ただこの世界に生きてみせるべし…「Disney+」ドラマシリーズ『ワンダーマン』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
シーズン1:2026年にDisney+で配信
原案:デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ゲスト
わんだーまん

『ワンダーマン』物語 簡単紹介
『ワンダーマン』感想(ネタバレなし)
ワンダーマン役はどうですか?
来る日も来る日もオーディションに挑んでいる俳優などの職業の人は、本当にスゴイなと思います。私は人前に立つだけでも嫌なので、それを毎回、しかも他人から評されないといけないなんて…。私なら1日も持たないでしょう…。
さぞかし強靭なメンタルの持ち主しかそういう職業はできないのかなと考えてしまいますが、別にそういうわけでもなく、普通に心が削り取られる凡人です。多くの当事者は疲弊し、苦労し、思い詰めています。
今回紹介するドラマシリーズは、そんなキャリアの安定しない俳優の心に寄り添う献身的なスーパーパワーを持ち合わせた作品です。
それが本作『ワンダーマン』。
本作は巨大フランチャイズ・シリーズの「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の一作です。ドラマとしては2025年は『デアデビル ボーン・アゲイン』と『アイアンハート』が配信されましたが、2026年はこの『ワンダーマン』から始まります。
ただ、これまで60作品以上を積み上げてきたMCUですが、この『ワンダーマン』はかなり特異な一作です。過去作品との繋がりが全くないわけではなく(そういう作品なら『エターナルズ』や『ムーンナイト』、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』などがありました)、むしろMCUの社会の日常に最も身近なくらいです。スーパーパワーを持った人間も描かれます。
では何が特異なのかと言えば、ハリウッド業界を描くお仕事モノであり、「悪のヴィランから世界を救う」ではない、「自分のキャリアを得る」ために奮闘する主人公が描かれる点です。主人公はまだ成功を獲得していない俳優の男であり、そんな男がハリウッドであれこれと苦労する物語となっています。
そういう作風なのでこれはシネフィル批評家好みな感じだなと思いましたが、案の定、批評家評価が高い様子。明らかにMCUに親しんでいない映画通の人を狙い撃ちにしている感じはありますね。
今のMCUは2026年12月の集大成クロスオーバー大作映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に向けて仰々しくカウントダウンしている最中ですが、そんな中でこんな場違い的なトーンの『ワンダーマン』もぶちこんでくるのは、羽休めのつもりなのか、こんな作品も作れるぜと見せつけたいのか…。
まあ、ともあれMCUお仕事モノとしては『シー・ハルク:ザ・アトーニー』に続く興味深い一作となった『ワンダーマン』です。
『ワンダーマン』の主人公を演じるのは、イスラム教ルーツの名前を堂々と使いこなしてキャリアを獲得してきた“ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世”。マーベルのライバル企業であるDCでは『アクアマン』シリーズとドラマ『ウォッチメン』にそれぞれ別役で出演してきましたが、マーベルにも参戦となりました。
『ワンダーマン』は「Disney+(ディズニープラス)」で全8話(1話あたり約30分)で配信中で、観やすいボリュームです。
『ワンダーマン』を観る前のQ&A
A:とくにありません。ただし、『アイアンマン3』を観ておくと、一部のキャラクターの背景がわかります。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | やや大人向けの物語ではあります。 |
『ワンダーマン』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
特撮ヒーロー映画『ワンダーマン』を劇場で無我夢中で鑑賞する少年のサイモン・ウィリアムズ。その目にはそのヒーローの姿が輝いて映っていました。バーナビーなどの他のキャラもいますが、やっぱり釘付けになるのは主人公のワンダーマンです。隣にはそんな純真な息子を満足そうに見つめる父。
