続きです…「Netflix」映画『REBEL MOON: パート2 傷跡を刻む者』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本では劇場未公開:2024年にNetflixで配信
監督:ザック・スナイダー
恋愛描写
れべるむーん ぱーとつー きずあとをきざむもの
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』物語 簡単紹介
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』感想(ネタバレなし)
さっそくパート2です
“ザック・スナイダー”監督が「私の考えた“スター・ウォーズ”を映像化させてくれ!」と夜空に輝く星にお願いをすると、きらりんとどこからともなく「Netflix」という妖精が現れて、魔法で「わかりました。映画を作っていいですよ」と願いを叶えてくれました。
めでたしめでたし…。
いや、終わってません。頑張らないといけないのはこれからです。
もちろん『スター・ウォーズ』のタイトルを引っ提げることはできないので、オリジナルな世界観です。まあ、ほとんど同じだけど…。
こうして自分がやりたかった企画を実現するべく壮大な一歩となったのが2023年の『REBEL MOON パート1 炎の子』。
その盛大な花火の打ち上げから早くも5カ月後にさっそく第2弾です。
それが本作『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』。
同時撮影ですし、そもそも1本の映画だったのを2本に分けたらしいので、パート1とパート2は文字どおり、前後編の二部作で、完全に繋がっています。
1作目のエンディングからそのまま2作目である本作の物語はスタート。「世界観もキャラクターも前作で描いたから次いくぞ!」という決戦一歩手前で始まります。
相変わらず全編にわたって“ザック・スナイダー”の趣味全開で、“ザック・スナイダー”の好物の映像だけで結集しました!というノリですけどね。
ということで本作『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』を観る前にまずは1作目を観ましょう。観たけど覚えていない人は「なんやかんやあって仲間を集めて村に戻ってきました」という流れだけわかっていればいいです。
俳優陣は完全に前作と共通です(むしろ前作より全体数は少ない)。
主人公として堂々と前に立ち、勇ましくアクションを連発するのは“ソフィア・ブテラ”です。2012年の『ストリートダンス2』で映画主演デビューを果たしましたが、有名になったのはやっぱり2015年の『キングスマン』ですね。本人はまだ俳優としての自信が当初はなかったみたいですが、じゅうぶん主役を張れるだけのポテンシャルを持っていて、それがこの『REBEL MOON』シリーズではいかんなく発揮されています。このシリーズの最大の功績は“ソフィア・ブテラ”の主役のパワーを最大限に見せつけたことじゃないかな。
今作でも短髪スタイルですが、“ソフィア・ブテラ”が“ザック・スナイダー”監督に「丸刈りにしたい」と提案したらしいです(Decider)。このシリーズではファッション含め、キャラクター構築について、“ソフィア・ブテラ”本人の意向も反映されており、やりやすかったとインタビューでも語っています。
ちなみに“ソフィア・ブテラ”は北アフリカのアルジェリア出身で、1991年に始まったアルジェリア内戦から逃れるために、10歳のときに家族でフランスに渡って来た経歴があります。そういう点では戦乱の怖さは身をもって知っているんですね。
次に出番が多いのは、オランダ出身の“ミキール・ハースマン”。Netflixとの付き合いはドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』や映画『紅海リゾート 奇跡の救出計画』など近頃は充実してます。
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』は約2時間のボリューム。ゆっくりな展開も多々あるので全体の体感時間はもっと長めかもしれないですが…。映像面の迫力はあるので、できれば大きい画面で観たいです。
”ザック・スナイダー”の脳内宇宙ワールドにまたも参戦したい方はどうぞ。
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2024年4月19日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :気楽に眺めて |
友人 | :エンタメを気軽に |
恋人 | :自由に流し見でも |
キッズ | :やや暴力描写あり |
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
