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アニメ『瑠璃の宝石』感想(ネタバレ)…ガールズアニメと学問アニメの共ずれ傷

瑠璃の宝石

もっと掘り起こすために…アニメシリーズ『瑠璃の宝石』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Ruri Rocks
製作国:日本(2025年)
シーズン1:2025年に各サービスで放送・配信
監督:藤井慎吾
瑠璃の宝石

るりのほうせき
『瑠璃の宝石』のポスター

『瑠璃の宝石』物語 簡単紹介

高校生の谷川瑠璃は偶然に店で見つけた水晶のネックレスに惹かれるが、自分の手持ちのおカネでは買えるような代物ではなかった。しかし、水晶は近所の山でも採れるらしいと聞き、半信半疑で探しに行く。そこで鉱物の研究をしている荒砥凪という大学院生と出会い、自分が全く知らなかった鉱物学の世界に触れていく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『瑠璃の宝石』の感想です。

『瑠璃の宝石』感想(ネタバレなし)

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18世紀から21世紀へ、鉱物学を愛する女性に

「Blue Stockings(ブルー・ストッキングス)」という女性を中心とするグループが18世紀半ばのイギリスにありました。

当時の女性は学会に男性と対等に参加はできません。そこで学術的な知的探求心を満たすべくこのグループは上流階級の女性たちに大いに活用されました。この活動は後の第1波フェミニズム運動の足場となったのは言うまでもありません。

そのメンバーのひとりが“マーガレット・ベンティンク”という女性で、この人は当時にして非常に莫大な財産を持っており、その資産を活かして、大量の自然史コレクションを有し、後世からみると女性研究者の先駆けでした。男たちの科学界に参加できなかった女性たちも、こうして富のある一部の者なら実質的に関与できたんですね。

この“マーガレット・ベンティンク”のコレクションの範囲は広く、その中には鉱物もあり、彼女は鉱物学に貢献した鉱物収集家としても知られていますCrystals

1970年代には他にも女性鉱物収集家がいましたが、これら時代を切り開いた人たちの功績があったからこそ、今回紹介するアニメも生まれたと言えるでしょう。

それが本作『瑠璃の宝石』

本作は、2019年から『ハルタ』にて連載している“渋谷圭一郎”による漫画が原作で、2025年にアニメ化されました。

物語は、日本で暮らす平凡な女子高校生がふとしたことから鉱物に興味を持ち始め、鉱物採集をする中でしだいに鉱物学の奥深い世界に浸って夢中になっていく…というもの。

基本的に若い女性たちが織りなすのでいわゆるガールズアニメの形態なのですが、特徴としては、高校生が主役ではよくある「部活」が舞台にはならないことです。学校もほぼ描かれません。

では「趣味」として私生活での活動が描かれるのかと言えば、確かにそういう側面もあるのですが、この『瑠璃の宝石』は大学の鉱物学の研究室が主な舞台&ナビゲーターとして機能し、結構本格的に科学に取り組む「学問」作品となっています。

原作者自身が鉱物学を専門としているそうで、どおりで学術的に細部まで質が高い構成になっているわけです。

たいていの一般人は、ダイヤモンドやサファイアなど宝石の類の名前は知っているとしても、それは高価な代物としての認知。ましてや「鉱物」となると何やら理解はできていないはず。さらには「鉱物学」となるとさっぱりです。

本作はそんな素人にはハードルの高そうな鉱物学の入門として、易しく世界に誘ってくれます。

当初のアニメ開始前の時点はそこまで話題ではなかったですが、アニメが徐々に知れ渡り、人気も上がったので、これで鉱物学というマイナー分野が脚光を浴びて盛り上がるといいですね。

『瑠璃の宝石』のアニメーション制作を手がけるのは、『お兄ちゃんはおしまい!』「スタジオバインド」

本作を観れば、普段は何気なく背景にしか思っていなかった石ころや岩肌が、全く違うものに感じてくるかもしれません。

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『瑠璃の宝石』を観る前のQ&A

✔『瑠璃の宝石』の見どころ
★鉱物学の入門として易しさと学術的な質を両立している。
✔『瑠璃の宝石』の欠点
☆—
日本語声優
根本京里(谷川瑠璃)/ 瀬戸麻沙美(荒砥凪)/ 宮本侑芽(伊万里曜子)/ 林咲紀(瀬戸硝子)/ 山田美鈴(笠丸葵)ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 4.0
子どもでも観れます。科学の説明も親切です。
セクシュアライゼーション:わずかにあり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『瑠璃の宝石』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

女子高校生の谷川瑠璃は、立ち寄った雑貨屋で水晶のついたネックレスを見つけ、その輝きに見惚れ、いつもの調子のいい声で絶賛していました。同行していた幼馴染の笠丸葵は「そんな石ころ、買うカネもないでしょ」と言います。

