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ドラマ『POSE ポーズ』感想(ネタバレ)…ボール・カルチャーを当事者主体で描く画期的ドラマ

POSE ポーズ

ボール・カルチャーを当事者目線で描く…ドラマシリーズ『POSE ポーズ』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Pose
製作国:アメリカ(2018年)
シーズン1:2019年にFOXチャンネルで配信
シーズン2:2020年にFOXチャンネルで配信
シーズン3:2022年にDisney+で配信(日本)
原案:ライアン・マーフィー、ブラッド・ファルチャック、スティーブン・キャナルス
性暴力描写 LGBTQ差別描写 人種差別描写 性描写 恋愛描写

POSE ポーズ

ぽーず
POSE ポーズ

『POSE ポーズ』あらすじ

1980年代のアメリカ・ニューヨーク。世間から差別を受けて居場所を失うLGBTQの若者たちは母親代わりの「マザー」の元に集まり、「ハウス」と呼ばれるコミュニティで共同生活を送っていた。そして、ダンスホールに集まっては、ファッションとパフォーマンスで“自分らしさ”を自由に表現して競い合っていた。それが「ボール」と呼ばれる世界。ここでは誰も自分を縛るものなどない。

『POSE ポーズ』感想(ネタバレなし)

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これが私たちの文化だ!

LGBTQはダイバーシティの関心の高まりによって少しずつ理解が広がってきました。しかし、それでもまだまだ認知が浸透していない物事はいっぱいあります。

それはLGBTQ当事者も実は同じです。LGBTQという言い方でざっくりとひとまとめにされていますが、自分とは異なるジェンダーやセクシュアリティについてはたとえ自分がセクシャル・マイノリティだとしてもわからなかったり、誤解していたりするものです。

さらに同じジェンダーやセクシュアリティであったとしても無知な世界もあります。なぜなら地域や人種によって独自の文化があったりするからです。別に絶対に学習しないといけないものでもないのですが、やはり知ろうという関心を持つことはとても良いことだと私は思います。それは差別や偏見を乗り越える最初の一歩です。それに別の地域や人種に根付くカルチャーに、自分たちが自分らしく生きるためのヒントが隠れているかもしれません。勇気をもらえることもあるでしょう。決して無駄ではないはずです。

今回の紹介するのは映画ではなくドラマシリーズですが、LGBTQ当事者もLGBTQではない人もぜひ気軽に鑑賞してほしい、見やすい作品です。

それが本作『POSE ポーズ』

本作はニューヨークで暮らすアフリカ系やラテン系のトランスジェンダーなどのLGBTQコミュニティにとっての社交の場になっている「ボール(Ball )」という文化を題材にしています。

とは言っても「ボール」なんて聞きなれない言葉ですし、大半の人はさっぱりだと思います。私もそうです。おそらく日本のトランスジェンダーの人たちでさえ、「ボール」について熟知している人は珍しいでしょう。

でも大丈夫。本作はそういうボール初心者の人をこの世界にツアーさせるような、入門編的な一作になっています。百聞は一見に如かず。本作で「ボール」の世界をたっぷり垣間見ることができます。なので予備知識などは一切要りません。

『POSE ポーズ』は躍進を続けるLGBTQ作品の中でもひときわ決定的なネクストステージを印象づける快挙を成し遂げた一作として、界隈では話題沸騰になっていました。

なぜかと言うと、本作は当事者がとても多く製作に関与しているからです。

以前もLGBTQ特有のショーカルチャーを扱った作品はありました。例えば『バーレスク』(2010年)もまさにそうでしたが、一方で当事者からは実際と違いすぎると批判を受けてもいました。要するに当事者も大納得の「私たちの文化はこれだ!」という自信を持って言える作品は全然なかったのです。

そんな経緯がある中で、この『POSE ポーズ』はついにやってくれたと拍手喝采を浴びました。製作は『glee グリー』などを手がけたことで有名な“ライアン・マーフィー”らであり(ちなみに彼も同性愛者)、ここは割と普通。しかし、プロデューサーにはトランスジェンダー権利活動家として著名な“ジャネット・モック”、リアルなトランスジェンダーの人生を描いたことで話題のドラマ『トランスペアレント』に携わった“Our Lady J”などが参加。さらにハリウッドでは異例の史上最大規模となる総勢50名以上のトランスジェンダー・キャストが起用

つまり、かつてない当事者関与の作品になったわけです。これは本当に歴史的であり、その興奮をトランスジェンダー自身が語るドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』を見れば、どれほど画期的かはよく理解できるでしょう。だからこそ当事者の生々しい葛藤や苦悩も描写されており、なんとなく題材にした程度のお手軽さではない、真剣な作品にもなっています。

