クエスト・オブ・キング
映画『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Kid Who Would Be King
製作国:イギリス・アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にDVDスルー
監督:ジョー・コーニッシュ

クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士

あらすじ

ごく普通の学校生活を送っていた少年アレックス。しかし、ある日、伝説の聖剣エクスカリバーを引き抜いてしまったばかりに、世界を救う使命を担うことになる。聖剣を狙う邪悪な魔女モーガナとの戦いは目前に迫ってくるが、心の準備すらできていない。ひとりではとても敵わないため、魔法使いのマーリンと共に仲間を招集するが…。

ネタバレなし感想

エクスカリバーさん、当確です

先日、2019年の参院選が終わり、皆さん、思い思いの候補者に票を投じたと思いますが(当然、投票したよね?)、ここで新しい選挙をします。

はい、「カッコいい名前の武器は何か」総選挙

世界中には数多の武器が存在します。剣、刀、槍、ハンマー、銃…いろいろ。そして、なぜか固有の名詞を持った武器も存在します。別に武器に名前をつけたからって、戦いの有利になったりはしないと思うのですが、やっぱりモチベーションの問題なのでしょうか。

そして当然その武器のネーミングはカッコいい響きのものが多いです。そりゃあそうです。「へっぽこチキン」とかいう名の剣を持っても絶対に勝てそうにありませんもんね。

そんな世界に存在する武器の固有名の中で、大衆が“これだ!”と思うベスト・クールはどれなのか。

おそらく1位は、もしかしたらダントツで「エクスカリバー」なんじゃないかなと思います。

ご存知「アーサー王伝説」に登場する、アーサー王が持つとされる剣です。他にもカリバーンなど別の呼び名もありますが、エクスカリバーが一番有名でしょう。下手をしたら、持ち主のアーサー王よりもエクスカリバーの方が名が一般に知れ渡っている勢いです。

冷静に考えると中世に生まれた物語に登場する武器の名が、この2019年の現代でも圧倒的な知名度を誇るというのは、異常です。たぶん中世の人がこの現代にタイムスリップしてきたら、びっくりしますよ。

それもこれもエクスカリバーやアーサー王伝説が、脈々と新しいコンテンツ(小説、映画、ゲームなど)の題材に使われているからに他なりません。ほんと、なんでこんな人気なのか。私、中世にタイムトラベルしてアーサー王伝説関連の商標をとりたい…。

最近と言えば2017年に『トランスフォーマー 最後の騎士王』と『キング・アーサー』というアーサー王伝説をモチーフにした大作が公開され、映画界でもアーサー全乗っかりな状態です。




当然、ただそのままアーサー王伝説を映画化しても新鮮さがないので、どちらもアイディアで勝負しています。『キング・アーサー』は貧しいスラム街で生きる男が剣を手にする下剋上スタイルですし、『トランスフォーマー 最後の騎士王』にいたっては詰め込み過ぎて一言では語れない…。

そして、2019年、新しい“アーサリアン・ムービー”が仲間に加わりました。それが本作『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』です。

本作のユニークなところは、子どもが主役のアーサー王伝説になっているということ。子どもメインと言えば、ディズニーのアニメ映画『王様の剣』がポピュラーです。でも『クエスト・オブ・キング』は、さらに舞台となる時代が現代のイギリスだという点が重要。まさに現代版ティーン・ムービーとして大胆にアレンジがなされています。

この斬新な設定ですが、監督の名を聞くと“なるほど”と映画好きの人は納得できるのですが、メガホンをとっているのは“ジョー・コーニッシュ”。あのロンドンに暮らす労働者階級の子どもたちがひょんなことからエイリアンと戦うことになる姿をユーモラスに描いた『アタック・ザ・ブロック』の監督ですね。『アタック・ザ・ブロック』以降は、『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』や『アントマン』の脚本に関わっていたみたいですが、久しぶりの監督作が到来しました。

ノリは完全に『アタック・ザ・ブロック』と同じで、決してエンターテインメント大作!と銘打つほどのものではないにせよ、微笑ましいジュブナイルな温かさの詰まった一作になっています。どこにでもいる現代っ子がエクスカリバーを手にしてしまう…という物語の始まりだけでもワクワクしてくるものです。

