私がそれを許可するとでも?…映画『HELP 復讐島』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本公開日:2026年1月30日
監督:サム・ライミ
セクハラ描写 交通事故描写(飛行機)
へるぷ ふくしゅうじま

『HELP 復讐島』物語 簡単紹介
『HELP 復讐島』感想(ネタバレなし)
ようそこ、サム・ライミ島へ
私が無人島でサバイバルを強いられることは一生なさそうなので良かったのですが、豪雪でライフラインが寸断されて孤立した環境でサバイバルしなきゃいけなくなることは考えないといけないなぁ…と思う今日この頃。
水道も電気もなくなったら、どうやって生きていくのか。凍死しないために暖を取るには? 雪があってもどうやって飲み水にする? あとは食べ物を蓄えておくしかないのか…。
ちょっと話が脱線しましたが、今回紹介する映画は、雪が一切ない島でのサバイバル。なんだ、雪がないなんて楽勝じゃん…。
それが本作『HELP 復讐島』。
でも問題は場所ではありません。誰とサバイバルするのかという部分です。
本作は、真面目だが業績を男に奪われてばかりで評価されない女性会社員が、自分を小馬鹿にする男性CEOと、2人っきりで無人島でサバイバルすることになる…という物語。とくに重要なのが、この主人公の女性会社員は、サバイバルのスキルに長けているという設定で、そのため上司/部下、そして男女の上下関係が逆転するところ。
「複数が無人島生活を強いられ、上下関係が逆転する」という設定自体はこのジャンルでは定番中の定番で、最近でも国際的に高評価を得た『逆転のトライアングル』がありました。
あちらと作品と比べるとこの『HELP 復讐島』は売りが明白です。男女2人に絞った人間関係のみで、大袈裟なくらいに露悪的なエンターテインメント性たっぷりのホラーコメディになっています。原題の「Send Help」も皮肉が効いているし。
それも監督の名を聞けば大納得。その人とはハリウッドのホラー界の大ベテランの“サム・ライミ”です。前回の監督作はMCUの『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)でしたが、久々のオリジナル作品の監督に戻ってきました。
フランチャイズではないオリジナル作の監督をするのは2009年の『スペル』以来なんですね。ほんと、“サム・ライミ”監督作として懐かしさすらある…。独り暮らし女性が酷い目に遭いながらも奮闘する感じは『スペル』に通じますしね。
『HELP 復讐島』の脚本を手がけるのは、『フレディVSジェイソン』や『ベイウォッチ』の“マーク・スウィフト”と“ダミアン・シャノン”のコンビ。
そして『HELP 復讐島』の主演となるサバイバル・ヒロインを熱演するのは、“レイチェル・マクアダムス”。今回は実に“レイチェル・マクアダムス”らしいチャーミングかつパワフルな暴れっぷりを披露しているので、“レイチェル・マクアダムス”を堪能するための映画と言っても過言ではないです。
一緒に島でサバイバルするハメになる男を演じるのは、『メイズ・ランナー』シリーズでキャリアが成功した“ディラン・オブライエン”。『メイズ・ランナー』シリーズで撮影中に大怪我をして一時休業していたこともありましたが、今は普通に復帰。今作では足を怪我する役で、負傷の演技はもう実体験済みか…。
他には、ドラマ『ラ・ブレア』の“エディル・イスマイル”(エディル・イスメイル)が、“ディラン・オブライエン”演じる男の婚約者の役で登場しています。
