クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士
Netflix映画『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Knight Before Christmas
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:モニカ・ミッチェル

クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士

あらすじ

2019年のオハイオ州ブレースブリッジ。そこで教師として働く女性ブルックのもとに、ある日、中世の騎士のような恰好をした男が現れる。なんでも本当に中世のイングランドから来たと主張し、周囲の景観や機器に新鮮な反応を見せていた。人間関係に空白を抱えたままクリスマスを迎えようとしているブルックにとってそれは運命の出会いとなるのだろうか。

『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』感想(ネタバレなし)

中世の騎士をプレゼント?

クリスマスは無条件で(良い子という条件はあるけど)プレゼントをもらえる最高のイベントだと、子どもの頃は「このクリスマスを考え出した人は神なのか!」と崇める気持ちで高揚しきっていたわけですが、いざ大人になってみるとその贈り物を用意する側の苦労がわかってしまって複雑な感情が…。

そのせいなのか、楽天インサイト株式会社が2017年に実施したアンケート調査によれば、クリスマスの欲しいプレゼントを聞いたところ、「何もいらない」(36.2%)が最も高かったそうです。いや、何が欲しいか聞いているのに、その答えはないんじゃないかという気もしますが…。この回答が多い理由はなんなのでしょうか。さっきも言ったように申し訳ない気持ちが沸いてくるからか、それとも無欲なのか…。このアンケート調査では男性の方が女性よりも「何もいらない」と答える人が圧倒的に多かったそうで、「男たるもの人から贈り物などみっともない」なんていう意地を張った“男らしさ”がここでも滲んでいるのかもしれません。

ちなみに私は、そうですね、自分用の映画館が欲しいです。サンタさん、ください。

まあ、中にはクリスマスなぞ自分には無関係だと白眼視している人も多いでしょう。そのような人間には、タイムスリップしてきた中世の騎士をプレゼントしましょう。

え? 中世の、騎士? 本物の? コスプレとかじゃなく? 

はい、正真正銘の中世の騎士です。

そんな奇想天外なことが起こる映画が本作『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』。原題は「The Knight Before Christmas」で、1823年に米国の新聞に発表された作者不明の有名な詩「The Night Before Christmas」をパロディにしたタイトルですね(ちなみにティム・バートン監督の有名作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』もその詩の題名のオマージュ)。

内容はそのまんまなので、ネタバレなしだとこれ以上言えることもないのですが、現代のオハイオにタイムスリップしてしまった中世の騎士が、現代で普通に働いて暮らす女性と出会って…なんていうSF要素ありの「運命的出会い」の物語なんて今さら珍しいことでもないです。ターミネーターとかではなかっただけマシじゃないですか(命にかかわる)。

でもこういうありきたり感のある定番さを楽しむのもクリスマス映画のお約束でもあるので、これでいいんです。アメリカのクリスマス映画を量産する姿勢には毎度驚かされます。そんなに作ってどうするんだっていう思いもあるのですけど、なんだかんだで一般の需要があるんですよね。

ちなみに似たような設定の映画といえば、2001年の『ニューヨークの恋人』があります。こちらは1876年から貴族の公爵が現代にやってくる話。『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』は中世なのでもっと時空を超えていますけど。

監督は“モニカ・ミッチェル”という人で、どうやら今までずっとTVムービーをずっと作ってきたらしく、クリスマス映画もいくつも手がけています。今回はNetflixに舞台を変えてのお仕事のようですが、何かクリエイティブ環境に違いはあったのでしょうかね。

主演は“ヴァネッサ・ハジェンズ”です。かなりいろいろな人種的な血が混ざりあって受け継いでいるという一面化できないアイデンティティを持ち、独特の魅力を持つ女優。日本での知名度はあまりないですが、ディズニー・チャンネルの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズが出世作となり、アメリカでの人気は抜群。『エンジェル ウォーズ』や『スプリング・ブレイカーズ』などコアな映画ファンなら知っている作品にも重要どころで出演していますし、『フローズン・グラウンド』など硬派なサスペンスにも出ており、活躍の場は多岐に渡ります。最近は『セカンド・アクト』や『スイッチング・プリンセス』と、Netflixでよく見る顔になった気がする…。というか2018年のNetflixオリジナル作品『スイッチング・プリンセス』もクリスマス映画だったから、2年連続でNetflixオリジナルのクリスマス映画に出ていることに…。ちょっと頼りすぎじゃないですか、Netflixさん。

