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『チャレンジャーズ』感想(ネタバレ)…それが見たかったって言ったでしょ?

チャレンジャーズ

それが見たかったって言ったでしょ?…映画『チャレンジャーズ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Challengers
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年6月7日
監督:ルカ・グァダニーノ
性描写 恋愛描写
チャレンジャーズ

ちゃれんじゃーず
『チャレンジャーズ』のポスター。女性主人公のひとりの顔のアップで、サングラスに対戦する男性選手2人が映るデザイン。

『チャレンジャーズ』物語 簡単紹介

親友同士の若き男子テニス選手であるパトリックとアートは、自分たちよりもはるかにカリスマ性を発揮してトッププレイヤーとして活躍する若きテニス選手のタシ・ダンカンに魅せられる。しかし、タシに不運が起こり、パトリックとアートにも明暗が分かれていく中、3人の関係性は歪に絡まっていく。出会いから十数年後、パトリックとアートはチャレンジャーツアーの試合で久しぶりに対戦することになり…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『チャレンジャーズ』の感想です。

『チャレンジャーズ』感想(ネタバレなし)

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この映画のどこを鑑賞する?

スポーツを描く作品はたくさんあります。当然ながらスポーツが主題なわけですが、一方でそのスポーツはあくまで舞台装置にすぎず、メインはそのスポーツの中で繰り広げられる人間関係だったりすることが多いです。

スポーツをプレーすることは自己表現でもあり、それらが対峙する白熱するゲームにおいて、個人と個人がぶつかり合い、予期せぬ反応が生まれます。その人間関係がまた夢中にさせてくれるほどに面白いんですよね。

近年も日本では『ハイキュー!!』『ブルーロック』など、スポーツ系のアニメ作品の勢いがあります。定番の人気ジャンルで、見慣れたカテゴリですね。

そんな中、今回紹介する実写のハリウッド映画は、相当に尖った一作で癖があるものじゃないでしょうか。

それが本作『チャレンジャーズ』です。

本作はテニスが主題なのですが、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』『ドリームプラン』など、これまでのテニス映画と違って、実在の人物を描いていません。完全なオリジナル・ストーリーです。

だからこそ結構大胆な物語を縦横無尽に展開させています。2人の男性テニス選手と1人の女性テニス選手を主人公にしており、その三角関係が最大の注目点。

どうしても鑑賞前でもわかる宣伝からは、この3人の恋愛模様が主軸なのかなと思ってしまいますが、本作を「恋愛映画」と普通に期待するとそれは少し違うかもしれません。ましてや「スポーツ映画」でも違う。何と言えばいいのか、言葉に迷うのですけど…。

あえて言うなら「ハイテンポで入れ替わる人間関係の上下の力場を固唾を飲んで観戦する」…そういうエキサイティングを届ける作品なのかな。

さっきも言ったとおり、めちゃくちゃ尖った映画なので、このアプローチが刺さればドハマりするし、刺さらないと「なにこれ?」ってなると思います。セクシャルな映画なのは間違いないけど…。

そして『チャレンジャーズ』の監督が、あの“ルカ・グァダニーノ”だというのもこの映画の個性を決定づけていますね。男性同士の恋愛の上下関係の緊張感を描いてみせた『君の名前で僕を呼んで』で世界的に知られるようになり、その後もリブート版『サスペリア』『ボーンズ アンド オール』など独特な作風の映画を生み出してきました。

“ルカ・グァダニーノ”監督が手がけていると言われると、どうしたってこの疑問もでてきますよね。この『チャレンジャーズ』はクィアを描くものなの?…と。

その答えは…う~ん…事前のネタバレ無しでなんて言えばいいのだろう…。ただ、「実はこのキャラクターはセクシュアル・マイノリティなんです!」みたいなあからさまなサプライズのネタに使うような古い手口はないです。それでも、表向きは異性愛(ストレート)に見せつつ、明らかに隠し切れない濃厚なクィアの匂いを漂わせてはきますよね。

観ればLGBTQコミュニティはザワつきたくなる。“ルカ・グァダニーノ”監督ってそういう反応を刺激させるのが上手いですよね。

『チャレンジャーズ』は主演である“ゼンデイヤ”もプロデューサーに入っており、感触が非常にZ世代感が強めでもあり、そこもニュー・エイジなクィア映画を突き進んでいる理由かもしれません。王道のエンパワーメントなやつとは違うので、そのへんの期待値は調整しておくといいでしょう。

また、今回の『チャレンジャーズ』は、脚本が”ジャスティン・クリツケス”という、今作で初キャリアとなる人物が担当しており、“ルカ・グァダニーノ”監督のフィルモグラフィーの中でも新しい風が吹いた感じもします。“ルカ・グァダニーノ”監督は今後もこの”ジャスティン・クリツケス”とタッグを組んで次作も撮るらしいので楽しみですね。

