デンジャラス・ライ
Netflix映画『デンジャラス・ライ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Dangerous Lies
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2020年にNetflixで配信
監督:マイケル・スコット

デンジャラス・ライ

あらすじ

互いに支え合う献身的な愛と将来への夢はあるものの、現実では厳しい経済状況に苦しんでいた二人のカップル。しかし、思わぬところから大きなチャンスが舞い込んでくる。それは普通では絶対に手に入らないような、裕福な人の全財産。これさえあれば幸せな人生の幕開けに立つのは容易いはずだった。まさか莫大な遺産に潜む恐ろしい秘密が顔を出すとは思っておらず...。

『デンジャラス・ライ』感想(ネタバレなし)

カミラ・メンデス主演作

国から10万円もらう程度ならどうでもいいのですが(むしろ普段からたっぷり税金払ってるんですからもっとください)、もしいきなり莫大な資産を相続することになったらどうしますか? 思わず薔薇色の裕福生活だ!と無邪気に大喜びするかもしれません。

でも金額に関わらず経験したことがある人ならわかると思いますが、相続というのは想像以上に面倒です。もらう方はただ手のひらを広げてカネがわんさか降ってくるわけじゃないのです。手続きがあれこれあるし、税金も発生するし、税務署にも目を付けられるし、揉め事になることもあるし…。10万が支給されるだけで煩雑な書類申請がいる国ですからね、相続なんて面倒臭さの大渋滞です。専門家に頼らないと根をあげます。あ、専門家に儲けさせるために複雑にしているんじゃ…。

今回の紹介する映画はそんな不意の相続からとんでもないことに巻き込まれていくサスペンス・スリラーです。それが本作『デンジャラス・ライ』。なんかいかにも危なさ全開のタイトルですからね。危ないんだなってわかる(なんだそのアホな感想)。実際は、危ないでは済まされない事態が起きます。

そうは言ってもネタバレ厳禁なミステリー要素の強いサスペンスなので、これ以上はあまり紹介もできないのですが。物語自体はシンプルで、小規模な作品ですので、気軽に鑑賞できるところは嬉しいポイントです。

本作の監督は“マイケル・スコット”というテレビ映画やテレビドラマで活躍している人なので、この『デンジャラス・ライ』もテレビ映画的なサイズ感の作品と思ってもらえればいいです。本作はNetflixで配信されているわけですが、Netflixは『密かな企み』などといい、こういうテレビ映画のクリエイターを引っ張ってコンパクトな作品を作ってもらう戦略を大作路線と併用しており、なかなかに手数が広いなと感心します。ほんと、あらゆるニーズに対して創作を提供するサービスになったんだなぁ…。

ということで小規模作なので、『デンジャラス・ライ』に注目する人は少ないでしょうし、おそらくなんとなくレコメンドされて視聴してみた…くらいの接し方だと大半の人は思います。でも俳優陣で特筆することもできる映画でもあるのです。

例えば、本作を飾る主演は“カミラ・メンデス”です。ブラジル系の血をひく若手女優ですが、彼女といえばドラマシリーズ『リバーデイル』でしょう。基本は割と定番の学園ドラマですが、そこでヴェロニカ・ロッジ役で出演する“カミラ・メンデス”は、作中で小悪魔系お嬢様スタイルの美形キャラであり、それゆえか一躍ブレイクしました。映画では『パーフェクト・デート』(2019年)などに出演していますが、注目度が高いので今後は大きな映画で彼女が大活躍することが来るかもしれません。ハッキリした顔立ちがチャームポイントであり、『デンジャラス・ライ』のポスターでも“カミラ・メンデス”の顔のドアップになっているし、売り方がわかりやすいですね…。

そんな主人公のパートナーを演じるのは“ジェシー・T・アッシャー”。彼の有名作といえばドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』。そこではA・トレインという高速移動能力を持った黒人のスーパーヒーローを演じ、その強烈すぎる所業で第1話から脳裏に刻み込まれた人も多いと思います。あれは酷い奴だった…。今作ではどういう奴なのか、それはお楽しみに。