現在、サイモンは俳優をしていました。ハリウッドのスタジオの撮影セットを歩き、今日の『アメリカン・ホラー・ストーリー』の撮影場に向かいます。役どころは小さいものですが、サイモンは気さくに現場に馴染み、自分の役に徹します。そしてその場で自分で思いついたアイディアをいろいろと監督に進言してみせます。あまりに変更しようという事柄が多いので、周囲は「これではいつまでも撮り終えることができない」と不満もこぼれます。そしてついには「あなたの役を削除することにした」と言われてしまい、お疲れ様と労われます。
苛立ちながら帰宅すると、恋人のヴィヴィアンが荷物をまとめて出ていこうとする瞬間でした。心を開かないサイモンにうんざりしたようです。
こうしてサイモンは仕事もプライベートも追い詰められていました。
そんな現実から目を逸らすように、ミニシアターで『真夜中のカーボーイ』を見に行くと、席に座っていた俳優のトレヴァー・スラッタリーに気づきます。以前にテロ組織「テン・リングス」のボスであるマンダリンのふりをして、その動画で大騒ぎになったことがありました。しばらくみませんでしたが、ハリウッドに戻ってきていたのでしょうか。
往年の映画が好きなサイモンはトレヴァーのフィルモグラフィーも熟知しており、ファンでした。2人は鑑賞後も映画トークで意気投合。その別れ際に、トレヴァーから、オスカー受賞歴のある有名監督のフォン・コヴァクが手がけるリメイク版『ワンダーマン』のオーディションがあると知ります。
自分が俳優を目指すきっかけになった思い出深い作品です。これは絶対に主役の座を獲得したい…。
すぐさまエージェンシーに向かい、担当のジャネルに自分がやりたいと頼みます。でもレオナルド・ディカプリオ級ではないとダメだろうと言われ、あっさり断られます。
それでも諦めきれず、メールを盗みみて、今日のオーディションの場に飛び入りで足を運びます。受付で「ドアマン条項」の確認があり、「スーパーパワーは持ってないですか?」と聞かれます。
オーディションにはトレヴァーもいて、サイモンを見るなり「それじゃあダメだ。考えすぎるのをやめろ」とアドバイス。背中を押され、いざ演技をみせる番です。いつものメモも持っていない中、ぶっつけ本番で…。
終わった後、トレヴァーとバーで飲みます。サイモンは「役者は物語の背景やキャラクターの心理を考えるものじゃないのか」となおも納得いっていないようですが、トレヴァーは「生きるんだよ」と長年の役者人生で培った自分の感性を語ってみせます。
しかし、サイモンと別れたトレヴァーは密かに誰かの電話を受けます。「奴と接触したか。彼にはスーパーパワーがあって危険だ」との電話の声。
実はトレヴァーはアメリカに帰国した際に逮捕されており、スーパーパワーを持つ人間に対応する政府機関「ダメージ・コントロール局」のクレイアリー捜査官と司法取引をして、刑務所収監を逃れる代わりに、サイモンの調査を命じられていたのでした。
何も知らないサイモンはトレヴァーと親交を深めますが…。

ここから『ワンダーマン』のネタバレありの感想本文です。
ドアマン条項のリアル
スーパーヒーローと映画業界を織り交ぜる最近の先行作品と言えば、『ザ・ボーイズ』があり、あちらはエンターテインメント・メディア産業の資本主義を痛烈に風刺するエグさで勝負する挑戦的なドラマでした。やりたい放題なカリカチュアという点では、こちらのドラマの右に出るものはいないでしょう。
『ワンダーマン』はそういう露悪的な風刺とは距離を置くだけでなく、かなり現実的な世界観設定で、独自のアプローチをとっています。
その肝となるのが作中で登場する「ドアマン条項」であり、そのきっかけとなったデマール・デイヴィスの物語が第4話でじっくり描かれます。
要するに「スーパーパワーを持った人間を俳優に雇うと、甚大な補償上のリスクがあり、それはスタジオが請け負い切れないので、スーパーパワー持ちの人間は雇用しません」という契約が業界で浸透した…という話です。
ハリウッドは全てが契約しだいであり、契約にはさまざまな条項を追加できます。ビジネス的に安全策をとりたがるハリウッドのことを考えれば、確かにこんなドアマン条項も実在そうです。
