたら『魔女見習いをさがして』みたいな感じでノスタルジーに浸ってあげくにアニメ・ワールドとか構築していたのかな…。

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辛く悲しい悲劇を乗り越えて

『ワンダヴィジョン』の物語は最初はパロディ全開で、不気味なくらいに明るいのですが、しだいにミステリーが濃くなり、やがてはワンダのあまりにも悲痛な絶望が吹き出るシリアスそのものになっていきます。

『アベンジャーズ エンドゲーム』のとき、あれはキャプテン・アメリカの引退と、トニー・スタークの死という要素にとくに集中していたので、ヴィジョンの死とそれに苦しむワンダの姿はあっさりとしか描かれず、観客的にはそこが物足りないと思った人もいました。

しかし、さすがMCUを統括する“ケヴィン・ファイギ”。ちゃんと考え抜いていました。

この『ワンダヴィジョン』はさらに追い打ちをかけるようなアフター・エピソードが描かれます。「S.W.O.R.D.」によって分解され再利用するべく素材になっているヴィジョンの姿。あんなの見せられたらそれはもう人間性を失うのも当然ですよ。

死んだ人を蘇らせてしまうあたりは私の大好きな映画『ペット・セメタリー』を思い出させますけどね。

私はこのワンダが悲劇に打ちひしがれて暴走するステレオタイプな女性像に終わらないかと内心では心配して観ていました。言い方が悪いですがヒステリックさが禍々しいパワーとして描かれるのではないか、と。

でもそこもしっかり考慮されていて、本作のワンダはそのステレオタイプを乗り越え、まさしく女性の偏見の象徴である魔女さえも打ち滅ぼし、カオスマジックを使いこなすスカーレット・ウィッチとして覚醒してみせます。あのアガサ・ハークネスを魔術結界でぎゃふんと言わせる、インフレ激しいバトル漫画みたいなリベンジ展開はなかなかにベタながら最高でした。

もうサノスなんてワンダひとりで絶対に倒せますよ…。

母親という役割からの卒業という意味でも最終話のワンダは新しいスタートをきりましたし。

これはメイキング『アッセンブル;ワンダヴィジョンの裏側』を観て知ったのですが、00年代のオープニング曲は「ビキニ・キル」の“キャスリーン・ハンナ”の協力で作っていたんですね。つまり、どんどんフェミニズムな要素が濃くなる演出が込められていたのかもしれません。

「私は次は何になるんだろう」「きっとまた会える」…そんな言葉でのヴィジョンとの別れのシーンは心にぐっと来ました。

それにしても“エリザベス・オルセン”の演技力が凄まじいです。彼女のキャリアの基点になった『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2011年)を彷彿とさせます。そちらはカルト団体から抜け出してきた若い女性がその心の呪縛に囚われ続ける様子を描いたもので、なんとなくこの『ワンダヴィジョン』の束縛された心境と通じるものがあります。

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マルチバース焦らし魔術

そのメインストーリーの他にも『ワンダヴィジョン』は考察を刺激する要素が満載で、いいように翻弄されまくりでした。

一番はやっぱりピエトロ・マキシモフことクイックシルバーの突然の来訪です。 第5話のラストはまさに観客仰天の息をのむオチ。「前と顔が違うね」どころじゃない。

状況を掴めていない人にはさっぱりでしょうけど、つまりこのピエトロはワンダの双子の兄ですでに死亡していたのですが、それが20世紀フォックス版の映画『X-MEN』シリーズでクイックシルバーを演じていた“エヴァン・ピーターズ”のキャスティングで再登場したわけです。

要するに「ついにマルチバースか!?」と騒然となったわけで…。しかも20世紀フォックス版の『X-MEN』から乱入してくるなんて誰も思わないじゃないですか(ディズニーは20世紀フォックスを最近買収しました)。

ところが終盤にアガサが「あれは私の作ったニセトロ」とまさかの正体をバラします。結局、マルチバースではなかった…。これはあれです、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』でマルチバースと聞かされて信じきったピーター・パーカーと同じだ…。観客である私たちがその術中にハマるとは…。

MCUはマルチバースを出し惜しみしてますけど、あれなのかな、2022年の『Doctor Strange in the Multiverse of Madness』までお預けなのかな…。

他にもダーシー・ルイスジミー・ウーの再登場も嬉しいです。ちゃんとマジックできるようになっててよかったね、ジミー。ああいう普通の人が超常現象に挑んでいく展開は『エージェント・オブ・シールド』と重なって私は好きです。

そしてモニカの覚醒。最終話のエンドクレジットでも気になるシーンで終わっていましたが、確実にモニカはヒーローとしての階段を登り、『キャプテン・マーベル2』でまた出会えることでしょう。

もちろんスカーレット・ウィッチの覚醒が何をもたらすのかもワクワク。私の予想ではマルチバースにいよいよ関与し、それこそミュータントとしてのMCU版『X-MEN』の立ち上げにも大きく影響するのではないかな。

良き隣人の役に閉じ込められたアガサもあれで終わりはもったいないですよね。私の願望としてはロキみたいに「どうも胡散臭い奴」として引っかき回してほしいです(ロキと同じ小物悪役の臭いがする…)。

とりあえず最高のエンタメをありがとう、MCU。次のドラマシリーズは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。これからはほぼ毎週MCU三昧。緊急事態宣言なんてどうでもいい、私、充実してる!

『ワンダヴィジョン』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 92% Audience 80%
IMDb
8.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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関連作品紹介

MCU作品の感想記事です。

・『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』

・『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』

・『アベンジャーズ エンドゲーム』

作品ポスター・画像 (C)Disney ワンダビジョン

以上、『ワンダヴィジョン』の感想でした。

WandaVision (2021) [Japanese Review] 『ワンダヴィジョン』考察・評価レビュー