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『エイリアン コヴェナント』感想(ネタバレ)…絶望のベビーブーム

エイリアン コヴェナント

絶望のベビーブーム…映画『エイリアン コヴェナント』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Alien: Covenant
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年9月15日
監督:リドリー・スコット
エイリアン コヴェナント

えいりあん こべなんと
エイリアン コヴェナント

『エイリアン コヴェナント』物語 簡単紹介

人類移住計画を託された宇宙船コヴェナント号は、アンドロイドのウォルターによる管理のもと、静かに宇宙を航行していた。しかし、突如発生したトラブルにより、対処する時間もなく、貴重な多数の乗務員の命を失ってしまう。失意のなか目覚めた乗務員は、体制の立て直しのためにチームを再結成し、事態の収拾を図る。そのとき謎の信号を受信し、未知の惑星に降り立つが、そこには想像を絶する脅威が存在していた。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『エイリアン コヴェナント』の感想です。

『エイリアン コヴェナント』感想(ネタバレなし)

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リドリー・スコットが描く宇宙神話

「alien(エイリアン)」という単語は「外国の」とか「外国人」、もしくは「性質が異なる」とか「調和しない」という意味が本来です。しかし、今や誰でも「エイリアン」と聞けば、「凶暴に襲いかかってくる異形の地球外生命体」を連想します。

それもこれも全部、1979年に公開された、“リドリー・スコット”監督『エイリアン』のせい。それだけ凄いインパクトのある映画でした。

『エイリアン』はいかにもSFホラーという感じのベタすぎるジャンル映画でしたが、その後、シリーズ化されていくと、どんどん思わぬ進化を遂げていきました。ジェームズ・キャメロンが監督した『エイリアン2』デヴィッド・フィンチャーが監督した『エイリアン3』ジャン=ピエール・ジュネが監督した『エイリアン4』、あと“プレデターと戦うやつ”とか…まさに劇中に登場する「エイリアン」そのものと同じように、映画さえも監督に寄生して変身していったといえるでしょう。どの『エイリアン』シリーズ作品が好きかでその人の好みがわかりますよね。

そんな親元を離れて好き勝手成長していった『エイリアン』ですが、生みの親である“リドリー・スコット”監督に里帰りすると、原点回帰するのかと思ったら、これまた予想外の方向に進化しましてね…。『エイリアン』の前日譚を描いた2012年公開の『プロメテウス』は、観た人ならわかるようにもはや神話です。単なるSFホラーの領域を超えて別の何かになろうとしています。“リドリー・スコット”監督はこれまで『グラディエーター』(2000年)や『エクソダス:神と王』(2014年)といった地球上の歴史モノを描いてきましたが、それだけに飽き足らず宇宙レベルの歴史モノを創造する気なのか…。“リドリー・スコット”監督、もうすぐ80歳。このお爺ちゃん、なんか怖ろしいよ…。

そして『エイリアン』の前日譚である『プロメテウス』の11年後を描く最新作が本作『エイリアン コヴェナント』です。内容は…『プロメテウス』以上に凄いことになっているとだけ言っておきましょうか。

『エイリアン』シリーズは観たことないよとハードルの高さを感じている人がいたら、そこは安心してください。『エイリアン1』『2』『3』『4』は観ておく必要はないです。逆に『プロメテウス』は観てこないと「?」となると思うので、それだけは押さえておくことを強くオススメします。本作のハードルの高さはシリーズ作品の多さよりも、その神話的内容だと思います。もう凄いことになっていますから(2度目)。メタファーどころか直接的に神話性をガンガン入れ込んできてます。

俳優陣は、『スティーブ・ジョブズ』“マイケル・ファスベンダー”『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』“キャサリン・ウォーターストン”『スポットライト 世紀のスクープ』“ビリー・クラダップ”『ロック・ザ・カスバ!』“ダニー・マクブライド”など。

“リドリー・スコット”監督が描くホラーを超えた宇宙神話…覗いてみませんか?

↓ここからネタバレが含まれます↓

『エイリアン コヴェナント』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):始まりはあるのか?

白い部屋で椅子に座っている男は淡々と「何が見える?」という質問に答えます。壁にはピエロ・デラ・フランチェスカの「キリストの降誕」の絵が飾られています。

その男の前に別の男が立ち、「私が父親だ」と言います。「お前の名は?」…そう聞かれ、ミケランジェロの彫刻をじっと見とめ、「デヴィッド」と答える男。そしてピアノでワーグナーを弾けと言われ、指示どおり弾くのでした。

「あなたが私を作ったなら、あなたは誰が作ったのですか?」

創造者のピーター・ウェイランドはその重要な問いに関して「私は人間が分子の組み合わせの副産物などという考えは信じない。単に生物学的な偶然にすぎないなどと。それ以上の何かあるはずだ」と言い、一緒に解き明かすことを提案します。

デヴィッドは「あなたは創造主を探す。私の創造主はあなた。私は使えるがあなたは人間。あなたは死ぬ。私は死なない」と整理します。

2104年、コヴェナント号という入植船は宇宙を漂っていました。乗員は15名、入植者2000名、胎芽1140体。目的は「オリガエ-6」です。7年4か月後に到着する予定でした。

アンドロイドのウォルターはブリッジに向かいます。セイルを展開し、エネルギーをチャージします。スリープ状態の乗組員の健康もチェック。保存されている胎芽も調べていると、マザーコンピュータがニュートリノ・バーストを感知し、壊滅的被害を起こす恐れがあると警告します。