結果、『POSE ポーズ』はエミー賞やゴールデン・グローブ賞でも大注目され、批評家にも絶賛されました。でもその評価以上にこういう作品が生み出されたことの事実の方が大事ですけどね。

その『POSE ポーズ』は2019年にFOXチャンネル(FX)で放送していたのですが、日本では2020年からNetflixでも配信を開始したので見やすくなりました。

追記:2022年にNetflixでの配信が終了し、日本では「Disney+」で配信されるようになりました(FX系列のドラマは基本は「Disney+」での扱いとなります)。

詳しくは後半の感想で語りますが、題材は特殊そうに思えるでしょうけど、実際は幅広い人を感動させる王道の物語が待っており、ニッチな作品ではありません。

「ボール」の世界は身近になりました。入り口はこちらです。

オススメ度のチェック

ひとり5.0:誰でも入りやすい楽しさ
友人5.0:気分の盛り上がるエンタメ
恋人4.5:ロマンス要素多数
キッズ4.0:ティーンなら観てほしい
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『POSE ポーズ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『POSE ポーズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):ボールルームへようこそ

1987年のニューヨーク。ある部屋で何人かが集まって何やら議論をしています。そのひとりであるブランカは意見を出しますが、全然相手にもされず、リーダーと思われるエレクトラが良いところをとり、「今こそ私たちの真価を示すときよ」と何かを決行し出します。

そして、一同でたどり着いたのは美術館。何をするのかと思えば、隠れて閉館後にロイヤルな装飾品を盗みだします。そして一目散に逃走。

これだけだとただの窃盗団に見えますが、そうではありません(わざと『オーシャンズ11』っぽい導入にする作り手のお遊びですね)。あの集団は「ハウス・オブ・アバンダンス」というグループであり、目的は「ボール」

今日のボールは王家をカテゴリー・テーマにしたショー審査が開催されます。ハウス・オブ・アバンダンスの面々は盗ってきた代物を身にまとい、熱狂を集めます。クイーンにしてマザーであるエレクトラの登場でひときわ歓声があがり、満点を連発、優勝です。そこへ警察、一同に手錠をかけますが、本人も周囲も満足そうでした。

一方、別の場所。ペンシルベニア州のアレンタウン。部屋でノリノリ踊る少年がひとり。そこへ父がやってきて「バレエダンスは禁止したはずだ、17歳、男だろ、言ってみろ!」と叱りつけます。しかし、その少年デイモン自分はダンサーでゲイだとハッキリ明言。ビンタされ、あげくに家を追い出されてしまいました。

「ハウス・オブ・アバンダンス」に所属するブランカは病院でHIVに感染していると診断され、意気消沈。そして残された時間は少ないのかもしれないと思い、ずっと夢だったあることに着手すると覚悟を決めます。

まず部屋を決定。壁は汚れ、ガラスは割れているけど気に入って即決。そしてマザーであるエレクトラに「ハウス・オブ・アバンダンス」を抜けると宣言。「私は自分のハウスを作る」と言い放ちます。しかし、エレクトラは激怒。「私に恩を返しなさい」と裏切り者呼ばわりしますが、ブランカの心は揺るぎません。

家を失ったデイモンは公園のベンチで野宿するしかありません。公園で踊って小銭を稼いでいると、たまたま通りかかったブランカに目撃され、「一緒にボールで競わない?」と誘われます。「ボールって何?」と訊ねるデイモン。

そして、いざボールルームへ案内され、圧倒されたデイモンはブランカの作った「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」に加わることに決めました。

デイモンはブランカの強い勧めでダンススクールにも通うことにします。リッキーという恋人もでき、彼も「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」に参加することに。

また、スタンというトランプタワーで働くアッパーミドルの白人男を愛人に持つエンジェルも加わり、さらには、実は裏ではドラッグの売人をしているパピという奴も加わって、ハウスは賑やかになります。的確な助言をくれるプレイ・テルという頼もしい味方もいます。

最大のライバルはもちろん「ハウス・オブ・アバンダンス」。ボールでの勝負は一進一退。プライドをかけたぶつかり合いです。

今日も司会のプレイ・テルの饒舌な盛り上げ&ミュージックとともにショーが始まります。

「The category is … Live … Work … Pose!」

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ボール・カルチャーを知る

『POSE ポーズ』の主題になっている「ボール」という文化。私は門外漢なので素人が何も語れることもないのですが、他の資料などを調べたりしつつ、私なりに整理できたことをつらつらと書いていきたいと思います。こうやって学ぶのは楽しいですね。

