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ドラマ『SHOGUN 将軍』感想(ネタバレ)…真田広之を製作の将軍にしてください

SHOGUN 将軍

あとアンナ・サワイも製作の将軍にしてね…「Disney+」ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Shōgun
製作国:アメリカ(2024年)
シーズン1:2024年にDisney+で配信
原案:レイチェル・コンドウ、ジャスティン・マークス
DV-家庭内暴力-描写 ゴア描写 自然災害描写(地震) 性描写 恋愛描写
SHOGUN 将軍

しょうぐん
『SHOGUN 将軍』のポスター。主人公が甲冑を身に着けて馬にまたがる真正面の姿を映したデザイン。

『SHOGUN 将軍』物語 簡単紹介

権力の中枢にいた存在が消え、波乱の兆しが見え始める日本。窮地に立たされた武将である吉井虎永は、信用できる者を傍に置き、来るべき瞬間に備える。その家臣となったのは偶然に流れ着いた英国人航海士だった。そして、2人の運命の鍵を握る謎多きキリシタンの鞠子が裏で動く。壮大な謀り事が進行する中、この陰謀と策略が渦巻く戦国で勝ちあがることができるのは誰なのか。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『SHOGUN 将軍』の感想です。

『SHOGUN 将軍』感想(ネタバレなし)

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2024年、強さ増した将軍が出陣!

長らく付きまとっていたハリウッド映画などで日本の描写がどうもヘンテコになってしまう問題。日本人からは「なんで普通に描けないの?」と素朴に疑問が浮かぶかもしれません。

いろいろな理由があるでしょうが、やはり製作体制の問題は大きいです。ハリウッドではず~っとその作品製作においてアジア系の人たちが入る機会は乏しいものでした。そうなってくるとアジア系の人たちの声が反映されることはなかなか難しいです。

とくに製作の中心人物にアジア系の人たちが配置されているかどうかということは重要です。ハリウッドではプロデューサーに大きな製作上の権限があり、作品の企画から完成までを左右します。プロデューサーのひと言で、良くなる作品もあれば、台無しになる作品もあるでしょう。

しかし、このプロデューサーの名を連ねるのは難しいもので…。「なりたいです!」って言ってなれるものでもありません。過小評価されているアジア系には手が届きにくい椅子でした。

けれどもそんな状況は過去に置いて切り捨てていかないと…。そんな志を有言実行してみせ、アジア系クリエイティブの新たな時代を切り開いたドラマが2024年に登場しました。

それが本作『SHOGUN 将軍』です。

本作は、“ジェームズ・クラベル”が1975年に出版した小説『将軍』が原作となっています。“ジェームズ・クラベル”は軍人家系だったのですが、第二次世界大戦では日本軍の戦争捕虜となった経験があり、戦後に脚本家に転身します。『ハエ男の恐怖』(1958年)、『大脱走』(1963年)、『633爆撃隊』(1964年)などの脚本を手がけ、『いつも心に太陽』(1967年)では監督も務めました。

その“ジェームズ・クラベル”の小説『将軍』は日本の戦国時代を舞台にしており、架空の人名になっていますが、一応は史実の人物を基にした物語で構築されています。なので「このキャラはあの人物だな」と日本史をある程度わかっているなら推察できますが、歴史ifとして楽しめもします。

この小説は“ジェームズ・クラベル”自身の脚本で1980年に『将軍 SHŌGUN』としてアメリカでドラマ化しました。”三船敏郎”が主演し、アメリカ国内ではかなりの話題作だったのですが(日本が舞台など珍しかったのもある)、やっぱり日本の視聴者には違和感を感じたようです。

それから約40年後、2024年に再リメイクとなったのが本作『SHOGUN 将軍』。今回は日本での反応はどうなのかと思ったら、予想以上に話題をかっさらいました。動画配信サービス時代になり、日本の視聴者も海外ドラマ慣れしている中、「ハリウッドが日本を描く」という視点で興味を惹いたのだと思います。大河ドラマでもまずお目にかかれないハリウッド級の予算で戦国時代が描かれるのは新鮮です。