これによってMCUの世界では「スーパーパワーを持った人間」は表向きはエンタメ業界から排除されている…そんな世界になっています。もちろんハリウッドの一部界隈の慣習なので、全国的に隅々までそうなっているわけではないでしょうけど。
結果的に物語として何をもたらすのかというと、「赤狩り」時代のハリウッドではないですけども、どこか自分のパーソナリティを隠しながら、それでもキャリアを目指さなくてはいけない当事者が存在することになっているんですね。
これが本作の主人公であるサイモン・ウィリアムズは、ハイチ系の家族を持ち、自分もまたアメリカン・ドリームを期待されるも、それを果たせていないという劣等感を抱えた大人です。唯一の本心を見抜いてくれる父も失い、サイモンは友人もおらず、孤立していました(本人が自覚していないだけで、母も兄エリックも心配はしてくれているのですけどね)。
そんな彼の内面的な不安定さがあのスーパーパワーというかたちで表現されている物語でもありました。
少しユニークなのは、この手のスーパーパワーものに真っ先にありがちな能力の起源を描くパートが一切ないことです(ドアマンの起源だけ描かれている)。予算的に無理だったからなのかもしれませんが、結構思い切った取捨選択の脚色だと思います。
能力を使いこなしていく展開もじっくりは描かれず、サイモンがキャリアの名声と同時に己の在り方を定めた到達点にて(具体的には最終話の刑務所潜入のパート)、そのスーパーパワーも自然と使いこなせている描写になっています。あくまで役者の人生に重点を置き続けているのもこの『ワンダーマン』のブレない堅実な作風だったのではないでしょうか。
トレヴァーの大躍進
『ワンダーマン』の、考察で役に入り込もうとして迷える主人公であるサイモンを導くメンターとなるのが、トレヴァー・スラッタリーであり、本作は珍妙なバディ映画としてもじゅうぶん面白かったです。
そもそもトレヴァーは『アイアンマン3』で登場し、『シャン・チー テン・リングスの伝説』で再登場しました。
その際にトレヴァーを主役にしたスピンオフの企画があったそうで、それがワンダーマンを主役した別の企画と合体し、今の本作『ワンダーマン』になったのだとか。そのため、『シャン・チー』の監督である“デスティン・ダニエル・クレットン”も原案&エピソード監督に加わっています。実はかなり前から企画自体がメディアにリークで報じられていましたが、なかなか正式発表されなかったのは、そういう紆余曲折があったからなのでしょうね。
サイモンとトレヴァーを組み合わせると何が面白いかと言うなら、まずトレヴァーのキャラクター背景です。
トレヴァーを演じているのは、“ベン・キングズレー”で、彼は1982年の『ガンジー』でマハトマ・ガンディーを演じて高い評価を獲得し、そのキャリアを築きました。“ベン・キングズレー”も父がグジャラート人というインド・アーリアの民族のひとつのルーツがあります。
で、その“ベン・キングズレー”演じるトレヴァーが、コテコテのステレオタイプなイスラム過激派みたいな悪者を「演技」していた…というのが『アイアンマン3』のお話。つまり、この時点でハリウッド業界の人種キャスティングを風刺していました。
そんなトレヴァーが『ワンダーマン』では“ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世”というイスラム教ルーツの俳優が演じるサイモンに演技の指南をする…これだけものすごくメタな構図になっているんですね。
当初は一発ギャグだったトレヴァーが長年のMCUの歴史の中でここまで奥深く人間味のあるキャラクターに成長するとは夢にも思わないじゃないですか。
ジョー・パントリアーノの自虐とか、ジョシュ・ギャッドの消失とか、そんな脇のネタが霞むくらいに、今回のトレヴァーは私の中ではMCU屈指の応援したくなるメイン・キャラクターに昇格しました。ロキに匹敵する恵まれたキャラになったのでは…?
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
関連作品紹介
以上、『ワンダーマン』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Marvel
Wonder Man (2026) [Japanese Review] 『ワンダーマン』考察・評価レビュー
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