ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ
映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Founder  
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年7月29日 
監督:ジョン・リー・ハンコック 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

1954年、シェイクミキサーのセールスマンであるレイ・クロックが出会ったのは、マックとディックのマクドナルド兄弟が経営するカリフォルニア州南部にあるバーガーショップ「マクドナルド」だった。合理的なサービス、コスト削減、高品質という、店のコンセプトに勝機を見出したクロックは兄弟を説得し、「マクドナルド」のフランチャイズ化を展開する。

ネタバレなし感想

マクドナルドを作った男は誰だ

どんな組織にも必ず存在しているのに、一番目立たないポジションの人はだ~れだ。

なんか“なぞなぞ”みたいになってしまいましたが、その答えは「創業者(founder)」です。社長やCEOではないですよ。もちろん創業者が普通は最初は社長なのですが、組織がある程度成長すると変わったりするので、創業者の影が薄くなったりすることも多々あります。もしくは創業者よりも有名になってしまう人がいたりするとなおさら。

意外と知られていない創業者は、映画界にもいます。

例えば、皆さんが知っているCGアニメの先駆者である“ピクサー”の創業者は誰でしょうか。ピクサーといえば「ジョン・ラセター」が有名ですが、彼が組織の前身時代から始めたわけではありません。実はそれよりも前にいたのは「エドウィン・キャットマル」という人物です。また、ピクサーをディズニーと対等なくらいビジネス面で成功に導いたのは、ご存知Appleの「スティーブ・ジョブズ」だったりします。

本作『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』もそんな創業者の知られざるお話です。

題材となる企業は、みんな一度は食べたことがある?世界的ファストフードの王者「マクドナルド」。えっ、マクドナルドを創業したのは「マクドナルド」っていう名前の人なんじゃないの?と思ったら、創業者の名前は実は「レイ・クロック」なんです…。

例えば、日本のマクドナルドの公式サイトの「レストラン・ビジネスの考え方」のページには、こうあります。
本来、食に関わるすべての人々が重視しなければならない、Cleanliness (清潔さ)の重要性を再認識したところからマクドナルドはスタートしました。創業者レイ・クロックは、"Clean as you go" 「行くところすべてきれいに」と指導。このように店舗・厨房の清潔さを徹底して追究するというクロックの精神は、マニュアルのひとつひとつの業務や厨房機器の設計にまで活かされ、実践されています。
どういうことか。この疑問に迫る伝記映画です。

そんな問題の人物であるレイ・クロックを演じているのは、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇)』で落ち目となって起死回生のためにあがく役者を熱演したことで多数の賞を総なめにした“マイケル・キートン”。その後も『スポットライト 世紀のスクープ』でまたもや賞に輝いたり、『スパイダーマン ホームカミング』でアメコミ映画に悪役として返り咲いたりと、大活躍。
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この彼の俳優復活人生が図らずとも作中のレイ・クロックの人生とも重なっているので不思議な説得力があります。まさに“マイケル・キートン”が演じるべきキャラクターです。

この映画を観てビジネスの勉強になるかはわかりませんが、少なくともマクドナルドのイメージがまた変わってくるとは思います。

私も本作を劇場で観終わった後は、食べましたよ。ロッテリアを(えっ)。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

レイ・クロックだけが気づいたチャンス

本作がまず面白いのは当時の軽食における飲食店事情がわかることです。舞台は1950年代。この時代を描いた映画などは数多くありますが、こういう食事の光景はサラっと背景で描かれる程度でしたから、本作でガッツリ描くのは新鮮な発見も多くありました。

例えば、当時、「ドライブイン」と呼ばれる商業施設利用スタイルは、駐車場に車を停めて車まで店員(この接客店員をカーホップと呼ぶそうです)がオーダーをとりにくる方法。これは1921年に最初に考案されたらしいです。

それと比較して、モーリス・マック・マクドナルドとリチャード・ディック・ジェイ・マクドナルドのマクドナルド兄弟が考え出した方法は確かに画期的。客に店舗のカウンターまで来てもらうという負担の代わりに、調理工程が全て組み立て式で効率化したことで注文から出来上がりが異常な速さを実現し、客に大きなメリットを与える。このスピーディ・システムの誕生を話すマクドナルド兄弟の話は面白いです。テニスコートで店員の動きをシミュレーションし、スクラップ&ビルドを繰り返す過程とか、私もワクワクしました。