そして何よりも日本描写は日本人から見ても妥協のないクオリティだったというのも見ごたえを保証してくれます(史実どおりではないので歴史上の精密さはないですけどね)。

その品質に大きく貢献したであろう人が、本作の主演兼プロデューサーの“真田広之”。やっとハリウッドは“真田広之”にふさわしいキャリアを与えました。

あと、今作のショーランナーを務めた“レイチェル・コンドウ”も初仕事ながら素晴らしいクリエイティブを発揮しており、これは新しい座組を見せつけたんじゃないかな。2024年版『SHOGUN 将軍』の成功がハリウッドにどんな新風を起こすか、楽しみです。

“真田広之”と共演するのは、『Calm with Horses』“コスモ・ジャーヴィス”、ドラマ『Pachinko パチンコ』『モナーク: レガシー・オブ・モンスターズ』“アンナ・サワイ”などがハリウッド勢から参加。とくに“アンナ・サワイ”は日本語セリフも多いながらも名演をみせています。アメリカの反応でも“アンナ・サワイ”旋風が巻き起こってました。

日本で活躍する日本人勢もたくさん顔触れに加わっており、“浅野忠信”、“金井浩人”、“平岳大”、“阿部進之介”、“西岡徳馬”、“倉悠貴”、“二階堂ふみ”、“向里祐香”など。

日本のテレビで放映しているような時代劇ドラマと違って、ゴアなバイオレンスも性描写もたっぷりなので、だいぶ大人向けな貫禄ですが、日本の時代劇に見飽きている人ほど刺激的に満喫できるのではないでしょうか。

逆に非日本語圏の人たちはよくこんな特殊な日本語だらけのドラマを楽しめましたね。やっぱり新鮮で面白いのかな。

『SHOGUN 将軍』は「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中で、全10話です。

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『SHOGUN 将軍』を観る前のQ&A

✔『SHOGUN 将軍』の見どころ
★ハリウッド級のスケールの時代劇。
★俳優陣の名演。
✔『SHOGUN 将軍』の欠点
☆歴史的な精密さはそこまでではない。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:じっくり満喫
友人 4.0:一緒に盛り上がって
恋人 4.0:関心あれば
キッズ 1.5:露骨に性描写があり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『SHOGUN 将軍』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

1600年、霧深い夜の海。ボロボロの船がゆっくり航行していました。オランダの貿易船エラスムス号です。漂流状態にあり、船員は飢え、見るからにやつれくたびれた船長も絶望。しかし、水先人のイギリス人のジョン・ブラックソーンは諦めていませんでした。必ず陸地を見つけられると粘って…。

近くに日本という島国があるはずです。ただし、異国の地は良い話を聞きません。なんでも独自の文化があるらしく…。

船長は銃で命を絶ち、船は日本列島の網代という地に流れ着きました。不審な船の登場に地元の武士は警戒し、慎重に乗り込みます。船内を探索するとジョンと数人がかろうじて生きているだけ。白人なので異国人だとすぐにわかります。

ところかわって、大阪城に吉井虎永が来ます。石堂和成が待っていました。太閤が亡くなってから1年、五大老と呼ばれる5人の大名の家が領土を分割して統治していました。吉井虎永はそのひとりです。

関東を統治する吉井虎永は太閤にたてつくことが多い人物だったため、緊張感が走ります。「乱世は終わりを告げました」と吉井虎永は平静のままに語ります。一方で石堂和成は逆賊として厳しい処分を求め、1人と4人で大老は割れます。

非礼に思わず声を上げた吉井虎永の家臣のひとりの宇佐美忠義でしたが、吉井虎永は一切動揺せずになだめます。幼い八重千代が成熟するまで権力の座は誰のものになるのか、それがこの日本の火種でした。

