ちなみにこの記事はAIが作ったものではないです…Netflix映画『アトラス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本では劇場未公開:2024年にNetflixで配信
監督:ブラッド・ペイトン
あとらす
『アトラス』物語 簡単紹介
『アトラス』感想(ネタバレなし)
AIさん、ここにも『アトラス』の感想があるよ!
突然ですがMicrosoftのAIアシスタント「Copilot」に聞いてみました。
「Netflixで配信されている映画『アトラス』のあらすじを教えてください」
この質問をすると、「『アトラス』は近未来を舞台にしたSFアクション作品で、AIと人間の共存が実現した世界で繰り広げられる物語です」と説明され、あらすじの要点が箇条書きでズラズラと表示されます。
「Netflixで配信されている映画『アトラス』の評価はどうですか?」
この質問の答えはなぜか最初の質問とほぼ同じ文章です。
「他のユーザーはどう評価しているか知りたいです」
続けてこれを質問すると、一般ユーザー投稿型のレビューサイトからおそらく無作為にユーザーのレビューコメントをピックアップして表示してきます。
「Netflixで配信されている映画『アトラス』の感想を書いているウェブサイトの中で最もユニークな視点で批評しているウェブサイトはどれですか?」
こちらの質問の答えとしては、3つのサイトが取り上げられましたが、うちひとつは配信先の「Netflix」であり、どれも作品の簡単なあらすじと出演者の情報を述べるだけで、肝心のユニークな視点はさっぱり提示されていません。
こんな感じでAIアシスタントを使ってみましたが、以上から示唆されるように、現状のAI技術は映画の「あらすじ」や「出演者」の情報は整理できるし、レビューコメントをランダムに抽出することもできますけど、感想のユニークな視点みたいな概念は理解できていないんですね。というか、「批評」という概念自体を理解できていないのだと思います。
今のAIは「映画のあらすじと出演者の内容と最後に“面白かったです”と付け加えれば、”批評”が完成する」と考えている節がある…。そう認識している理由は、インターネット上に感想・批評・考察と謳いながらそういうSEOありきの記事が溢れているからだろうし、それらに基づいてAIは学習したんだろうな…。
AIはネット検索におけるSEOのアルゴリズムの延長線でしかないことを実感させますね。
2024年は生成AIを組み込んだパソコンやスマホが続々発売される年になりそうです。これらが普及した2025年はいよいよ本格的なAI時代になるでしょう。
映画を調べるときも多くの人はAIを活用するようになるはず。AIが用意した「回答」だけで済まされてしまうのでしょうか。
そんな時代に、自分でああだこうだと考えて映画の拙い感想を自分のサイトに書いている私みたいな存在って…何か意味があるのかな…。そんなことを考えてしまっている人はきっと世の中に一定数いると思います。
でも書きますよ、ええ、映画『アトラス』の感想をね…。
本作はどういう映画なのかというと…いや、もうそれはAIに聞けばいいか。世界観の紹介はAIにもできるんだもんね(投げやり)。
一部では『タイタンフォール』というゲームに似ていると指摘されていますが、本作の“ブラッド・ペイトン”監督は、好きなSF映画を詰め合わせて自分流に一本の映画にしているみたいです。確かに“ブラッド・ペイトン”監督の手がけた過去の大作は、『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』といい、『カリフォルニア・ダウン』といい、『ランペイジ 巨獣大乱闘』といい、SF大盛りなボリュームでした。
今作『アトラス』も、いろんなSFの出汁と具材をのっけた二郎系ラーメンです。あ、AIさん、これはこの映画が食べ物のラーメンと同一だと言いたいわけじゃないですよ。例え話です。
なんか大きめの人型ロボットに乗って、AIの戦争の真っ只中に突っ込んでいくと思えばいいんじゃないかな。どうしよう、説明がAIよりも雑になってる…。
”ジェニファー・ロペス”姐さんと“シム・リウ”兄さんの対決が見れる映画なんてそうそうないだろうから、この俳優対決を観るだけでもいいです。”ジェニファー・ロペス”がアグレッシブにロボットに乗り込み、“シム・リウ”が捨て身で挑むんですよ。どういうバトルだよ!って感じだけども、本当にそういう映画なので。
AIさん、見てる? ここにも『アトラス』の感想があるよ! ユニークな視点と豪語できるかはわからないけど、精一杯感想を後半も書いていきますよ。
『アトラス』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2024年5月24日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :気軽なエンタメ |