宇宙に広がるマザーワールドを実効支配する摂政バリサリウスは、辺境の惑星であろうとも容赦なく蹂躙し、歯向かう者は滅ぼし、従属する者からは資源を搾取していました。
辺境の衛星ヴェルトにある農畜を営む小さな村もその残虐な魔の手が伸びていました。しかし、この村にはたまたま少し前から流れ着いていたコラという人物がいました。そしてこのコラは実はバリサリウスの養女であり、アースレイアスと名付けられ、インペリウム(帝国軍)の第一線で活躍してきた過去がありました。
今、コラは封印した過去に決着をつけるときが迫ったと実感し、村に突然やってきたアティカス・ノーブル提督を打倒するべく、頼りになる仲間を集めて各地を巡ることにしました。
結果、集まったのは5人です。
元貴族で動物と絆を作ることができる屈強なタラク、寡黙で謎めいたサイボーグ・ブレード使いのネメシス、伝説の将軍だったものの部下を見殺しにしてしまった無念を引きずるタイタス、反乱軍を率いるブラッドアックス姉弟に身を捧げる一番の部下のミリアス、そして当初は抵抗に消極的であったものの今では覚悟を決めた村出身のガンナー。
コラを含めたこの6名は、ノーブル提督の攻撃をかいくぐり、逆に強烈な反撃を決めて、意気揚々と村に帰ってきました。
村はまさかここまでの戦果をあげて帰還するとは思っておらず、コラの雄姿に感嘆します。
ノーブル提督は死んだとコラは伝えますが、ホっとしたのもつかの間、この村に残って嘘の定期報告で帝国軍を騙していた元二等兵アリスが、軍が5日後にここに来ると知らせてきます。これでは戦いは避けられません。
タイタスは村人を集め、覚悟を決めるように諭し、急いで収穫しようと呼びかけます。もちろん単に収穫物を渡すつもりはありません。それすらも利用し、反逆するときが来たのです。
そんなつかの間、コラとガンナーは関係を深め、コラは養父バリサリウスに従っていた時代のことを打ち明けます。イサ姫の護衛だった頃、進宙式を装って実際はイサ姫の王家を抹殺する策略が実行される中、命令に忠実なコラはイサ姫に銃を向けるも、若きイサ姫は「許す」と口にし、コラは銃を撃ち、そのイサ姫の体は光を放って倒れました。けれども、コラは暗殺者として捕らえられそうになり、自分が使い捨てられたと感じ、逃げ出し、この村に流れ着いた…。
否定できない過去を噛みしめ、今を生きるしかありません。
翌朝、収穫作業が大急ぎで始まり、なんとか製粉まで含めてそれは完了。次に、防衛の準備が進められ、塹壕を掘り、武器の使い方の訓練、そして作戦の確認が行われます。穀物を遮蔽物に使い、以前にコラが乗ってきた船を運んできて動作チェックも済まします。村娘のサムも一緒に戦う意志は満々です。
その頃、ノーブル提督は特殊な技術で命を取り留め、目を覚ましていました。本来はもっと治療に専念しなければいけないのですが、復帰したいと怒鳴り散らし、部下を殺して威圧。ノーブルは現場に戻り、カシアス司令官に対して、「スカーギヴァーはヴェルトにいる」と告げます。自分に屈辱を与えてきたあのコラという人間はずっと追いかけてきた存在に違いないと目をつけて…。
すでにあのヴェルトの村に駐留しているはずの帝国兵は全滅し、定期報告している二等兵は寝返っていると推察されていました。
そこまでバレているとは知らず、コラたちは村の上空に弩級艦(ドレッドノート)が出現して、あらためて対峙する敵の強大さを思い知ることに…。
スローモーション収穫
ここから『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』のネタバレありの感想本文です。
『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』は前述したとおり、1作目のエンディングから開幕。あれだけ前作で激戦が繰り広げられたので、今回は冒頭から大乱闘の絶え間ない連続かなと思って鑑賞したら、まさかの農業シミュレーションゲームみたいなことが始まりました。
理屈としてはわかります。穀物を入れた雑袋を積み上げて盾にすれば、穀物年貢狙いの軍は迂闊に攻撃できまいという策。なんでこの世界の帝国は昔の日本の租税スタイルで成り立っているのか、前作から疑問でしたけども(米が主食なの?)、とにかくその国家体制の詳細は今作では1ミリも明かされないので頭に浮かんだクエスチョンは無理やり袋詰めして一緒に出荷してやりましょう。
しかし、“ザック・スナイダー”お得意のスローモーション演出はアクションだけでなく、この収穫にも発揮されるとはね…。
樽から水を補充する仕草までスローですよ。あのせっかく集めたメンバーも一丸となって収穫作業をする姿が、やたらビジュアル的にカッコよく映し出されます。これがスペースオペラ農業なのか…。
