感想は2200作品以上! 詳細な検索方法はコチラ。

ドラマ『愛をこめて、キティより』感想(ネタバレ)…XOはスピンオフで終わらない

愛をこめて、キティより

こちらのほうがメインかも…「Netflix」ドラマシリーズ『愛をこめて、キティより』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:XO, Kitty
製作国:アメリカ(2023年~)
シーズン1:2023年にNetflixで配信
シーズン2:2025年にNetflixで配信
原案:ジェニー・ハン
LGBTQ差別描写 恋愛描写
愛をこめて、キティより

あいをこめてきてぃより
愛をこめて、キティより

『愛をこめて、キティより』物語 簡単紹介

アメリカに暮らす韓国系の女子高校生のキティはこれまで自分の姉を含めて周りの人たちの恋愛が成就する手助けをしてきた。しかし、自身は韓国にいる同年代男子の恋人と遠距離恋愛中で、ハグすることもキスすることもできない。ある日、韓国の憧れの学校に入学する奨学金を手に入れる。そこは亡き母も通っていた場所で、キティは恋、学業、母の思い出探しと、充実した青春を期待する。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『愛をこめて、キティより』の感想です。

『愛をこめて、キティより』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

スピンオフとか気にせずに!

英語圏では「XO」「XOXO」という文字のサインは「キス&ハグ」を意味します。「X」がキスで、「O」がハグ(抱擁)です。昔は手紙で使われていましたが、今やSNSなどで普通に定着しています。

いつからこのサインが使われていたのか…。どうやら案外と昔のようで、イギリスの小説家である“フローレンス・モンゴメリー”の1878年の小説『Seaforth』で「X」や「O」を連ねる(例:「xxxxx…」「ooooo…」)ことでキスを意味しているという言及があります。つまり、19世紀あたりにはそういう用法があったと推察されますPshychology Today

19世紀より前は「X」は祝福を意味し、それはキリスト教の十字架との連想でそうなっていたそうです。手紙の封をする際に署名の代わりに十字架を象徴する「X」を刻印し、そこで唇をあてて祝福を添えるという仕草が一般化しており、その流れで「X=キス」になったという説が有力です。

一方で「O」がハグを意味する由来は謎で、「O」は「X」と対になる文字だから…など諸説あります。

そういうわけで、「XO」や「XOXO」はそこまで性的な意味はなくわりとカジュアルな親しみを込めた愛情表現の証です(相手を選ぶサインではありますが)。

今回紹介するドラマシリーズもそのサインがタイトルに入っています。

それが本作『愛をこめて、キティより』です。

あれ? 入ってないじゃん…と思ったあなた。そうです、邦題にはなくて…。原題は「XO, Kitty」なのです。象徴的な「XO」を消してしまうのはやや作品らしさを減退させている気がしますが…。

それはさておき、本作『愛をこめて、キティより』は『好きだった君へ』シリーズという青春学園ロマコメ映画3部作のスピンオフです。2018年に『好きだった君へのラブレター』、2020年に『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』、2021年に『好きだった君へ: これからもずっと大好き』が、それぞれ「Netflix」で独占配信されました。

『好きだった君へ』シリーズの特徴は何といってもアジア系の女子高校生を主役にした恋愛モノになっていることで、これまでアメリカの同ジャンルで疎外されてきたマイノリティとしてのアジア系女子がその壁を堂々と突破する気持ちよさがありました。

『愛をこめて、キティより』は映画からドラマシリーズに変わって、今度は映画3部作の主人公の妹だったキティが主役になり、彼女の恋模様が描かれます。さらに舞台は韓国の学校に移っており、まるでハリウッドの青春学園ドラマと韓国ドラマが合体したような雰囲気です。

韓国文化もハングルも入り混じる本作が欧米の若者に受け入れられている現象を見ると、欧米での「K-Drama」の浸透がここまできたかと思いますね…。

多様な人種の10代が登場しますが、中心にいるのはいつもアジア系です。アメリカ製作のアジア系のロマンスもついにここまできました。

映画3部作を全く観てなくても楽しめます。むしろこのドラマ『愛をこめて、キティより』のほうがメインなくらいに充実しています。

とくに今回のドラマ『愛をこめて、キティより』は明確にクィア・ロマンスに舵を切っており、バイセクシュアル、レズビアン、ゲイなどのクィアなキャラクターが揃っているのも見どころで、異性愛規範に染まった過去のティーン・ロマンスを意図的にひっくり返す仕掛けも満載。

