パーティで女の子に話しかけるには
映画『パーティで女の子に話しかけるには』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:How to Talk to Girls at Parties 
製作国:イギリス・アメリカ  
製作年:2017年 
日本公開日:2017年12月1日 
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★

Plot Summary

1977年、ロンドン郊外。大好きなパンクロックだけを救いに生きる冴えない少年エンは、偶然もぐり込んだパーティで、不思議な魅力を全身から放つ美少女ザンと出会う。エンは説明できない感情に突き動かされるままにザンに一気に惹かれていくが、2人に許された時間は48時間だけだった。2人の普通から外れた行動はしだいに大きな騒動に発展していき…。

ネタバレなし感想

不思議系少女と出会いました

ある日いきなり可愛い女の子が目の前に現れて恋に落ちるみたいな展開が起きないかなぁ…と日々空想にふけっている人が世界にどれくらい存在するのかは知りませんが、世界中にそんなフィクションがたくさん存在するあたりをみると、そういう願いを持つ人は少なくないのでしょう。

そして本作『パーティで女の子に話しかけるには』もまさにそんな映画です。しかも、突如自分の前に登場するヒロインを演じるのは“エル・ファニング”ですよ。そりゃあもう、スマホゲームに例えるなら最初のたった1回のガチャで最高レアの欲しいキャラを引き当てたようなものです。最高の体験は約束されたようなものじゃないですか。

ところが、この映画は、「ボーイ・ミーツ・ガール」だとか「あの日、恋に落ちたのは遠い惑星の女の子でした」といった宣伝文句から連想される、ロマンチックでスタンダードな青春恋愛物語とはかけ離れた作品になっています。見れば誰もが度肝を抜く奇妙キテレツな映画です。

原作は、ニール・ゲイマン。SF作家として非常に有名な人物で、私はもっぱら映画中心人間なので、主な映画関連作だけ紹介すると、マシュー・ヴォーン監督の『スターダスト』(2007年)や、ライカのストップモーションアニメ『コララインとボタンの魔女』(2009年)があります。他にもとても評価の高いアメコミである「サンドマン」の生みの親でもありますが、こちらは幾度も映画化が企画されるも頓挫、映画化の実現は現状未定です。

そして、もうひとつ本作を語るうえで外せないのが、監督するのが“ジョン・キャメロン・ミッチェル”だということ。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で一躍有名になりましたが、その彼の味付けがふんだんに加わったことで、個性が何十倍にも増幅した感じです。さすがにこの二人が合わされば、一筋縄ではいかない作品になるのも納得ですね。

本作はイギリス映画ですが、なぜか商業公開としては日本が先陣をきり(日本公開は2017年12月、イギリス・アメリカ公開は2018年5月)、前評判情報が乏しかったせいか、話題になる機会が少ない不憫な作品でもありました。観ていない人も多いのではと思います。

そのクセの強さから間違いなく人を選ぶ一作ですが、突き刺さればどんな映画以上に忘れられない一本になるでしょう。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

女の子に話しかけ…なんだこれは…!

本作は日本ではそもそも話題になることがないほど注目度は小さかったのですが、ようやく一般公開も出揃った海外での評価はといえば…賛否両論です。「Rotten Tomatoes」では批評家スコアも一般観客スコアも「47%」、映画データベースサイト「IMDb」のユーザーレビューは平均「5.9」。反応は真っ二つに分かれています。各感想コメントを見ていくと、「困惑」「時間の無駄」といった超否定的なものから、「年間ベスト」「素晴らしい独創性」といった超絶賛評まで極端な分裂っぷりです。

こうなるのも観た人なら一目でわかると思いますが、理由は当然、作品のクセの強さゆえです。感想コメントの中では、カルト映画として非常に有名な『ロッキー・ホラー・ショー』との類似性を指摘する意見もあり、確かになるほどと思いました。似ている部分は探さなくても見つかります。当然、意図して似せたわけではなく、結果的に同じようなエッセンスを持ってしまったのでしょうけど。本作は『ロッキー・ホラー・ショー』に“青春映画のドレッシング”をかけて味を“ある方向”で強めたような作品ですかね。

普通の鑑賞前反応でいえば、タイトルからして女の子と出会う話だと思うじゃないですか。ところが、タイトルどおりの“女の子に話しかける”要素は、主人公エンがパンクな人たちが集まるクラブでピンク頭のシャーリーに話しかけてみて恥をかく展開でチラっと見えたかと思ったら、そこからフェードアウト。

そこから主人公3人組が、超奇抜な意味不明なコミュニティが集うパーティっぽい会場に潜入して、もう“女の子に話しかける”とかいうポイントは観客の頭からも吹き飛びます。