電力サージで大混乱に陥る中、乗組員を休眠ポッドから覚醒させます。しかし、船長のジェイコブ・ブランソンのポッドだけ開かず、そのまま焼け死んでしまいます。彼の妻のダニエルズは嘆き悲しみますがどうしようもありません。思い出の品だけが残されます。

副船長のクリス・オラムが船長となり、任務を続行します。47人の入植者と船長を失いましたが、依然として船の二次システムはまだ修復しておらず、オラムは修理を指示します。ロープ軍曹たちは弔いを提案しますが、オラムはそれを拒否。人類移住計画の責任者でテラフォーミングの専門家であるダニエルズも気を取り直して仕事に取り掛かります。

船員たちは船長の命令を無視して独自に小さな弔いをし、オラムは不快感を露わにします。カリンはそんな夫をなだめます。

そんな中、予想外のことが起きます。船外修理で電力復旧をしていたテネシー(ティー)が謎のノイズのような信号を受信したのです。それを解析してみると、ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」の歌にも聞こえます。

その発信源は「オリガエ-6」より遥かに近く、しかも生物圏に適していて移民に好条件と推察できる惑星と判明し、多くの人は休眠ポッドに戻りたくもないので、ここに降り立ってみることに…。

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赤ちゃんがいっぱい

『エイリアン コヴェナント』は、というか本作も、実に『エイリアン』シリーズらしい骨格をふてぶてしいほど堂々と備えた作品でした。

“お前ら本当に宇宙船を担う専門家なのか”と疑いたくなるくらい色々ダメそうなクルーたちとか、“絶対にそれはダメだろう”という判断を安易に選択してしまうフラグ回収の精度の高さとか。

なにより『エイリアン』といえばグロいシーンを期待する人も多いと思いますが、今回はもう選り取り見取り。エイリアンを使ったグロ映像総集編みたいになってます。まず、いきなり序盤、エイリアンが登場する前から、コールドスリープ状態で焼死するという最悪な死に方を見せてくる本作。ばっちり焼死体も映しちゃって、“リドリー・スコット”お爺ちゃんの満足そうな顔が目に浮かびます。

『エイリアン』のグロさは生理的な気持ち悪さを刺激するのが定番ですが、今回もそれはたっぷり。未知の星にクルーたちが降り立つと、謎の黒い靄が生命体のように動きまわり、耳や鼻から入る場面とか、思わず鑑賞中に耳や鼻を触ってしまいます。しかもその体内に入ってからの過程をCGでじっくり見せる。これは完全に精子の受精するシーンですよ。

そして、怒涛の「こんにちわ、赤ちゃん」です。背中から、口から、ドロッと元気よくこぼれるエイリアン・ベイビー。なんか今回のミニ・エイリアン、ちょっと可愛らしいなと思ったけど、私の頭がおかしいのかな…。

『エイリアン』ではH・R・ギーガーによって性器をモチーフにしたデザインが盛り込まれているのは有名な話ですけど、今回も性!性!性! 今作も性を恐怖化することに余念がありませんでした。しかも、本作はクルーたちがカップルで構成されているという露骨すぎる設定ですから。イマドキ、シャワーシーンでホラー演出という超ベタ展開をちゃんとやる“リドリー・スコット”監督は偉いなぁ…。

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禁断のカップル成立

ただ、『エイリアン コヴェナント』の場合、ただグロいというだけではないのが、“リドリー・スコット”監督が『エイリアン』シリーズを別の領域に到達させようとしていることを証明する最大のポイントというか…。

それを印象付けるのが、デヴィッドに導かれるままに新キャプテンのオラムがもはや伝統芸のようにフェイスハガーに襲われた後のシーン。オラムの腹からミニ・エイリアンがプギャーと産声を上げる誕生の場面は、恐怖シーンというよりは明らかに感動げな演出になっていました。落ち着いたしっとりとしたBGMまでつけちゃって、まるで自然番組で野生動物の出産シーンを流しているときみたいな、自然の神秘に敬服するような趣です。

“リドリー・スコット”監督直系『エイリアン』作品はアンドロイドが主役になってきました。前作『プロメテウス』と本作の場合なんかは、完全にアンドロイドのデヴィッドが主人公です。アンドロイドの氾濫を描く『エクス・マキナ』に通じるものがありますが、本作『エイリアン コヴェナント』はそこからさらに進んでいます。

なぜなら、本作は、デヴィッドがエイリアンに対して愛し気な眼差しさえ向けているのですから。もうこれはデヴィッドとエイリアンのボーイズ?ラブみたいなものじゃないか(爆弾発言)

よくよく考えると、アンドロイドのデヴィッドも「alien(エイリアン)」なんですよね。人間とは非なる異質な存在同士、惹かれ合うものがあるのでしょうか。そして、アンドロイドのデヴィッドもエイリアンもそれ単体では子は成せない。人間たちはカップルでイチャコラしているのに…。

ついにデヴィッドとエイリアンの壮大な計画が前進し始めたラスト。本作はバッドエンドじゃない、カップル成立エンドなのだと思えば、幸せですね(真顔)。

『エイリアン コヴェナント』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 65% Audience 55%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved エイリアンコベナント

以上、『エイリアン コヴェナント』の感想でした。

Alien: Covenant (2017) [Japanese Review] 『エイリアン コヴェナント』考察・評価レビュー