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『シャークネード ラスト・チェーンソー』感想(ネタバレ)…さらば、伝説のサメ映画

シャークネード ラスト・チェーンソー

さらば、伝説のサメ映画!…映画『シャークネード ラスト・チェーンソー』(シャークネード6)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Last Sharknado: It’s About Time
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2018年11月2日
監督:アンソニー・C・フェランテ

シャークネード ラスト・チェーンソー

しゃーくねーど らすとちぇーんそー
シャークネード ラスト・チェーンソー

『シャークネード ラスト・チェーンソー』あらすじ

アメリカから世界、そして宇宙までをも舞台にしてシャークネードと戦い続けてきたフィン。しかしその代償は大きく、最愛の家族を失ってしまった。失意のどん底にいた彼は平和な時を取り戻すために時間旅行に旅立ち、過去のあらゆる時代で発生したシャークネードを壊滅していく。

『シャークネード ラスト・チェーンソー』感想(ネタバレなし)

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日本からのプレゼント

2018年も自然災害大国「日本」は散々な目に遭いました。予測できない噴火でスキー場に大量の噴石が降ってきたり、尋常ではない大雨で戦後最悪クラスの被害を出したり、台風がやたらと日本列島を綺麗に横断してくれたり、高潮で空港が水没しかけたり、はたまた地震で広範囲が丸ごとブラックアウトしたり…。毎年“ディザスター映画”状態です。

しかし。そんな日本にも襲ってきていない災害があります。それは「サメ」です。もう一度、繰り返します。「サメ」です。

空からサメは降ってこなかったでしょう? だったらまだマシだと考えましょう。ね。

あ、いや、帰らないでください、もう少し付き合ってください。はい、わかりました。『シャークネード』です、『シャークネード』の話がしたかったんです(懇願)。私は『シャークネード』が大好きな頭のオカシイ人間なんです(懺悔)。

竜巻に乗ってサメが襲ってくるというサメ映画の常識を変えたエポックメイキングなシリーズ『シャークネード』。そのシリーズがなんと6作目にして完結となることが決定しました。それが本作『シャークネード ラスト・チェーンソー』です。

えっ、もう見れないの? なんだこの喪失感。『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』のラストより悲しい…。というか『デッドプール2』でも、未来では『シャークネード』は何作まで続いているんだって聞いてたじゃないか。

でもさすがに製作陣もこれ以上はキツイと思ったのか。なにせ5作目があんな展開を迎えてしまったので収拾をつける必要がでてくるのは言うまでもなく…。原題の副題が「It’s About Time」になっているあたり、製作者の本音がこぼれてます。

ところが。さすがと言っていいのかわからないですが、自然災害大国「日本」は、表舞台から降りるこの偉大なサメ映画に最高の花道を用意してくれたのです。

それはなんと劇場公開するということ。しかも「4DX」で。

基本情報を書いておくと、まずこの『シャークネード』シリーズは本国アメリカでは「Syfy」というテレビチャンネルのTV映画です。お茶の間のテレビで見るのがデフォルトなのです。そんな作品ですから、過去作を日本で見る手段はDVDか動画配信サービスくらいでした。映画館なんてあり得ないステージです。

なのになぜか最新作にして最終作である本作に限って「4DX」という一番豪華な舞台を整えてくれました。どうした、日本。

もちろん嬉しいのですけど…なんというか、冷静に考えるといくら閑散期とはいえ、他に素晴らしい映画もたくさん上映されているのに、こんなサメ映画のために譲っていただいていいんですかという気持ちにもなる…。

そして、もうひとつ心配なことがあります。映画館で上映されているものですから、いきなり本作から見始める新参者が出てくるのではと。このノリにびっくりしないかな…。こんなの他の映画と比べてクオリティが低すぎる!って怒らないかな…。

子どもが迷惑かけないか心配な親みたいな心境ですよ。

とりあえず時間のある方は過去作5本の中でも比較的ネット配信もされていて見やすい4作目と5作目をきっちり鑑賞しておくだけでも良いと思います。

「シャークネードが通り過ぎた後にサメ映画ができる」というくらい、サメ映画というジャンルに無限の可能性を切り開いた『シャークネード』シリーズ。完結となる本作もサメ映画として大きな傷跡を残すに違いありません。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『シャークネード ラスト・チェーンソー』感想(ネタバレあり)

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とにかく時間旅行をします

本当に大きな傷跡を残しやがって…コイツ…。

予想はしていたけど、たぶんシリーズで一番ハチャメチャな一作だったと思います。これを「サメ映画」と呼んでいいのか躊躇するレベルです。「シャークネードが通り過ぎた後にサメ映画ができる」ってつい前に書いちゃったけど、前言撤回しようかな…

このシリーズ、1作目はわりと普通のサメ映画でした(まあ、空からサメは降ってくるんですけどね)。2作目・3作目はそんな強敵のサメたちとどう戦うかというところにスポットがあたっていました。4作目である種の最強に主人公は到達しました。

だから、正直、製作陣はもうやることなくなったんでしょうね。5作目の『シャークネード ワールド・タイフーン』あたりから、サメとの戦いは消化試合で、本筋は別のところにある路線に変更しています

5作目の目的はとにかく世界を回ること。世界ツアーです。シリーズ化すれば世界各地を舞台にするのはどのフランチャイズ映画もやっている当然のお約束です。ただ、このシリーズは5作目単体だけで世界を回り切ります。ずいぶんあっさりしてます。