ドラマ『愛をこめて、キティより』は原作者の“ジェニー・ハン”がガッツリと脚本にまで関与しており、丁寧に世界観を拡張しています。

主役を演じるのは映画から引き続き、“アンナ・カスカート”(アナ・キャスカート)。今作では眼鏡なしで垢抜けた感じがしますが、相変わらずエネルギッシュで魅力的な存在感を発揮。映画でも脇役ながらすぐに観客を魅了しましたが、そんな彼女が主人公になるのですから面白いに決まっています。

新たなZ世代青春学園ドラマの顔としてこの『愛をこめて、キティより』は見逃せません。

シーズン1は全10話、シーズン2は全8話。1話あたり約25~30分なので見やすいです。

スポンサーリンク

『愛をこめて、キティより』を観る前のQ&A

✔『愛をこめて、キティより』の見どころ
★クィアなロマンスの大渋滞。
★魅力的な主人公のキャラクター性。
✔『愛をこめて、キティより』の欠点
☆舞台となる学校のリアリティは乏しい。

鑑賞の案内チェック

基本 偏見で同性愛の振る舞いが抑圧されるクィア当事者が一部で描かれます。また、容姿をいじるイジメのシーンがわずかに映ります。
キッズ 4.0
性行為の描写もなく、小さい子どもでも観れます。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『愛をこめて、キティより』感想/考察(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半)

周りのカップルは異性同士でも同性同士でもいつも一緒にべったりくっついています。でもキティの場合は違います。遠距離恋愛中なのです。ハグしたり、キスしたりはできません。今日も水着姿でプールでプカプカ浮かびながら韓国に住むボーイフレンドのデイとビデオ通話。しかし、動画はカクつき、スムーズな会話もしづらいです。

そんな中、亡き母親も通っていた韓国のソウルの学校(KISS)から全額奨学金を獲得したとのお知らせが届きます。念願の韓国に行けるのです。つまり恋人にも会えます。一緒に過ごせます。

さっそく興奮を滲ませながら完璧なプレゼンで両親を説得。姉のようにステキな恋も学業も両立したいのです。母親の青春の思い出にも触れたいです。熱い思いを受け止め、父親は送り出してくれました。

出発の日、パスポートを手に空港へ。そこで同じ学校の紋章のアジア人の男子に出会い、英語で話しかけると「英語は話せない」とやけに冷たく拒絶されます。

気を取り直して韓国のソウルの空港に到着。しかし、バスに乗り遅れてしまう痛恨のミス。公共交通機関で自力で移動しようと奮闘しますが、言葉も通じずに上手くいきません。

その道中、同年代女子の憧れのまととして有名なユリ・ハンの乗る車にぶつかり、英語が通じたことで、車に乗せてもらえました。ユリも同じ学校のようで、車内で打ち解けます。学校まで送ってもらえました。

ユリの母ジナは校長で、実はユリはジュリアナという女の子と恋愛関係にあったのですが、母親にそれを隠していました。そこでデイにボーイフレンドのふりをしてもらう秘密の取引をします

そんなことも知らず、キティはバッチリとオシャレして学校の歓迎会に現れます。そこには空港で出会った嫌な男子もおり、ミンホという名でした。やはり嫌な感じの男子です。

その場でやっとデイに会えて抱き合って大喜びしますが、ユリからデイが自分のボーイフレンドだと告げられ、キティはショックを受けます。最高の青春が待っていると思ったのに…。

この『愛をこめて、キティより』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/02/18に更新されています。
スポンサーリンク

シーズン1:クィアを結ぶ(やや絡まる)

ここから『愛をこめて、キティより』のネタバレありの感想本文です。

これまで縁結びには抜群の才能を輝かせていたキティ。しかし、ドラマ『愛をこめて、キティより』で主人公になったからといって、主人公特権で恋愛運が巡ってくる…わけでもなく…。

面白いのは、地元アメリカではアジア系アメリカ人としてマイノリティの立場にいたキティですが、韓国に青春の舞台が移れば「自分はアジア系だし、周りもアジア人が優勢で、もうマイノリティじゃない!」と安易に考えていたら、見た目は馴染んでも韓国人とは扱われないという事態に直面すること。別のマイノリティ構造に陥るのでした。

でも基本はみんないい人なのでそんなに人種的に嫌な経験はしません。

それよりも本題はクィア・ロマンスです。本作は異性愛規範前提の恋愛モノのセオリーを軽やかに吹き飛ばします

例えば、第1話の始まりを告げるユリとの出会い。ユイは学内ではクイーン・ビーなポジションであり、ピンクな服装といい、『ミーン・ガールズ』を強く彷彿とさせます。

そしてユリとの間で男子であるデイの奪い合いが勃発する…と表面上はベタですが、内実は違います。ユリはレズビアンであり、デイとはフェイク・リレーションシップにすぎないからです。