実際にそのとおりで谷川瑠璃が親にねだろうとも「そんなもの買う必要はない」と言い放たれます。母は「水晶なんてお爺ちゃんが昔に山菜採りのついでに拾ってきていた」と口にしますが、谷川瑠璃は「水晶は外国で採ってくるものであって、そのへんでは落ちていない」と知ったかぶりします。

それでも半信半疑でしたが、祖父がよく行っていた近所の山に向かいます。普通の木々のある山です。とても水晶のある場所には思えません。実際、やっぱりいくら探しても普通の石しかありません。

そのとき、ある女性に「どうした?」と話しかけられます。そのハンマーを背負った人はなにやら石に詳しそうです。水晶について聞いてみると、場所を知っているらしく、連れて行ってもらいます。

彼女は荒砥凪という名で大学院生だそうです。道中でも谷川瑠璃にはこれまでと同じ道に見えましたが、荒砥凪は周囲に玄武岩石灰岩があると言い、違いを理解しています。

そして歩き続け、「やっぱり水晶はお店で買うものだ」と愚痴もこぼれて諦めかけた瞬間、荒砥凪があるものを手にして見せてくれます。それはキラキラ透明に光る…。

紛れもなく水晶です。よく見ればあちこちにあります。ふと気がつくと傍にある岩壁が光っていました。ペグマタイト鉱床と呼ばれるその光景にうっとりします。水晶はこういう場所にあるようです。お目当ての水晶を見つけられ、こんな場所が日本にあることに感激。

荒砥凪いわく日本列島はいろいろな宝石が採れる地だとのこと。谷川瑠璃にしてみれば、そんなこと考えたこともありませんでした。もしかしてまだまだ自分の知らない石が近くにあるのかも…。

好奇心を刺激された谷川瑠璃は物怖じせずに荒砥凪に「もっと教えてください!」とお願い。今度の時間が合うときに、ガーネット採りについていくことにします。

こうして未知の鉱物学の世界に足を踏み入れ…。

この『瑠璃の宝石』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/01/26に更新されています。

ここから『瑠璃の宝石』のネタバレありの感想本文です。

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科学の楽しさはみんなに伝わってこそ

『瑠璃の宝石』は「学問」を扱う作品としてとても質が高いと同時に、初心者にもわかりやすい易しさを両立している一作でした。

そもそも前半の感想でも触れましたが、たいていの一般人には「鉱物」がよくわかりません。「鉱物」として認識することが日常にないです。ただの「石」か、「宝石」か…その二択くらいでしょう。

鉱物採集と言えば、せいぜいゲームの『マインクラフト(Minecraft)』で知っている程度であり、あちらではとりあえず「掘ってアイテムを集める」という要素でしかありません。

『瑠璃の宝石』はまずは鉱物をきっかけにアドベンチャーのように新しい世界へ誘います。でもそれはファンタジーの異世界転生をしたわけでもなく、現実の自分の身近な場。実はそんな近場にも見知らぬ世界があるのでした。

川で甌穴の中に溜まる砂金を見つけたり、廃坑の古地図から蛍石の鉱脈に出会ったり、海で瑪瑙拾いをしたり、人工的な環境で稀に生成されるジンカイト(紅亜鉛鉱)を目にしたり、ダムの緊急放流でダム底のオパール産地を特定したり…。

それはゲームよりもエキサイティングな経験でしょう。実際に自分で探索して、発見する喜び。攻略サイトがあるわけでもない、手探りの試行錯誤の末の楽しさ。

アニメーションとなったことで、大冒険している五感をより刺激されるようになっているのも良いところ。これはアニメ化の功績です。

そのうえ、それだけでは終わりません。その鉱石から、その地の歴史や成り立ちなど過去もみえてきます。海で拾ったガラス(シーグラス)、昭和廃坑の線路敷石に使われていた菱マンガン鉱石、温泉地のパイプに詰まった石灰、はたまたどこにでもある塵から見つかる微小な隕石…。

ミクロからマクロまで、鉱物の歩みを追うことで、スケールが広がっていきます。鉱物はじっとしている物体ではなく、実は膨大な時間とともに動き、変化しているからこそ。これぞ地学の醍醐味です。

こういうのは「ロマン」という便利なひと言で「わかる人にしかわからない」という論調で片づけられやすいですが、『瑠璃の宝石』はそれこそ鉱物を丁重に扱うように、科学の魅力を丁寧に掘り起こすことで、誰にも共感しやすいかたちに変化させてくれていました。ロマンとやらを選ばれし者に独占させないというのは、科学が変にエリート主義に陥らないためにも大切なことだと思います。