お相手となる中世の騎士を演じるのは、“ジョシュ・ホワイトハウス”。私は全然知らなかったのですけど、ドラマシリーズ『風の勇士 ポルダーク』などで活躍しているイギリス人俳優なのだとか。今後もどこかで活躍を見れるかな?

クリスマスプレゼントは「何もいらない」という人も映画くらいは観てもいいんじゃないですか。ましてやNetflixなんて気軽に映画を自宅で鑑賞できる最高の味方になってくれるんですから。クリスマスの日はいつもと同じように過ごすつもりなら、試しに聖夜はクリスマス映画連続鑑賞というイベントを個人開催してみてください。夜8時からスタートすれば次の日の朝8時までで5~6作くらいは観れると思います。もちろん『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』もラインナップに加えて。きっと忘れられないクリスマスになりますよ(不敵な誘い)。

オススメ度のチェック
ひとり◯(クリスマスは映画です)
友人◯(みんなで観れば特別感)
恋人◯(二人で思い出づくり)
キッズ◯(子どもも一緒に)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』感想(ネタバレあり)

1344年から2019年へ

1334年12月18日。イングランドのノリッチ(ノリッジ)。この地域は昔から交易の盛んな商業地で、ノリッジ城というお城もありました(今はノリッジ城博物館・芸術ギャラリーになっています)。ちなみにノリッチの出身の俳優といえば、『女王陛下のお気に入り』でのアカデミー主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマンがいるとか。

話を『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』に戻します。

そんなノリッチで有力者を集めた毎年恒例の鷹狩りレースが開催されました。鷹を放し、先に捕まえてきた者に褒美が与えられる由緒ある伝統。今回の参加者が馬にまたがってズラリと並びます。

ウェストンのアルドラス・ドレイク卿、グレンクロフトのブレイク・キートン卿、パースのダルトン・ハースト卿、ウィッチベインのマーロー・ウォラック卿、パローのスポルディング・ラムジー卿、ノリッチのジェフリー・ライオンズ、ノリッチのコール・ライオンズ卿

本作の主人公はこのコールです。彼は弟でこれから騎士になる大事な時期を控えるジェフリーと一緒に参加。声援の中、城を馬で勇ましく鷹が放たれるのを待ち、いざ一斉に出発。二手に分かれるジェフリーとコールは「後で会おう」と再会を約束します。それが本当に大きな別れになるとも知らずに…。

ひとり馬を走らせていたコールは謎の老婆を見かけます。「私のような美人を助けてくれないか」と随分堂々とした物言いの老婆にも優しく対応するコール。すると特別にあなたに教えてあげようと「お前が望んでいた探求の旅が今日始まる」という謎めいた言葉を投げかけてくる老婆は、さらに怪しげな青く光るアイテムを与えてくれます。「クリスマスイブの真夜中までに探求を済まさないと永久に真の騎士になれない」と意味深なことを宣言し、コールは忽然とその場から消えました。

2019年12月18日。オハイオ州ブレースブリッジ。教師のブルックは、カレシにふられたばかりだと嘆くペイジという生徒に優しく対応。王子が来るのは御伽噺(ファンタジー)だと説明し、今は学業を優先するべく「成績を落とさないように」と先生らしく丁寧に指導するのでした。

姉のマディソンから姉の娘のクレアの面倒を見ることを頼まれたブルックは、夜、一緒にクリスマスの飾りつけが綺麗な広場へ行きます。そこで元カレのジェームズ(新しい恋人と一緒)を見かけて思わず顔を逸らすブルックでしたが、サンタ夫妻に子犬を願うクレアから叔母さんに新しい恋人をお願いとフォローされ、やや複雑な気持ち。