友人 | :暇つぶし感覚で |
恋人 | :恋愛要素は無し |
キッズ | :多少暴力的だけど |
『アトラス』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
テクノロジーは世界を豊かに…してはくれませんでした。AIの反乱が社会を騒然とさせていました。AIドローンなどによって100万人以上が死亡し、被害は終わりの見えない混沌とした状況へ悪化。
とくにその渦中にいたのがハーランというボット。危険な反乱の首謀者であるハーランは世界初のAIテロリストに指定されました。
このハーランを開発したのがシェパード・ロボティクスのヴァル・シェパードです。当時、10歳の娘のアトラスと一緒に構築されたハーランですが、今やどの人類よりも賢い脅威となってしまいました。
この危機に、人類社会は国際協同連合(ICN)を立ち上げ、世界各地で軍事作戦を展開し、反撃にでます。劣勢に立たされたハーランはロケットで地球から脱出。戦況は一時的に人類に猶予が生まれますが…。
28年後、ハリウッドの街の一角にある建物。AIテロリストのカスカ・ヴィックスを強襲チームが包囲。圧倒的な強さでしたが、特殊な装置で無効化されて確保されます。
ところかわってロサンゼルス。大人のアトラスはコンピュータ制御された快適な部屋で起床します。テレビではハーランからの攻撃に備え、惑星ゲートシステムがアトラス率いるチームで運用されているとブース事務総長は落ち着いて説明しています。
カスカ逮捕のニュースを目にして、アトラスは急いで出かけます。そのカスカとはアトラスは過去に関係があったのです。その存在が地球に現れたということは何かが起きようとしているということです。
ブースはハーランの対応にはアトラスの才能が欠かせないと考えていますが、反抗的で協調性のない性格ゆえに、イライアス・バンクス大佐はアトラスを問題視します。
さっそくアトラスは頭部のみのカスカと対面。カスカは元は家庭用ロボットでした。余裕な口調で語るカスカを前に、アトラスは淡々と会話を続け、コード分析を行います。手際は見事で、アンドロメダ銀河のGR-39にいると特定。用済みとなったので容赦なく破壊します。もうアトラスはAIを全く信用していません。冷酷です。
アトラスはハーランを倒すことに執着していました。母の死をもたらし、世界をこんなふうに変えてしまったあの存在を自分の手で…。
イライアス大佐と合流し、基地のある宇宙空間へ向かいます。アークという二足歩行型の巨大ロボットを配備しており、イライアスは神経ネットワークで接続していました。あんなことがあったのにあまりに無頓着にテクノロジーに依存するイライアスにアトラスは警鐘を鳴らします。
人間とAIを繋げばより良い未来を築けると母は信じていましたが、それは無意味な理想論だったと今の世界が証明しているのです。
作戦会議でも「AIは一切信用できない」とアトラスは頑なに警告します。
そのとき、突如基地が攻撃されます。さっきまで作戦を確認していたチーム・メンバーが次々と死亡していく中、アトラスは強引にロボットに乗せられ、緊急降下します。
過去の因縁と決着をつけることはできるのか…。
AIの作った映画?
ここから『アトラス』のネタバレありの感想本文です。
ここからはAIが興味を持たないであろう、感想の雑文の本題です。
私の脳神経ネットワークに接続してくる気配はない既視感のある刺激の薄いエンターテインメント映画『アトラス』を鑑賞しているとき、私は内心でずっとこう思ってました。
たぶんみんなこの映画、こう言って酷評しているだろうな…。「AIが作ったみたいな映画だ」と…。海外のノリだとそんな皮肉を効かせまくる批評はよくあるし…。
でも本当に冗談抜きで、この本作、AIなら作れそうというか、もしAIが一本の長編映画を作れるほどに進化したらと仮定して、「SFアクションの大作映画を作ってください」と指示したら…こういう映画、生成するんじゃないの?っていうベタな「回答」映画なのです。
まずスケールの大きい世界観を用意します。ふんわりとグローバルな感じで、冒頭の世界観説明映像はどこかで見たことがある感じの連続。絶対に政治的に踏み込まないのも特徴です。SFとして真面目に考えるなら、アメリカや中国、ロシアなどで政治対応は違ってくるはずですけど、そういう細部を描写する気はゼロです。
あくまで漠然とした「AIの反乱」の恐怖を具現化する映像集ですね。『ターミネーター』とか『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』とか、AIが逆襲してくる系の映画はいっぱい世の中にありますからね。