でも残念かな、日本では劇場未公開でビデオスルー。確かに今回はしょうがないかもしれないです。有名は俳優もあまり出ていませんし…(でもマーリン役に“パトリック・スチュワート”、悪者役に“レベッカ・ファーガソン”など見栄えはじゅうぶんです)。

アーサリアンのみならず、気になる人は家でのんびりと鑑賞してみてください。

オススメ度のチェック
ひとり◯(暇つぶしにどうず)
友人◯(気軽に観られる)
恋人◯(気軽に観られる)
キッズ◯(子どもこそ楽しい)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

円卓会議はご自宅で

12歳のごく普通の少年アレックス。今日も学校へ登校しますが、あまり気分が乗らない様子。まあ、世の中の子どもは、“学校にウキウキで行く子”と“そうではない子”の2種類に大別できますからね。アレックスは後者のようです。

学校に到着すると、ベダーズという子が、ランスケイという二人組に虐められている真っ最中。殴りかかってそれを止めるアレックスでしたが、学校では校長に呼び出され、怒られます。どこの国の学校も、大人は子どもを理解してくれないものです。

それでもなおもアレックスに敵意をむき出しにするランスとケイは、見かけたアレックスを追いかけます。必死に逃げるアレックスは、取り壊し中か何かの広めの住宅地工事現場へ勢いで侵入。なんとか追っ手は振り切りますが、そこで奇妙なモノを発見。鉄筋コンクリートの中に大きめの剣が突き刺さっているのでした。明らかに不自然ですが、思わずスルッと引き抜くアレックスは、とりあえずカバンに入れて(というか突き刺さっていましたが)持って帰ることに。

その夜、真っ先に友達のベダーズにその剣を見せますが(窓から入ってくる)、どうやらそれはアーサー王伝説に登場する聖剣エクスカリバーではないかという話に。持っていた本でも確認し、一致点を把握。とはいっても、ただのカッコいい剣くらいにしか思ってはおらず、ふざけて騎士団っぽくポーズをとったりして遊ぶ二人。

一方、その頃、呑気な子どもたちをよそに、どこかの闇深い世界では邪悪なモーガナが復活しようと虎視眈々と機会を窺っていました。そして、ストーンヘンジから現れた謎のティーンエイジャーっぽい若者もまた、運命に呼応するようにアレックスのいる町に向かいます。

アレックスと通う学校では転校生が登場。名前はマーティンだと言い、それにしても奇妙なルックスが嫌でも好奇の目つきで見られます。しかし、なぜかこの不審なニューフェイスは、アレックスに関心があるようで、授業中もガン見。わけのわからない事を口走りながら大演説をかまし、バカにされるマーティンとは関わらないようにしようとするアレックス。

しかし、夜、大変な事態が勃発。寝ているとふと窓の外を見ると、地面から何か得体の知れないものが出てくるのを目撃。家に侵入してきたのは、明らかに“デーモンです”と言わんばかりのザ・デーモンな化物。クローゼットに隠していた剣が光っているのを目視し、襲ってくる化物に対抗するために剣を掴むが、相手にはじかれてしまいます。絶体絶命のその時、突然消える敵。鳥に変身できるマーティンが救ってくれたのでした。

次の日、アレックスはベダーズとともに、指定された場所へ。そこに行くと、チキンを売っているマーティンがおり、その奥の部屋でチキンを活用しながら、モーガナの危険性を語るマーティン(鳥に変身できるのにチキンを食っているという巧妙なギャグ)。ここでマーティンがアーサー王伝説のマーリンだと知る二人は、老人の姿に戻ったマーリンから魔法を披露され、状況を理解しだします。

怖気づいてしまったアレックスは剣を返そうとしますが、そこへランスとケイが懲りずに登場。しかも、例のデーモンまで出現し、大逃走劇がスタート。

ファイヤーデーモンから逃げ切った4人は、ランスとケイも仲間に入り、運命に立ち向かうことに決めるのでした。軽い円卓会議を済ませて…。

クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士

どこでもエクスカリバー

『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』はアーサー王伝説を現代風に落とし込んだストーリーであり、ビジュアルは全然違いますが、ちゃんとベースとなったオリジナルを意識した要素がいっぱいあります。