他にも『エンジェル ウォーズ』でカッコいいスタイリッシュさを魅せていた韓国系アメリカ人女優の“ジェイミー・チャン”を始め、“キャム・ギガンデット”、“サッシャ・アレクサンダー”などが出演。豪華キャストというわけではないですけど、見ごたえのある演技は確保していると思います。ロバート・アルトマン監督作品でもおなじみの“エリオット・グールド”が要所で出演しており、シネフィルが興味を持ちそうなキャスティングをサラリとしているあたりもツボを押さえていますね。

外には出られない制約の中で、家での退屈な時間の相棒は映画です。『デンジャラス・ライ』のような小粒の作品はまさにそういう暇つぶしのためにあるのですから。

本作はNetflixオリジナル作品として2020年4月30日から配信中です。

オススメ度のチェック
ひとり◯(ちょっと時間があるときに)
友人◯(暇つぶし感覚での鑑賞に)
恋人◯(ほどよいスリルをお望みなら)
キッズ△(大人のサスペンスです)

『デンジャラス・ライ』予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





『デンジャラス・ライ』感想(ネタバレあり)

不意の相続は事件のフラグ

ケイティ・フランクリンは小さなダイナーでウェイターをしていました。今日も夜にせっせと働いています。

できたての料理を運び、お客さんのもとへ。そこには勉強用の本を無造作に机に広げたまま、普通に寝ている男がいました。「何の勉強?」と気軽に聞くケイティ。

そして、ケイティとその男アダム・ケトナーは店の外に停めてある車内で熱烈にキス。「店長が探しに来ちゃう」とケイティはもう戻ると言います。出会ったばかりでいきなりこんな関係なのか、お盛んですね…と思ったら、実は二人は結婚しているらしいのでした。

厨房に戻ると、なにやら異変が…。なんと店内で同僚のチャーリーが倒れており、揉め事なのか、叫んでいる男がいて銃を突きつけています。これは強盗…。一触即発の事態に厨房でそれを目撃した二人は凍り付きますが、アダムがフライパンを持って犯人の男に近づき、果敢にも飛び掛かります。

それから時間が経過。報道が流れ、土曜の夜、南シカゴのスマイル・ダイナーで強盗が発生し、勇敢な客のおかげで解決に向かったものの、チャーリー・スターリー氏は死亡し、起訴されたレイモンド・ガスキンは病院に拘留中だと伝えられています。

4か月後。仕事場がとんだ災難に襲われたケイティ。アダムとの二人暮らしは決して裕福なものではありません。それどころか金欠状態が深刻化し、切羽詰まっていました。アダムが大学院を出たら今度はケイティが大学院に行くという計画もあったのですが、アダムはすぐに仕事につける状況ではなく、ケイティも学生ローンなどの問題で苦しいです。すぐにおカネがいる状態なのは明らか。「もう少し時間をくれ」とアダムは言いますが「時間なんてない」とケイティは現状を訴えます。あんなに愛し合っていた二人の関係も経済的な苦しさのせいでギクシャクしてきました。

今はケイティはレナード・ウェルズリーという老人のもとでお手伝いとして働いています。人材派遣会社を通してここにいるわけですが、すっかりお友達として信頼されていました。薬の管理や話し相手などやることにまとまりはありませんが、この年齢も全く違う相手との時間は穏やかです。レナードは相当に裕福らしく、広い家で独り暮らしています。どうやら両親はかなり前に亡くなり、結婚もしていないので、孤独に生きてきたみたいです。

庭にある木の話をしてくれて「昔、イーサンという庭師を雇った」という事実を教えてくれます。しかし、それ以降はケイティくらいしか会う人もいないようでした。

そんなレナードは生活に困窮しているケイティを放っておくわけもありません。おカネを助けると素直に言ってくれ、「友達だろう」と支援に積極的でした。しかし、ケイティはさすがに他人にそんなことは申し訳ないと断っていました。