このパートが、観客の「この作品についていけるか」の第1ハードルになりますね。原色ストレートなカラフル・ファッションの集団、奇妙キテレツな行動、全く意味の通じない会話と用語の連続…。初見時は本当に何が何やらですけど、再鑑賞して大方の真実を知ったうえで見ると、結構この集団の会話の意味もわかります。要するに、この集団は「心・精神・声・意思・性・力」の6つの色分けされたコロニーがあり、それぞれPT(保護者)によってルールのもと統制されているということ。地球に来訪し、もうすぐ離れるようだということ。そして、集団内で“食べる”ことで代を永らえるも、徐々に崩壊の一途をたどっていること。そんな背景があります。

進化に必要なのはパンクです

しかし、主人公のエンはそんなことは“ちんぷんかんぷん”で、カルト宗教か何かだとしか思ってません。

それよりもいきなり“エル・ファニング”演じるザンというミステリアス少女に、指ペロされたり、密着されたり、ゲロ吐かれたり、キスしたり、脇を触らせられたり、足で鼻タッチされたり、ペニス実況されたりで、それどころではないわけです。

ここが、観客の「この作品についていけるか」の第2ハードルになるのかな。「青春」という言葉で一括りにするには相当な無理のある恋愛ですし、そりゃあ、エンの母親も飲み物飲んでワンテンポおいて「はい、説明して」となりますよ。まあ、割とすんなり打ち解け合ってましたが…。

ただ、エンとザンの関係性はロマンスでも語れますが、SF的な解釈をするなら、「ウイルス進化説」(ちなみに学術的には正しくないとされていますが、フィクションではよく活用される概念です)がそのままベースになっているっぽいですね。つまり、生物はウイルスの感染によって突如進化するという考え方です。この物語でいうウイルスはもちろんエンです。それを示すように、彼は「ウイルス・ボーイ」という、感染させてファシズムや服従と戦うキャラクターを自作しています。そして、そんなエンに出会ったことでザンは全く新しい姿に変化していく。冒頭で映し出される、光る球体にウイルスのような黒いギザギザ的なにかが侵入を試みる、意味深なCG映像も、その関係性を象徴しています。

その進化の出会いはエンとザンにとどまらず、最終的にはコロニー集団にパンク集団がなだれ込むことで、未知との遭遇が勃発。ここのシーンは大変愉快で、バンド「ディスコーズ」のマネージャーであるボディシーア(演じるのは“ニコール・キッドマン”!)や、乳首を攻めれば勝てる戦法で突き進むジョンなど、異物の乱入が実にユーモラスに描かれています。「ティータイム!」でまったりモードに入っているのも良い光景です。

そんなこんなで「えっ、パンク?」とか「なんか狂った映像とストーリーの勢いだけの話でしょう?」とか、どうしても先入観アリで見てしまいがちな本作ですけど、いかにもカルトじみた映画でありながら、根底にあるのはやっぱりSFなんですね。

パーティで女の子に話しかけるには

それでも受け入れることができる?

本作の「異世界に入ったと思ったら、結果的に自分の方が異質な存在で、その異世界の根底を変えてしまう」という話の土台は、ニール・ゲイマン作品ではわりとよくあるパターンですし、他の人の作品でも見られるものです。

これはそれが普遍的な話のフォーマットとして非常に用いりやすいからであり、ときに体制への反抗、ときに親からの脱却、ときに差別からの開放と、いろいろなものに当てはめられます。そして、ここが大切ですが、その動機にあるのはルサンチマン(弱者が強者に対して抱く「恨み・妬み」といった感情)だけではダメなんだということ。結局、自分が誰かを受け入れないと、自分の環境も変われない。序盤はただ世の中にムシャクシャして突っ走っていただけの、またはザンを都合のいい女の子としてしか見ていなかっただけのエンが、最後はあそこまで変化している。それに、エンの友人であるヴィックも、とりあえず女とファックすることしか考えていない感じだったあのアイツが、最後はあそこまで達観する。この変化こそ今回の“進化”の顛末なんですね。

タイトルにひっかけて総括するなら、「パーティで女の子に話しかけたい? 世間知らずのクズである自分とその彼女が交わって別人になってしまうけど、それでも受け入れることができる?」ってことでしょうか。

どんなに孤独を感じても必ず受け入れてくれる存在がある。そしていつか自分もまたそういう孤独に苦しむものを受け入れる存在になる。突拍子もない世界観だと思った映画も、なんだ、いいメッセージを発しているじゃないですか。

関連作品紹介

ジョン・キャメロン・ミッチェル監督作

・『ラビット・ホール』
・『ショートバス』
・『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

エル・ファニング出演作

・『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』
・『20センチュリー・ウーマン』
・『ネオン・デーモン』

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