例えば、登場人物。

主人公のアレックスはもちろん「アーサー王」の役割を果たす人間ですが、その友達のベダーズはその名前からアーサー王伝説に初期から登場する欠かせないキャラクターである「ベディヴィア(ベディヴィエール)」に由来しています。円卓の騎士のメンバーですね。

最初はイジメっ子として登場するランスとケイは、「ランスロット」「ケイ」に由来。どちらも円卓の騎士のメンバーです。

円卓の騎士は他にもガウェイン、トリスタン、モルドレッドなど名前を挙げられる人物がたくさんいて12名くらいがとくに有名ですが、明確な決まりはなく、もっと名がズラリと並ぶことも。しかし、この『クエスト・オブ・キング』ではまずはこの4名に集約しているのでシンプルな構成です。でも、終盤のあの大きな展開で一気に物語の賑やかさ(それと学校っぽさ)が増すのですが。

マーリンはそのままなのでとくに変化球もなし。ある意味、アーサー王よりも有名なイギリスを代表する魔術師です。世界遺産のストーンヘンジはマーリンが作ったという伝承があります。私はてっきりマーリンはアーサー王伝説に古くから記載された人物なのかと思っていたのですが、アーサー王伝説を収録した「ブリタニア列王史」という12世紀の偽史に登場するのが初出で、後付け的な追加キャラだったんですね。『クエスト・オブ・キング』ではインパクト絶大な存在感を発揮。学生の姿のマーリンを演じた“アンガス・イムリー”という俳優は、映画だと全然キャリアがないですが、舞台やドラマですでに活躍しており、業界では有名な人だと調べて知りました。

本作のヴィランであるモーガナは、アーサー王の異父姉であり魔女でもある、ケルト神話の「モリガン」に原点を持つとされる存在。『クエスト・オブ・キング』の終盤ではいかにもラスボスっぽい異形のモンスターとして大暴れ。“レベッカ・ファーガソン”の姿が見られないのは残念でしたが…。

ストーリー面でも意外にオリジナルに忠実で、ちゃんと聖剣を引き抜いて入手するくだりと、折れて失った聖剣が湖の乙女によって差し出されるくだりの、2つのパターンを挿入していたりします。湖の乙女が完全に“どこでもエクスカリバー”な便利機能になっているのがシュールでしたが。

正直、アーサー王物語を現代版に置き換えたフィクションというのは、B級作品ですでに先行事例があったりしたせいか、そんなのをやってもチープになるだけではと思っていましたが、意外にリスペクトを持ったうえできっちり再現しているので、悪くはない感じ。

あとは何よりもロケーションの力。やっぱりイギリスじゃないとダメですね。ティンタジェルのあるコーンウォール地方でも撮影したみたいですが、ここで撮ればだいたい8割くらいは絵になりますよ。

防災訓練(剣と盾)

原作への目配せもしながら、そうは言っても背伸びしすぎないのが『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』の大事な立ち位置。

イングランドが滅ぶとかなんとか言われても、基本はジュブナイル。子どもたちの成長物語です。

4人がバラバラになった後の一致団結、そこからの一件落着かと思われて、さらなる大展開としての学校総動員バトル。完全に大人を排した子どもだけのアドベンチャーであり、子どもの視点からは外れません

終盤の訓練シーンといい、すごくイギリスの学校っぽいですね。あくまで学業生活の一環のように、異次元な存在と戦う子どもたち。どんどん甲冑を配り、剣と盾を渡し、集団戦法を準備する。

また、イマドキの子どもらしく、ファンタジー作品(「ハリーポッター」や「ゲーム・オブ・スローンズ」)に親しみすぎているゆえに、アーサー王伝説をなぞる自分たちの運命もどこか達観しているのは、時代の捉え方としても正攻法。

当然、オーソドックスなジュブナイルなので、敵の存在の脅威感が微妙に手ぬるいのはご勘弁をというところでしょうが、そこは血なまぐさい映画とは違いますよということで。

とりあえずエクスカリバーはみんなが持てるのです。その時が来たなら。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 89% Audience 60%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

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