するとその賑わう広場に妙な鎧の男がいました。うっかりぶつかってしまい、ココアをかけてしまったのですが、それでも気さくに接してくれる真摯なこの騎士風の男。そう、中世からタイムスリップしてきたコールです。この場面では、周囲がクリスマス・ムード一色なため、その鎧姿がそんなに違和感なく溶け込んでいるのがシュール。確かにそれほど場違いでもない。

クレアを姉に帰し、広場からの帰る途中、吹雪で視界不良の中で運転したため、先ほど見かけたあの騎士男を車で轢きそうになる…というか若干轢いたかもしれないブルック。でもさすが鎧。平気だったようです。怪我はないものの「ここはどこ?」「イングランドじゃないのか?」と明らかに意味不明なことを発言するその男に困惑。するとたまたまグッドタイミングでスティーヴンス警官が通りかかり、頭を打ったんだろうと、病院へ連れていくことに。

軽い記憶喪失扱いですぐに退院になるも、このまま放置するのは申し訳ないので、ゲストハウスが空いているから泊まってと誘うブルック。男は「コール卿と呼んでくれ」と自己紹介し、ブルックも名前を告げると、そのコールは仰々しく跪いて挨拶してくるのでした。

イブの夜まであと6日…。

時代が違えばクリスマスも違う

『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』の導入部分はテンポよく進みます。まあ、ベタな出会いですね。良い人しかいないオール善人映画なので嫌ったらしい人間関係のトラブルもそれほど起きません。これが見知らぬ人にはすぐに銃を向ける、銃所持率高めの地域だったら、このコール、即射殺でしたよ…。

物語中盤は、中世の知識しか持っていないコールの約700年のジェネレーション・ギャップに驚嘆混乱している姿を眺めるターン。車を最新の馬として感心したり、車から流れる音楽に「楽士はどこだ?」とキョロキョロしたり、冷気の流れるカラクリ箱(冷蔵庫)にびっくりしたり、陽気に騒ぐ魔法の箱(テレビ)に夢中になったり、「Alexa」が使いこなせず苦労したり…。

外でスカンク狩りして火をつけていると怒られ、代わりに連れてこられた軽食店でメニューを見ながら「熱した犬(ホットドッグ)」はあるのにスカンクは食べれないのかと文句を言ったりするのは、なかなかにシュール。中世ではスカンクは食べるのか。というか、イングランドにスカンクは生息していなかったと思うけど…。

あと「Alexa」のようなAIアシスタントデバイスは、他の作品でもたびたび見られますが、今や格好のギャグのネタになっているところがありますね。聞き間違いのあれ。まあ、実際、現状のデバイスのリスニング精度はそんなに良くないですからね。これからもう10年したら全然別物になって、映画内での描写も変わっているかも。冷凍庫に罰として封じ込められるアレクサさん、可哀想…。

またこの手のタイムトラベルものを見ていて思いますけど、今はテレビとかでその時代の情報が手に入ってしまうので、なんかあっさりしてしまいますね。そのぶん、作中のコールのように、テレビから変な言葉を学んでしまっておかしなことになるという、滑稽さも描けますが。イングランドのライブ映像をインターネットで見るコールの何とも言えない気持ちとか、わからないでもない。決して情報がありふれた今の時代が良い事であるとは限らない。そうですよね。

2つの時代の異なりとして忘れてはいけないのは、「クリスマス」という風習の扱いもそうです。

コールのいた中世ではクリスマスは存在していましたが、今とは違う部分も多いものでした。ご馳走をともなう宴とキャロルはあったようですが、それ以外のサンタもプレゼントもなし。本作終盤でヤドリギをアリソンからもらったコールが、ブルックとキスをするという大団円的なシーンがあるわけですが、「ヤドリギの下ではキスをする」という風習も16世紀頃から見られるものだそうです(だからコールは知らない)。