『HELP 復讐島』を観終わったら、サバイバル・スキルを磨くのです。憎い嫌な奴よりも長生きしないと「ざまあみろ」と言えないですからね。
『HELP 復讐島』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 職場でのセクシュアル・ハラスメントの描写が一部にあります。 |
| キッズ | 殺人など残酷な描写があります。 |
『HELP 復讐島』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
リンダ・リドルは自分の勤める会社にて企画戦略部の一員として真面目に働いており、優秀でした。しかし、その成果はたいていは上司のものになり、リンダの実績はいともあっけなく軽く扱われるだけ。これでは昇進など夢のまた夢です。
家でインコに文句を言いながら、アルコールで感傷的になりつつ、気分を紛らわすくらいしかできません。
もうひとつお気に入りのストレス発散があります。それはバラエティー番組の『サバイバー』を観ること。これは参加者が極限環境下でサバイバル・スキルを問われて生存するもので、リンダはこの番組の大ファンでした。いつか自分も出演したと願ってもいました。
そんなある日、ブラッドリー・プレストンという若い男性がCEOに就任し、これは企業の風土が変わって自分の人生も変わるかもしれないと希望を持ちます。ブラッドリーの前で調子よく自己アピールし、上手くいったつもりですが、実際は印象は最悪でした。
ブラッドリーはすでに友人のドノヴァンを昇進させると決めており、それを知ったリンダは猛然とCEO室に不満を告げに行きますが、冷たくあしらわれるのみ。まるで聞き分けの悪い女の子を相手にするように…。わかったことは、ブラッドリーは自分をまともに扱う気がないこと、女性の価値は美人であること程度にしか思っていないこと。ブラッドリーには婚約者のズリがいて、彼女の指には特大のダイヤの指輪がはめられていました。
そんなブラッドリーはリンダに、ドノヴァンやフランクリンなどの幹部と共にプライベートジェットでバンコクへ出張し、会社の差し迫った合併をまとめるよう依頼してきます。本音は都合よくこき使うつもりでした。
機内でリンダは張り切っていました。まだ見返せるとノートパソコンで作業しつつ…。
一方のブラッドリーを中心に男たちはリンダを笑い飛ばして盛り上がっています。リンダが『サバイバー』のために撮ったオーディション・テープを眺めながら…。
そのとき、急に機体が激しく揺れ、いきなりドアの一部が吹き飛びます。座っていなかった男性幹部たちが次々と外にし吸い込まれるように吹き飛ばされ、真っ逆さまに飛行機は嵐の海面に不時着。機内はあっという間に浸水し、リンダはなんとかシートベルトを外して海中を泳ぎ、浮上します。
目を覚ますと岸にいました。流れ着いたようです。建物は何もない、自然だけの孤島でした。
ブラッドリーも近くで発見します。致命的な怪我もなく、生きているようです。右足だけ負傷しており、これでは歩くのはしばらくツラいでしょう。
リンダは慣れた手つきでそのへんの枝と葉を集め、手頃な日陰となる屋根を作ります。そして雨水を溜めれるようにもします。すぐに雨が降ってきて、水は確保できました。
まだ弱り切っているブラッドリーも目覚め、水を与えてあげます。
こうして2人はこの島でサバイバルをしないといけなくなり…。

ここから『HELP 復讐島』のネタバレありの感想本文です。
こっちの世界は楽しい!