本作の「ボール」を知るうえで良い資料になるドキュメンタリーが実は存在します。それが1990年に作られた『パリ、夜は眠らない。』(原題は「Paris Is Burning」)という作品で、『POSE ポーズ』と全く同じ1980年代後半のニューヨークにおけるボール・カルチャーを取り上げたものです。当時の貴重な映像や当事者の声が満載で、『POSE ポーズ』の世界そのまんま。

「ボール」という文化は、根元を辿れば19世紀後半まで遡れるらしく、当時は異性装は法律で禁止されていたので犯罪者扱いでした。よって異性装をしたい人たちはアンダーグラウンドな世界でこっそり楽しむしかなく、それが「ボール」の土台になります。

「ボール」を語るうえでもう一つ欠かせないのはこれはアフリカ系もしくはラテン系の有色人種の文化だということ。つまり、「ボール」の参加者たちは、LGBTQかつ有色人種という二重の迫害を受ける者ばかり。

そんな境遇の人たちが、白人がよくやる社交会を自分たちでもやろうというスタイルで始まったのが「ボール」であり、今のカタチの「ボール」が確立され始めたのは1950年代ぐらいからだとか。ちなみにニューヨークが本場ですが、他の都市にもあるそうです。

作中のとおり、各自が「ハウス」と呼ばれるグループに属しています。これは弱い立場ゆえに路頭に迷いやすい当事者を助ける一種のサポート施設のような役割を担っています。こういうのが行政ではなく市民活動で生まれるのがアメリカっぽいですよね。作中でエレクトラを演じた“ドミニク・ジャクソン”も子どもの頃から極貧生活を経験し、ハウスに救われたそうです。

そしてハウスの中心にいるのが「マザー」と呼ばれる人で、文字どおり母親のように「子どもたち」を愛し、導きます。なお、必ずしも女性である必要はないようで(「ファザー」もいる)、『パリ、夜は眠らない。』ではウィリー・ニンジャというゲイが作った「ハウス・オブ・ニンジャ」が紹介されていました(凄い名前だ…)。

そんなハウスはボールルームでコンテストに参加し、互いに競い合います。それぞれカテゴリーがあり、そのテーマに合わせた衣装&パフォーマンスで対決。このカテゴリーは「ブッチ・クイーン」「フェム・クイーン」といった鉄板から変なモノまでバラエティ豊か。作中では「天気のお姉さん」「銀河系のベストドレッサー賞」とかありましたね。『パリ、夜は眠らない。』では「学校に行く少年少女」とかが映っていました。

『POSE ポーズ』で描かれるボールはフィクションなので多少ハイクオリティでゴージャスになっています。『パリ、夜は眠らない。』で映っていた実際のボールはもうちょっとお手製な感じでした。ミシンで頑張って衣装を作ったりして、なんだか文化祭を思い出します。『POSE ポーズ』でも、園芸なんかで使う手押し車で毎回トロフィーを運んで帰っているのがシュールでしたね(衣装の派手さとの対比で余計に)。

ボールでは「ヴォーギング」と呼ばれる独特のダンスが披露されることも。作中では司会や審査員と参加者が乱闘寸前の大揉めになるシーンもありましたが、あれも実際に見られるようで恒例化している部分もあるようです。

ボールの文化は今も健在ですし、ドラァグクイーンや他の音楽などに波及し、大きな影響を与えています。

「Black Lives Matter」など社会活動などとの関連性については以下の記事に詳しいです。

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シーズン1:当事者特有の苦悩と普遍的な物語

『POSE ポーズ』はただのボール体験をさせてくれる作品ではありません。それはきっとそれだけでは文化盗用的なものになってしまうからであり、当事者の苦悩というある意味では綺麗事では誤魔化せないものもちゃんと正直に向き合って描いています。

例えば、HIV(エイズ)の恐怖。ちょうど物語の時代となる1980年代はそのHIVの大流行が起きていました。1987年にはレーガン大統領もエイズ問題に取り組むと宣言するなど、もはや国家レベルのパンデミック状態でした。当時は死に直結する病気として考えられていたので、作中のブランカやプレイ・テル(“ビリー・ポーター”の演技が本当に素晴らしい)のような絶望も納得です(なお、今の医療ではHIVに感染してもエイズ発症を抑えることができるのでむやみに不安がらないでくださいね)。

本作で描かれるもうひとつの大きな葛藤がトランスジェンダーの在り方です。作中ではブランカを始め、多くのトランス女性が登場しますが、全員が同じ考えを持っているわけではなく、それぞれの悩みを持っています。