“ゼンデイヤ”と共演するのは、『ゴッズ・オウン・カントリー』“ジョシュ・オコナー”と、『ウエスト・サイド・ストーリー』“マイク・ファイスト”。 “マイク・ファイスト”は舞台劇での活躍のほうが先んじており、『Dear Evan Hansen』『Brokeback Mountain』で注目されてきました。こうやって振り返ると3人ともクィアな作品で活躍してますね。

『チャレンジャーズ』を鑑賞してどこの部分に熱中するかはあなたしだいです。

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『チャレンジャーズ』を観る前のQ&A

✔『チャレンジャーズ』の見どころ
★3人の人間関係の予測不可能さ。
★尖った癖のある演出。
✔『チャレンジャーズ』の欠点
☆非直線的なストーリーなので注意。
☆説明的なわかりやすさは乏しい。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:尖った作品が好みなら
友人 4.0:異なる視点を共有して
恋人 4.0:素直な恋愛作品ではないけど
キッズ 3.0:やや性描写あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『チャレンジャーズ』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

2019年、ニューヨーク州ニューロシェルで開催されたテニスのチャレンジャー大会。決勝戦が始まりました。対戦するのはアート・ドナルソンパトリック・ズワイグです。

第1セットはアートが一歩リード。その観客席の最前列で試合を観ているひとりの女性。多くの客はボールの動きに合わせて右左に首を振りますが、その女性タシ・ダンカンがサングラスの奥で見ているものは違って…。

2週間前。タシはアートの妻であり、コーチでもありました。世間一般には裕福な著名カップルとして知られています。幼い娘リリーもいますが、祖母に育児は任せています。夫婦のプライベートでは会話はあまりないです。

アートはトップのプロテニスプレイヤーで、部屋でも黙々とトレーニングを欠かせません。メディアでは本命と評されているも、実はグランドスラム制覇のための全米オープンだけは勝てていませんでした

あまりに不調が続くので、タシはニューヨーク州ニューロシェルで開催されるチャレンジャー大会にワイルドカードとしてアートに出場させる案を考えます。

一方、数日後。パトリックはモーテルに支払うカネもなく、車中泊で生活していました。チャレンジャー大会に参加することで優勝賞金7000ドルを狙っていましたが、ワイルドカード選手がアートだと知り、複雑な表情を浮かべます。

その決勝戦。アートとパトリックはプレーは荒くなっており、感情を抑えられていません。

13年前、学生時代のアートとパトリックはダブルスで息の合った連携によって全米オープンの男子ジュニアダブルスのタイトルを獲得。絶好調でした。

終わった後、一緒に試合観戦します。注目はタシ・ダンカン。パトリックはタシはホットな女性だと言いますが、確かに彼女がコートに登場した瞬間、2人は釘付けになります。しかも、パワフルなプレースタイルで対戦相手を一方的に圧倒。強すぎて2人とも笑ってしまいます。

後のパーティーにも2人は参加。目当てはタシです。タシはアディダスのスポンサーがついており、同じ若手ながら自分たちとは格が違いました。青いドレスのタシを遠くから眺める2人。タシは楽しそうに踊っています。話しかけ、一緒に浜辺へ。アートとパトリックはタバコを吸いながらチェアに座り、互いのテニスへの価値観を語ります。

しかも、その後に思いがけず2人の部屋にタシが訪ねてきて、3人仲良く床に座って談笑。タシはベッドに座り、2人を誘います。慌てて隣に座るアートとパトリック。それぞれに情熱的にキスし、1回ずつキスをした後、2人同時に首を密着。そこから3人同時のキスが入り乱れ…。

この『チャレンジャーズ』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/06/13に更新されています。
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隠しきれないクィア・エロティシズム

ここから『チャレンジャーズ』のネタバレありの感想本文です。

『チャレンジャーズ』に言及したクィア界隈の英語圏ウェブサイトを漁っていると、みんな「How gay is Challengers?」って疑問をあげていて、「やっぱりそこが気になるんだな」となんか笑ってしまいました。

本作は表向きで展開されるのは「アートとタシ」「パトリックとタシ」の典型的な恋愛の三角関係です。でも同時にあからさまに「Bi Love Triangle(バイセクシュアルな恋愛の三角関係)」を匂わせます。いや、もう匂わせるというレベルじゃなく、露骨だと言い切っていいくらいです。

とくにパトリックはわかりやすく、随所にクィア・コードが散りばめられています。

例えば、序盤、2019年時のパトリックは貧困状態でモーテルで交渉するもクレカ無しでは泊めてくれません。その受付で、モーテルに来た年配男性2人(おそらくゲイカップルかな?)のひとりに色目でコメントされています(もう片方からは結構酷い言われようだけども)。