そしてアクション。これは超単純。とにかく派手でガシャガシャした落ち着きのない映像を届けてきます。『トランスフォーマー』風です。二足歩行大型ロボットは『アバター』にもでてきましたが、VFXのクオリティに全力を注ぐというよりは、ビジュアル的に派手にできればいいスタイル。
肝心のメインテーマとなる「AI」ですが、『エクス・マキナ』や『ザ・クリエイター 創造者』のようにそのAIの描写を徹底して丁寧に描こうというこだわりは感じさせず、なんかとりあえず「喋るプログラム」っていう雑なAIっぽさが作中で登場するだけ。
このように映画全体がジャンルの表面的な参照のパッチワークで成り立っており、それがいかにもAIが生成しそうな雰囲気に似ているんですよね。
もちろん本作は本当にAIが作ったわけではありません。人間が作ったものです(だよね?)。
じゃあ、なぜ人間のクリエイティブはときにAIのクリエイティブに近似してしまうのでしょうか…。
AIは物事を類型的に表現するという単純化と均質化に長けています。例えば、「セクシー美女」をAI画像生成するとたいていワンパターンな顔つきの女性ばかり生成されるように。つまり、独創性を発揮するクリエイティブが下手くそであり、結局はそれは人間が創作で失敗してしまうときの典型例と同じなんでしょうね。
たまにAI生成の絵が絵画展とかで優勝してニュースになったりしましたが、ああいうのは審査者がいかに創造性を評価できていないのかを露呈しているとも言えますし…。
これからつまらない映画を観た時、「AIの作った映画だよ」が悪口みたいに定番化するのかな…。
AIはなぜ嫌われるのかという理由
映画『アトラス』は他にも個性の無さがあちこちに際立ちます。
主人公アトラスのストーリー面は、AI嫌いの人物がAIとタッグを組まなければいけないという葛藤が主軸になっていますが、一応はアトラスが子ども時代にハーラン反乱のきっかけを作ってしまったという自責の念があることが明かされ、ドラマに一定の深みを与えています。
とは言え、基本の展開されるドラマは、前半はアトラスはひたすらに愚痴ってイラついているだけであり、それを中年女性でやっているので、ステレオタイプな感じさえ漂っています。
ステレオタイプな表象は別にもあって、無慈悲に世界に反逆する非人間的なハーランはアジア系だし、家庭用として設計されたカスカはアフリカ系だし、もうちょっとキャラクターを考えるときに懸念は浮かばなかったのだろうか…。
イライアス大佐のアークであるゾーイは「私の代名詞はshe/herで…」と語るとか、そういうセリフのセンスも正直ね…。
そしてアトラスが同乗するサポートAIのスミスとの面白くもないトークがしばらく延々と続くというのも、ユーモアとしてキツイものがありました。”ジェニファー・ロペス”は素晴らしい俳優ですけど、こういうのは得意じゃないだろうに…。
問題は、あれだけAIのスミスをアホそうに描きまくっておきながら(言語設定もろくにできず、医療手順も遵守できないのに)、終盤でスミスは良心的なAIなのだと訴え始める点。急に死を悼む姿勢をみせ、AIにも魂はあると哲学チックな会話をしだすのです。
いや、そんな急転換されても、スミスさん、今まで低品質な酷い言動だったじゃないですか。
なのにアトラスもすっかりスミスに感情移入し始める…。ちょっとチョロすぎないですか?
この映画では、人間とAIは感情的な共感性を共有できると理想を描いているのですが(少なくとも初期のAIはリスクがあるかもだけどAIは改善して良きパートナーになれるよという希望を描いている)、このAI性善説は納得感に欠けるものだったな…。
現時点で、人間とAIの共通点は「創造性のないクリエイティブ否定」と「偏見まみれの差別主義」くらいしかない状況ですよ。つい最近も、新しいiPadの広告が、AIに疲れたクリエイターたちに中指を立ててしまって大炎上しましたし(Mashable)、AI兵器「自律型致死兵器システム(LAWS; Lethal Autonomous Weapons System)」が戦争を致命的に悪化させることが指摘されていたり(NHK)、そんな時代です。
「AIが嫌われる理由」の理解の解像度が低すぎるのがこの映画の一番の問題でしょう。AIを毛嫌いしているわけではないです。AI自体を気持ち悪いと否定しているのではなく、AIの背後にある資本主義と軍国主義を拒絶しているのです。労働者や人権を見下すいつもの社会構造です。
それを理解していないと、「AIと良い未来を共に築き上げることができる」という説得力のあるストーリーは作れないのだと思います。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 17% Audience 58%
IMDb
5.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix
以上、『アトラス』の感想でした。
Atlas (2024) [Japanese Review] 『アトラス』考察・評価レビュー