エクスティンクション 地球奪還
Netflix映画『エクスティンクション 地球奪還』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

英題:Extinction
製作国:アメリカ 
製作年:2018年 
日本では劇場未公開:2018年にNetflixで配信 
監督:ベン・ヤング 

【個人的評価】
星 5/10 ★★★★★

Plot Summary

家族を愛する男を苦しめる、エイリアンが地球へ侵攻する悪夢。その恐怖を感じながら、いつものように仕事をして、家族と過ごしていたが、ある日、謎の地球外生命体が地球上のあらゆる生命に総攻撃を仕掛け、男の悪夢は現実と化してゆく。

ネタバレなし感想

俺はペーニャでいく

最近は、豪雨・酷暑・台風と明らかに地球が日本列島に暮らす人間を“絶滅”させにきているとしか思えない、ハードな毎日が続いていますが、まだ宇宙人の侵略が起こっていないのでマシだと考えるようにしましょう(なんだそれ)。

そんなことを考えながら、家でじっくりNetdlixで映画でも観ていればいいんです。

そこでぴったりなのが、本作『エクスティンクション 地球奪還』。この映画は、まさに突然の宇宙人の侵略によって日常が破壊される“侵略パニック”系スリラーです。ジャンルとしては、ローランド・エメリッヒ監督作の『インデペンデンス・デイ』や、スティーヴン・スピルバーグ監督作の『宇宙戦争』などと同じ。ただし、大作ではないのでスケールは小さめです。

もともとユニバーサル・ピクチャーズが配給して劇場公開を予定していましたが、計画は中止に。それをNetflixが買って、オリジナル作品として独占配信したという流れです。

そうやって聞くと「じゃあ、つまんないのかな」と早計に判断しがちですが、本作のシナリオは、優れた脚本を選定してまとめた「ブラックリスト」の2013年版にリストされたものであり、この中から賞の受賞作がいくつも排出していることを考えても、決して本作も凡作なわけないということがわかると思います。つまり、シナリオに関しては数多の脚本を見てきた人を「おっ」と驚かせるくらいのパワーがあるということです。Netflixは積極的に中規模のSF作品をオリジナルで配信していっていますが、いつも独自性があるものが多いですよね。

では、その気になるシナリオは?というと…それは言えない…。完全にネタバレがアウトなタイプの作品です。100%楽しむためにも鑑賞前にネタバレを見ないようにしましょう。前半はもろに『宇宙戦争』なのですけどね…。

ネタバレなしでこの映画の語れる魅力といえば、“マイケル・ペーニャ”の主演作だということですね。えっ、“マイケル・ペーニャ”を知らない!? そうか、自分の中では勝手にポピュラー俳優の枠に入れていたけど、世間は知らないか…。知っているのは一部の映画ファンだけだったか…。

“マイケル・ペーニャ”はメキシコ系移民の出自を持つアメリカ人俳優です。2000年代以降、出演作が目立ち始め、『エンド・オブ・ウォッチ』『フューリー』『オデッセイ』『ホース・ソルジャー』と有名監督作や大作にも相次いで出演。マーベルの『アントマン』シリーズでも主人公の友人役として登場。もはや「ヒスパニック系キャラクターなら俺に任せろ」状態です。愛嬌のある雰囲気から、たとえサイドのキャラであってもしっかり印象に残る存在感を見せてくれ、魅了される観客も少なくありません。個人的には「ペーニャ」という日本人感覚的に可愛く見える名前も愛着を沸かせる一因になっている気がする…。

本作はそんな彼が主人公。脇役じゃありません。ずっと“マイケル・ペーニャ”のターン。最初から最後までペーニャが詰まっている。ペーニャ・ファンにとってご褒美ですね。

ということで、家で「頑張れ! ペーニャ!」と応援しながら鑑賞してください。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

伏線に気づけたか?

夜、街に佇むピーターが空を見上げると謎の光が浮かんでいます。そして、間髪入れずに謎の攻撃を受けて次々と倒れていく通りすがりの人たち。ハッと目を覚ますとそこは家のベッド。妻のアリス、娘のハンナとルーシーと一緒に暮らす、いつもの温かい家庭です。悪夢に困惑しつつも、職場に向かいますが、エンジニアの仕事でもミスを起こし、上司のデイヴィッドに心配されてしまいます。悪夢だけでなく、日中でさえも銃撃されるようなフラッシュバックに襲われ、生活に支障をきたす状態。さすがに深刻なのでデイヴィッドに紹介された生活健康センターに行きますが、そこで自分と同じ症状のクリスに出会い、これは夢なんかではないのではと疑いを強めますが…。

本作を最後まで観た人ならわかると思いますが、この時点でかなり用意周到に伏線&ミスリードを張っていたのでした。まるで“未来”を予知しているような意味深なフラッシュバックはもちろんですが、ピーターの“機械を保守する”仕事、アリスの“トンネル”の仕事、ルーシーの大好きな“猿の人形”、二人の娘ハンナとルーシーの対照的な“性格”の違い、不自然なほど“裕福”にみえる家、デイヴィッドに言われる「お前が“ミスする”なんて珍しい」というセリフ、病院ではなく“生活健康センター”と呼ばれる施設…。