次に、チャレンジャー大会に勝ち進むパトリックでしたが、肝心の宿泊場がないので、ロッカールームに座って焦りながらマッチングアプリの「Tinder」を使って手近の相手に媚びて寝泊まりしようと姑息に画策します。そのシーンでスマホ画面には女性と男性の両方をスワイプしているのが見られ、彼のセクシュアリティが垣間見えます。しかも、男性の写真で一瞬手が止まる挙動が観察でき、パトリックの中の迷いが滲むようです。それが裸の男たちに囲まれた男性更衣室で起きているのがまた心理的葛藤を表現しているようで…。

アートとパトリックが揃う場面でも同じです。パトリックがバナナを食べながらアートに目を合わせているシーン。2人がサウナで裸で対面しつつ「お前は眼中にない」みたいな牽制と挑発をし合うシーン。他にもあれこれ…。

この2人の男たちには常に性的な緊張感が張り詰め(英語で言うところの「spicy」な関係)、若かりし頃はふざけることで誤魔化していたのが、年を取るにつれ通用しなくなってきたぎこちなさを感じます。

正直、露骨なセックスシーンよりもなんてことはない日常のエロティシズムのほうが力が入っている気がする…。

“ルカ・グァダニーノ”監督はゲイ役に関してはあまり当事者起用しないタイプの人ですが、それでもちゃんとゲイらしさを醸し出せるだけの力量があるからなんでしょうね。

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「I TOLD YA」

そのスパイシーなアートとパトリックだけでも物語になりそうなのですが、『チャレンジャーズ』はここにタシというイレギュラーな存在を混ぜることで、物語の予測不可能性を引き立てます。

タシは面白いキャラクターで、こちらは表面上はセクシーな女性テニスプレイヤーというベタなトロフィーになりそうなところ、彼女自身の内が見えないものの何かの主体的意思を感じさせる堂々たる存在感で、物語の主導権を終始手にしています。

ファム・ファタール的な魔性の女とも違うんですよね。

少なくともタシは人格的にも非常に大人で、若くして慈善活動もしていますし、たぶんキャラクターの着想元として“ゼンデイヤ”本人が強く投影されているように思えます

一方、相対的にアートとパトリックは本当にガキにみえます。小学生くらいの幼稚さです。

そんなアートとパトリックをタシはどう見ているのか。タシは初出会いのビーチの場面で、自分のテニス論として「テニスはリレーションシップだ。対戦相手と恋に落ちるようなものだ」という感じの発言をします。

それを受けて、部屋に場面を移し、タシはアートとパトリックの関係をさらに掘り下げようとします。すると言わなきゃいいのに男2人は「自慰を教えて互いに同じ場でやったことがある」と告白してしまいます。「え?」とシチュエーション確認を要するあたりがまたシュールなんですが、タシには同性愛嫌悪が全然なくてむしろじっくり引き出している余裕すら感じる構えです。

そこでベッドに座って誘惑からのアートとパトリックのキスを眺めるシーンに繋がる…。

アートとパトリックには性的な緊張感がありますが、タシとアート&パトリックとの緊張感は性愛に依存しません。逆に男女の間に恋愛は表面に見えるものほどは無いようにも感じさせます。

タシとアート&パトリックとの間にあるのは、ジェンダーの緊張感ですね。負傷でスポーツ生命を絶たれ、それでもコーチのキャリアを追及するも、油断すれば女性の功績は抹消され(「GAME CHANGER”S”」)、この腑抜けの男たちに左右されてしまう危うさ。加えて、人種の緊張感。タシは有色人種女性で、どうしようもないホワイト・ボーイズを扱わないといけません。

その緊張感が複雑に絡まりまくって到達したゴール。第3セットのあの偶発的なネット越しのアートとパトリックのハグ。序盤でダブルスで優勝していた2人が無邪気にハグしていた構図のカムバックでもあります。

その光景に思わずあの「Come on!」と雄たけびをあげるタシ(初登場時に対戦相手にもやっていた高揚の叫びです)。「これを見たかった!」と言わんばかり。

このオチは、明らかに異性愛を期待している人を置いてけぼりにしていますし、なんだったら異性愛者が内面化しているホモフォビアを看破する力強さを感じました。また、この映画にクィアな化学反応の瞬間を期待する観客の心理を見透かされているような…どっちにせよ“ルカ・グァダニーノ”監督の手のひらの上です。

アートとパトリックもスポーツという見世物を超えて、己のやりたいことを剥き出しにしました。若き頃のようにタシのことをチラチラ見てはいません。相手しか視界にない。

アートとパトリックの間にあるのは、フラタニティ(兄弟愛)か、ロマンス(同性愛)か、はたまた別の強烈なリレーションシップなのか。とにかくタシは観たかったものを見てエキサイティングできたようですが、あなたはどうでしょうか?

『チャレンジャーズ』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
○(良い)
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関連作品紹介

テニスを主題にした映画の感想記事です。

・『ドリームプラン』

・『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

作品ポスター・画像 (C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. (C)2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

以上、『チャレンジャーズ』の感想でした。

Challengers (2024) [Japanese Review] 『チャレンジャーズ』考察・評価レビュー