当然、女性として扱われたいと考えているわけですが、世間はそう見なしてくれません。家族からの痛烈な扱いは直視するもツラい出来事。それに有色人種ですから、なおさら立場はない。ボールの空間では白人キャラは居心地が悪くなる場面が見受けられますが、それはあの空間だけは自分がマジョリティからマイノリティへと立場が逆転しているからなのでしょうね。

一方で、ホルモン治療など“女性らしい体”を手に入れる行為も結局はカネが全てになってしまい、ゆえに格差が生まれます。安いシリコン注射で健康被害を起こすキャンディなど、犠牲が起きる背景がよくわかります。ボールが女性らしさを競うこともあるので、余計に勝とうと焦ってマイナスの影響を与えるというのは内部事情としてなるほどなと思いました。

また、“女性らしい体”を手に入れることを歓迎しない人もいます。エレクトラの愛人やエンジェルと関係を持つスタンは、トランスジェンダーとしての肉体が好きなのであって、消費的な性的関心を持てなくなる。まあ、それ自体は相手のフェティシズムなのでとやかく言えませんが、トランス女性側にしてみれば傷つく話です。

さらに、ブランカがゲイバーで受ける差別など、同じセクシャル・マイノリティであっても“異なる”と見なして存在を嫌うのは非常に悲しい光景ですが、実在することです(今も深刻に)。

トランスジェンダーが社会にどう認知されたいか(いわゆる「パッシング」)の問題は個人で答えが違うもの。エンジェルを演じた“インディア・ムーア”はノンバイナリーということもあり「they」の代名詞を使っていたりします。結局は互いを先入観なしに知ろうとするコミュニケーションが大事です。

そうです、特殊な事情ばかりに見える『POSE ポーズ』の登場人物たちですが、基本は普遍的な物語を持っています。それを示すように本作のストーリーもかなり王道です。

負け組たちが仲間を集め、団結し、相手に挑み、あげくに最大のライバルだった相手すらも仲間にして、自分を世間に知らしめる。そして家族物語でもある。これぞカタルシス、これぞ感動…そんな直球の物語がシーズン1でした。

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シーズン2:実家を巣立つ子、残る母、そして偉大なマザー

※シーズン2に関する以下の感想は2021年5月5日に追記されたものです。

家族の団結を深めたシーズン1に対してシーズン2はそれぞれの未来に歩み出します。実家を巣立つ者もいれば、残る母もいる。それぞれの想いが交差するシーズン2です。

1990年を舞台にするシーズン2のキーワードは第1話から流れまくるマドンナの「ヴォーグ」という曲(使用許可をとるの大変だったろうな…)。当時、一世を風靡したこの曲は社会現象になりましたが、元ネタはボールの「ヴォーギング」。ということでブランカなんかは「マドンナが私たちに光をあてている」「私たちの文化がメインストリームになる」と浮かれます。

確かにマドンナのおかげで表世界への躍進の足掛かりを掴んだ者もいます。デイモンはそのひとり。ダンサーとしてヨーロッパに旅立ち、そこで自分のハウスを始めてファザーになりました。

一方で差別が無くなるわけではありません。モデルを始めたエンジェルは、カメラマンからの性暴力、そしてトランスであるとバレたことによる契約解除など、キャリアの乱高下を味わうことに。それでも婚約者のパピと一緒に未来を諦めません。いつか理解してくれる日が来ると信じて…。

ブランカも苦汁をなめる日々。自分のサロンを経営したいのに、ジェントリフィケーションを狙う大家の白人女性フレデリカからは嫌がらせを受け、そしてエイズによる健康悪化が確実に身体を蝕み…。そんなブランカに舞い起こる恋の奇跡。「恋愛ドラマの主人公になったような気がした」と夢見心地で語る姿が印象的ですが、トランスの人にはこういう平凡な恋がなかなか表象においても描かれなかったことを考えると本作の描写は本当に救われます。

ブームに浮かれた白人がどんなにヴォーギングのモノマネをしても当事者の苦悩は伝わりもしない。そのことを残酷に突きつける物語の数々。

別の問題もピックアップされていました。それはボールの業界における女性差別。プレイ・テルはエイズ進行にともない、アクトアップ(ACT UP)に参加しつつ、なんとか前向きになろうとするも、やはり治療が上手くいかず、ときに自暴自棄で周囲に当たり散らします。この苦悩は当然です。しかし、この世界における女性の苦悩を意識してきませんでした。最終話で彼は反省し、審査員をそれまで品評される側だった女性たちにチェンジし、男たちの女装を審査するという企画を実行。シーズン2はフェミニズムな点でも爽快です。