また、作中では環境問題から人類史までまだまだ入門の粋をでないとは言え、鉱物からずいぶんと話題は波及します。こうやって視野が広がるというのは純粋に嬉しいものだと思うのです。最近はインターネットの仕組みゆえに「自分の知りたい情報にだけ触れる」という文化が固定化しつつありますが、自分の知らない世界は怖いものではなく、こんなにもワクワクさせてくれるものだと体感するのはやっぱり良いですね。

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女性が入門の看板になるということ

上記のクオリティが維持されているだけでも『瑠璃の宝石』はじゅうぶん見ごたえがありますが、「知る楽しさ」という学問の醍醐味の最も取っつきやすい一面だけでなく、「知るために試行錯誤すること」の奥深さも伝えてくれます。そこでまで手際がいいのはさらに高得点でした。

本作の主人公の谷川瑠璃は本当に素人から始まりますが、いつの間にやら「科学的アプローチ」を身につけるようになるまでに成長しています。

顕微鏡の地味な作業でサファイアの産地を絞り、自分のノートに記録をとり、新たな疑問が浮かべば現場検証を重ね、仮説や調査手法を修正したりする。

自分では無自覚のうちに研究的思考に到達しているのに、なおも研究者は自分とかけ離れた存在だと思っているあたりがまたリアルです。研究者は世間ではどうも「超天才のスーパー人間」だと思われがちですけど、そうじゃなくて、こういう積み重ねの上にあるものなんですよね。

こういう科学的アプローチの実践はなかなか義務教育の学校のテストでは評価されないものです。だからこそ高校生の谷川瑠璃が大学の研究室でそれを学べているという姿が際立ちます。高校と大学の違いを端的に映しだせていますから。

その「知るための試行錯誤」は「ミスをしてしまった!」みたいな恐怖や、「本当に上手くいくのだろうか」というプレッシャーの側面もちゃんと描かれているのも良かったです。

その谷川瑠璃に対して、荒砥凪と伊万里曜子の大学院生&大学生側のほうは都合のいい万能のプロフェッショナルとして平面的に描かれるわけでもなく、ここもしっかり進路の悩みなど、良い意味で凡人的な葛藤が表現されてもいました

そんな『瑠璃の宝石』においてあえて不満を挙げるとすれば、この作品のコンセプトであるガールズアニメと学問を組み合わせることの弊害ですかね。いや、弊害という言い方は適切ではないかもですけど、この組み合わせは明白な欠点があると私は常々思っていて…。

それは「女性」という存在が「入門っぽさ」をだすための看板として使われてしまう部分です。これは結果的に現実科学界における女性研究者の不平等とも無縁ではないでしょう。

私も科学の現場でたまに見かけてきたことがあるのですが、「子どもに科学を教える」というような機会で体よく「女子学生」が看板に立たされる事例はわりと自然科学の分野でもあります。それは「親しみやすいから」とか「易しそうにみえるから」とか、いかにももっともらしく正当化されますが、その発想自体が無意識な女性への偏見を滲ませています。

もちろん『瑠璃の宝石』は、瀬戸硝子という研究者志望の夢を抱く典型的なSTEM女子高校生を登場させ、瀬戸硝子自身が主人公補正で輝きまくっている谷川瑠璃と真逆のリアルな…「女らしさ」の抑圧の中で「科学に興味を持ち続ける女子のツラさ」を体現させています。なので一応、科学における女性への偏見にも目配せがあります。

しかし、その瀬戸硝子の描写もわりとベタなパターンのみなので、個人的にはもっと女性のフィールド研究者のリアルが繊細かつ濃密に描かれてほしかったところではありました。アニメ化においてもそのあたりの補強は乏しく、どっちかというとよくある日本のアニメの手つきで女性キャラを魅力的に描くことに注力していただけだったと思うので…。

これ、なかなか作品で題材にならないのですけど、女性のフィールド研究者ならではの“あるある”な悩みって実はいっぱい存在するんですよ。

でもそういうのを詳細に描こうと思うと、やっぱり通常のアカデミックの世界と同様に男女混合の舞台にしないと厳しいことも多いです。『瑠璃の宝石』ほど学問を巧みに入門的に再構築できる才能があるなら、別に男女混合の作品でも全然良かったはずで…。そこはもったいないところで、日本のこのアニメ・漫画界隈の弱点でもありますね。

『瑠璃の宝石』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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関連作品紹介

日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『空色ユーティリティ』

・『チ。地球の運動について』

・『星屑テレパス』

以上、『瑠璃の宝石』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)渋谷圭一郎/「瑠璃の宝石」製作委員会

Ruri Rocks (2025) [Japanese Review] 『瑠璃の宝石』考察・評価レビュー
#ガールズアニメ #趣味アニメ #女子高校生 #大学生 #科学 #地学 #鉱物学