正直、この前半パートは退屈で、これらの伏線はスルーしがちですが、そのあえての“味気のない”ドラマ性もミスリードを狙ったものなら上手くいっているといえるかもしれません。実際にフラッシュバックばかりに気をとられて、細々とした伏線は巧妙にカモフラージュされていましたから、気づかない人も多いのではないでしょうか。

地球奪還するのはアイツ

そして、中盤、事態は一変。いよいよ始まりました、“侵略”パートです。

でもいきなりの苦言で申し訳ないのですが、私の感想としてはこのパートが一番残念に感じた部分でもあります。単純に見せ方が面白くないというのはあります。あのエイリアンはもっと印象的に登場できないものかと思うし、この手の“侵略パニック”系スリラーでは絶対に大事なシーンですから、力を入れてほしかったところ。予算の問題もあるでしょう。でも、低予算で見せ方を工夫している同ジャンルの映画はたくさんありますから、物足りなさを感じました。

しかし、それよりも気になるのは、SFとしてのロジックの不備。エイリアンの正体が“アレ”なのだとしたら、合点がいかないことが多々あります。わざわざエイリアンが使う銃らしき武器の仕組みは人間と同じだと伏線をここでも張っておきながら、なぜあんな非人間的なスーツを身にまとっているのか。いや、ミスリードのためなんでしょうけど、露骨に変でしょう。そして、殺すことが目的なら、イチイチ地上に降りずにサクッと空爆とかで大量破壊すればいいのに…。アメリカはもうそれやってるよ?

それで肝心のビック・ネタバレに入りますが、謎の襲撃者であるエイリアン…その正体は「人間」でした。そして、ピーターたちは実は人工知能による人造人間であり、かつて製造者である人間に反乱を起こして戦争を起こしたという過去が。戦争は50年前。人造人間に追い出された人間たちはそれ以来は火星に移住。ピーターとアリスはクーデターの途中で、人間の親を殺されたハンナとルーシーと出会い、4人は記憶を消して家族になったのでした。デイヴィッドら一部の人造人間は記憶を残したまま、来たる戦いに備えていたのですが、ついにそれが起こったという経緯…。

『宇宙戦争』と思わせて『ブレードランナー』でした!というオチですね。

エクスティンクション 地球奪還

本作に隠された社会問題

オチさえ知ってしまうと、「へぇ~、邦題の“地球奪還”は逆だったのか~」とトリックにびっくりするだけで終わってしまうのですが、今作は表面的なストーリーが何を意味しているのかを深堀りすることでとても意味が増してくるものになっています。というか、実は人間でした!とか人造人間でした!みたいなオチ程度で「ブラックリスト」に選ばれるはずありませんから、このストーリーに隠されたメッセージこそ大事です。

本作には社会問題が隠れています。といっても、そのシナリオが意味する社会問題はオチがわかれば、勘のいい方ならすぐに理解できるレベルですけど…。

それは今、アメリカで大きな問題となり、世界中にも論争が起こっている「移民問題」ですね。

「移民問題」…知らないとは言わせないですが、残念なことに日本での関心は薄め。そこでかいつまんでアメリカを中心に移民問題を説明すると…その建国時から黒人を奴隷にしてきて底辺労働に従事させていたアメリカですが、奴隷が禁止されると、今度は移民にターゲットを移しました。ヒスパニック、アジア、アフリカ、中東…さまざまな非欧米圏からの移民たちに比較的底辺の労働をあたらせていたのがこれまでのアメリカです。しかし、移民が増え、社会的地位の向上も進むようになると、今度は中流以下の白人層から「このままでは移民が私たちの仕事を奪う!」と怒りの声が続発。その支持を受けて大統領に上り詰めたのがドナルド・トランプでした。トランプ大統領は移民に対する規制を強化、不法入国者を厳格に取り締まる「ゼロ・トレランス」政策を強めています。移民排除の流れは、悲劇を起こしており、最近でも国境で引き離された移民の親子たちが大きな問題になっていました。

ここまで聞けば、本作で描かれた内容は移民問題とそっくり同じなのがわかります。ピーターたち人造人間は移民です。いいように利用されて、少し力をつけると、今度は排除されようとしている。劇中の終盤で分断されるピーター側の親とルーシー側の子をしっかり描くあたりなんて、まさにですね。このテーマがあるからこそ、メキシコ系移民の出自を持つ“マイケル・ペーニャ”を起用したのでしょう。

まあ、そうは言っても、本作のシナリオが描かれたのは2013年…トランプ大統領誕生前ですから、結果的にシンクロしてしまったというべきかもしれません。

「戦いは終わっていない」「敵は私たちとそれほど変わらない」というラストの言葉どおり、彼らを乗せた列車の行先はわかりません。それを決めるのは、他ならぬリアルを生きる私たちです。

関連作品紹介

マイケル・ペーニャ出演作

・『エンド・オブ・ウォッチ』
…ペーニャ、警官になるの巻。
・『アントマン』
…ペーニャ、泥棒になるの巻。
・『オデッセイ』
…ペーニャ、宇宙飛行士になるの巻。

宇宙侵略系・人造人間系作品

・『宇宙戦争』
…トム・クルーズ出演作。こちらも家族の物語でした。
・『ブレードランナー』
…カルト的名作。ビジュアルの強烈さがやはり大事ですね。

おすすめ PiCKUP!
↑『ブレードランナー 2049』…人間・人造人間、その対立を描く大作の最新版といえばコレ。
(C)Netflix