話し合いを終え、吉井虎永に仕えて重用される戸田広松もなぜこの場に残るのかと疑問を口にしますが、吉井虎永は今は不利だとわかっていました。そして、網代に行って異国の船の件を確認してくれと頼みます。

その頃、網代にて例の船の現場にいるのは樫木央海。叔父の樫木藪重が検分に来るため待機です。ジョンたちは捕虜になっていました。

別の場所、無礼ゆえに罰を背覆った宇佐美忠義の妻の宇佐美藤は我が子を守ろうと抵抗していましたが、戸田広勝(文太郎)の妻となっている戸田鞠子は宇佐美忠義の短慮を攻めつつ、宇佐美藤を力強い言葉で落ち着かせます。

ジョンは樫木藪重の前に突き出され、通訳は日本と交流するイエズス会牧師ロドリゲスで、プロテスタントのジョンを海賊として処刑しようとテキトーな訳で危険人物に思わせようと画策されてしまいます。しかし、樫木藪重はこれまでと違う態度のジョンを気に入ります。樫木藪重は吉井虎永には先がないと推察し、どこかで出し抜けないかと思案していました。

戸田広松が到着し、抜け目なく船の武器を没収。樫木藪重は吉井虎永に筒抜けだったことを知り、村にスパイがいるのかと怪しみます。

こうしてロドリゲスと共に大阪城へ船で向かうことになったジョン。嵐の中、ジョンは指揮をとり、実力をみせます。

城に到着し、ジョンは吉井虎永と戸田鞠子の前にだされ、日本の文化に従って頭を下げます。ここには日本。全てが異なる地…。

この『SHOGUN 将軍』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/04/26に更新されています。
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最大のケレン味は言語にある

ここから『SHOGUN 将軍』のネタバレありの感想本文です。

ドラマ『SHOGUN 将軍』は「ハリウッドがいかにして日本時代劇を作るか」…その最新版の映像を堪能するだけでも贅沢に満喫できます。

切腹から爆殺まで首も四肢も吹っ飛ぶ激しいバイオレンスな表現が目につきますが、それはまあ、日本でもできることです(単にテレビ放送だとレーティングの問題でやらないだけで…)。

個人的にハリウッドらしいなと思うのは、ケレン味たっぷりなダイナミックなシーンが要所要所で挟まれることですね。予算がないとできないエンタメの味付けであり、比較的平坦に進行しやすい大河ドラマに見慣れた日本人観客にとっても目の覚める揺さぶりがありました。

第3話では黒船に乗り込んで海洋封鎖を突破する海戦一歩手前の緊迫感。かと思えば、第5話では大地震で山崩れが起き、全てを飲み込むという自然の驚異で人間たちのいざこざの小ささを相対化します。

映像的な派手さだけでなく、人間模様の錯綜する駆け引きも毎話で新展開があって面白いです。全10話にギュっと凝縮されているからこそですね。

象徴的なのは言語の要素で、本作では、英語と日本語が入り乱れます(厳密には、本来は日本語・英語・ポルトガル語・オランダ語が登場しているはずなのですが、さすがにそれだとわかりにくすぎると判断したのか、ポルトガル語は英語で置き換えられています。なのでちょっと辻褄が合わないところもあるのですが、そこは飲み込むしかないです)。

異なる言語であればミスコミュニケーションも起きます。しかし、そう単純ではありません。英語同士の間柄でも、日本語同士の間柄でも、意見のすれ違いがあったり、相手の真意が読めなかったりする。逆に片方が英語と片方が日本語のやりとりでも、通訳を介しながら、絶妙な対話があったりする。その奥深さをドラマチックに描いていて、白人視点の異文化体験で終わらない堂々たる物語が最初から最後まで一貫して流れていました。

その堅実な演出があったからこそ、最後の最後、関ヶ原の戦いに相当する…普通に考えたら一番の見せ場になりそうなシーンをあえて直接しっかり見せないという、相当に捻った終わり方ができていて、このラストはなかなか痺れましたね。というか、ますますこれ、日本史に詳しくない外国人にわかるのだろうかと(結局、吉井虎永と石堂和成の決着はどうなるの?って思っちゃうよね)、あの余韻に浸りながら思いましたけども…。