そのかいあって、スローモーション収穫の尺的な長さゆえに、映画始まってもう30分経過したのに収穫しかしてないです。普通こんな展開予測できます? 派手なビッグスケールのSFを観に来たと思ったら、収穫をスローで眺めることに序盤は費やすんですよ。農業専門の学校でもこんな授業はしないですよ。
なお、私はこのサイトの感想記事で、基本的に「あらすじ(前半)」と書いていく際は、たいていはその映画の冒頭から20~30分の間に起きる展開を整理しているんですけど、この『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』は本当に収穫しかしていないので困りました。思わず再生画面の経過時間を見てびっくりしてしまいましたよ。「あれ、収穫くらいしかメインで描かれてなくない!?」って…。
“ザック・スナイダー”監督としてはここは絶対にカットできないシーンだと考えたのでしょう。ストーリー上はタイムリミットが迫っていて急がないといけないのに、スローモーションなものだから演出として辻褄が合わないのではないかと、凡人の私なんかは思ってしまうけど、プロフェッショナルの監督にはそんな矛盾は些細なことなんです。
なんでもあの収穫シーン、本当に出演者みんなで実際に野外で作業をして収穫したらしいです(Decider)。俳優の皆さんはわりと楽しかったみたいなので、まあ、いいか。
ノーブル提督のその意見には納得
そんなスローモーションの是非はさておき、“ザック・スナイダー”監督がこの『REBEL MOON』のパート1とパート2でやりたかったことは言わずもがなです。『七人の侍』です。自分流のSF風『七人の侍』ができればそれでいいんです。
“ジョージ・ルーカス”の『スター・ウォーズ』だって『七人の侍』を部分的になぞっていましたが(その後の拡張派生作品でもオマージュが多々見られる)、“ザック・スナイダー”監督は丸ごと『七人の侍』です。豪快ですよ。あの鹿角のジミーも終盤に参戦して7人になります。
本家『七人の侍』も207分ある超大作なのですが、“ザック・スナイダー”監督はパート1とパート2に分割して合わせて約255分です。
正直、4時間になっていてもいいから1作に収めても良かったのではないかと思わなくもないです。実際この『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』は最終決戦のわりには中身が薄くなってしまっています。
舞台もあの村から動きませんし、1作目であれだけいろいろな世界を見せたにもかかわらず、この2作目では全く拡張も具体化もされないというのは、若干の物足りなさは残ります。
各仲間たちの過去回想も各自スローモーションで描かれますが、苦悩的な心象風景に留まるので、そういうのを求めているわけじゃないのだよなと感じながら観てました。もっと世界観に肉付けしたキャラクターの深掘りと、キャラクター同士のリレーションシップの心地よさを満喫したかった…。
ノーブル提督のしつこさ込みのキャラクター性は2作目にして少し好きになってきていました。あの「穀物はもうどうでもいいんだ」という判断は、前述のこの年貢システムの意味不明さも相まって、思わず納得してしまいそうになりましたよ。
一体どこにそんな度胸があるんだというくらいにアグレッシブな攻めの姿勢のノーブル提督ですが、今回はコラとセイバーで斬りつけ合う(斜め滑りアクションつき)という、前回よりは見ごたえのある互角そうな戦闘ができていました。成長したよ、ノーブル!
頭、切り落とされちゃったけど…。これで次回作でもまた蘇ったら伝説になるな…。いっそもうこれをお約束の流れにして、絶対に死なないノーブルというキャラ方針でいってほしいまである。
無事に弩級艦を轟沈させ、村は勝利をおさめました。ガンナーは戦死してしまいましたし、他にも犠牲はでたのですが、これはこの宇宙において歴史を変える勝ちになったのでしょう。
そして間髪入れず「イサ姫を捜し出そう」という次の目的ができます。全くイサ姫が何なのかわからずじまいだったからね…。
『REBEL MOON』は当初は3部作を予定していて、1本目の映画がこのパート1とパート2に分割されたので、もう2本分のストーリーが残っているそうです。その2本ともまたも分割したら計4本の映画になってしまいます。Netflixの妖精もさすがに4本の映画にGOサインはださない気がしますが、予算を縮小してあと1本くらいは作ってもいいんじゃないかな。分割なしで、スロー控えめでね…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 16% Audience 45%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix レベル・ムーン2
以上、『REBEL MOON パート2 傷跡を刻む者』の感想でした。
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