そんなワクワクを同じく感じていたのが、レイ・クロックでした。

ここで普通だったらマネをして自分の事業に取り入れるぐらいの対応がせいぜいのはずですが、レイ・クロックは違いました。マルチミキサー販売をすっぱり止めて、マクドナルド兄弟の店をフランチャイズ展開する計画に舵を変えます。

なぜ自分で店を始めることはしなかったのか。その真意らしきことは映画の終盤で語られます。トイレでのディックと会話で「マクドナルドという名前がアメリカっぽくていい」と言い放つレイ・クロック。これが本当の理由かどうかはわかりませんが、このことを当初から考えていたのだとしたら、これこそがレイ・クロックのオリジナルな視点だったのかもしれません。マクドナルド兄弟さえも気づいていなかった、ビジネス成功の鍵なわけですから。

勝ち上がった奴が創業者

本作では、序盤が終わるとあとはずっと、レイ・クロックとマクドナルド兄弟の立場が逆転していく過程をじっくり描き出していくだけです。

この構成は、本作の監督である“ジョン・リー・ハンコック”が本作の前に手がけた『ウォルト・ディズニーの約束』でも見られたものです。この映画は、1964年のディズニー映画『メリー・ポピンズ』の製作舞台裏を描いたもので、原作者のパメラ・トラヴァースと映画製作のトップであるウォルト・ディズニーとのパワーバランスの変化を描いています。こちらはある意味「創業者(founder)」ではなく「創造者(creater)」は誰かという話ですね。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』では、明確にレイ・クロックが勝ったというオチがつくぶん、わかりやすいです。一方で演出でさりげなく見せるのも上手く、とくに何度か繰り返される電話のやりとりは注目ポイント。電話をかけてくる相手がレイ・クロックからマクドナルド兄弟に変わり、しかも兄弟の中でも比較的不信感の強いディックからマックへと怒る人間が変化していくという二重の仕掛け。最終的に「あいつには勝てない」と認めてしまい、マクドナルドの名前を奪われた兄弟が自分の魅せの看板を外されるシーンは悲しい光景です。

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

サクセスストーリーには必ず裏がある

そんな感じで本作を観た人の多くは間違いなくマクドナルド兄弟に同情し、レイ・クロックを悪者とみなすでしょうが、決してそんな単純な話にしてもいないのが本作の良いところ。

そもそもこの当時のレイ・クロックは52歳。マクドナルドとの運命の出会いに至るまでに、ピアニスト、ジャズ演奏家、バンド、色々なものを売るセールスマンと、かなり転々とした地を這うような人生を送ってきたわけです。しかも、マクドナルド・ビジネスにたどり着く前に、糖尿病と関節炎で胆嚢を全摘出し、甲状腺の大半を失っていたそうです。つまり、彼もまた結構哀れなんですね。でも、本作はそこをあえて強調せず、銀行から融資をもらいにいく際に邪見に扱われるくだりでサラっと描く程度。レイ・クロックのサクセスストーリーにもできそうなものをあえて外しているのです。

レイ・クロックがセールスの口上に使う「鶏が先か、卵が先か」という慣用句。これは創業者は誰かという本作のテーマとリンクしますが、結局は「金と権力と運」で決まるという、もっとも現実的で厳しい結果しか待っていませんでした。

しかし、そんな勝ち組となったように見えるレイ・クロックも、講演で自分が全ての始まりかのように語ろうとしても言葉は出ません。当然です。知らないことがあるのですから。成功の過程で何かを失っているのです。

でも、それがビジネスですよね。何かを払って何かを得る。

映画によく登場するサクセスストーリーにも、その裏には誰かの犠牲があるということを、本作は教えてくれているような気がしました。

ちなみに日本のマクドナルドはしばらく経営不振だったのですが、2014年になってカナダ人の女性が社長兼CEOになってから業績が急上昇、2017年には純利益が過去最高を記録するなど、復活を遂げています。誰がトップに立つか…きっと今でもドラマがたくさんあるのでしょうね。

↑本作の監督が手がけた前作『ウォルト・ディズニーの約束』。こちらも大人の対立が見物。

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