さらにキティ自身もバイセクシュアルのアイデンティティを探究し始め、キティはZ世代ど真ん中なので自己受容は早いのですが、あろうことかユリに恋愛感情を持ち、面倒なことに…。

キティはデイとユリにLOVE。デイはキティにLOVE(当初のカップル)。ユリはジュリアナにLOVE(ジュリアナと相思相愛)。ミンホはキティにLOVE(片思い)。

主人公がBi+だと男女関係なく恋愛矢印があっちこっちに交錯する設定を作りやすいですね…(全てのバイセクシュアル当事者がそうだというわけでは当然ないのですが)。

ゲイ・フレンドとなる(クィア仲間でもある)Qフロリアンとの関係をサポートするのも、バイセクシュアルの立場だとステレオタイプにハマりません。

しかし、その性的指向のアイデンティティに気づいたはいいものの、今度は縁結びどころか、ユリとジュリアナとの恋仲を引き裂くことになるとオロオロするキティ。悩むキティには悪いですが、何かと消去されやすいBi+当事者の恋愛葛藤をここまでたっぷり描いてくれるのは頼もしいです。

舞台がまだ同性結婚も法的にできない韓国だからこそ、ユリの受ける抑圧の苦しさも現実味がありますし、それをキティが突破の手助けをするのも納得です。今回のキティはただの恋愛成就ではなく、クィアの支援であり、自身もクィアなのですから。

ただ、あの学校空間はリアリティから外れまくってましたね…。こんな学校、韓国にあるのか…という…。

あと、キティを退学にするのは違うんじゃないか…。最初の寮部屋のミスといい、キティの受けたプライバシー侵害といい、どう考えても学校側に落ち度があり、生徒を守る責任があるだろうに…。

細かいところは置いておいて、全体的には青春学園ドラマとしてストレス少なめで観れました。

スポンサーリンク

シーズン2:恋愛矢印がさらに躍る

ドラマ『愛をこめて、キティより』のシーズン2は、キティの復学から開幕(何だったんだ、前回の…)。

シーズン2では、キティが新たに付き合い始めるプラヴィーナ、デイが新たに付き合い始めるユニス、Qが新たに付き合い始めるジン、ミンホが新たに付き合い始めるステラと、新キャラクターが続々とパートナー相手に加わり、恋愛矢印がもっとややこしく絡みに絡みまくってきます。落ち着かないな、このティーンたち…。

また、大きなステージになってくるが、アイドル・オーディション。今の韓国といえば世界にはこういう印象で認知されていますからね。若干振り回されがちだったデイがまさかのオーディション挑戦で奮闘。背景に貧困があるのもまた韓国っぽいところです。

そしてその裏でステラのエピソードによって、ルッキズムの問題もふんわり提示します。まあ、だいぶあっさり解決しますけどね。ステラもあんな謝罪で許していいのだろうか…。ミンホの父については権力のある大人なんだし、もうちょっと追及があってもいい気もしますが…。

ちなみにこのオーディションで優勝するユニスを演じた“リュ・ハンビ”。ドラマ『ここに来て抱きしめて』などで高く評価された子役で、一時は「NewJeans」のメンバー候補だったみたいな噂もまことしやかに囁かれていた人でもあったのですが、そんな世間の詮索はさておき、普通に本作でアイドルっぽい役で登場してくるとは…。

そんな中でのキティの恋愛は…そんなに進展はないような…。ミンホのポイントが上昇し、キティからの好意が芽生えたことで互いに接近して終わりでした。ユリはジュリアナと別れてしまい、父の資産名声も失いつつあり、今度は確実にユリの人生に寄り添っていくのだろうなとは容易に想像つきますけども。ユリも大人に蹂躙されて可哀想だな…。

デイは…なんか初心すぎて競争に弱いので、ゆっくり落ち着ける場所を見つけてあげて…。

キティの家族ルーツの件は、祖母の仲違いも解消されてめでたしめでたしでしたが、もう少しじっくり描いても良かったなとも思いました。手紙のアイディアがここで効いてくれるのはこの作品らしさという味わいがあったけども。基本的にこのドラマ、いろいろ要素盛り盛りで忙しいです。

世界観の繋がりとしては、姉ララ・ジーンの恋人ピーター、最年長姉のマーゴットは顔出しで登場し(みんな良いアシストをしてくれる)、残るはララ・ジーンのみとなりました(声ではでている)。

さりげなく青春学園ドラマのジャンルの新開拓をしてみせている本作はまだまだ広がるのかな?

『愛をこめて、キティより』
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
○(良い)

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『愛をこめて、キティより』の感想でした。

XO, Kitty (2023) [Japanese Review] 『愛をこめて、キティより』考察・評価レビュー
#韓国系 #女子高校生 #男子高校生 #ゲイ同性愛 #レズビアン #バイプラス