ある日、レナードの家にミッキー・ヘイデンという男が訪ねてきます。不動産会社らしく、この家に興味があるようでしたが、「売りに出していません」とケイティは拒否。「意見が変わったら連絡ください」となおもそのヘイデンはしつこそうです。

レナードの家でアダムも働くことになりました。レナードは屋根裏で両親のレコードを聴いています。そのレナードからもらった給料封筒に小切手があり、明らかにひとつケタが多い金額です。きっと気を利かしてくれたのかと思いましたが、多すぎるとケイティは返そうとします。一方、アダムは「とりあえず口座に入金したら」「あとで差額を返せばいい」と言い、確かにカネが今すぐに必要なのでそうすることにしました。

別の日、いつもどおりお茶を運び、レナードを探すケイティ。例の屋根裏の部屋にいた彼は椅子に座って身動きひとつしません。首に手を当てると、彼は息を引き取っていました

悲しみにくれるケイティ。アダムは慰めますが、小さな鍵を見つけます。それはその部屋の宝箱のような収納箱を開けるものらしく、もう鍵は開いていました。その中には誰かの写真とたくさんの手紙。記事にはシカゴの女性が事故死したことが書いてあります。ケイティはプライベートなものなので見てはいけないと警察に電話しようとしますが、その宝箱の下に大量の紙幣があったことに二人は驚愕。その額は9万2000ドル以上。

しかも、ジュリア・バイロン・キムという弁護士がやってきて、実はレナードは遺言書を書いており、あの家をケイティに譲ることになっていることを知らされます。

いきなり降ってわいた裕福さ。リッチなライフ。ケイティとアダムは思わず浮かれてしまいますが、そこに忍び寄る影がありました…。

デンジャラス・ライ

正しさは信用されない

『デンジャラス・ライ』はスリラー部分の恐怖感は少なめなのですが、ミステリーサスペンスとしての一定の展開の読めなさは雰囲気が醸し出されており、しっかり面白さの狙いが見えます。

基本的な主軸はひとつ。このレナード絡みの相続には何か裏があるのでは?という疑惑です。大量の紙幣、突然の遺言書、謎の遺体とダイヤ…。怪しさはどんどん増していくばかり。

そんな中で、ケイティは誰よりも愛して信頼していたアダムへの疑念が沸き起こってきます。もしかしたらアダムは自分を裏切っているのではないか。何か大きな悪事に加担しているのではないか。チェスラー刑事はアダムを完全に疑っており、弁護士のジュリアも疑心暗鬼にさせる言葉をかけてくるので、その不安は増長されていき…。

結果、アダムは悪い奴ではなく、黒幕はヘイデンとジュリア。この二人はイーサンとともに犯した行為が引き金となり、過去の強盗の成果であるダイヤを求めていた…というのがオチでした。

オチを知ってしまうとなんだという感覚ですが、このケイティとアダムのカップルはかなりプログレッシブな関係性にある二人なんだろうなと思います。白人と黒人の人種を超えた愛で、名字もバラバラのままに結婚し、互いに平等に支え合う。その生き方は保守的な価値観に則っていません。ゆえに外部からは“なにかオカシイ…”と思われてしまう。当人たちは“正しく”生きようとしているだけなのに。

チェスラー刑事はもしかしたら人種差別的なバイアスでこの一件を分析してしまっているだけなのかもしれませんし、私たち観客もあれだけフラグめいた描写をされれば、このカップルにヒビが入るというドラマなら定番の展開が脳裏によぎます。

でもそうはならない。『デンジャラス・ライ』は“正しさ”が“正しさ”として真っ当に評価される物語なのでした。

また、その“正しさ”は決して社会では有利にはつながらず、なんだったら貧しい生活を余儀なくされるという苦悩も映し出されています(このあたりはアメリカの学生ローンの深刻な問題もバックグラウンドとして知っておくとさらにわかります)。