バイオレンスでも何でもないそのエンディングに最大のケレン味を残す…粋なことをしてくれるじゃないですか。

ともあれ、日本戦国史をわかりやすく映像化してくれる作品ではないので、これはもう別枠として、海外向け「日本戦国時代歴史ドキュメンタリー」を作ったらいいんですよ。『SHOGUN 将軍』需要に牽引されて、海外からの視聴者も一定数期待できるんじゃないかな。

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女を人質のように”家”に閉じ込める社会に抵抗を…

最近だとアニメ『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』でもそうだったのですが、この日本の封建社会を鋭く切るという点で、ジェンダーの視点で筋を通しており、ドラマ『SHOGUN 将軍』も随所にフェミニズムな切れ味がありました。

そもそものこの争いの前提が男たちによる醜い権力争いで、吉井虎永はそれとは距離をとり、平和な世を目指す男性像になっています。徳川家康に相当するキャラクターをそんな理想化していいのかという問題点はあるのですけども、吉井虎永の風を読んだうえでの謀が次の時代へと導いていきます。

対する、吉井虎永には一歩届かない男たち。DV手癖のある戸田広勝(文太郎)の自制心の弱さであったり、武勇憧れありきで有害な男らしさに先走って無様な転倒死の結末を迎えてしまう吉井長門の情けなさであったり、最後の最後で芯を通すことができずに血迷ったあげくに失墜した樫木藪重のあの達観した最期の瞬間であったり…。

見事に自己犠牲を払った戸田広松ほどの将来性を見通せる家臣はなかなかいないものです。

一方、本作の女性陣は、保守的な役割に収まっているようにみえて、一気に男以上に頭飛びぬける活躍があり、この女たちのケレン味も最高でしたね。

とくに本作の実質的な裏の「将軍」と言っていいだろう戸田鞠子。裏切り者の血を受け継ぎ、生かされているのはただ女の役目を果たすためであり、しかし、その全ての屈辱が表に怒りとなって現れる第9話。本作最大級の大見せ場ですが、“アンナ・サワイ”無双もあって、本作の象徴的存在として文句なしのキャラクターが完成されていました。「女を人質のように”家”に閉じ込めるな!」という家父長制への抵抗行進でしたよ。

しっかり落葉とのシスターフッドで締めるというあたりも丁寧です。

戸田鞠子とジョン・ブラックソーン(按針)との恋愛模様は別に要らなかったんじゃないかなとは思ったけども…。あと、吟や菊といった遊女たちの行く末の物語は、これは時代的にあそこまでしか描けないのでしょうがないとは言え、やや到達点不足なところはありました。

それでも全体としては、ドラマ『SHOGUN 将軍』はオリエンタリズムに陥らず、ちゃんと切り捨てるべきところはバッサリいくという思い切りのよさがあって良かったです。

これもショーランナーの“レイチェル・コンドウ”を中心に、脚本チームの”エミリー・ヨシダ”、“メーガン・ホアン”、さらにはエグゼクティブプロデューサーの”ミカエラ・クラベル”(原作者”ジェームズ・クラベル”の娘)など、女性クリエイター勢の的確な仕事のおかげでしょう。

ドラマ『SHOGUN 将軍』は今回できっちり終わっているのでこれ以上の続編は蛇足だと思います。ただこの実績は無駄にしてほしくないので、また新しい日本歴史系のハリウッド製作ドラマシリーズを築き上げてほしいですね。遊郭とか、いくらでも主題はあるでしょうし…。

『SHOGUN 将軍』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 99% Audience 91%
IMDb
9.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)2024 Disney

以上、『SHOGUN 将軍』の感想でした。

Shōgun (2024) [Japanese Review] 『SHOGUN 将軍』考察・評価レビュー