ただこのクリスマスの時代間の違いについては、本作はそこまで深く言及できていません。というのもこれは意図的だと思いますが宗教色を脱色しています。当然その理由はより多くの観客に本作を楽しんでもらうためであり、キリスト教一辺倒にならないようにしているのでしょう。日本では全然気にしませんが、リアルでもアメリカなどではキリスト教が背景にあるクリスマスの扱いがややセンシティブになる場合もあるそうで(「メリークリスマス」ではなく「ハッピーホリデー」と言ったり)、本作もグローバルな展開をするならやむを得ない面もあったのでしょうか。

本音を言えば、もっと文化史に迫った、クリスマス論を激突させてみた物語も見てみたかったですけど、本作でやることではないかな。

クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士

理解を超えたものこそ大切に

『クリスマス・ナイト 恋に落ちた騎士』はロマンスの観点においては、極まった障害もたいしてない、ストレートすぎる話運びではあります。なるべくしてなったというか、日付が進んでいくことに着実に仲良くなっていくブルックとコールを阻むものは結局とくになし。

だから予定調和すぎると言えなくもないです。一方で、ブルックを変に恋愛アンチをこじらせた、わざとらしいステレオタイプな恋愛嫌い女性として描かず、それでも芯のある女性の姿になっているのは良かったなと思うところでもありました。恋のライバル登場で「女vs女」という、これまたありきたりな駆け引きの話にしなかったのも良かったですし。

実はブルックとコールは共通項の多いキャラクター設定になっていて、対応関係にある存在同士です。ブルックは最初に生徒に優しさを見せ、姉妹愛が人生を支え、愛を手に入れる。コールは最初に老婆に優しさを見せ、兄弟愛が人生を支え、愛を手に入れる。ちゃんとどちらが上でもなく対等な関係にあるので、王子たる騎士が女を支えるのであるとか、女性は王子様が救ってくれるのを待つとか、そういう固定観念が根を張った話にならずに済んでいます。

さりげなく作中でジェンダーバイアスを打ち破る描写もあるのが良いなとも感じます。コールが女の子のクレアに剣の稽古をするシーンとか、頑張って車を運転したものの最後はブルックに運転を潔く頼むコールとか。ラストのオチで馬のシャーウィンも一緒にタイムスリップしてきたから、コールは馬に乗って日々を過ごすのかな…。

またマディソンの夫がしれっと日本系なのも見逃さなかった。演じているのは“スコット・ライアン・ヤマムラ”という俳優の人。

クリスマスの宗教の色を出せないぶん、物語の主軸にあるのはおのずと「慈愛」というこれまたクリスマスには象徴的なテーマになっています。過酷な人生の境遇の中でも必死に前を向くデイビッドを温かく支えるコミュニティの姿、実は貧しくて新しい手袋もないリリーにソッと赤い手袋を与えるクレア。特定の誰かを愛するとか、プレゼントが欲しいとか、そういう私利私欲ではない、クリスマスの本質をちゃんと寄り添っている映画でした。

最後はペイジに「真実の愛は存在する」と告げるブルック。恋に破れた女性は勉強だけしていればいい…ではなく、恋も勉強もどちらも掴み取っていいという、先輩女性からのアドバイスの変化も、良さげな締めです。

個人的な不満を言うなら、中盤のコメディは置いておいても、全体のストーリーがまったりしすぎなのは改善の余地ありだったと思いますけど。せめてあのコールによるクレアの剣の稽古がのちの伏線になるとか、コールの中世の知識が大きく役に立つ大展開が欲しいところ。割れそうな氷でのカタツムリ作戦も、全然関係ないし…。

とはいえ、クリスマスに見る映画としてはほどよいお湯加減の一作でした。

最後に話は逸れますが、作中で印象的な舞台となる飾りつけの綺麗な広場。あそこはカナダのオンタリオ州のブレイスブリッジという地域にある「Santa's Village」と呼ばれるテーマパークで撮影されたものです。気になった人は観光に行く機会があったら足を運んでみてください。冬の歴代観測最低気温はマイナス40℃らしいので、サンタどころじゃないかもしれないですけど。

ROTTEN TOMATOES
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IMDb
5.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Motion Picture Corporation of America