その当事者である二人も生き方をめぐってどこまで“正しさ”を貫くかで揉めることもあります。レナードの好意に甘えてもいいじゃないかというアダムと、遠慮するケイティの意見の違いとか。それにしても相続の話を知って二人が話し合う場面で、カードの請求もローンも気にしなくていいと語りつつも、まずは落ち着いて慎重にいきましょうと言いきれるケイティの冷静さ…見習いたい。本作はケイティの堅実さが結果的に有利につながることが多く(チェスラー刑事も助けに来たし)、石橋を叩いて渡る精神は無駄ではないんだな、と。

まあ、この手のサスペンスは結構おバカな行動をとるキャラがいたりしますからね。そうじゃないケイティのキャラクター性はちょっと特異に見えてくるというのもある…。

予想外に本作は真面目な作品でした。

そのオチにひと言いいたい

『デンジャラス・ライ』の物語を観て、思い出す最近の映画は『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』ですよね。あれも、裕福な屋敷の男が死に、その相続をめぐって駆け引きが勃発し、その渦中に貧しい女性が翻弄され、“正しさ”が報われる…という流れは一緒です。


ただ、あのアカデミー賞で脚本賞にノミネートされた作品のシナリオと比べちゃうと、この『デンジャラス・ライ』は分が悪すぎるというか、雑さが余計に目立ってしまう感じで、なんとも…。

『デンジャラス・ライ』は方向性としては全然悪くはないのですが、ストーリーテリングにおいておざなりになっている部分が多いです。

例えば、冒頭のダイナーでの強盗殺人の件。何か裏があるように匂わせたわりには何もなしです。アダムの大学で清掃員をしていたのがガスキンだったという関連性も、そりゃあ、たくさんの人が雇用されている大学なら普通のことなので何もおかしくないですし…。

チェスラー刑事の行動も迂闊で、進行中の捜査において自分が誰を疑っているのかを他人に明かし過ぎだろうと思いますし、実際に人材派遣会社のカルバーンが何か勘違いを暴走させてケイティに詰め寄ってしまっているし、これじゃあ容疑者にも逃げられるだろうに…。

ヘイデンとジュリアに関しても、ヘイデンなんかは露骨に感じの悪い奴で、あまりそこに意外性をもたらすサスペンスがないのも面白味がないし、ジュリアにいたっては唐突すぎる存在で…。

レナードの人生の背景も薄っすらとチラつかせるわりには詳細はわからずじまいで、なんだかもったいないです。

こういうふうに全体的にフラグやミスリードがひとつひとつ雑なので、カチカチっと要素が合わさって真実が明らかになるカタルシスみたいなものは本作にはないのが残念でした。

あと、最後のダイヤの隠し場所。あれはないだろう…。4か月も経っていたら絶対に雨風でどっかに行っちゃうよ…。

個人的に一番ガッカリな本作の穴は、あんなに進歩的な生き方を模索するカップルを描いておいて、最後の話のオチのつけ方が「女性の妊娠」という、ド直球にステレオタイプなジェンダー観で終わってしまうところ。最後の最後でボロが出てしまっている感じがする。だったらケイティがあの屋敷で単身高齢者のための友達づくりの語り合いの場を提供する事業を始めている…とかにすれば、女性の生き方としても、裕福な人間の社会への貢献の仕方としても、ひとつのポジティブな理想を提示できたのに…。レナードの寂しい死へのアンサーにもなるしね…。

とまあ、いろいろ文句も書きましたけど、惜しい作品ではあったのかなというのが私の総合の感想であって、ジャンルとしての面白さは一定ぶんはあるので悪くはないのですけどね。

私の家も実は秘密の部屋があってダイヤが小袋に入っていたりしないかなぁ…。

『デンジャラス・ライ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 57% Audience 56%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)Netflix  デンジャラスライ

以上、『デンジャラス・ライ』の感想でした。