『HELP 復讐島』は、序盤から「これはこういうコメディです。コメディです!」とわざとらしく大声を張り上げるように物語を開幕させます。
何よりも主人公のリンダです。“レイチェル・マクアダムス”演じるリンダが、リアルな人物像というよりは、典型的なハリウッドのオフィス・コメディにでてくるヒロインそのものなコテコテのキャラクターになっているんですね。
いや、確かに適正な評価を得られていないところは同情できるけど、その他の言動も含めてあからさまにあの職場の中でリンダだけ浮いている存在で…。こうなってくると、企業における女性がパワハラなどのジェンダー的な抑圧を受ける構造を風刺しているというよりは、完全にリンダ個人の特性に印象が塗り替わりますよ。
とにかくこの『HELP 復讐島』はドラマ『インダストリー』みたいなリアル路線で企業風刺をしたいわけではなく、あえての幼稚なギャグなのです。そういう表明が序盤でなされます。
そして状況がひっくり返る大事件となる飛行機墜落。ここも“サム・ライミ”の露悪的な味付けが盛大になされた、もはやギャグのような墜落シーンで、可哀想ではありますけど、観ているこっちとしては大笑いできます。
こうしてついに島でのサバイバルが始まりますが、ここでもリンダが最高に面白いです。水を得た魚のように生き生きとしており、超ハイテンションで島を飛び回ります。
普通、無人島に漂着したら絶望的な雰囲気が漂うものですが、そういう空気は皆無。どう考えてもテーマパークに観光に来た女性にみえる…。
『サバイバー』を観ていたからサバイバルのノウハウが身についているという設定も荒唐無稽すぎるのですけども、“レイチェル・マクアダムス”があまりに楽しそうなのでどうでもよくなってきます。
極めつけはイノシシ狩りで、今作のイノシシは魔獣なのかな?ってくらいには凶悪なモンスターの見た目をしているのですが、そこでリンダは盛大に血塗れになりながらイノシシを残酷に殺害します。“サム・ライミ”、ここで血を大量に使うのかよ!という大盤振る舞い。
あれじゃあ、日本のアニメだったら異世界転生していることを示唆するフラグだよ…。というか今作、ほぼ異世界転生モノのコメディと土台は同じだと思います。平凡で報われない人生を送っていた主人公が、悲劇を引き金に別の世界に移動し、そこから前の世界の知識を活かして優位に立っていく…。“サム・ライミ”監督が異世界転生モノを作ったらこうなりますよという回答ですね。
オチはもう少し意地悪にしてほしかった
『HELP 復讐島』のメインディッシュは、リンダとブラッドリーの関係性。この2人については、『ミザリー』を彷彿とさせる支配関係で、それを“サム・ライミ”流に数倍に誇張しまくったものです。
ここもリンダがあまりに常軌を逸したハイテンションなので、むしろブラッドリーのほうが常識人にみえてくるという…。ブラッドリー側にしたらホラーです。島という環境以上に、リンダという存在に恐怖することになるのですから。向こうは『ホワイト・ロータス』かよ!って態度でバカンス気分で優雅にサバイバルを満喫していますし…。
そのブラッドリーがお見舞いされる、これでもか!という痛めつけっぷりはやはり大笑いでき、逆にここまでされて死なないブラッドリーの生命力は凄いと思います。嘔吐物を顔面に吐かれながらの心臓マッサージとか、いちいち倍返しにされているのはズルいですよ。
まあ、正直に言えば、このリンダとブラッドリーの関係性はギャグとしてはじゅうぶんに面白いですけども、ジェンダーの緊張感を扱う巧みさには欠けていて、やや単純化しすぎるコメディではありました。『Fair Play フェアプレー』とか、もっとジェンダー・ポリティクスを複雑さそのままに上手く展開する映画も観ていると、『HELP 復讐島』はストーリーテリングのスキル不足を感じさせます。
その不足を補うようにジャンル的な大仰な展開で後半も突っ切るのがこの『HELP 復讐島』の唯一のアプローチなのですが…。
ブラッドリーの婚約者であるズリが島に登場してからは、一気に映画のトーンがホラー味を増していきます。
ここからはオチが容易に想像つくとおりに進むので、個人的にはもう少し捻りがあると良かったです。たぶんリンダは会社の経営は絶対に向いていないですし(そもそも現CEOが死亡したからと言って、部下がCEOになれるような仕組みではないのがああいう大企業の習わしなのですけど)、リンダの幸せはきっと企業勤めにはないと思うのですよね。
『HELP 復讐島』は安易なガールボス的なオチに手を出してしまったので、フェミニズム的にはそこは大きなマイナスかな、と。
それこそあの島で社員をみんなサバイバルさせる研修とかさせていたら、それはそれでだいぶ狂気のガールボスとして意地悪なエンディングになっていたかもしれません。「いいか、全員、1頭はイノシシを殺せ。さもないとクビだ!」みたいな…。私はそっちをラストに観たかったです。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『HELP 復讐島』の感想でした。
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Send Help (2026) [Japanese Review] 『HELP 復讐島』考察・評価レビュー
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