そんなシーズン2において私のイチオシはやはりエレクトラ。痛快です。SMクラブを天職と豪語し、うっかり客を死亡させたりしつつ、私の豪傑な生き方を他人に止めさせてなるものかというあのスタイル。憧れる…。「車の免許はない、雑貨屋で買った」とか一度言ってみたい…。

エレクトラは今回は「ハウス・オブ・ウィンター」を立ち上げるのですが、たぶんアメリカ版「ヴォーグ」の編集長のアナ・ウィンターから命名しているのかな(ちょうど1988年に編集長になっている)。なるほどエレクトラらしい…。

エレクトラはブランカの母であり、まさにマザーの中のマザー。孤独を嗜好する男たちからカネを巻き上げ、望まない孤独に苦しむ子どもたちに還元し、やや倫理スレスレな叱咤激励を飛ばす。これこそこのボールの世界における家族という連帯の主軸なんですね。

誰にだって居場所は与えられるべき。そんな社会に満点をつけたいものです。

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シーズン3:トラウマを超えた祝福を!

※シーズン3に関する以下の感想は2022年10月2日に追記されたものです。

『POSE ポーズ』もシーズン3で完結となります。短いようですが、歴史に基づき時事的な題材を取り込んでいる作品なので、これくらいが潔い締め方なのではないでしょうか。

とは言え、さすがにシーズン3は急ぎ足気味でしたけどね。シーズン2の終わり方も良かったと思うのですが、このシーズン3では各キャラクターのドラマに区切りをつけていっています。

舞台は1994年。ブランカとエレクトラはすっかりご隠居様扱いで、ボールも世代交代していました。そしてプレイ・テルはMCを引退。アルコール依存症になって荒れるも治療を決意。そして彼の死がこのシーズン3の最大の悲しみとなります

シーズン3はアクトアップにブランカも参加。治験から黒人とラテン系は外されている実情を非難し、治療対策を早めるようにデモ活動を展開します。こうしたプロテストがあったからこそ、今のコロナ禍の迅速な感染症治療確立体制が実現しているわけで、私たちの健康はこの時代に活動したクィアな人たちのおかげなのです。

ブランカは看護師になり、医療従事者にトランスジェンダー当事者がいることがどれほど患者に寄り添ううえで重要なのかが描かれます。

暗い話ばかりではありません。エンジェルとパピの結婚式はまさにハッピー。前世はクレオパトラと豪語し、テレホンセックス事業からビジネスを成功させた大富豪エレクトラの支援もあり(トランクの死体の件はちょっと笑ったけど、そんな思い出深いトランクだったんだなぁ…)、ゴージャスな結婚式が開催。All-4-Oneカバーの「I Swear」の大合唱で、当事者の当然の幸せが祝われます。

『POSE ポーズ』はトラウマを超えた喜び、祝福の物語なのです。そこが本当に最高でした。

残念ポイントと言えば、デイモンは再飲酒でチャールストンのいとこと暮らしたと言葉で語られて終わってしまったくらいですかね。俳優の事情で出演できなくなったみたいですけど…。

『POSE ポーズ』は作中でもレプリゼンテーションに言及するくだりが多いです。O・J・シンプソンの逃走劇を中継でみんなで釘付けになって観る場面もありましたが(エンジェルは興味なくて「オレンジジュース?」とか言っているのが可愛い)、黒人の表象はとにかく乏しいです。パピの5歳の息子であるベトがブラックレンジャーの衣装でなりきっていましたけど、本当にこういうのが貴重。最終話でもいつもの女4人が集まって、「『セックス・アンド・ザ・シティ』を観たけど白人ばかりだ。あんなの『ホワイト・アンド・ザ・シティ』よ」と愚痴っていましたが、そういうことです。

だからこの『POSE ポーズ』が作られた。そこに意味がある。

私もこれからもいろんな作品を見て感想を語ると思いますが、『POSE ポーズ』はずっと言及し続けるでしょう。こんな伝説的なドラマがあったんだと…。永遠に語り続けたいドラマでした。

トランスジェンダー、ゲイ、クィアに生まれたあなたに祝福を!

『POSE ポーズ』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 96% Audience 86%
S2: Tomatometer 98% Audience 90%
S3: Tomatometer 100% Audience 82%
IMDb
8.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
9.0

作品ポスター・画像 (C)20th Television

以上、『POSE ポーズ』の感想でした。

Pose (2018) [Japanese Review] 『POSE ポーズ』考察・評価レビュー