続く本作『シャークネード ラスト・チェーンソー』は、じゃあ次はということで時代を回ることに。白亜紀の恐竜全盛期時代から、アーサー王物語の時代、アメリカ独立戦争時代、西部開拓時代、1作目の2013年、そして20013年。リアリティとかは完全に度外視で実に縦横無尽に現実とフィクションの壁をぶち壊しながら、時間旅行をしていきます。

その各時代でやることといえば、マーリンやモルガナ、ベンジャミン・フランクリンやジョージ・ワシントン、ビリー・ザ・キッドなど史実・伝説を彩る人物たちとテキトーに会話を繰り広げながら、ただシャークネードが襲ってきたら倒す。まあ、それだけです。正直、時代をめぐる必要性はたいして重要ではありません。

ノリが「モンティ・パイソン」でしたね。

不思議なことに1作目より断然B級感が増しているのはどういうことなのでしょうか。一般的なB級サメ映画は、テーマとなる主軸(なんらかのオリジナリティある作品のアイデンティティ)を段階的に発展させて続編を作っていくものですが、この『シャークネード』シリーズ、よくわからない方向に進化している…。少なくともジャンルすら変えかねない勢いでシリーズ化したサメ映画は他にないかも。

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意味不明という名の“カオス”

ギャグも本当にしょうもないものばかりで、ツッコむのもアホらしいのですが、「もういいよ!」というくらいのネタの応酬の中でも、タイムトラベルという武器を手にした本作はさらにギャグの自由度も増してしまいました。

「One Shark, Two Shark, Blue Shark, Red Shark」とか「It’s planet of the Aprils」とか、絶対に酒でも飲みながらのテンションで思いついたネタをぶっこんでいるだけだろうな…

あとサイボーグ化したエイプリルに関して製作陣も明らかに扱いに困っているとしか思えないのですが(シャークネード以上にファンタジーですから)、このシリーズは結局、シャークネードと戦うというよりは、この作品から明らかに浮いているメカ・エイプリルをどう片づけるかでラストを迎えたといってもいいでしょう。それでいいのかという疑念は…とりあえず捨てよう。

なにより最終バトルとなる、終盤のシャークネード内でのカオスっぷり。もうこの言葉がふさわしいです。「意味不明」…考えうる限りの知恵を絞っても、あんな映像にはならないです、普通は。絶対、これ、製作者はクスリを(以下略)。これ以上、何か語れます? やっぱりこれはサメ映画なのか疑わしくなってきたな…。

ちなみに相変わらずサメは空から降ってきますし、今作ではサーフボードで砂浜を移動したり、銃を持った人間の腕を噛みちぎりそのまま発砲してきたり、芸達者なことをしていますが、なんでしょうね、見慣れてしまったのか、とくに私は驚きませんでした。それくらいのことはあるよね…という認識。サメの基本的な生態の範囲内です。

むしろ今作はプテラノドン(プテロダクティルス)の知られざる驚異的な生態が明らかになったという部分で大きな学術的価値があったといえるのではないでしょうか。これはきっと学会が大騒ぎだな、うん。

これがシリーズを観続けた者の到達点なのか…。

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いい天気になあれ

シリーズの終着を見届けて、私として思ったことがあるとすれば、本作はサメ映画におけるとても大事なことを教えてくれました。

それは「別にサメは重要じゃない」ということ。

ほら、ヒッチコックの『鳥』だって、なんで鳥が襲ってくるのかとか、どうやって退治するのかとか、そういう疑問は最終的にはどうでもいいじゃないですか。それと同じです(えっ)。

サメ映画というのはサメが主役じゃなく、サメを倒すことも主軸ではない。サメなんてものは、あくまでお話の素材にすぎないと。

じゃあ、大事なのは何か。その世界で暮らす人間たちだと本作は伝えているのです。ちょっとどころではないレベルでたくさんサメで人間を殺してきたこのシリーズがそう語るのも変ですが、そういうことなんでしょう。

本作は全作品を通してずっと「フィン」という男の家族の物語。その男が世界を見て、時代を見て、アメリカという国の成り立ちを目にし、自分を見つめ直し、最後は本当に理想的な全員がハッピーエンドの中に立っている。ここまで後腐れもなく、みんなハッピーで終わるとは思いませんでしたが、やっぱりリアルが対立だらけのギスギスした世界になっている今、この『シャークネード』はあえてチェーンソーを置く道を選んだ。それが今の私たちがすべきことだからと。

まあ、以上のことは全部私の妄想ですが、ホントに制作陣は社会に対して「It’s About Time(そろそろにしよう)」って訴えているような気がしてきませんか。

映画の最後に表示された「Fin」の文字は、主人公の名前のサインだよね。“終わり”という意味じゃないよね。

そんなことを考えながら、シャークネードを愛する私は、今日も世界が“荒れ模様”ではなく“晴れ”になるといいなと空を見上げて思っています。

『シャークネード ラスト・チェーンソー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 20% Audience 44%
IMDb
3.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)2018 FELLS POINT PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

以上、『シャークネード ラスト・チェーンソー』の感想でした。

The Last Sharknado: It’s About Time (2018) [Japanese Review] 『シャークネード ラスト・チェーンソー』考察・評価レビュー